第06話「ロードバイクの値引きと完成車とYシャツと私」


涼子「あのさー」

彰人「ん?」

涼子「前言ってたフレームあるじゃない?」

彰人「うん」

涼子「あれ買おうかなー」

彰人「いや、あれは完成車が出てたろ。そっち買えよ」

涼子「いや、完成車の方が確かにフレーム買って組むより安いけどさ。なんでわざわざ?」

彰人「コンポは今のカンパ使うんだろ? デュラエースとかハンドルとかを美結ちゃんに割安で売ってあげろよ」

涼子「いやいや、デュラエースはそのまま使うし。それよりあんたの童貞とスラムをあげなよ」

彰人「いやいや、REDは使ってるし」

涼子「いやいや、スラムは使っててもムスコは使ってないでしょ。どうせ…」

彰人「うるせぇよ! 何の話だよ!?」

美結「あ、先輩!」

涼子「お、美少女来よった」

彰人「おぅ! どしたのー」

美結「ピナレロとビアンキで迷ってるんですー」

彰人「うんうん」

美結「ビアンキの方が全体的に安いんですけど、デザインはピナレロの方が好きなんです」

涼子「じゃあピナレロ買いなよ」

美結「え? またまたぁ。悩んでるのにぃー」

彰人「いや、涼子の言う通りだと思うよ」

美結「え?」

彰人「デザインや色合いが気に入らなければ、どんなにいいバイクを買ったってすぐに飽きるよ。デザインを第一にしなよ」

美結「あ、そうなんですか…」

涼子「私、めっちゃ信用されてないなー」

美結「あ、いえ、そんなことは…。じゃあ、ブランド料取られますけど、ピナレロにします!」

彰人「うん。ONDAフォーク、いいんじゃないかな」

涼子「MADE IN TAIWAN、いいんじゃないかな」

彰人「それがいいかは分からんが…」

美結「ところで、自転車専門店に行って、ピナレロくださいって言ったらいいですか?」

彰人「できるなら、自転車専門店じゃなくて、ロードバイク専門店がいいかな。それがピナレロの認めているショップなら、なおいいと思うよ。確か保証期間が延長できたと思う…」

涼子「フレームから買うの?」

美結「いえ、そんなに高いのは買えないので…」

彰人「お金があるならフレームから買ってもいいけど、基本的には完成車買った方が確実に割安だね」

美結「そうなんですか」

彰人「うん」

涼子「で、何にするの?」

美結「ピナレロFP2です」

彰人「あれって、30万ぐらいするよね?」

涼子「フルカーボンだっけ?」

美結「あ、いえ、新しいモデルはフルカーボンなんですけど、現行モデルはアルミフレームに、カーボンフォーク、カーボンバックで、25万ぐらいです」

彰人「一年落ちのモデルなら、20万ぐらいになると思うよ」

美結「えっ、そうなんですか?」

彰人「うん。店に在庫があれば、もっと安くなるかも知れないね」

美結「えぇっ! 期待しちゃいますっ!」

彰人「でも、早くしないと売り切れちゃうから、早いとこ見に行こうか?」

美結「はいっ!」

涼子「本当にピナレロでいいの? 105でカーボンフォーク、カーボンバックなら、スペシャ(スペシャライズド)やウィリエール、ジャイアントなら15万切ったりするわよ」

美結「いえ、あの青色のかっこよさに惚れましたっ!」

彰人「OK」

涼子「決まりね」

彰人「今日空いてる?」

美結「え?」

彰人「実車を見て、それから決めた方がいいと思って。他にも運命的な出会いがあるかもしれないしね」

美結「そうですかー。今日は大丈夫です!」

涼子「うちらの行きつけでいいよね? 電話でピナレロFP2の在庫確認と、メーカー在庫確認するわ」

彰人「サンキュー」




第07話「ロードバイクのヘルメット」


店を出た3人

彰人・涼子「ありがとー」

美結「ありがとうございましたー」

彰人「メーカー在庫のサイズがあって、良かったね」

美結「はい。安く買えましたし、色もすごく綺麗でしたー。納車までの1週間はすごく待ち遠しいですねー。あ、そういえば、股下測ったり、ハンドル幅を確認したり、すごく細かいですよねー」

彰人「そのうちクランク長さとかハンドル形状、サドル形状にこだわり出したりするかもね」

涼子「店員さん、執拗に美結の股を触っていたわね」

彰人「いや、1回も触ってないだろ。股下測るために棒を当てただけだろ」

涼子「いや! 美結ちゃんの股の間に棒をあてがったなんて! なんていやらしいの!?」

彰人「もうお前の相手はいいや。それより美結ちゃん」

美結「はいっ」

彰人「FP2が納車されるまで、やらなければならないことがあるよね」

美結「え!? イメージトレーニングですか?」

彰人「うん。それも必要かも知れないけど、涼子」

涼子「うん、いい美結ちゃん」

美結「はいっ」

涼子「男と女が集まったら、やることは一つよ」

美結「はいっ!」

彰人「ちょっ! 涼子! もういいっ!」

涼子「それはね、最低でもヘルメットは先に買っておくの」

彰人「あれ? まともなこと言ったよ、この人」

涼子「なぁにー? また変なこと考えてたのー。ほんと、彰人は変態なんだから~」

美結「え、彰人さん変なこと考えてたんですか?」

彰人「いや、全く考えてないから! 納車日はポジション出しやらパーツ交換やらで忙しいら、ヘルメットぐらいは先に選んで、買っておこうか。丁度、横にパーツ屋さんがあるから」

美結「はいっ!」


~店内にて~


美結「どんなヘルメットを買えばいいですか?」

彰人「そうだね。まずはベンチレーションがいっぱいあるヘルメットがいいよ」

美結「あ、この仮免ライダーみたいなボコボコ穴の空いたやつですよね」

彰人「仮免って…、うん、それそれ」

美結「どれも似たり寄ったりですね…」

彰人「まずは被ってみなよ。これは、Mサイズだね」

美結「うん~しょ、と」

彰人「どう? あ、深く被ったら、後ろのダイヤルを回して、締め付けてみて」

美結「はい」

彰人「大体おでこを隠すような感じで被ってみて、ぶつかる場所が無ければOKかな」

美結「うん、違和感ないです」

涼子「やっぱヘルメットはOGKね~」

美結「?」

彰人「あ、日本人向けの形状のヘルメットを作ってるメーカーなんだ。オートバイのヘルメットでも有名だね」

美結「へ~、あ、こっちもかっこいいですね」

彰人「レーザー社のヘルメットかい?」

涼子「被ってみて」

美結「はい」

彰人「正面の鏡を見てみて」

美結「はい。…あっ! はははっ! 頭でっかちです~」

彰人「うん。正面から見て、頭だけがでかくなるのを、キノコに例えて、キノコるって僕らは言ってるけどね」

涼子「キノコ、キノコをしゃぶ…」

彰人「はい、黙れ」

美結「キノコるとかっこ悪いですね・・・」

彰人「うん。確かにね。えーっと、後は色かな」

美結「バイクの色と合わせた方がいいですか?」

涼子「全身青色だとかっこ悪いから、黒や白でもいいと思うわ」

美結「うーん…。青がかっこいいと思うんですけどー…」

彰人「なら、サイクルウェアを黒や白にして、ヘルメットやグローブ、シューズを青にしたらいいかもね」

美結「あ、はいっ!」

彰人「それに、2、3年に1回は買い替えるから、そんなに気にしなくてもいいよ」

美結「え? 買い替えるんですか?」

彰人「そう。ヘルメットの寿命でね。後、1回でもぶつけたヘルメットは買い替えてね。へこんでなくても、中の発砲材がつぶれてる場合もあるから」

美結「あ、はい!」

彰人「じゃ、これでいいかい?」

美結「はい。モストロアクート、何かかっこいい響きですね」

彰人「ははは。通販で買うより安いし、自分の頭に合うか分かるし、やっぱ専門店はいいよねー」

涼子「通販でしか買えない恥ずかしい物もあるけどね、例えば…」

彰人「うるせぇよ!」




第08話「ロードバイクのグローブ」


彰人「じゃ、グローブとシューズとペダルも買っておこうか」

美結「はい」

涼子「ペダルとシューズは後でもいいんじゃないかしら」

彰人「何でだよ?」

涼子「美結ちゃん、ロードバイクは初めてなんでしょ?」

美結「はい」

涼子「で、ビンディングペダルも初めてなんでしょ?」

美結「な、何ですか、そのポンピングペダルって」

彰人「ビンディングペダル。ペダルとシューズがくっつくんだよ」

美結「うぇえっ! 怖いです!」

涼子「彰人、ロードバイクはクロスバイクよりもバランスを取るのが難しいし、ダンシングが安定して出来るようになった辺りで、ビンディングペダルとシューズを買った方がいいんじゃないの?」

(ダンシング:立ちこぎ)

彰人「だな。とりあえずグローブだけ買おうか」

美結「はいっ! えと、どういったグローブを買えば…」

涼子「これは完全に好みね」

彰人「そうだね。うーん、長距離乗るなら、ジェルが着いたグローブがいいよ。後、夏は暑いから指切りグローブ、冬は寒いから指先まであるグローブがいいね」

涼子「と言っても、ハンドルに体重をかけるのは素人さんがやることだから、ジェルは無くてもいいけどね」

彰人「確かに。ジェル付きだと握った感触が変わるから、嫌がるプロもいるにはいるね」

涼子「付けるプロもいるわよ」

彰人「まぁね。後は、少し小さいグローブを買うといいよ」

美結「え?」

涼子「握った時に、生地が手の動きを邪魔しない物がいいってこと。初心者様は普通のグローブを買う感覚で買うから、少しダブつくのよ」

彰人「ダブつくと、感触がすごく悪くなって、走行中に煩わしく感じるからね」

美結「はぁー。グローブだけなのに、いっぱい基準があるんですねー」

彰人「好みだよ。好み」

涼子「ただ、私らが使っていて、これはいいとかダメとか選ぶうちに、条件ができてきちゃうのよね」

彰人「後悔後に立つってね」

涼子「ナニナニ? ナニが立つって?」

彰人「それはもういいってば!」

美結「じゃあ、それでグローブを探してみますー」

彰人「はーい」




第09話「サイクルウェアについて」


ロードバイクで走る時、ウェアは何を着ればいいのか分からない時があるかと思います。
大きく分けて、4種類ほどあると思います。


1.ラフスタイル
2.スポーツスタイル
3.メッセンジャースタイル
4.レーサースタイル


1.ラフスタイル
読んで字の如く、普段着で走ります。
ジーンズにTシャツで、ヘルメットとグローブは付けるかも知れませんが、どう見てもローディ(ロードバイク乗り)には見えません。ジーンズではペダリングに支障も出ますし、ただのTシャツは、汗をかいた後はすごく冷えます。正直、こんな格好をするのはオッサンぐらいでしょう。近距離の場合、私はしてますが。


2.スポーツスタイル
10km圏内などの近場は、これが無難だと思います。
ポリエステル100%のスポーツシャツに、適当な半パンを穿くだけ。冬場ならジャージやウィンドブレーカーになるかも知れません。


3.メッセンジャースタイル
個人的にはこのスタイルが一番かっこいいと思います。
メッセンジャーは、バリバリのサイクルジャージを着る人もいれば、普段着のようなウェアを着る人もいますが、概して言える方向性は、「自転車に長時間乗れるカジュアルファッション」です。
以下は例ですが、
bernなどのヘルメットと、つばのある帽子を被ります。
無線機や携帯を入れるパウチをメッセンジャーバッグの胸に当たるパッド周辺に取り付け、帯を締めます。
ちなみに、メッセンジャーバッグは「背負う」ではなく、「カツグ」と言います。
上はスポーツシャツやスポーツジャージにウィンドウブレーカー、雨の日はレインコートを着ます。
下は、夏場はパッド入りインナーパンツの上から七分のパンツ、冬場はパッド入り長パンツの上から七分のパンツです。
ビンディングペダルは必要です。
サドルは先端部をテープか何かで補強するといいかもしれません。
イメージとしては、上はごちゃごちゃ、下はペダルを漕ぐためスッキリです。


4.レーサースタイル
ほとんどの人が興味を持つ(と思われる)レーサースタイルです。
バリバリのサイクルジャージやチームレプリカジャージ、下はレーサーパンツです。
少し肌寒くなるとウォーマーを付けるか、長袖を着ます。
冬場はウィンドウブレーカーを着ます。
下は長いレーサーパンツを着ます。
注意点として、出来ればごちゃごちゃ混ぜるのは避けましょう。
ピナレロに乗っているのにチームブリヂストンアンカーのチームレプリカジャージを着たり、カンパ製品で統一しているのにシマノのサイクルジャージを着たりなどです。
イメージとしては、上下とも計量化のためスッキリです。




結論として、サイクリング仲間が何を着ているかに合わせた方が無難だと思います。
レーサースタイルのサイクルウェアは馬鹿みたいに高い値段で売っていますので、本当に必要な時が来るまでは、ポリエステル100%のスポーツウェアを適当なスポーツ用品店で購入しましょう。
安ければ500円とかでかっちょ良いのが買えます。

ではでは、楽しいロードバイクをエンジョイして下さい!




第10話「ロードバイク納車日にすること」


美結「いよいよ今日は納車日です! あ、そういえば、納車する時に気を付けることってありますか?」

涼子「相手が童貞か確認した方がいいわよ」

美結「え?」

彰人「馬鹿は放っとこうなー。ま、涼子の言う通り、傷があるかを確認した方がいいよ」

美結「はいっ!」

彰人「目の前に待ち望んだバイクがあるとすごく嬉しい気分になっちゃうけど、カーボンに傷があると特に不安だからね。」

美結「はい」

彰人「他には、ハンドルの幅は適正か、ステムの長さは丁度いいか、サドルの高さもついでに合わせてもらうといいね」

美結「ふぁ、いっぱいあるんですね」

彰人「こればっかしは、あーだこーだ言うより店員さんに見てもらった方がいいね。もし違和感を感じたらどんどん言うといいよ」

涼子「どの道、乗り慣れて来たらステムは長く、ハンドルは低く、サドルは高くなるしね」

彰人「そうだね」

美結「はぁ」

彰人「まず、サドル高さを確認。次に、ハンドル幅を確認。腕が広がるなら大きいし、腕が狭まるなら小さいので、交換してもらおうね」

涼子「ポジションは本当に大事だから、お金がかかっても直さなきゃだめよ。いいバイクが最悪バイクになるんだから」

美結「はいっ!」

彰人「ハンドルの次はステム長さだね。コラム高さは最初は高くしてもらったらいいよ。ステム長さは、ブレーキブラケットを握ってみて、遠いと感じたり、ブレーキングがしにくいと思ったら、ステムを短いものと交換してもらおうね。逆なら長いのに交換してもらおう」

涼子「慣れれば長いのに交換するんだから、結構適当でいいわよ。あ、そうそう、80mmより短くしちゃダメよ。直進安定性が極端に悪くなるから」

美結「はい。でも、どーせ長いのと交換するなら、初めから長いのを入れればいいんじゃないですか?」

涼子「いや、初めは届かないのよ。慣れると届くようになるわ」

彰人「一生かけて、長くしたり短くしたりして、自分に合ったポジションを出すものと考えればいいよ」

美結「はぁー。奥が深いですね~」

彰人「そうだね。サドル、ハンドル、コラム、ステムができれば、一応ポジション出しは終了だよ」

美結「はい。ありがとうございます! それぐらいですか?」

彰人「ペダルは無いから、今はフラットペダルを付けてもらうといいよ。後は…」

涼子「ピナレロでしょ。モストパーツは要注意」

彰人「それは人それぞれだからなぁ」

美結「えっ、何ですか?」

彰人「ピナレロのバイクには、モストと言うブランドのパーツが使われてるんだけどね、あんまり評判が良くないんだよ。まぁシマノと比べてだから、使う分には大した問題じゃないけど」

美結「そうなんですか?」

涼子「まぁ、個人的な感想だから、明らかな不満が出れば、そこを替えればいいわ。私からしたら105のブレーキアーチはフニャフニャだし」

彰人「まぁ、インナー(フロントの内側のギア)がフレームに落ち込まないようなガードを付けてもらったらいいよ」

涼子「大体付いてるけどね」

彰人「後は、アウターワイヤーがフレームとこすれる箇所はフレームの塗装が剥げるから、ガード用のシールをフレームに貼ったらいいよ」

美結「え、どこですか? どこですか?」

彰人「フォーク周辺に3箇所。後ろブレーキ用アウターワイヤー周辺に1箇所。分からなければ、ハンドルを動かしたり、ブレーキをかけてみたりした時に、フレームと当たる箇所を確認したらいいよ。それでも分からなければ、店員さんに『アウターワイヤーがぶつかって、塗装が剥げる場所ってありますか? 防ぎたいんですけど』って言えばいいよ」

涼子「ついでに、右側チェーンステイも油や泥で汚れやすいからシールでガードするといいわよ」

美結「ありがとうございます! ますます早く乗りたくなって来ました!」

涼子「美結ちゃん、違うでしょ。早く彰人に乗られたくなって来ましたでしょ!」

美結「え? え? 早く彰人さんに乗られたくなって来ました!」

涼子「よしっ!」

彰人「よしじゃねぇよ! まだあるけど、仕事始まるから、また昼休みになっ!」

美結「はい! ありがとうございます!」

涼子「あーあ、私も彰人に乗られたくなって来たわー」

彰人「黙 れ 変 態 女」



最終更新:2013年04月30日 23:15