そして2人は殺し合いに乗った ◆76I1qTEuZw
“それは汚い仕事だ。故に紳士にしか務まらない”
僕はそう教えられ、そう信じてきた。
僕はそう教えられ、そう信じてきた。
たくさんの人を裏切り、時に見捨ててきた。
たくさんの人を悲しませ、時に殺してきた。
たくさんの人を悲しませ、時に殺してきた。
僕は祖国を愛し、もう1つの祖国も愛してきた。
僕は祖国に尽くし、もう1つの祖国にも尽くしてきた。
僕は祖国に尽くし、もう1つの祖国にも尽くしてきた。
僕は2つの祖国を愛す。2つの祖国が愛してくれなくても。
僕は2つの祖国に尽くす。2つの祖国がそれに応えてくれなくても。
僕は2つの祖国に尽くす。2つの祖国がそれに応えてくれなくても。
しかし――なぜこうなる?
どうして――こんなことになる?
どうして――こんなことになる?
運命の女神よ。
このとびきりの阿婆擦れよ。
このとびきりの阿婆擦れよ。
僕は負けない。
どのような手段をとってでも。
どのような手段をとってでも。
さあ考えろ。
考えろ。
考えろ。
考えろ。
考えろ。
やがて銃声は鳴る。
* * *
――眼鏡をかけた30代半ばの男性が、川を挟んで建つビルの屋上から、全てを見ていた。
向こうから感づかれないよう身を伏せ、長細い筒を片目に当て、一連の事態を全て見ていた。
路上で無防備に食事を始めようとする少女。
その少女に銃を向けた男。
その2人の間に割って入ったメイド服の女性。
向こうから感づかれないよう身を伏せ、長細い筒を片目に当て、一連の事態を全て見ていた。
路上で無防備に食事を始めようとする少女。
その少女に銃を向けた男。
その2人の間に割って入ったメイド服の女性。
「これは、分かりやすい構図だね」
その男・トラヴァス少佐は、まるで街中でカップルの痴話喧嘩を目撃した程度の、何でもない口調で呟いた。
何やら言葉を交わした後、白い男が再び銃を女たちに向け、下ろし、そして空中に飛び上がる。
まるで重力を無視したその動きに、トラヴァス少佐はしかし、少し芝居がかかった驚きの声を上げたのみで、
何やら言葉を交わした後、白い男が再び銃を女たちに向け、下ろし、そして空中に飛び上がる。
まるで重力を無視したその動きに、トラヴァス少佐はしかし、少し芝居がかかった驚きの声を上げたのみで、
「ほう……。
あれは“魔法遣い”、なのかな。
僕と違って“名前だけ”じゃないようだけども」
あれは“魔法遣い”、なのかな。
僕と違って“名前だけ”じゃないようだけども」
そのまま観察を続ける。
路地に残された女性が、何やら箱のようなものを少女の前に置く。
視線を移せば、襲撃しようとした男はそのまま市街地の上空を飛んでいく。
その影が百貨店の屋上に着地したのを見届けて、
路地に残された女性が、何やら箱のようなものを少女の前に置く。
視線を移せば、襲撃しようとした男はそのまま市街地の上空を飛んでいく。
その影が百貨店の屋上に着地したのを見届けて、
「最初の“ターゲット”は、あちらにするか。“魔法遣い”なら、“これ”も使えるかもしれないしね」
トラヴァス少佐は手元に置かれたデイパックを、ぽん、と叩く。
普段どおりの軽い微笑を浮かべたまま、トラヴァス少佐は動き出した。
普段どおりの軽い微笑を浮かべたまま、トラヴァス少佐は動き出した。
* * *
商業施設の集まる市街地の一角に、その百貨店は建っていた。
屋上には、少し時代に取り残された感のある遊戯設備の数々が並ぶ。
ワンコインで動くパンダや象の遊具がある。色褪せたぬいぐるみたちを抱え込んだUFOキャッチャーがある。
広い屋上の一角は柵と古タイヤに囲まれて、ささやかなゴーカート用のコースとなっていた。
暗がりの中に不気味な影を落とすそれらを眺め回し、純白の衣装に身を包んだ男は奇妙な韻で呟いた。
屋上には、少し時代に取り残された感のある遊戯設備の数々が並ぶ。
ワンコインで動くパンダや象の遊具がある。色褪せたぬいぐるみたちを抱え込んだUFOキャッチャーがある。
広い屋上の一角は柵と古タイヤに囲まれて、ささやかなゴーカート用のコースとなっていた。
暗がりの中に不気味な影を落とすそれらを眺め回し、純白の衣装に身を包んだ男は奇妙な韻で呟いた。
「“あの街”で拠点を構えたのも、こんな場所だったね、マリアンヌ……」
口にしてからようやく、普段の“相方”の不在に気づいたらしい。
彼はハッとした表情を一瞬だけ浮かべ、軽く首を振る。
1人でもやるのだ、そんな決意を笑みで覆い隠し、フリアグネは確認するように言葉を紡ぐ。
彼はハッとした表情を一瞬だけ浮かべ、軽く首を振る。
1人でもやるのだ、そんな決意を笑みで覆い隠し、フリアグネは確認するように言葉を紡ぐ。
「うふふ、こういう場所ならば、マネキンや人形には事欠かないからね。
数多の自在法が封じられた今、大した“燐子”も作れまい。
“燐子”を爆弾と化す『ダンスパーティ』のない今、さほどの戦力にもなるまい。
それでも『万条の仕手』ほどの者を相手にせねばならぬ現状では、兵隊は多いに越したことはないからね」
数多の自在法が封じられた今、大した“燐子”も作れまい。
“燐子”を爆弾と化す『ダンスパーティ』のない今、さほどの戦力にもなるまい。
それでも『万条の仕手』ほどの者を相手にせねばならぬ現状では、兵隊は多いに越したことはないからね」
ただ無闇に危険から逃れてきただけではない、と言わんばかりの笑顔で両手を広げた彼は、次の瞬間、
微かな風切り音を、聞いた。
聞こえた時には、その美しく整った顔の右頬に、浅い傷が生まれていた。
聞こえた時には、その美しく整った顔の右頬に、浅い傷が生まれていた。
* * *
「……損害確認。初弾はクリーンヒットせず。
しかしこれで、この銃のクセは分かった。サイレンサーも高性能だし、いい銃だ。
“フルート”とか言ったかな? できれば持ち帰って、皆にも撃たせてやりたいものだね」
しかしこれで、この銃のクセは分かった。サイレンサーも高性能だし、いい銃だ。
“フルート”とか言ったかな? できれば持ち帰って、皆にも撃たせてやりたいものだね」
先ほどまで望遠鏡代わりにしていた狙撃用スコープ越しに 白い男を眺めながら、トラヴァス少佐は呟く。
その手に構えた組み立て式のライフル(正確にはパースエイダー)の銃口から、うっすら煙が上がっている。
何が起こったのか咄嗟には理解できない様子の男を、なおも射程に収めたまま、彼は再び集中力を高める。
その手に構えた組み立て式のライフル(正確にはパースエイダー)の銃口から、うっすら煙が上がっている。
何が起こったのか咄嗟には理解できない様子の男を、なおも射程に収めたまま、彼は再び集中力を高める。
「先ほどの着弾のズレを補正してやると、狙いはこんなところ、か……。
頼むぞ。次の一発が勝負だ」
頼むぞ。次の一発が勝負だ」
そして、彼は再びその引き金を引いた。
* * *
「……狙撃、だと?!
“気配”はなかったはず……っは!?」
“気配”はなかったはず……っは!?」
一言呟いて、フリアグネは己の勘違い、心得違いを理解する。
そうだ。フリアグネたちにとって普段感じている気配は、『この場』においては極めて限定されたモノなのだ。
そうだ。フリアグネたちにとって普段感じている気配は、『この場』においては極めて限定されたモノなのだ。
通常、“紅世の徒”やフレイムヘイズは、互いの気配を感じながら戦う。
“紅世”に関わる者同士の、共感覚にも近い感覚。世界にとって異質なモノが混じった、違和感に近い感触。
いかに気配遮断の自在法をかけていても、近距離では“徒”もフレイムヘイズもその“気配”を隠しきれない。
そしてその“気配”に含まれる、僅かな動きの予兆や、“存在の力”の集中の様子をいかに捉えるか。
“気配”に含まれる“殺し”の流れをいかに捉えるか。
そういった感覚こそが、“徒”やフレイムヘイズにとって最も重要な技術であり、強さなのだった。
“紅世”に関わる者同士の、共感覚にも近い感覚。世界にとって異質なモノが混じった、違和感に近い感触。
いかに気配遮断の自在法をかけていても、近距離では“徒”もフレイムヘイズもその“気配”を隠しきれない。
そしてその“気配”に含まれる、僅かな動きの予兆や、“存在の力”の集中の様子をいかに捉えるか。
“気配”に含まれる“殺し”の流れをいかに捉えるか。
そういった感覚こそが、“徒”やフレイムヘイズにとって最も重要な技術であり、強さなのだった。
けれどもそれは、基本的に対“徒”、あるいは、対フレイムヘイズ用の技術。
相手が『万条の仕手』でもない限り、人間、それも遠距離の相手を前に頼れる感覚ではない!
もちろん常であれば、ただの人間・ただの銃など“紅世の徒”の敵ではない。
破壊力の面から言っても脅威ではないし、封絶を張ってしまえば一瞬で勝利が確定する。
だが、今のこの状況では――数多の自在法が封じられた、常ならざる今は――!
相手が『万条の仕手』でもない限り、人間、それも遠距離の相手を前に頼れる感覚ではない!
もちろん常であれば、ただの人間・ただの銃など“紅世の徒”の敵ではない。
破壊力の面から言っても脅威ではないし、封絶を張ってしまえば一瞬で勝利が確定する。
だが、今のこの状況では――数多の自在法が封じられた、常ならざる今は――!
「……っ!」
しかし実際には、そんなことを考えている余裕すら、本当は無いのだった。
驚愕と思索に費やしたほんの数秒の間に、再びの風切り音。
音とほぼ同じ速度で飛んでくるライフルの弾丸は、音を認識してから反応していては間に合いはしない。
それでも、
驚愕と思索に費やしたほんの数秒の間に、再びの風切り音。
音とほぼ同じ速度で飛んでくるライフルの弾丸は、音を認識してから反応していては間に合いはしない。
それでも、
「き」
刹那の間に身をよじろうとして、だがそれさえも遅かったことを嫌でも悟らざるをえず、
「っ」
銃弾が、そんな彼の肩を掠めるように飛び去っていった。
肩にかけていたデイパック、その肩紐が片方、はじけ飛ぶ。
――それだけだ。
それだけ、だった。
肩にかけていたデイパック、その肩紐が片方、はじけ飛ぶ。
――それだけだ。
それだけ、だった。
「……っははは!!」
2発目も外れた。
フリアグネの回避の結果ではない、純粋に狙撃手側の要因によって、当たらなかった。
おそらくは一方的な狙撃が出来る最後の機会にも、“敵”の弾は彼の身体を捉えられなかったことになる。
慣れない銃のせいか、それとも緊張のせいなのか。
この絶好の機会に、“敵”は、当てることができなかったのだ。
フリアグネの回避の結果ではない、純粋に狙撃手側の要因によって、当たらなかった。
おそらくは一方的な狙撃が出来る最後の機会にも、“敵”の弾は彼の身体を捉えられなかったことになる。
慣れない銃のせいか、それとも緊張のせいなのか。
この絶好の機会に、“敵”は、当てることができなかったのだ。
その意味を理解し、フリアグネは緊張の面持ちから一転、哄笑を上げる。
笑いながらも落下しかけたデイパックを掴み、拳銃を片手に跳躍する。いや飛翔する。
1発目の時には、どこから撃たれていたのかも分からなかった。
しかし2発も撃たれれば流石に分かる。発射音が聞こえなくても分かる。
百貨店の屋上を飛び出し、眼下に広がる深夜の市街地。
百貨店と大通りを挟んでそびえる、商業ビルの屋上。
……いた。
ライフルを構えた男が、そこにいた。
笑いながらも落下しかけたデイパックを掴み、拳銃を片手に跳躍する。いや飛翔する。
1発目の時には、どこから撃たれていたのかも分からなかった。
しかし2発も撃たれれば流石に分かる。発射音が聞こえなくても分かる。
百貨店の屋上を飛び出し、眼下に広がる深夜の市街地。
百貨店と大通りを挟んでそびえる、商業ビルの屋上。
……いた。
ライフルを構えた男が、そこにいた。
「“気配”などに頼らずともね……見えてさえいれば、人間如きに負けはしないのだよ!」
調律が狂ったような独特の口調で、フリアグネは嘲笑う。拳銃を片手に哂う。
脆弱な人間に対する絶対の勝算をもって、そのままの勢いで上空から襲い掛かろうとして、
脆弱な人間に対する絶対の勝算をもって、そのままの勢いで上空から襲い掛かろうとして、
* * *
「……ここまで計算通りだと、申し訳なくなってくるな」
トラヴァス少佐は眼鏡の奥の目を軽く細めながら、一見無造作にも見える動きで銃口を動かした。
先ほどの狙撃とは一転、ほとんど狙いをつける間もない状況だったが、しかしその狙いは実に正確だった。
軽く引き金が引かれる。
消音器を駆け抜けた弾丸が気の抜けたような音を立てる。
そしてその弾丸は、トラヴァス少佐の狙い通りの軌道を描き、飛んでいった。
空中から今まさに襲い掛からんとしていた純白のスーツの男は、間の抜けたような表情で、
先ほどの狙撃とは一転、ほとんど狙いをつける間もない状況だったが、しかしその狙いは実に正確だった。
軽く引き金が引かれる。
消音器を駆け抜けた弾丸が気の抜けたような音を立てる。
そしてその弾丸は、トラヴァス少佐の狙い通りの軌道を描き、飛んでいった。
空中から今まさに襲い掛からんとしていた純白のスーツの男は、間の抜けたような表情で、
「……っは?!」
反撃のタイミングを逸し、そのままトラヴァス少佐の居るビルの屋上に、落下した。
* * *
「……うふふ。これはどういうつもりなのかな?」
「おそらく、貴方が思っている通りの意味ですよ」
「おそらく、貴方が思っている通りの意味ですよ」
3発目の銃弾が放たれ、フリアグネが着地してから、たっぷり5秒ほどの沈黙の後。
奇妙な韻に僅かに苛立ちと怒りを滲ませた問いに、どこか慇懃無礼な響きのある答えが返された。
奇妙な韻に僅かに苛立ちと怒りを滲ませた問いに、どこか慇懃無礼な響きのある答えが返された。
あの瞬間――空中にあったフリアグネが、撃たれたか、と思ったあの瞬間。
一瞬、被弾すら覚悟したその弾丸は、彼の肩を掠めて飛び去ったのだった。
3発続けての、命中弾なし。
普通に考えれば、狙撃手の技量不足としか思えない結果だ。
そう、ただ外しただけであったのなら、こんな質問などする間も置かず、襲い掛かって殺していただろう。
一瞬、被弾すら覚悟したその弾丸は、彼の肩を掠めて飛び去ったのだった。
3発続けての、命中弾なし。
普通に考えれば、狙撃手の技量不足としか思えない結果だ。
そう、ただ外しただけであったのなら、こんな質問などする間も置かず、襲い掛かって殺していただろう。
しかし。
3発目の軌道は、しかし、相互の位置関係が大きく変化していたにも関わらず。
2発目と全く同じ、フリアグネの右肩を軽く掠める“だけ”の位置を、貫いていたのだった。
3発目の軌道は、しかし、相互の位置関係が大きく変化していたにも関わらず。
2発目と全く同じ、フリアグネの右肩を軽く掠める“だけ”の位置を、貫いていたのだった。
フリアグネの右肩を掠めるように疾走った、2発の弾丸。
純白のスーツに残されたのは、綺麗に重なり1本にしか見えない、破れた筋。
銃器の扱いには疎いフリアグネにも、その意味ははっきり分かる。
目の前の男は……この、優男と評しても良さそうな容貌の、眼鏡をかけた男は。
純白のスーツに残されたのは、綺麗に重なり1本にしか見えない、破れた筋。
銃器の扱いには疎いフリアグネにも、その意味ははっきり分かる。
目の前の男は……この、優男と評しても良さそうな容貌の、眼鏡をかけた男は。
「お気づきの通り、同じ場所をあえて狙ったのですよ。
あえて、貴方の身体に当てなかったのですよ。
もし私がその気なら、どちらも貴方の頭の中心に当てることが可能でした。
1発目はまだ銃のクセを掴みきれていなかったので、少し逸れてしまいましたが」
あえて、貴方の身体に当てなかったのですよ。
もし私がその気なら、どちらも貴方の頭の中心に当てることが可能でした。
1発目はまだ銃のクセを掴みきれていなかったので、少し逸れてしまいましたが」
大したことでもないかのように淡々と語るが、しかし、冷静に考えれば、その意味する所はとんでもない。
ぶつけ本番で、たった1発の試射だけで、この精密射撃。
そしてその1発目さえも、決して直接当てず、さりとて、無視できないあたりを掠めるように撃ち抜いている。
内心の微かな動揺を抑えつつ、フリアグネはこの男の技量を賞賛する。
ぶつけ本番で、たった1発の試射だけで、この精密射撃。
そしてその1発目さえも、決して直接当てず、さりとて、無視できないあたりを掠めるように撃ち抜いている。
内心の微かな動揺を抑えつつ、フリアグネはこの男の技量を賞賛する。
「なるほど、この私を相手に、やるものだね。ただの人間のくせに」
「ええ、ただの人間の、確かな技術です。
そういう貴方は、やはり“ただの人間”ではないようですね。童話などに登場する“魔法遣い”か何かですか?
……あ、申し遅れました。私はトラヴァス、少佐の階級を持つ軍人です」
「魔法使いか。
うふふ、人の世ではそのように呼ばれていた時代もあったね。
“紅世の徒”、それが“紅世”から渡り来た“我ら”の名。
“紅世の王”、それが“徒”の中でも特に強き者に贈られる名。
そして“フリアグネ”、それが“紅世の王”として知られる私の名だ」
「フリアグネ、ですか。
いえ、まがりなりにも王であらせられる以上、“フリアグネ様”、とお呼びした方が良いのでしょうかね」
「ええ、ただの人間の、確かな技術です。
そういう貴方は、やはり“ただの人間”ではないようですね。童話などに登場する“魔法遣い”か何かですか?
……あ、申し遅れました。私はトラヴァス、少佐の階級を持つ軍人です」
「魔法使いか。
うふふ、人の世ではそのように呼ばれていた時代もあったね。
“紅世の徒”、それが“紅世”から渡り来た“我ら”の名。
“紅世の王”、それが“徒”の中でも特に強き者に贈られる名。
そして“フリアグネ”、それが“紅世の王”として知られる私の名だ」
「フリアグネ、ですか。
いえ、まがりなりにも王であらせられる以上、“フリアグネ様”、とお呼びした方が良いのでしょうかね」
尊大さを隠そうともしないフリアグネの言葉に、トラヴァス少佐、と名乗った男は嫌な顔1つしない。
それどころか、真顔でフリアグネを立てるかのような言葉遣いをしてくる。
これには流石のフリアグネもその整った顔をしかめて、
それどころか、真顔でフリアグネを立てるかのような言葉遣いをしてくる。
これには流石のフリアグネもその整った顔をしかめて、
「うふふ、おべんちゃらなら、いらないよ。
それよりも、私の聞きたいことの半分しか答えて貰っていないのだけどね」
「と、おっしゃいますと?」
「君は、わざと外したと言ったね。
それが君の技量に裏打ちされたものだ、というのも、まあ理解した。
けれども、その背景……“なぜ、そんなことをしたのか”。これを答えてくれていないよ」
「ああ、そんなことですか」
それよりも、私の聞きたいことの半分しか答えて貰っていないのだけどね」
「と、おっしゃいますと?」
「君は、わざと外したと言ったね。
それが君の技量に裏打ちされたものだ、というのも、まあ理解した。
けれども、その背景……“なぜ、そんなことをしたのか”。これを答えてくれていないよ」
「ああ、そんなことですか」
言わねば殺す。つまらぬことを言っても殺す。
そんな殺気を柳と流し、トラヴァス少佐は軽く微笑みすら浮かべ、静かな口調で“答え合わせ”に応じた。
「ではお答えしましょう、フリアグネ様。
全てはこうして、交渉する余地を作るため。
そしてあわよくば、この私と“共闘”して頂けないだろうか、と思ってのことです。
現にこうして、私の話を聞いて頂けてますしね」
そんな殺気を柳と流し、トラヴァス少佐は軽く微笑みすら浮かべ、静かな口調で“答え合わせ”に応じた。
「ではお答えしましょう、フリアグネ様。
全てはこうして、交渉する余地を作るため。
そしてあわよくば、この私と“共闘”して頂けないだろうか、と思ってのことです。
現にこうして、私の話を聞いて頂けてますしね」
* * *
「これは、幸運もあったのですが……
私はここから、フリアグネ様が他の参加者と接触している様子を、目撃していたのです。
ええ。法衣らしきものを着た少女と、メイド服を着たあの女性です。
流石にこの距離です。声も聞こえませんし唇も読めませんでしたが、しかし十分でした。
貴方が“優勝”を目指していると、十分に理解できました。
そして貴方が慎重な性格で、興味さえ惹ければ会話は可能だ、ということも」
私はここから、フリアグネ様が他の参加者と接触している様子を、目撃していたのです。
ええ。法衣らしきものを着た少女と、メイド服を着たあの女性です。
流石にこの距離です。声も聞こえませんし唇も読めませんでしたが、しかし十分でした。
貴方が“優勝”を目指していると、十分に理解できました。
そして貴方が慎重な性格で、興味さえ惹ければ会話は可能だ、ということも」
「マリアンヌ? なるほど、そのお方のために最後の1人の座を得たい、ということですか。
お気持ちはよく分かりますよ。私にも、この命に替えてでも生きて帰したい、愛する者がいますから。
私の場合、私自身の生き残りではなく、その“愛する者”の生き残りを図ることになります。
……ああ、名前はまだ勘弁して下さい。
フリアグネ様と共同戦線を張りたいとは思っていますが、しかし人質などにされたらたまらないので」
お気持ちはよく分かりますよ。私にも、この命に替えてでも生きて帰したい、愛する者がいますから。
私の場合、私自身の生き残りではなく、その“愛する者”の生き残りを図ることになります。
……ああ、名前はまだ勘弁して下さい。
フリアグネ様と共同戦線を張りたいとは思っていますが、しかし人質などにされたらたまらないので」
「しかし、その“マリアンヌ”嬢は、この殺し合いの場には本当にいらっしゃらないのでしょうか?
……もし居れば“紅世の徒”の感覚で分かるはず? 自分が作った“燐子”だから?
詳しい理屈は私には分かりませんが、しかしそれも、“常ならば”、でしょう?
フリアグネ様ご自身が“名簿に名のない10人”の1人だったように、可能性はあると思いますよ」
……もし居れば“紅世の徒”の感覚で分かるはず? 自分が作った“燐子”だから?
詳しい理屈は私には分かりませんが、しかしそれも、“常ならば”、でしょう?
フリアグネ様ご自身が“名簿に名のない10人”の1人だったように、可能性はあると思いますよ」
「話が逸れました。フリアグネ様の姿を見かけた所から、でしたね。
ええ、本当に驚きましたよ。
あのメイドがリボンで銃弾を止めたかと思ったら、フリアグネ様は空を飛んだのです。
正直言って、私も、私の愛する者も、とても正攻法で勝てるような相手ではない、と思いました」
ええ、本当に驚きましたよ。
あのメイドがリボンで銃弾を止めたかと思ったら、フリアグネ様は空を飛んだのです。
正直言って、私も、私の愛する者も、とても正攻法で勝てるような相手ではない、と思いました」
「しかし、そんな“魔法遣い”2人が、膠着状態に陥ってしまっている。
片方が一時退却を選ばざるを得ないような状況に陥ってしまっている。
これは、チャンスだと思いましたよ。
膠着状態を崩したいのなら、戦力を増強するしかないですからね。
そして戦力増強を図るなら、他者を襲って武器を強奪するか、他者と図って一時的に手を組むか。
普通に考えて、取りうる選択肢はこの2つです。
興味を惹けるだけの“価値”を提示できれば、同盟受諾の可能性は見い出せる。そう判断しました」
片方が一時退却を選ばざるを得ないような状況に陥ってしまっている。
これは、チャンスだと思いましたよ。
膠着状態を崩したいのなら、戦力を増強するしかないですからね。
そして戦力増強を図るなら、他者を襲って武器を強奪するか、他者と図って一時的に手を組むか。
普通に考えて、取りうる選択肢はこの2つです。
興味を惹けるだけの“価値”を提示できれば、同盟受諾の可能性は見い出せる。そう判断しました」
「見たところ、フリアグネ様はこの銃程度なら勝てるおつもりのようですね。
……いえ、違いますか。
“普段通りの実力が発揮できるなら”勝負すら成立させずに一方的な勝ちを収める自信がある、と。
けれども“普段通りの実力が封じられている”今、銃の脅威をどう評価すべきか、計りかねている。
私がもっと攻撃的な態度を取れば危険を冒してでも強攻策を取るけれど、話が通じるなら無理は避けたい。
……どうでしょう? こんなところでは?」
……いえ、違いますか。
“普段通りの実力が発揮できるなら”勝負すら成立させずに一方的な勝ちを収める自信がある、と。
けれども“普段通りの実力が封じられている”今、銃の脅威をどう評価すべきか、計りかねている。
私がもっと攻撃的な態度を取れば危険を冒してでも強攻策を取るけれど、話が通じるなら無理は避けたい。
……どうでしょう? こんなところでは?」
「いえいえ、私は“ただの人間”ですから。
“心を読む自在法”? そんなもの、もちろん使えませんよ。貴方の行動や表情から推理しただけです」
“心を読む自在法”? そんなもの、もちろん使えませんよ。貴方の行動や表情から推理しただけです」
「ええ。銃口を向けられた時の貴方の態度は、実に分かりやすかった。
“これは本気で対応すべきなのか? それとも黙殺してもいいのか?”――そんな迷いが見えましたから。
いくら空を飛べる身とはいえ、あんなに無防備に飛び掛ってきたのもヒントになりました。
戦闘経験は浅くない様子なのに、銃器に対して慣れていない様子を示す……
ここまで読めれば、あとはすぐに分かりますよね」
“これは本気で対応すべきなのか? それとも黙殺してもいいのか?”――そんな迷いが見えましたから。
いくら空を飛べる身とはいえ、あんなに無防備に飛び掛ってきたのもヒントになりました。
戦闘経験は浅くない様子なのに、銃器に対して慣れていない様子を示す……
ここまで読めれば、あとはすぐに分かりますよね」
「それで、本題です。
私は、“愛すべき者”を最後まで生き残らせたい。
そのために他の参加者、特に強く危険な者を優先的に消していきたい。
しかし、えーっと、確かフレイムヘイズ……でしたか?
銃弾を止めてしまえるような力を持つ者を、単独で倒せる自信はありません。
そんな“敵”に対抗しうる力を持つ“紅世の王”のお力を借りられるのなら、それに越したことはない」
私は、“愛すべき者”を最後まで生き残らせたい。
そのために他の参加者、特に強く危険な者を優先的に消していきたい。
しかし、えーっと、確かフレイムヘイズ……でしたか?
銃弾を止めてしまえるような力を持つ者を、単独で倒せる自信はありません。
そんな“敵”に対抗しうる力を持つ“紅世の王”のお力を借りられるのなら、それに越したことはない」
「そして貴方は、自身が生き残りたい。
そのために、さっきのメイドの女性のような強い者を倒す戦力が欲しい。均衡を崩す戦力が欲しい。
私の射撃の腕前は、フリアグネ様も既にご理解なされたと思います。
その他にも、私は軍でも特殊な部隊に所属しておりましてね。人間心理には人よりも通じているつもりです。
作戦立案や部隊の指揮なども、それなりには。
様々な面で、フリアグネ様のお役に立てると思います」
そのために、さっきのメイドの女性のような強い者を倒す戦力が欲しい。均衡を崩す戦力が欲しい。
私の射撃の腕前は、フリアグネ様も既にご理解なされたと思います。
その他にも、私は軍でも特殊な部隊に所属しておりましてね。人間心理には人よりも通じているつもりです。
作戦立案や部隊の指揮なども、それなりには。
様々な面で、フリアグネ様のお役に立てると思います」
「もちろん、いつまでも仲良く手を取ってはいられないでしょう。
いつか私と貴方の願いがぶつかる時がくる。
けれど、それまでは。
共闘、しませんか」
いつか私と貴方の願いがぶつかる時がくる。
けれど、それまでは。
共闘、しませんか」
「……ありがとうございます。
ええ、信用しきっていないのは、こちらも同じですよ。お互い背中には気をつけることとしましょう」
ええ、信用しきっていないのは、こちらも同じですよ。お互い背中には気をつけることとしましょう」
「ところで、フリアグネ様。
話は代わりますが……“これ”、フリアグネ様になら使えるでしょうか?
『吸血鬼(ブルートザオガー)』という名の剣だそうですが。
私には重すぎて、まともに持ち上げることすらできませんでした」
話は代わりますが……“これ”、フリアグネ様になら使えるでしょうか?
『吸血鬼(ブルートザオガー)』という名の剣だそうですが。
私には重すぎて、まともに持ち上げることすらできませんでした」
「おっと、タダでお渡しするわけには参りませんよ。いくら“狩人”とはいえ。
我々はあくまで、互いに利用しあう関係であることをお忘れなく。
そうですね、その拳銃と交換、ということではどうでしょうか。
私としても、使える武器は多いに越したことはありませんから」
我々はあくまで、互いに利用しあう関係であることをお忘れなく。
そうですね、その拳銃と交換、ということではどうでしょうか。
私としても、使える武器は多いに越したことはありませんから」
「……はい、では確かに受け取りました。
そんなに軽々と振り回されるとは、流石ですね。
“紅世の王”とは改めて凄いものです。つくづく敵に回したくない存在だ」
そんなに軽々と振り回されるとは、流石ですね。
“紅世の王”とは改めて凄いものです。つくづく敵に回したくない存在だ」
「それでは、ひとまず――これからどこを目指しましょうか。
百貨店? ええ、構いませんよ。では参りましょうか――“フリアグネ様”」
百貨店? ええ、構いませんよ。では参りましょうか――“フリアグネ様”」
* * *
【C-5/百貨店の隣に建つビル・屋上/一日目・黎明】
【フリアグネ@灼眼のシャナ】
[状態]:健康。
[装備]:吸血鬼(ブルートザオガー)@灼眼のシャナ
[道具]:デイパック(肩紐片方破損)、支給品一式、不明支給品1~2個
[思考・状況]
基本:『愛しのマリアンヌ』のため、生き残りを目指す。
1:当面、トラヴァスと組んで他の参加者を減らしていく。ただし、トラヴァスにも警戒。
2:百貨店のマネキンなどを素材に、“燐子”を作れるかどうか試しておきたい。
3:他の参加者が(吸血鬼のような)未知の宝具を持っていたら蒐集したい。
4:他の「名簿で名前を伏せられた9人」の中に『愛しのマリアンヌ』がいるかどうか不安。いたらどうする?
[状態]:健康。
[装備]:吸血鬼(ブルートザオガー)@灼眼のシャナ
[道具]:デイパック(肩紐片方破損)、支給品一式、不明支給品1~2個
[思考・状況]
基本:『愛しのマリアンヌ』のため、生き残りを目指す。
1:当面、トラヴァスと組んで他の参加者を減らしていく。ただし、トラヴァスにも警戒。
2:百貨店のマネキンなどを素材に、“燐子”を作れるかどうか試しておきたい。
3:他の参加者が(吸血鬼のような)未知の宝具を持っていたら蒐集したい。
4:他の「名簿で名前を伏せられた9人」の中に『愛しのマリアンヌ』がいるかどうか不安。いたらどうする?
[備考]
※坂井悠二を攫う直前より参加。
※封絶使用不可能。
※坂井悠二を攫う直前より参加。
※封絶使用不可能。
※頬と右肩のかすり傷は、傷とも呼べないレベルです。
【吸血鬼(ブルートザオガー)@灼眼のシャナ】
“紅世の徒”の1人、“愛染自”ソラトが所持していた大剣の宝具。
“存在の力”を扱えない者には、持ち上げることすら難しい重さを持つ。
しかし“存在の力”を込めれば軽々と振るえるようになる。その際、刃には血色の波紋が揺らいで見える。
ただの剣としても優れた武器だが、
“存在の力”を込めることで、この剣に直接・間接に触れている者の身体を傷つけることが出来る。
傷は込められた“存在の力”の量に拠る。
そのため、この剣と鍔迫り合いなどをするのは非常に危険。
(なお、アニメ版では両手持ち可能だが、小説版では柄が短く、片手で持つのが精一杯とされている。注意。)
“紅世の徒”の1人、“愛染自”ソラトが所持していた大剣の宝具。
“存在の力”を扱えない者には、持ち上げることすら難しい重さを持つ。
しかし“存在の力”を込めれば軽々と振るえるようになる。その際、刃には血色の波紋が揺らいで見える。
ただの剣としても優れた武器だが、
“存在の力”を込めることで、この剣に直接・間接に触れている者の身体を傷つけることが出来る。
傷は込められた“存在の力”の量に拠る。
そのため、この剣と鍔迫り合いなどをするのは非常に危険。
(なお、アニメ版では両手持ち可能だが、小説版では柄が短く、片手で持つのが精一杯とされている。注意。)
* * *
“それは汚い仕事だ。故に紳士にしか務まらない”
この僕・トラヴァス少佐は、“アイカシア学校”でそう教えられ、そう信じてきた。
この僕・トラヴァス少佐は、“アイカシア学校”でそう教えられ、そう信じてきた。
ロクシェ首都の大使館勤務の駐在武官、トラヴァス少佐は、平たく言えば、スー・ベー・イルのスパイだ。
惑星にたった1つだけある、ジャガイモを横倒しにしたような形の大陸に、その2つの巨大国家は存在する。
東半分が、ロクシアーヌク連邦。通称ロクシェ。
西半分が、ベゼル・イルトア王国連合。通称スー・ベー・イル。
その両者を、北半分は大河ルトニ川が、南半分は険峻な中央山脈が分断している。
長年に渡って憎しみあい、争っていた東西の両陣営は、しかし近年になって融和の方向に向かっている。
東半分が、ロクシアーヌク連邦。通称ロクシェ。
西半分が、ベゼル・イルトア王国連合。通称スー・ベー・イル。
その両者を、北半分は大河ルトニ川が、南半分は険峻な中央山脈が分断している。
長年に渡って憎しみあい、争っていた東西の両陣営は、しかし近年になって融和の方向に向かっている。
僕は東側で生まれ、紆余曲折の末に西側の貴族と縁を得て、大学卒業後に留学し、養子となった。
そしてそこで、尊敬する“ある人”に従い、その人と同じ道を選んだ。
“トラヴァス少佐”となり、ロクシェの首都に赴任したのだ。
そしてスパイとして武官として、東西が再び戦争に陥ることのないよう、“汚い仕事”に精を出している。
そしてそこで、尊敬する“ある人”に従い、その人と同じ道を選んだ。
“トラヴァス少佐”となり、ロクシェの首都に赴任したのだ。
そしてスパイとして武官として、東西が再び戦争に陥ることのないよう、“汚い仕事”に精を出している。
さて、そんな折に、この突飛なイベントだ。
状況は未だに把握しきれていないけれども、こうなると僕のやることは1つしかない。
状況は未だに把握しきれていないけれども、こうなると僕のやることは1つしかない。
つまり――普段通り、スパイとしての仕事をするだけだ。
多分アリソンやリリアは、この残酷な椅子取りゲームを否定しようとするだろう。
彼女たちの性格なら、間違いない。きっとトレイズ殿下も同様だ。
他にも同じように、「椅子取りゲームの構図自体を否定する者」は数多く現れるだろう……
そう、フリアグネから少女を守った、あのメイドのように。
彼女たちの性格なら、間違いない。きっとトレイズ殿下も同様だ。
他にも同じように、「椅子取りゲームの構図自体を否定する者」は数多く現れるだろう……
そう、フリアグネから少女を守った、あのメイドのように。
だが同時に、この椅子取りゲームに積極的に乗る者も、また同じく現れる。
このフリアグネなどがいい例だ。
「愛しのマリアンヌのため」などと言っていたが、言動の端々に他人を害することに慣れている様子が伺える。
おそらく“紅世の徒”にとっては、“ただの人間”を殺すことも日常茶飯事なのだろう。
他にも“紅世の徒”の同類がいる可能性はあるし、“ただの人間”でも危険な思想の持ち主はいるだろう。
このフリアグネなどがいい例だ。
「愛しのマリアンヌのため」などと言っていたが、言動の端々に他人を害することに慣れている様子が伺える。
おそらく“紅世の徒”にとっては、“ただの人間”を殺すことも日常茶飯事なのだろう。
他にも“紅世の徒”の同類がいる可能性はあるし、“ただの人間”でも危険な思想の持ち主はいるだろう。
さて、そうなると……。
参加者は、大きく分けて“椅子取りゲーム否定派”と、“椅子取りゲーム肯定派”に分類できるわけだ。
そして“ゲーム否定派”のまとめ役などは、アリソンやまだ見ぬ善良な人々を信頼して任せてしまうとしても。
ゲーム肯定派の側にも“誰か”が居て暗躍できるようにしておいた方が、色々と都合がいい。
参加者は、大きく分けて“椅子取りゲーム否定派”と、“椅子取りゲーム肯定派”に分類できるわけだ。
そして“ゲーム否定派”のまとめ役などは、アリソンやまだ見ぬ善良な人々を信頼して任せてしまうとしても。
ゲーム肯定派の側にも“誰か”が居て暗躍できるようにしておいた方が、色々と都合がいい。
ならば――それは、僕の仕事だろう。
この残酷な椅子取りゲームに積極的な連中も、全てが自らの力だけを頼みにするわけではないだろう。
理性的に確実な勝利を目指すのなら、裏切りの危険も計算に入れた上で、“同盟”に走る者は出る。
僕のような“モグラ”が潜り込む余地も、あるというものだ。
理性的に確実な勝利を目指すのなら、裏切りの危険も計算に入れた上で、“同盟”に走る者は出る。
僕のような“モグラ”が潜り込む余地も、あるというものだ。
“ゲーム肯定派”であるかのように振る舞い、“ゲーム肯定派”の行動をある程度コントロールする。
さりげなく“ゲーム肯定派”同士がぶつかるように誘導し、“ゲーム否定派”への被害を最小限に抑える。
一歩間違えば“ゲーム否定派”からも命を狙われることになるが、それでも、やる価値はある。
さりげなく“ゲーム肯定派”同士がぶつかるように誘導し、“ゲーム否定派”への被害を最小限に抑える。
一歩間違えば“ゲーム否定派”からも命を狙われることになるが、それでも、やる価値はある。
もちろん、これだけでは単なる時間稼ぎにしかならない。最後は時間切れで、全員終わりだ。
けれども……僕は、少し疑いを持っている。
そして、その疑いに微かな希望を見出している。
つまり、「この状況を作り上げた者は、果たしてそんな結末で満足するだろうか?」ということだ。
けれども……僕は、少し疑いを持っている。
そして、その疑いに微かな希望を見出している。
つまり、「この状況を作り上げた者は、果たしてそんな結末で満足するだろうか?」ということだ。
あの、獣を抽象化したような仮面の男……『人類最悪』と名乗った人物は、この状況を作った者ではない。
本人も否定していたし、その言葉を疑う材料は今のところない。
この状況を作った存在は、あの男の背後にいる。
個人か組織かはまだ分からないけれど、仮にここでは、“主催者”とでも呼称することにしよう。
本人も否定していたし、その言葉を疑う材料は今のところない。
この状況を作った存在は、あの男の背後にいる。
個人か組織かはまだ分からないけれど、仮にここでは、“主催者”とでも呼称することにしよう。
さてその“主催者”は、これだけのお膳立てをしておいて、『時間切れ』なんて結末を喜ぶだろうか。
“主催者”の顔が直接は見えてないこともあって、その真意を推測することも難しい。
難しいが……よほどの理由が無い限り、「それは勿体無い」と思うはずだ。
“主催者”の顔が直接は見えてないこともあって、その真意を推測することも難しい。
難しいが……よほどの理由が無い限り、「それは勿体無い」と思うはずだ。
これだけの準備を整えるのに、費用も手間もかかったはずだ。
フリアグネを上回る“魔法遣い”のような存在なら、あるいはコストの概念も違うのかもしれない。
それでも、きっと容易なことではなかったはずだ。
そしてその手間もコストもかかった会場で、全員に武器を渡し、たった1人の生き残りを目指せと言う。
フリアグネを上回る“魔法遣い”のような存在なら、あるいはコストの概念も違うのかもしれない。
それでも、きっと容易なことではなかったはずだ。
そしてその手間もコストもかかった会場で、全員に武器を渡し、たった1人の生き残りを目指せと言う。
“主催者”は、明らかに「殺し合い」の発生と、その果ての「優勝者」の発生を望んでいる。
さて、そんな状況下で“ゲーム肯定派”が減っていったら、“主催者”はどうするか。
1つの可能性として、“ゲーム肯定派”の支援に踏み切る展開が考えられる。
情報の提供、武器弾薬の補充、あるいは、“主催者”側の息のかかった参加者の追加。
もしかしたら、最初から参加者の中には“主催者”側のスパイ、とでも呼ぶべき者がいるかもしれない。
少なくとも――僕がこの悪趣味なゲームの管理運営を命じられたら、そういった仕掛けを仕込むところだ。
1つの可能性として、“ゲーム肯定派”の支援に踏み切る展開が考えられる。
情報の提供、武器弾薬の補充、あるいは、“主催者”側の息のかかった参加者の追加。
もしかしたら、最初から参加者の中には“主催者”側のスパイ、とでも呼ぶべき者がいるかもしれない。
少なくとも――僕がこの悪趣味なゲームの管理運営を命じられたら、そういった仕掛けを仕込むところだ。
そして。
そうやって“主催者”が、“ゲーム肯定派”に接触する可能性が僅かでもあるのなら――
その接触の瞬間は、“ゲーム否定派”にとっては、絶好の機会となる。
絶好の反撃の糸口になる。
だが“主催者”が接触を図るのは“ゲーム肯定派”であって、“ゲーム否定派”ではない……。
そうやって“主催者”が、“ゲーム肯定派”に接触する可能性が僅かでもあるのなら――
その接触の瞬間は、“ゲーム否定派”にとっては、絶好の機会となる。
絶好の反撃の糸口になる。
だが“主催者”が接触を図るのは“ゲーム肯定派”であって、“ゲーム否定派”ではない……。
希望は細く、望みは薄いが、現時点ではこれ以外の手がかりは見出せないし思いつかない。
ならば、そのためにも、僕は“ゲーム肯定派”の中に潜入しておこう。
「愛する者を優勝させたいから」という嘘を抱え、“ゲーム肯定派”であるかのように振舞おう。
アリソンにリリア、トレイズ殿下と、守りたい者が3人もいる時点で、それは本来ありえないのだけどね。
ならば、そのためにも、僕は“ゲーム肯定派”の中に潜入しておこう。
「愛する者を優勝させたいから」という嘘を抱え、“ゲーム肯定派”であるかのように振舞おう。
アリソンにリリア、トレイズ殿下と、守りたい者が3人もいる時点で、それは本来ありえないのだけどね。
しかしどう考えても、これは“汚い仕事”だ。
まあ、いざという時に恨まれる者は、少ないに越したことはない。
まあ、いざという時に恨まれる者は、少ないに越したことはない。
まずは、臣下なき王様・フリアグネを利用させて貰うことにしよう。
口調や態度は王族やお偉いさんたちを相手にする時の要領で良いだろうか?
いまいちまだ“紅世の王”という存在が分からないのが、不安要素と言えば不安要素かな。
口調や態度は王族やお偉いさんたちを相手にする時の要領で良いだろうか?
いまいちまだ“紅世の王”という存在が分からないのが、不安要素と言えば不安要素かな。
* * *
【C-5/百貨店の隣に建つビル・屋上/一日目・深夜】
【トラヴァス@リリアとトレイズ】
[状態]:健康
[装備]:ワルサーP38(7/8、消音機付き)、フルート@キノの旅(残弾6/9、消音器つき)
[道具]:デイパック、支給品一式、不明支給品0~1個、フルートの予備マガジン×3
[思考・状況]
基本:殺し合いに乗っている風を装いつつ、殺し合いに乗っている者を減らしコントロールする。
1:当面、フリアグネと『同盟』を組んだフリをし、彼の行動をさりげなくコントロールする。
2:殺し合いに乗っている者を見つけたら『同盟』に組み込むことを検討する。無理なようなら戦って倒す。
3:殺し合いに乗っていない者を見つけたら、上手く戦闘を避ける。最悪でもトドメは刺さないようにして去る。
4:ダメで元々だが、主催者側からの接触を待つ。あるいは、主催者側から送り込まれた者と接触する。
[状態]:健康
[装備]:ワルサーP38(7/8、消音機付き)、フルート@キノの旅(残弾6/9、消音器つき)
[道具]:デイパック、支給品一式、不明支給品0~1個、フルートの予備マガジン×3
[思考・状況]
基本:殺し合いに乗っている風を装いつつ、殺し合いに乗っている者を減らしコントロールする。
1:当面、フリアグネと『同盟』を組んだフリをし、彼の行動をさりげなくコントロールする。
2:殺し合いに乗っている者を見つけたら『同盟』に組み込むことを検討する。無理なようなら戦って倒す。
3:殺し合いに乗っていない者を見つけたら、上手く戦闘を避ける。最悪でもトドメは刺さないようにして去る。
4:ダメで元々だが、主催者側からの接触を待つ。あるいは、主催者側から送り込まれた者と接触する。
【フルート@キノの旅】
キノが旅の途中で入手した、自動式ライフルタイプのパースエイダー。
作られた国での正式名称は、『五ニ式国民ライフル分解型』。『フルート』はキノが名付けた愛称。
簡単に分解・組み立てが可能なため、運搬の際にかさ張らないのが特徴。
狙撃用のスコープ、円筒形の消音器、分解して収納するためケースもついている。
弾倉は9発入り。なお今回、予備の弾倉(9発入り)が3つ、同時に支給されている。
キノが旅の途中で入手した、自動式ライフルタイプのパースエイダー。
作られた国での正式名称は、『五ニ式国民ライフル分解型』。『フルート』はキノが名付けた愛称。
簡単に分解・組み立てが可能なため、運搬の際にかさ張らないのが特徴。
狙撃用のスコープ、円筒形の消音器、分解して収納するためケースもついている。
弾倉は9発入り。なお今回、予備の弾倉(9発入り)が3つ、同時に支給されている。
投下順に読む
| 前:あの夏は終わらない | 次:鬼畜眼鏡 |
時系列順に読む
| 前:あの夏は終わらない | 次:鬼畜眼鏡 |
| 前:盤曲の台は食い違い | フリアグネ | 次:粗悪品共の舞踏会 |
| トラヴァス | 次:粗悪品共の舞踏会 |
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