科学は不公正に超自然の仮説を排除するか?


TalkOrigins の対インテリジェントデザイン専用サイト TalkReason に2006年4月30日付けで掲載された
Lenny Flankによる「 Does science unfairly rule out supernatural hypotheses? 」が、科学による超自然の取り扱いおよびインテリジェントデザインが科学ではないことをわかりやすく説明している。概要は:

  • 超自然的説明が排除されるのではなく、科学的方法論に従えないので科学になれないだけ
  • 科学的方法とは、「観察・観察を説明する仮説・仮説による予測・実験や観察による検証・仮説の修正」という手順をふむこと。
  • インテリジェントデザインは検証可能な仮説を作れない
  • インテリジェントデザイン支持者たちは、検証なしに理論を認めることを求めている。

以下、原文の訳:

Lenny Flank: Does science unfairly rule out supernatural hypotheses?

科学は不公正に超自然の仮説を排除するか


One of the most oft-heard complaints from ID/creationists is that science has embraced a "religion of naturalism" and that it unfairly rules out, a priori, any potential supernatural or non-materialistic hypotheses, solely to prop up science's atheistic philosophy. Phillip Johnson, for instance, says, "Science also has become identified with a philosophy known as materialism or scientific naturalism. This philosophy insists that nature is all there is, or at least the only thing about which we can have any knowledge. It follows that nature had to do its own creating, and that the means of creation must not have included any role for God. . . . The reason the theory of evolution is so controversial is that it is the main scientific prop for scientific naturalism." (Johnson, "The Church of Darwin", Wall Street Journal, August 16, 1999). Dembski echoes, "From our vantage, materialism is not a neutral, value-free, minimalist position from which to pursue inquiry. Rather, it is itself an ideology with an agenda." (Dembski, "Dealing with the backlash against intelligent design", 2004)

インテリジェントデザイン支持者や創造論者から最もよく聞かされる苦情は、科学が"自然主義の宗教"を内包しており、先験的に超自然や非物質的仮説を排除し、科学の無神論の哲学だけを支持するというものだ。たとえば、Phillip Johnsonは、「科学はまた唯物論もしくは科学的自然主義として知られる哲学と同定されるようになった。この哲学は、自然はすべてであって、少なくとも自然は我々が知識を持つことができる唯一のものだと要求する。これからは、自然は自らを創造し、創造の意味は神の如何なる役割を含まれてはならないということにつながる。進化論がここまで論争になるのは、進化論が科学的自然主義の主たる科学的支柱だからである。」 (Johnson, "The Church of Darwin", Wall Street Journal, August 16, 1999)  Dembskiも「我々の観点から見れば、唯物論は、問いを追求するにあたって、中立でもなく、価値観を持たないものでもなく、ミニマリストのポジションにもない。むしろ、それ自体がアジェンダを伴ったイデオロギーである。」とたたみかける(Dembski, "Dealing with the backlash against intelligent design", 2004)。

しかし、容易にわかることだが、実際、科学は超自然的説明を先験的に排除しない。さらに、インテリジェントデザイン支持者たちが望むすべての超自然的仮説の導入を認めたとしても、それらは科学的方法に従えないだろう。

科学的研究法は非常に単純で、基本的な5ステップから成り立つ。それらは次のとおり:

  1. 宇宙のある様相を観察する
  2. 観察したものを説明できる可能性のある仮説をつくる
  3. その仮説で検証可能な予測をつくる
  4. それらの予測を検証できる観察あるいは実験を行う
  5. すべての観察や実験と予測が一致するまで、仮説を修正する

これらの5ステップのどれでも原理的に、先験的に、"超自然の原因"を排除しない。この方法により、非物質的なピクシーやゴーストや女神や悪魔やグレートパンプキンやお望み次第のものを仮説に注ぎ込んでかまわない。実際に、治癒に対する祈りの効果としての"超自然の原因"について、科学的実験が提案され、実施され、論文発表されている。その他に、ESPやテレキネシスや予知や遠望視のような非物質的あるいは非自然的現象についての研究が行われている。従って、科学が不公正に超自然あるいは非物質的な原因を原理的に排除しているという、インテリジェントデザインが主張はまったく間違っていることは明らかだ。

しかしながら、科学が要求するものは、いかなる超自然あるいは非物質的な仮説が、それが何であれ、ステップ3,4,5である。そして、インテリジェントデザインが無残に失敗するのはそこだ。

これを示すために、インテリジェントデザイン仮説の特定例を1個とりあげて、どのように科学的方法が適用されるか見てみよう。多くのインテリジェントデザイン創造論者たちがとなえる主張に、ヒトとチンパンジーの遺伝子の類似性について神ではなく氏名不詳のインテリジェントデザイナーが両方を共通特性を使って、共通デザインで創造したというものがある。この例が気に食わないインテリジェントデザイン支持者は、何か別の非自然主義的インテリジェントデザイン仮説を代わりに使ってほしい。

この仮説をとって、科学的研究法をたどってみよう:

宇宙のある様相を観察する。

オーケー、では、壊れているビタミンCゲノムや、チンパンジーの染色体の2つと同定されるヒトの融合した染色体(適切に2倍になったセントロメアとテロメアのすべて)を含むヒトとチンパンジーが特定のゲノムマーカーを共有していることが観察できる。

観察したものと整合する、仮説と呼ばれる一時的な説明を作る。

オーケー、提案されたインテリジェントデザイン仮説は「インテリジェントデザイナーが、ヒトとチンパンジーを創造するのに共通デザインを使った。共通デザインは融合した染色体の兆候と、両種にある壊れたビタミンCゲノムを含む」である。

仮説を使って予測を作る。

さて、ここでインテリジェントデザインの超自然的方法論が輝くチャンスだ。インテリジェントデザイン仮説からどんな予測が作れるだろうか? インテリジェントデザイナーがヒトとチンパンジーに共通デザインを使ったとしたら、何を見ることになると予期できるだろうか....

インテリジェントデザイン支持者諸君、空欄を埋めてみよう。

そして、インテリジェントデザイン仮説を検証するのに最も使える方法は、否定の予測、すなわちそれが見つかれば、仮説が反証され、結果的に仮説が間違っていると示されるものである。そして、.... (空欄を埋める)を見つければ、"共通デザイン"仮説が否定される。

さらなる実験あるい観察によって予測を検証して、結果に照らしあわせて仮説を修正する。

ステップ3と4を、理論と、実験や観察の不一致がなくなるまで繰り返す。

さて、インテリジェントデザイン支持者はステップ3で立ち往生してしまうようだ。インテリジェントデザインの膨大な著作や議論にもかかわらず、インテリジェントデザイン支持者たちは、彼らの仮説から、実験によって検証可能ないかなる予測も作っていない。

ここで注意をひとつ。インテリジェントデザイン支持者たちが「不公正に超自然の原因を排除している」と泣き言を言っているのに反して、実際には科学的方法を彼らの予測に対して適用する制約は、ステップ3,4,5以外にはない。すなわち、いかなる予測を作っても、それが実験やさらなる観察によって検証可能でなければならないことだけ。ステップ3,4,5に従っている限り、すなわち神性や原因を実験やさらなる観察でいかに検証できるか示されれば、いくらでも、そしてお好みのどんな超自然の原因でも提起してよい。良き魔女グレンダが魔法の非自然主義的杖を使って、これらのゲノムシーケンスをヒトとチンパンジーの両方に注入したと言いたい?いいだろう、それを検証するために、どんな実験あるいは観察ができるか言ってもらおう。神ではなく氏名不詳のインテリジェントデザイナーがヒトを非常に気に入って、それ故に壊れたビタミンCゲノムをデザインしようと決めたと言いたい? ヘイ、それを検証できる実行可能な実験か観察を教えてくれれば、すぐに実行するよ。お好みの超自然的原因をすべて使ってもかまわない。どんな実験あるいは観察をすれば、予測を検証できるか言ってくれれば。

しばらく、インテリジェントデザイン支持者が正しく、科学が不公正に超自然的説明に偏見を抱いていると仮定しよう。ということで、仮に方法論的唯物論を窓の外へ投げ捨てよう。はい、捨てた。バイバイ。これですべては公平なゲームになった。ゴースト、スピリット、悪魔、宇宙的知性、エルフ、ピクシー、魔法の星のヤギ、お好みの神様、何でもありだ。すべてを提起してもかまわない。必要な数だけ幾らでも。そして、インテリジェントデザイン支持者がやるべきことは、簡単で、「チンパンジーとヒトのゲノムの類似が共通デザインによるもの」という仮説あるいはその他の非物質的あるいは超自然的インテリジェントデザイン仮説に、科学的方法を適用するために、選んだ非自然主義的科学が何であれ、どのように科学的方法を適用するか示して見せることだ。そして、ここでインテリジェントデザイン"理論"は失敗する。この過程で、インテリジェントデザインを死んだままにしているのは科学の側の"形而上学的自然主義"のいかなる前提でもない。いかなる検証可能な予測も作れないインテリジェントデザイン"理論"の無能さだ。たとえ、インテリジェントデザイン支持者が望む非自然主義的デザイナーを提起したとしても、インテリジェントデザイン"理論"は科学的方法を実行できない。

心の奥底でインテリジェントデザイン支持者たちが本当にうめき、苦情をいっているのは、科学が不公正に彼らの超自然の説明を排除することに対してではなく、科学がインテリジェントデザインが提案する"超自然の説明"を科学的方法で検証することを要求していることに対してだ。インテリジェントデザインはその"説明"を検証できないばかりか、科学を再定義して検証しなくてもよいようにしたがっている。実際のところ、インテリジェントデザイン支持者たちは、超自然の"仮説"を特権的な地位に置きたがっている。すばわち、検証なしに科学に彼らの仮説を認めさせたがっている。すなわち、彼らは科学的方法のステップ1と2に従うが、ステップ3,4,5をスキップして、彼らの"科学"が正しいという、彼ら自身の権威に基づいた、彼らの宗教的言葉をとりたがっている。そして、それは、"唯物論"(あるいは"自然主義"あるいは"無神論"あるいは"科学主義"あるいは"ダーウィニズム"あるいは何とでも呼びたい名前)についてすべての議論を沸騰させるものだ。

インテリジェントデザイン仮説を特権的地位に置いて、他の理論にはない、検証を免除される特別の権利を与えるいかなる正当な理由もない。彼らの仮説が、それがいかなるものであるにせよ、いかなる仮説であっても通過すべき検証過程を通らなくてよいという理由を私はまったく思いつかない。もし彼らの"仮説"が、他のすべての仮説が通過すべき科学的方法を通れないというのなら、それを"科学"主張できない。おしまい。








最終更新:2009年08月22日 01:23