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11時45分、食糧生産地

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11時45分、食糧生産地

(文:ダムレイさん)

11:45

「本当にありがとうございました!みなさん!」

タムラは手伝いに来てくれた人々に頭を下げている。
赤茶けた水の原因は、組み上げた地下水を貯めておく貯水タンクに砂が吹きこんで、それが各所で詰まりを起こしていたためらしい。

散水設備の洗浄と、一部の隙間から入り込んだ砂のかき出し作業、さらに防砂ネットの貼り直しなどやらなければいけないことはたくさんあったが、島津や、カトー、ジュンコをはじめ多くの人が助けに来てくれたおかげで作業は思っていたよりも早く終わった。

タムラの妻が、お茶を注いでまわっている。
良く冷えた麦茶だった。
渇いた喉をうるおし、細胞の隅々までしみわたるようだ。

自然と笑顔が出て、和やかな空気になった。
と、突然。

「タアムラアアアアアア!」

上空から太陽を背にしたフライングクロスチョップが、談笑しているタムラの首筋に直撃した。

「…て、てめえはもやし仮面2号!」
「ふっ!そんな輩は知らん!俺は新もやし仮面2号!」

確かにアフロに隠れて見えにくいが、「も」という字の上に「新」という字が見え隠れしている。
ふと、島津に気がついた。

「おお!1号!」
「…」

気まずそうに顔をそむける島津。
せっかくいい雰囲気だった場を壊されたタムラが食ってかかった。

「そんなこたあどうでもいい!何しにきやがった!」
「お前の作ったもやしが必要になったのさ。世界一のもやしがな!」

そう言われて、タムラは急に元気なくうつむいてしまった。

「へっ。笑うなら笑え。俺のもやしは全滅さ。また1から出直しだ」

2号は、近くにあった泥にまみれたもやしをつかむとざっと水で洗って口に入れた。
少し微笑む。

「ふっ。お前はまだもやしの強さをわかってないみたいだな」

もうひと掴みとって、水で洗い、タムラに渡す。
口にした瞬間、タムラの顔がかわった。

「こ、これは!死んでない!確かに理想とは言えないかもしれない。でも確かにこのもやしは生きている!うまい!」
「そうだ。もやしは俺よりも強い!」

言いながら手伝いに来た人にももやしを配る。
食べた人々の間から、おおというどよめきが起こった。
満足げにうなずく2号。みんなの前に立つ。

「それでは、皆さんご一緒に…もやし!万歳!」
「もやし!万歳!」

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