Claim CB601.2.3:
South of latitude 52 degrees north, melanism in the peppered moth showed no correlation with sulphur dioxide concentration, and the proportion of dark moths increased there after pollution control was introduced. These observations are inconsistent with Kettlewell's explanation that the spread of the dark moths was caused by natural selection resulting from selective predation.

北緯52度の南側で、オオシモフリエダシャクの工業暗化と二酸化硫黄濃度には相関は認められなかった。そして、汚染規制が導入された後に、あ割合が増加した。これらの観察は、暗い蛾の広がり、選択捕食起因する自然淘汰によって引き起こされたことをケトルの説明と矛盾している。

Source:
Wells, Jonathan, 1999. Second thoughts about peppered moths. , OtherURL
Wells, Jonathan, 2000. Icons of Evolution, Washington DC: Regnery Publishing Inc., pp. 144-146.

Response:
1. Wells (2000, 146) は次のように書いた:

R.C. Steward found a correlation between melanism and the concentration of sulfur dioxide (an airborne pollutant) north -- but not south -- of latitude 52 degrees north.

R.C. Stewardは工業暗化と二酸化硫黄(大気汚染物質)濃度に相関を発見したが、それは北緯52度の南側ではなく、北側だった。

Stewardが工業暗化と二酸化硫黄の相関を北緯52度の南側で見出さなかったというのは、ただの間違いである。イングランドとウェールズに両方、及び北緯52度の南側で暗色の蛾の比率と二酸化硫黄濃度(正確には、その平方根)の相関が極めて有意であることSteward[1977]は発見した。

実際にStewardが観察したことは、イングランドとウェールズに散らばる165地点で、テストした13の要因のうち、二酸化硫黄濃度の平方根が、暗色の蛾の比率と最も有意に相関していたことである。しかし、北緯52度の南側では、最も有意に相関していたのは、二酸化硫黄濃度の平方根ではなく、東西方向の位置だった。

それにもかかわらず、東西方向の位置と二酸化硫黄濃度の平方根は、分析対象に全地点を使っても、北緯52度以南だけを使っても、暗色の蛾の比率と強く相関していることは正しい。

Stewardによれば、これらの観察は、次の結果から導出される推論を支持している。

in the south of Britain non-industrial factors may be of greater importance in determining carbonaria frequency than in the rest of Britain (1977, 239).

ブリテン南部では、その他の地域よりも、非工業要因がcarbonariaの頻度決定において、非常に重要かもしれない。

しかし、ここでの彼の推論は追い難い。イングランド中部及び北部では、工業地帯の大半は西側にあるが、南部ではロンドンに近い東側にある。南西には、全イングランドとウェールズで最も汚染されていない、SomersetとDorsetとCornwaqllとDevon郡がある。さらに、北部と中部では、卓越した南西の風が大気汚染物質を遠くと東方に運ぶ。もし、Kettlewellの説明が有効なら、暗色の蛾の比率は、東西方向の位置の強く相関し、北部に比べて南部では、二酸化硫黄とはそれほど強く相関しないことは、驚くに値しない。

Stewardに疑わしい論を額面通りに引用するだけでは満足せず、Wells[2000, 146]はひどい引用を行っている。

Steward concluded that "in the south of Britain non-industrial factors may be of greater importance" than camouflage and bird predation.

Stewardは、カモフラージュと鳥による捕食よりも、「非工業要因がブリテン南部では大きく重要であるかもしれない」と結論した。

これは明らかに、Stewardが非工業要因とカモフラージュ及び鳥による捕食を比較したかのように誤った提示を行っている。実際にはStewardは非工業要因を南部と北部で比較している。

Wellsが引用符を省略していれば、結果としての関節引用はおそらく、Stewardが以前の論文[1977, 238]で述べたこととして、正当化できたかもしれない:

The results suggest that, although selective predation may have an important secondary effect on carbonaria frequency, it is not the major factor determining frequencies at these sites.

結果は、選択的捕食はcarbornariaの頻度に重要な2次的効果を持っていたかもしれないが、これらの地点での頻度決定の主要な要因ではないことを示唆している。

「These sites (これらの地点)」は52地点を指し、うち48が北緯52度より南に位置しており、そこは捕食率に対するカモフラージュの効果を研究した場所である。また、「the results(その結果)」は、カモフラージュの効果についての研究の結果を指しており、工業暗化と他の要因の相関研究の結果を指すものではない。

それにもかかわらず、このStewardによる一時的な示唆は、正当化できない。Mani[1990]は、オオシモフリエダシャクの3つの変種の観察された相対比率が、実験的に求められた視覚捕食率と移動と、フィールドデータから推定された視覚以外の選択の強さを使って説明できる[ CB601.2.2 のResponse参照]。


2. この主張が言及している、暗色の蛾の比率の増大は、科学論文として説明が提示されていない現象である。Bishop and Cook [1980, 398]はただ「理由は不明確である」と書いた。しかしながら、如何に記述するクラインダイナミックスによる説明がとても尤もらしい(ただし、憶測的である)。

問題となっている増大は、まずLees and Creed [1975, 71, 78]によって指摘された。彼らは、北西に向かって並ぶラインの南西部の多くの地点は、おおよそロンドン南部からウェールズ北東部に並んでいて、暗色の蛾の比率が1950年代から1970年代まで増大している一方で、このラインの北東部では減少していることを指摘した。増大域と減少域の境界線はWells[2000,145]が主張した北緯50度の同じラインではなかったことに注意しよう。これは、この主張の最初の部分に関連して、上での議論した現象に関するものだった。増大あるいは減少の大半はとても小さいものだった。Lees and Creedは、孤立していると考えられる、大半の地点では統計的に有意ではなかったと述べている。しかし、個々の地点の結果をひとつにまとめると、全体では、このラインの南西で純増となり、北東で純減となっていて、これらの結果は非常に有意だった。

CB601.2.2 のResponseで述べたように、イングランドとウェールズの大半の領域のオオシモフリエダシャクは、連続したクライン、すなわち、場所から場所へと構成比率が変わっていく広い領域に生息する集団を形成する。1950年代終わりに導入された汚染規制が始まったときには、イングランド南西部とウェールズから、イングランド北東部とEast Angliaに広がるクラインは平衡状態になかった可能性が高い。もしそうなら、暗色の蛾の比率はクラインの多くの部分で増大する。ここで第一の重要な点は、この暗色の蛾の増加へと向かう非平衡状態が、汚染規制の導入から程遠くない時期に始まり、すぐには消えていなかったことである。したがって、暗色の蛾の比率は非平衡がゼロになるまでの短期間は増大し続けた。個体数比率は、一時平衡状態を超えて逆方向の非平衡へと移行した。集団内の暗色の蛾の比率は、その後に減少を始めた。

第2に需要な点は、様々な地点が同時に一時的平衡状態を通過したという理由はない。Lees and Creedの観察[op. cit.]は、境界線の北東側の集団はデータを取得した時期の終わりには平衡状態を通過していたが、南西側はまだ通過していなかったことを示しているようである。

この説明は未だ憶測だが、これは決して不自然ではなく、少なくとも部分的には検証可能である。 CB601.2 CB601.2.1 CB601.2.2 のResponsesで参照したMani[1982, 1990]の数理モデルは、現在の形では、Less and Creedが記述した現象に見られる頻度変化を再現するには、十分にセンシティブではない。しかしながら、もし上で提唱した説明が正しければ、Maniの数理モデルのひとつに尤もらしい修正を加えることで再現するようにできるだろう。したがって、もし、再現できるようなManiの数理モデルのどれかを修正するバージョンを見出せないなら、提唱された説明は証明されない。逆に、そのような修正モデルで、観察された頻度変化が再現できれば、この説明に(確かに、かなり弱い)支持を与えるだろう。


References:
  1. Lees, D. R. and E. R. Creed, 1975. Industrial melanism in Biston betularia: the role of selective predation. J. Anim. Ecol. 44: 67-83.
  2. Mani, G. S., 1982. A theoretical analysis of the morph frequency variation in the peppered moth over England and Wales. Biol. J. Linn. Soc. 17: 259-267.
  3. Mani, G. S., 1990. Theoretical models of melanism in Biston betularia -- a review. Biol. J. Linn. Soc. 39: 355-371.
  4. Steward, R. C., 1977. Industrial and non-industrial melanism in the peppered moth, Biston betularia (L.), Ecological Entomology 2: 231-243.

Further Readings:
  1. Grant, Bruce S., 1999. Fine tuning the peppered moth paradigm. Evolution 53(3): 980-984.







最終更新:2013年05月02日 23:13