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クーリンガンの策謀第三段階(強制イベント)

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クーリンガンの策謀第三段階(強制イベント)


承前


――深い……地の底の薄暗い石造りの通路。
風すら吹き込まぬこの遺跡はじっとりと大地からの熱を帯び、
まるで空気が何倍も濃密になったような異様な空間だった。
そんな何千年も放置され続けたかび臭い淀んだ空気の中に、白い姿が浮かびあがる。

周辺の雰囲気にまったくそぐわない、白いサマーセーターを着た男が、
暗がりの中から音もなく現れた。

まるですべての道を知るかのように通路を歩いた先には、
祭壇のしつらえられた部屋があり、
周囲の壁面には絵が描かれ、風化しかかったその絵には猫が、
金色の髪をもつ人々が描かれている……

「見つけましたよ」

彼はその絵をそっとハンカチでぬぐいシャーレにしまうと、再び闇の中へ消えていった。


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クーリンガンの策謀第三段階(強制イベント)



L:クーリンガンの策謀第三段階 = {
t:名称 = クーリンガンの策謀第三段階(強制イベント)
t:要点 = クローン人の暴走,原因不明,大破壊
t:周辺環境 =リワマヒ国



クーリンガンの策謀


リワマヒ湾をのぞむ岬の先。
遠くにはひまわりの植えられた海岸が見える。
長い髪が、潮風をうけてはためいていた。
白いサマーセーターが日の光をうけ、輝いているようにも見える。

シャーレの蓋を開くと、吹き付ける風がハンカチを巻き上げていった。

「さぁ、行きなさい――」

飛んでいくハンカチを仰ぎ、日の光に目を細めると、
その場から立ち去っていった


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ここはリワマヒ国。
ニューワールドにいくつかある平和を享受する国、別名ド級の付く田舎藩国である。
その藩国が、今、揺れていた。

疫病の発生である。


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「ゲ、フー」
「ブフー」

室賀兼一、この国の藩王はいまや瀕死の途にあった。
死因は憤死、今風にいえば恥ずか死である。

「グフー」
室賀兼一、色々あって女装を常とする藩王であったが
醜態を人前にさらすのを人一倍気にするところのある性格でもあった。
その藩王が、今大きく腹を膨らませ、脂汗を垂らしながら、居室の隅でうずくまり奇怪な音を立てている。

「ゲプー」

ああ、なんたることであろうか。
体内にたまった正体不明の沼気により、悶絶する姿がそこにあった。

「東さん、シコウさん、蒼燐さん、タロ、、、だれか。だれか、いませんか……?」



いなかった。

正確には今や侯爵領にも匹敵しようかという藩国の三分の二が、
藩王と同じ生みの苦しみにあえいでいるのだった。

ゲフー。
ブフー。

国中からあふれる悲鳴のような、断末魔のようなガスのため息は、今や藩国中を包むようであった。




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「こんにちはー。 リワマヒ学園音楽会の王城広間使用に許可もらいに来ましたー……あれ?」

倉臼リリイ、学生である。
第一次クローン人のピアノ演奏家と言ったほうが通りが良いかもしれない。
「クローン人の台頭」以来有名人となった彼は、
リワマヒ学園のクラス代表の一人として、クローンとはべつだん関係なく活動していた。

「藩王さま、どうされたんですか? おなか押さえて」
「ゲプー」
「うわ、お下品。新しいギャグですか?」
「そうじゃない……恥ずかしながら、おなかの調子が止まらないんです、ガスで」
「わ。めずらしい。第七世界人のくせに」
「それは関係ないと思いますが……ともかく、医者呼んで下さい、医者」
「自分も医者でしょうに」

リリイ(クローン人)はリワマヒ陸軍医科大学に電話した。
RRRRRR、RRRRRRR………

「藩王様、誰も出ません」
ガチャ
妙に聞き覚えのある声がリリイの耳に響いた。
電話口「こちらリワマヒ陸軍医科大学付属病院」

リリイは気づいた。自分の声と全く同じ声。相手もクローンだ。
「あの、急患なんですが」
電話口「あいにく病床がうまってまして。腹痛を訴えてるのでしたらほかのところへ」
「や、それが藩王なんです」
電話口「なんですって?」





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――藩王も倒れられた――
その一報が入って混乱に拍車かかりつつあった。

パンデミックス……爆発的な感染がリワマヒを襲う中、医療最前線では混乱が起きつつあった。
幸いな事に、現在発症するのはリワマヒ国に元からいた国民ばかりであり、
クローン人以外にも国外からの来訪者などが感染したという話はなかったが、
感染が広がるのは時間の問題だと思われたからである。

そして、現場では経験豊かな医師達が軒並み倒れ、残っているのはまだ経験の浅いクローン医師しか残っていなかった。
それでも彼らは医師であり、この未知の疫病に感染した人々を治療するためにありとあらゆる文献を引っ張り出し
東奔西走しネットワークに接続して、ありとあらゆる医療関連データベース、他国医師との相談、
まだ動ける少ない医師達をやりくりして、なんとか治療しようと、一分一秒をすごしていた。

「判らない…なんでだ!」
若い紫色の髪をした若い医師がキーボードに手をたたきつける。
『ピー』
端末には不正な入力に対してのエラーが、まるで抗議の様に表示されていた……





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川沿いに楽器店と診療所、学問所が乱雑に並んだ町並みを、群衆が進んでゆく。

ここはリワマヒ国都心部、ヒジリバシ地区。
リワマヒ国が有する白亜の塔、医学の城、今や第一次クローン人らによって陥落した陸軍医科大学の中庭では、
第一次クローン人の若き医師と医学生たちが蛮声を挙げ、
生き残ったクローン人と猫士たちを鼓舞していた。

「我々忠勇なるリワマヒ医療部隊は、
 われらを襲った疫病が生み出すガスの正体がメタンガスであることをつきとめた事、ここに宣言する。


メタンガス、それは資源!
メタンガス、それは我々人類が夢描きいまだ実用化を成し遂げられていないバイオ燃料である!」

そうだー! と声が上がる。
医学生らの手には資源再生計画のマニュアルがあった。


「この難事において、人類がその身からバイオ燃料を生成するという、我々が直面した現象は、誰の采配によるものか?」


「第七世界人の陰謀だ!」「運命(イグドラシル)だ!」 口々に叫ぶ群衆。


「第七世界人か!?運命か? それは否!」
「我々は、我々自身を生み出した科学という名の技術が今、暴走の途にあることを認識せねば成らない!」

「われらのクローン技術を生み出した ライブラリ・オブ・世界 研究開発センター! 
人類の英知の結晶、リワマヒの希望が! 
バイオ技術の最先端が、この局面を生み出したことを、我々は疑わなければならないだろう!」


ざわめく群衆。



「しかし人よ、LOW研究開発センターを恐れることはない!
人類は、人類の希求する資源を自身の力で生み出すことを求められ、
LOW研究開発センターはその夢に答えただけなのだから!」

「さあ人よ!LOW研究開発センターを祝福しよう!

 そしてこの国難を救う手だてをセンターで発見するのだ!」


「LOWをめざせ! LOWを!」

「LOWをめざせ! LOWを!」

シュプレヒコールの中、軍の植物園を襲撃に向かった一団が戻ってきた。
藩国の戦略兵器、植物型ウォードレス謙者を着込み、
群衆の声援にこたえながら、歩を進める。

みな周りの群衆と一様に若く、血気盛んであった。

謙者の一団が隊列を組む。
その目の前には、古式にならったLOW研究開発センター、第一技研の門構えがある。

スローガンを連呼する民衆の声は今や最高潮だ。
一団は戦闘パックをめいめいに破ると爆裂弾を手にする。

「今、われら同胞の有志がLOW第一技術研究所を制圧に向かう!
 民衆よ、祝福されたい! いまこそ聖なる戦士がその禁断の門を開く!」

謙者たちは門に向けて爆裂弾を一斉投擲した。

爆発、爆発。
エマージェンシィを示す赤色灯がひらめき、警告音が辺りをつんざく。


民衆のボルテージは頂点に達した。


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そのとき国内のすべてのスピーカーが悲鳴を上げた。

正確には、すべてのスピーカーと、藩国民の持つ手回しラジオ、そして謙者の非常用回線が、同時にメッセージを発した。

「治療法があります! 
こちらは王城、タロ=ターマ=ハーナ八世ですネウ。 この病気の治療法を発見しました!
ただちにまだ動ける全国民はラジオに傾聴、
足のあるものは王城へ向かってください!」

全員の動きが止まる。
くりかえし同じ言葉を流すスピーカー。国民たちは急ぎ手回しラジオを回した。充電時間がもどかしい。


「こちらは王城、タロ=ターマ=ハーナ八世、 この病気の治療法を発見しましたネウ!
ただちに稼働できる全国民はラジオに傾聴し、足のあるものは王城へ向かうネウ~!」

タロ=ターマ=ハーナ八世陛下はこの国の象徴、猫士の長である王猫である。
その権威は平民をあまねく照らし、世論にも十分な影響力があった。

アジテーションしていたクローン人医師が叫ぶ。

「全員、その場に待機!
 ウォードレス兵と私は王城に向かう!」

群衆の列が二つに割れるなかを、ウォードレス兵とクローン人医師が自転車で駆ける。
王城へ、王城へ。


/*/

おこたの間。
--リワマヒ国王城、旧謁見の間である市民広場に建てられた藩王の執務室--

「つまり、この病気は古代よりリワマヒ国猫士に伝わるものであった……と?」
「……猫士に伝わる整腸術により治癒可能、とお考えください」

王猫、タロ=ターマ=ハーナ八世は詰めかけたクローン人たちに囲まれていた。
部屋の中央、藩国の名物である冷コタツには、藩王以下廷臣(プレイヤー)の面々が肩まで体をうずめている。
王猫タロはこたつむりとなった廷臣たちの口に、水と黒い砂のようなものを流し込みながら言った。

「これは、古代リワマヒ王朝のころに流行した古細菌(アーキア)による病です。
空気中から人体に入った古細菌が、腸内で沼気、つまりメタンガスを発生させるのですネウ。
体温で活性化された古細菌が、

腸内の栄養を吸ってメタンガスを猛烈に吐き出すために、みなガスでやられるんです」



「原理はわかりました。タロ陛下。で、その黒い粉は何なのですか」
クローン人医師が訪ねた。
胸を張る王猫タロ八世。モスグリーンの手術着がまぶしい。



「猫士に伝わる聖別された炭、今風にいえば活性炭です!
冷コタツで冷やされることで、活性炭が体内で発生するガスを吸収してしまうのですネウ。
同時に、古細菌の活動も冷却効果で抑制させられます。



これで数時間も安静にしてれば、古細菌も活動を弱めるはずです……」


見ればどうであろうか。

炭を飲んだ人々の血色がみるみる戻ってゆく。


がっくりと肩を落とすリワマヒ医師。
「そんな単純なことで……」
「科学はいつだって単純な答えが最上なんですネウ」

「しかしわからないですネウ。
猫士の口伝のとおりなら、この古細菌は先人たちが古代遺跡に封じたはずですが……」

王猫タロは腑に落ちない顔だ。

「誰かが持ち出したネウ。
……古代遺跡をあばき、バイオハザードを狙ったネウ……」


「…………。」



/*/

ここは平和なリワマヒ国。

王城の前、広場の中央では有志が集い、今度の事件を即興劇にして演じている。
それを猫士、第一次クローン人、治療された人々らが囃している。皆笑顔だ。
群衆の中に来賓席がしつらえてあり、藩王以下が藩国の滞在者、名士らと共に車座になっていた。

「ひどい事件でしたネウ」技族のひとり、シコウが言った。
「ええまったく。たいへんな騒ぎでした。第一技研の正門は破壊されるわ、食糧流通は一時止まるわ、医療施設は飽和するわ……」
答えたのは女(装の)藩王、室賀兼一。
ひざの上では一仕事終えて疲れたのか、王猫タロ=ターマ=ハーナ8世が丸くなって寝ている。

「緊急時のインフラ周りをもう一度見直さなければなりませんね」摂政、東が言った。
「あ、始まりましたよ!」舞台を指差すのはやはり技族の一人、和子である。


舞台はいまやクライマックス、
きらびやかな衣装をまとった猫が、倒れた若者たちに炭の粉を振りまくところだ。

 おくびでてけい すみもてけい
 おならでてけい すみもてけい

黒い粉を浴びた若者が次々と起き上がっては、王猫役の周りで体を伸ばし天を突く。
クローン人扮する王猫役と若者たちとが揃っていっせいにとんぼを切り、同時にポーズをとって着地すると、
会場は万雷の拍手に包まれた。

「この国難を皆で乗り越えたことで、リワマヒ国はまた、一枚岩の体制となったように思えます」
「まったくですネウ」
「しかし、なんで第一次クローン人だけが古細菌に汚染されなかったんでしょうね?」
「クローン人だけに」
「なんですか?藩王様」

「苦労ーんがたりなかったんでしょう」

「………………。」

「………………………………………。」

「………………………。」


鳴り止まぬ拍手の中、来賓席の空気だけが冷コタツのようになるのを感じる室賀兼一であったとさ。



(おしまい)

/*/

L:クーリンガンの策謀第三段階 = {
 t:名称 = クーリンガンの策謀第三段階(強制イベント)
 t:要点 = クローン人の暴走、原因不明、大破壊
 t:周辺環境 = リワマヒ国
 t:評価 = なし
 t:特殊 = {
  *クーリンガンの策謀のイベントカテゴリ = ,,,世界イベント。
  *クーリンガンの策謀の位置づけ = ,,,{特殊イベント,自動イベント,強制イベント}。
  *クーリンガンの策謀第三段階の内容1 = ,,,(このイベントの収拾するために)資金-30億。
  *クーリンガンの策謀第三段階の内容2 = ,,,クーリンガンに関する手がかりを得る。{
   *クーリンガン関する手がかりの内容 = ,,,クーリンガンは間違いなくレム-リアにいる。
  }
 }
 t:→次のアイドレス = なし

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