ROTTEN KNIGHT 「sweet pool」をプレイ


※ゲームの核心部分に触れています。ネタバレが嫌な人は、見ないことをお勧めします。

『ゲーム概要』
エロゲ会社「ニトロプラス」のBL部門である「ニトロプラスキラル」から2008年12月にリリース。
08年末に発売されたにも関わらず、08年版otomexアクセスランキングで4位(BL部門1位)を記録した。

『ストーリー内容』
主人公「崎山 蓉司」は長期間の入院を経て復学し、新たな学生生活を送ろうとしていた。(入院の為に1年留年)
ある日、謎の肉塊現象に遭遇。その日を境に蓉司の運命は思わぬ方向へ動き始める。

攻略キャラは同級生(1歳下)の「城沼 哲雄」「三田 睦」、元同学年の「翁長 善弥」の三人。

『難易度』
選択子は赤の本能と青の理性二択式。選択時には文章が表示されずエフェクトのみの為、選択後の行動が想像できない。
また、一つのルートをベースにゲームが構成されてるので、文章を見とっても誰のルートに入ったか全く把握できない。

赤か青どちらか一択に絞った場合、睦か善弥のどちらか一方は攻略できるが哲雄は攻略できない。
哲雄のENDは4つ、攻略サイトを見ない場合は22回の選択をシラミ潰しにする必要がある。
一通りクリアしてから初めて表示される選択回もあるので、スキップを使ってもかなり時間を要するだろう。

ラッキードッグ1に比べれば選択回数は少ないが、色だけの文字なし選択子である以上、難易度は高い。


『操作性&仕様』
従来のPC恋愛ゲームの場合、右クリックを押せばプレイ中の映像の上に選択欄が出てくるだろう。しかし、本作は違う。
右クリックで全く別の画面に切り替わり、ウインドウの中央の部分のみにセーブやロードの選択欄が表示される。
暗い黒板に小さく黄土色の文字で表示され、ご丁寧に「=」を使って数学式風にショートカットキーも掲載。
学校風にするのは良いが、暗闇でプレイするかモニターの光量上げないと見えづらい。

選択欄の文字は全て英語表記。「SAVE」「LOAD」「SKIP」など短い単語なら分かるが、文章の非表示を
Erase Message Window」と表記する必要あるのか?「Hide Message」とか別に短い単語があったはずだ。ただでさえ
見えづらいのに読むのが大変。しかも、機能選択とは関係のない「飾りの文字」と最初のEが完全に同化している。

英語に疎い人にも配慮して日本語表示を付けるのは良いが、字が更に小さくなり若干潰れている。
全画面表示にしても潰れたまま大きくなるため、またしても見えづらくなっている。


こんなの、ゲーム中でセーブやロードする度に視力検査を受けてるようなもんだぞ


救いは設定画面(CONFIG)が英語でなく日本語表記であること。(そこでも漢字は若干潰れている)


クリア後に出現する「EXTRA」はCG、END、音楽のライブラリーになっているが、ここも見づらい。それでも機能選択より
は幾分マシだ。四重の円を14マスに区切って作られた選択欄だが、選べるのはたった4つ。あとは飾り。(図参照)


選べる欄と飾りの欄の違いは、中に書いてある文字がブロック体か筆記体かの違いだけ…ややこしい。


無意味なマスを作るな!何回か押しちまっただろうか!!!


もっと不可解なのはセーブ&ロードの画面だ。小さなウインドウが規則正しく並んでると思いきや、何故か虫食い。
下の画像みたいな状態だ。


中途半端に空けるぐらいなら全部使わせろよ!


ウインドウの間に三角や線がある。いかにも「攻略しやすいように作りました」と言わんばかりの装飾だが安心しろ、
全くもって意味は無い。毎回2パターンの選択子があるんだ。装飾の数だけじゃ明らかに足りない。


仕様で良かった点としては、前の選択子に戻れる機能だ。色だけの選択子に苦戦してる人にはありがたい仕様だ。
(こういう配慮を別の部分にも生かすべきだったと思うが…)
エルシャダイでいう所の「神は言っている、ここで死ぬ定めでは無いと」だと言えよう。


『グラフィック』
グロテスクを表現するためだろうか、どのシーンも全体的に暗い。教室や病室も「電気消してんじゃねーの?」ってぐらい
の暗さである。外も例外じゃない。晴れているシーンといえば、冒頭の登校シーンと屋上での昼食シーンぐらいで他は曇り空。
太陽が登場しても夕日が殆どだ。


絵のタッチは特徴的。輪郭線が濃く、それに比べて肉体の凹凸や服のシワは影の濃淡で表現されている。(服の縫い目などは
クッキリと描かれている)

我々が実際に目から見る景色近いかもしれない。リアルな絵という意味では評価はかなり高いと言える。


『総評』

仕様の酷さは上記で紹介した通りだが、構成も酷い。

プレイすれば分かるが、蓉司の視点と姫谷の視点がコロコロ変わる。(姫谷:善弥の父に恩義があり、翁長家のお世話をしてる人)
蓉司視点でブラックアウトして、次の文章では姫谷視点になってたりする。序盤は姫谷の説明や立ち絵が入るからいいが、終盤の
「同じ建物内+立ち絵無し」の視点交代は勘弁して欲しい。いつ視点が入れ替わったのか分からない。

姫谷を影の主人公として演出したいのは理解できるが、これでは読み辛いだけの障害物だ。


エンドにも残念だ。ネタバレになるがこの作品のENDの数は6つ。難易度の所で言ったが、哲雄ENDは4つ。おかしくないか?
そう! なんと睦と善弥のエンドは1つずつしかない。たった3人しか攻略キャラは居ないのに、そのうち二人のエンドは1つ。
しかもバッドエンドだ。全クリすれば分かるが、哲雄と結ばれる前提の蛇足でしかないのだ。文章もそう。
殆どは哲雄ルートでの文章で、2人のルートの独自文章は10%程度。しかも哲雄エンドに比べて所要時間も短い。
哲雄ルートを半分で切って、分岐後の内容を少々足した状態だ。

公式サイトを見る限り、善弥は別として睦は明らかにグッドエンドがあるような紹介位置である。にも関わらず、
本編の扱いは善弥と同じ。攻略キャラでないならまだしも、「攻略できるがエンドは一つ」という中途半端な仕様。
攻略キャラが多いなら致し方ないだろう。しかし、本作は三人でエンド配分は4:1:1だ。いくらストーリーを作り込んでも、
これだけエンドが偏ると「手抜き」と思われても仕方がない。


ただ…これだけは言える、本作のストーリーは一級品。実際、各所でも高評価だ。


だからこそ実に惜しい。重いシャーシに最高のエンジンを積んで効率の悪い空力で武装した、ポイントすら取れないF1マシンだ。


次作であるドラマティカルマーダーでは本作のような仕様はなくなっていた。恐らくニトロプラスキラルは、操作性を徹底的に見直
したのだろう。だからこそ、あのような使い勝手の良い機能が実現できた。私はそう考える。


プレイする価値はある。ストーリーはもちろんの事、壊れた緑川光やこれだけグロい描写も見れるのは本作だけだから。




最後に一つ。プレイを考えてる男子諸君で、女性の月一回現象を知らない奴は「月経」をググってからプレイするといいだろう。
ストーリーを理解しやすくなるはずだ。
最終更新:2013年06月10日 21:15