七時、島津さんの工場
(文:ダムレイさん)
7:00
「と、いうわけなんですよ。おやっさん。たぶん砂が詰まってしまって、散水設備に不具合が生じてるんだと思うんですが」
「そうか、分かった。ちょっと見てやりな」
「そうか、分かった。ちょっと見てやりな」
おやっさんと呼ばれた人物は、手もとのシフト表を見ると、午前中の島津のラインをさっと消した。
「でも、工場のほうは大丈夫ですか?」
工場のシフトに穴を開ければ、同じ工程担当の作業工の負担が増える。島津は自分が抜けたせいで重大なボトルネックができることを懸念していた。
「なにいってやがんだ。困った時はお互いさまだ。『仲間を大切にしないものは、機体も大切に扱わない』。整備春秋に書いてあるだろうが。いってやんな」
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
そういって駆け去っていく島津の背中を見送ると、おやっさんはふっとため息をついた。
「うーん、とはいえ…どうするかな」
特に代わりにあてがあるわけではなかった。ラインはぎりぎりで稼働している。島津の抜けは埋めなければならない。
「こんちはーねじお届けにきましたー」
「おーカイチ。カトーとジュンコも一緒か」
「おーカイチ。カトーとジュンコも一緒か」
やってきた若い三人の工員は、新生リワマヒの目玉産業の一つであるねじ工場の工員である。
「珍しいっすね、おやっさんがため息なんて。なんかあったんすか?」
「おー実はかくかくしかじかでな。ラインが一本足りないんだわ」
「あーそれなら俺が手伝いますよ。うちの工場はある程度落ち着いてるんで」
「おー実はかくかくしかじかでな。ラインが一本足りないんだわ」
「あーそれなら俺が手伝いますよ。うちの工場はある程度落ち着いてるんで」
カイチは軽く請け負うと、カトーとジュンコの二人組を見た。
「お前らはどうする?」
「あーじゃあおれたちは、もやしハウス見に行ってきますよ」
「あーじゃあおれたちは、もやしハウス見に行ってきますよ」
ごく自然に手助けに行く二人を見て、おやっさんは満足げにうなずくと、手に持っていたノートを静かに机においた。
若い世代にも助け合いの精神が根付いているのが嬉しかった。
若い世代にも助け合いの精神が根付いているのが嬉しかった。