Claim CB601.2.4:
In the Wirral Peninsula, East Anglia and Michigan, the proportions of light moths increased before any lichens had reappeared on the trees. This is a serious problem for the theory that industrial melanism is due to cryptic coloration and selective predation.

Wirral PeninsulaとEast AngliaとMichiganでは、地衣類が再び樹木に戻ってくる前に、明色の蛾の比率の増加した。工業眼下が保護色と選択捕食によるものだという理論に対する重大な問題である。

Source:
Wells, Jonathan, 1999. Second thoughts about peppered moths. , OtherURL
Wells, Jonathan, 2000. Icons of Evolution, Washington DC: Regnery Publishing Inc., pp. 146-148.

Response:
1, この主張の結論は、以下の2つの理由により不合理である。

a. 暗色の蛾が工業地帯で良いカモフラージュになるのは、樹木の表面に地衣類がないことだけが理由ではなく、樹木の表面が煤と煙で暗色したことも理由である。汚染規制が導入されたとき、重度汚染工業地帯の樹木の表面はすぐに明色になった[Bishop and Cook 1975, 92-93]。これらの地域では、明色の蛾に対して暗色の蛾が選択的優位にあったが、その優位性は以前よりは小さくなっており、明色の蛾が近隣の生息域から流入する効果がをカウンターするだけの十分な優位性ではなくなっていたため、暗色の蛾の比率が減少したと予期できる。

したがって、暗色の蛾の元々の広がりについて、地衣類の消滅が重要な要因だったとしても、暗色の蛾の比率の回復に対して地衣類の再登場が先行しなければならない良い理由は存在しないようである。

b. 汚染規制の導入後、地衣類が豊富に残っている田園地帯と地衣類のない工業地帯の境界領域に、まず、地衣類の生息地域が拡大することが予期される。したがって、明色の蛾の比率は、この領域でまず増大し、工業地帯に近い領域では、それから少し後に、移動が卓越したときに、比率が増大する。

したがって、ある場所での地衣類の回復が、まだ地衣類の回復していない別の場所での暗色の蛾の増大に間接的に影響を及ぼすことは、まったく可能である。確かに、1960年代終わりから1970年代初頭(以下参照)におけるWirralでの暗色の蛾の比率の増大に寄与した要因であることを示す観察的証拠がある。


2. 暗色の蛾の比率の増大が、地衣類の回復より前に始まったという主張は、たった一つの地域にだけ言及した逸話的証拠に基づくため、その他の地域には関係がない[Clarke et al. 1985, 191-193]か、詳細不明で有意性の検証が困難である[Kettlewell 1973, 151; Clarke et al. 1985, 193; Grant and Howlett 1988, 231; Grant et al. 1995, 1996, 355-356]。さらに、WirralとEast Angliaでは、この主張に反する直接的な観察証拠がある。

ブリテンでの明色のオオシモフリエダシャクの比率の増大の兆候は、まずWirral PenisulaにあるCaldyでのClarke and Sheppard [1966]によって得られた。増大は1962~1963年に始まっており、それは1956年のClear Air Act(大気清浄化法)の成立から6~7年後のことだった。

West Yorkshireの都市部に固着地衣Lecanora muralisが回復したのが1969~1977年の間だったことを、Henderson-Sellers and Seaward [1979]が記録した。彼らは、所与の場所で回復が起きるのは、そこの二酸化硫黄濃度が120 μg m-3を下回ってから約5年後であり、研究期間では回復の速度は平均23km2/年であることを発見した。研究開始時点で既に地衣類は100m2に生息しており、これは1960年代始めには地衣類の回復が起きてたことを示している。L. muralisがオオシモフリエダシャクの保護において重要な種でない期間も(それは石の上で生息しているので)、L. conizaeoidesのような大気汚染に抵抗力のある近接種が同様に振るまって、影響力を及ぼす重要な種となっており、これを裏付ける証拠が存在する。

1960年代終わりに、ブリテン南部で樹木の表面に苔や地衣類が出現した地域を、Hawksworth and Rose [1970]がマップに記録した。このマップは、Wirral Peninsula全域と、Deeデルタ対岸(南西側の河岸)の10km幅の領域が、分類スケールスコア0〜2で、地衣類に覆われていたことを示している。おおよそ、このスケールスコアが大きいほど、より汚染に弱い地衣類が多く存在している。カテゴリ0〜2は、分類2のゾーンの樹木の根元に、灰緑色のL. conizaeoides以外の地衣類が存在しないことに対応する。しかし、Bishop et al. [1975]の測定は、1975年までに地衣類は、Deeデルタ南東でカテゴリ3に、北東でカテゴリ4に回復していたことを示している。カテゴリ3のゾーンは、L. conizaeoidesが木の幹に及んでいて、根元にはLepraria incanaのような種が存在している。カテゴリ4のゾーンでは、低木状の地衣類が一部の樹木の根元に見られる。

これらの観察は、明色の蛾がWirral Peninsulaで増加し始めた後で開始されたが、「there has been little change in the lichen situation in N Wales in the last 30 years (過去30年でウェールズ北部の地衣類の状況はほとんど変化していない)」というWynneの印象[Clarke et al. 1985, 193]と矛盾している。したがって、Hawksworth and Roseがマップを描いた後に、Bishop et al.[1975]が記録した地衣類の生息状況の変化が始まったと考える良い理由はない。

Kettlewell [1973, 124]は、イングランド東部全域とEast Angliaの一部の、田園地帯の多くの場所を1954年に調査したとき、ヨークシャー南部では地衣類の生えた樹木はなかったと述べている。しかし、Hawksworth and Rose's [1970]のマップは、1970年までにEast Angliaの大半が彼らのスケールでスコア6〜7に、北東沿岸の多くの場所でスコア8になっていたことを示している。これらのゾーンでは、低木状から苔状までの様々な地衣類で樹木がおおわれている。これは、「in the virtual absence of these lichens(事実上、これらの地衣類がいない)」状況で、East Angliaでの明色の蛾の回復が起きたというHowlettの観察と矛盾する[Grant and Howlett 1988, 231)]。

さらなる研究によって、これらの矛盾が解決するまでは、地衣類の再登場前に明色のオオシモフリエダシャクが増加し始めたと言うには、不当である。

References:
  1. Bishop, J. A. and L. M. Cook, 1975. Moths, melanism and clean air. Scientific American 232: 90-99.
  2. Bishop, J. A., L. M. Cook, J. Muggleton and M. R. D. Seaward, 1975. Moths Lichens and Air Pollution along a Transect from Manchester to North Wales. J. App. Ecol. 12: 83-98.
  3. Clarke, C. A., G. S. Mani and G. Wynne, 1985. Evolution in reverse: clean air and the peppered moth. Biol. J. Linn. Soc. 26: 189-199.
  4. Clarke, C. A. and P. M. Sheppard, 1966. A local survey of the industrial melanic forms in the moth Biston betularia and estimates of the selective values of these in an industrial environment. Proc. R. Soc. Lond.(B) 165: 424-439.
  5. Grant, Bruce and Rory J. Howlett, 1988. Background selection by the peppered moth (Biston betularia Linn.): Individual differences. Biol. J. Linn. Soc. 33: 217-232.
  6. Grant, Bruce, Denis F. Owen and Cyril A. Clarke, 1995. Decline of melanic moths. Nature 373: 565.
  7. Grant, B.S., D.F. Owen and C. A. Clarke, 1996. Parallel rise and fall of melanic peppered moths in America and Britain. J. Hered. 87: 351-357.
  8. Hawksworth, D. L. and F. Rose, 1970. Qualitative scale for estimating sulphur dioxide air pollution in England and Wales using epiphytic lichens. Nature 227: 145-148.
  9. Henderson-Sellers, A. and M. R. D. Seaward, 1979. Monitoring lichen reinvasion of ameliorating environments. Environ. Pollut. 19: 207-213.
  10. Kettlewell, Bernard, 1973. The Evolution of Melanism. Oxford University Press, London.

Further Readings:
  1. Grant, Bruce S., 1999. Fine tuning the peppered moth paradigm. Evolution 53(3): 980-984.







最終更新:2013年05月03日 08:30