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インテリジェントデザインの神学


インテリジェントデザインには、完璧だが顔の見えない神vs腕が悪いが顔の見える神、アフォデザインと悪の問題、自由意志と必然、神の被造物であることを根拠とする倫理など、キリスト教が持つ神学問題をそのまま持っている

  • 顔の見える神
  • 倫理:「神によって創造された人間という考え方が倫理の基礎」
  • 神義論と悪いデザイン
  • 人間の自由意志と、神の計画による世界

顔の見える神


インテリジェントデザインの神学の根幹は、「神は創造後の宇宙に介入している」である。これは、機械論の登場の頃から、議論されている問題に直面する。それは、「創造後の宇宙に介入しないと、うまく動かないような宇宙しか創造できない、技量が低い神」という問題である。

一方、技量の高い神なら、後から介入する必要はない。そのかわり、創造後の宇宙の住人は神の姿を見ることはない。

インテリジェントデザイン支持者たちは、「顔の見える神」を求めるが、「神の技量は高い」ことを望む。しかし、それは矛盾した要望。



倫理:「神によって創造された人間という考え方が倫理の基礎」


インテリジェントデザインの神学では「神によって創造された人間」という考え方が倫理の基礎となる。
People in America today are deeply concerned about what they see to be a moral meltdown in our country. Many understand that the ethical implications of a purely naturalistic approach to science can be far-reaching. If life is simply an accident, what's wrong with aborting children? Why not euthanize the aged and the handicapped? Why not end the institution of marriage? Why tell the truth? Why not steal or kill? As Fyodor Dostoevsy said: "If there is no God, all things are permissible."

今日の米国に住む人々は、米国における倫理のメルトダウンと見られるものに深く憂慮している。多くの人々は、科学に対する純粋に自然主義的なアプローチの倫理的な意味が、広範囲に及ぶことをわかっています。生命が事故の結果に過ぎないなら、胎児を堕胎して何が悪いのでしょうか?老人や障害者を安楽死させていけない理由があるでしょうか?結婚制度をやめていけない理由があるでしょうか?何故、嘘をついてはいけないでしょうか?何故、盗んだり殺したりしてはいけないのでしょうか?フィヨドル・ドストエフスキーは言いました「もし神がいないなら、あらゆることが許される。」


しかし、その神が「聖書の神であって、善悪を定め、最後の審判などの方法で違反者に懲罰を与える」神でないなら、「倫理」の基礎にはならない。たとえば、以下の前提から、「殺人は罪ではない」という教義に容易にたどりつく。
  1. 超越的な(transcendant)神が存在する。
  2. その超越的な神は慈悲深い
  3. その超越的な神が、魂を創造して、人間が誕生したときに吹き込む



Richard Weikartが、そしてDiscovery Instituteが、人間の尊厳を保証するものとして、これに対置するのが「神の似姿で神によって創造された人間」という命題である。これは、Discovery Instituteのアジェンダである Wedge Document に記載されている。

しかし、「神の似姿で神によって創造された人間」という命題は、本当に「人間の尊厳を保証する」のだろうか? それは「近縁種がすべて絶滅しているために、ホモ・サピエンス・サピエンスが他の動物から隔絶した種になっている」という進化生物学的な僥倖と同等の僥倖によって確固たる保証に見えているだけではないのか?

Kumicitが悪魔なら、人間と寸分違わない悪魔人間を創造する。違いは創造主が神ではなく悪魔だというだけ。人間たちは悪魔人間を迷うことなく殺し、善を為したことに満足するだろうか。



神義論と悪いデザイン


神義論あるいは「悪の問題」とは、「慈悲深い全能の神が世界を創造したのに、悪が存在するのはなぜか」という問いに答えを見出そうとする神学の論である。

インテリジェントデザイン"理論"の建前では、デザイナーの属性は"研究"対象外。デザイナーは低能で、愚かで、邪悪であっても構わない。しかし、生物の進化史を引きずった生物器官の構造を大量に挙げられると...


インテリジェントデザイン支持者たちは建前を棄てて、反撃する。そして、勢い余って、「良いデザインはデザイナーによるもので、悪いデザインは進化によるもの」と言ってしまう。


それは、つまるところ、「良いものは神によるもので、悪いものはアダムとイブがリンゴを食べたから」と言っているに等しい。そのようなご都合主義を、Daniel Dennettがダブルスタンダードと批判する。


一方、「悪いデザインは神が意図的に作った」という神学を展開するインテリジェントデザイン支持者もいる。完全なデザインはデザイナーが複数存在するように見えるので、"Common Descent"に見えるように意図的に悪いデザインを作ったのだと。



人間の自由意志と、神の計画による世界



カトリックには「神の制御ではなく神が許した宇宙の膨大な許容量」という立場がある。すなわち、偶然を容認する。

あなたも、人間の自由を否定したくないでしょう。すべてが神によるデザインだとすれば、世界にある悪はどうでしょうか? 悪は人間の自由によるものだと答えるかもしれません。しかし、それでは世界にある津波はどうでしょうか? それについてどう答えますか? ある面、神によるものであり、ある面、神が宇宙の自由を与えて、そのようなことも可能にしました。私はどこにあるかわかりませんが、一筋があります。人間の自由を信じ、予め定められた到達点がないと信じるなら、神の制御ではなく神が許した宇宙の膨大な許容量があると信じられるでしょう。


しかし、インテリジェントデザイン支持者はそのような偶然を容認できない。Thomas Cudworthは次のように書いている:

これには神学的帰結がある。進化が神の制御のもとにないなら、神が地球とその上の居住者のために将来必要なものを与えるという、摂理の概念とは相いれない。たとえば、神はハガル[創世記16章: Abrahamとの間にIshmaelをもうけた女性]が構成員である人類が原始の海から出現することすら保証できないので、ハガルが砂漠で必要とするものを準備できない



インテリジェントデザインの神学では、世界はRPGのようなものであって、大枠のストーリーは定まっていて、その範囲内でプレイヤーキャラに自由意志が許される。

ただし、自由意志には「神が全知な神自身に自由意志はありえない」という歴史の長い神学問題がある。インテリジェントデザイン支持者は、そのあたりは気にしていない。物質世界の外側に魂を用意すれば十分だと思っているようだ。



インテリジェントデザイン支持者は「人生の目的」を次のように、神により決定されるものだと定義している:
If we are just occurrences that result from random and undirected natural processes then we have no inherent purpose. However, if we are the product of design then we have an inherent purpose since all designs have a purpose.

ランダムで方向性のない[神の関与しない]自然の過程によって我々が出現したなら、我々は目的を持たない。しかし、我々がデザインの産物なら、あらゆるデザインには目的があるので、我々には目的があることになる。


もちろん、神を信仰する者のみに適用される論理である。無神論者からみれば...
Meaning in Life - This is the idea that, without belief in a god, life would be meaningless. Even if this were true, it would only prove we wanted a god to exist to give meaning to our lives, not that a god actually does exist. But the very fact that atheists can find meaning in their lives without a belief in a god shows that god belief is not necessary.

人生の意味: これは神への信仰がなければ、人生は無意味だという考えである。これが真だとしても、我々の人生に意味を与えるために我々は神の存在を望んでいるということは証明できるが、実際に神が存在しているかどうかは証明しない。しかし、無神論者は神への信仰を持たずに人生の意味を見出せるので、神への信仰は必ずしも必要ない。



まとめると、世界は神の計画に従って創造され、あらかじめ定められた通りにストーリーが展開し、強制イベントなどにより無理矢理にストーリーが進められる。人間の存在意義や目的は神から与えられ、その範囲内での自由意志を持つ。その自由意志には悪を為すという選択肢が存在しないか、選択するとペナルティがある。

つまりは、インテリジェントデザインの神学が語ることは、「世界はRPGであり、人間はプレイヤーキャラである。プレーヤーとは魂である」














最終更新:2010年05月18日 09:10