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 第三話  執筆者:ギリアム

一機のACが巨大なホバータンクの横を通り過ぎ、古代遺跡の中へ進行すべくブースターを吹かした。

その時、左腕を損傷したACとすれ違ったが、気にも留めなかった。
負傷したACなどに興味は無い。彼が求めるのは真の強者のみだった。

始まりは一通のメールからだった。差出人はミラージュ。

「滅多に依頼を受けることの無い私に依頼とは…」

訝しみながらもメールを確認すると、そこには簡単な依頼が書かれているだけだった。

『古代文明遺跡にて、古代兵器駆逐のために派遣したAC部隊を撃破して欲しい』

「古代文明遺跡…」

この言葉には聞き覚えがあった。

ミラージュが古代文明の遺跡調査のためにパルヴァライザーの掃討作戦をすべく、レイヴンをかき集めていたのだ。

企業の捨て駒になるなど馬鹿げているし何の価値も見出せなかったため蹴ったが、報酬だけはやけによかったのを覚えている。

今現在、その作戦が進行中のはずだ。

「ミラージュがミラージュの依頼を受けた部隊を撃破しろと?」

最初は困惑したが、真っ先にこの作戦に対して参加を表明した部隊の名前を見て大体の察しはついた。

サンドゲイル。どの企業勢力にも属さない遊撃部隊。
その遊撃隊がこの作戦の鍵を握っていた。

サンドゲイルと言う名は調べなくても勝手に耳に入ってくるほど有名な遊撃部隊で、三機のACを保有している。
三機のうち二機はあまり噂を聞かないが、中核の人物であるザックセルは元トップランカーだとも聞く。
無所属のACはごろごろいるが、三機もACを保有している遊撃部隊とは珍しい。おまけに元トップランカーが率いている。
企業に属しないただの遊撃隊がここまで力を持つ事に、ミラージュは不安を感じたのだろう。

更にこの作戦には報酬の良さに釣られてか複数の無所属レイヴンまで参加を表明している。
いつ自分に牙を向くかわからない無所属レイヴンまで、まとめて始末しようというところか。

つまりミラージュの考えはこうだ。

撃破数に伴って支払う高額報酬をエサに、危険な依頼を任せサンドゲイルの所属ACやどこにも所属しない無所属ACを潰す。
更にパルヴァライザーをものともしない腕前の者には別に雇ったレイヴンをぶつける。
新たに別のレイヴンを雇ったとしても、大量に現れるパルヴァライザーの撃破数に応じて払う額よりはぐっと安い。

制御装置を破壊させ、遺跡の安全性を確保した上に危険分子を排除しつつ経費削減まで狙っている訳だ。

誰が死んでもミラージュが得をする。

「ミラージュも相変わらずですね…」

思わず呟いていた。
レイヴンを使い捨ての駒としか見ていないミラージュらしいやり方だ。

「本当ならこんな依頼、すぐに蹴ってしまうところですが…」

――サンドゲイルに所属している腕利きのレイヴンや、腕のいい無所属レイヴンと戦えるかもしれない。

その可能性だけでこの依頼を引き受ける価値はある。

『黒い男爵』の二つ名で知られる漆黒のレイヴンは
うっすらと笑みを浮かべ依頼を受諾するメールを返信した。
「これで全部か」

最後のパルヴァライザーの停止を確認して、ゼオはため息をついた。
『制御装置の破壊を確認した』という情報はまだ無かったが、これでこのエリアは制圧できたようだ。

パルヴァライザーは数はいるものの性能や動きはお粗末だった。
これで撃破数に応じて報酬を貰えるなら、これほどうまい仕事も無いだろう。

今回の儲けを考えながら気分良く、煙草を吸おうと懐に手を伸ばした時

そいつは現れた。

『これだけのパルヴァライザーを撃破しながら損傷は最低限。弾薬も温存しているとは、いい腕ですね。貴方はサンドゲイル所属のレイヴンですか?』

何者かが回線を通じて通信してきたのだ。
それと同時に闇に紛れた漆黒の機体の姿が浮かび上がった。

「違う。俺はサンドゲイル所属では無い。しかし、誰だお前は。遺跡突入後は単独行動のはずでは…」

『貴方がたと一緒にされては困りますね。企業の捨て駒なんて冗談じゃありませんよ。私はダンスのパートナーを探しているのです。このナイトエンドにふさわしいパートナーをね…』

「何だと?」

訳が分らなかった。しかし次の一言で事態は予期せぬ方向に向かう。

『貴方の腕なら私の相手が務まりそうです。どうです、一緒に踊りませんか?』

殺意に満ちた一言だった。
――こいつは…ヤバイ!

そう思った瞬間漆黒の機体からにミサイルが飛び乱れる。マイクロミサイルの嵐だ。

急いでデコイを展開し、後退する。
ミサイルはすべてデコイに誘導され、不発に終わった。ように見えた。

しかし攻撃を回避した事に安心している暇も無く、激しい衝撃が機体を襲った。

『右碗部、損傷』

なんとエクステンションを放出するために開いていた右腕にライフルの弾丸が撃ち込まれていたのだ。
もともと装甲の厚い腕では無いため損傷が激しい。

「右腕が動かん…これではマシンガンが発射出来ない…!」

舌打ちしつつ、すぐさまマシンガンをパージしミサイルと投擲銃を構えて戦闘態勢に入る。

しかし今の装備ではどう考えても火力不足だった。
投擲銃は当たりさえすれば威力は大きいが、なかなか当たってくれない。
ミサイルも小型ミサイルで威力には期待できなかった。
EOコアの弾数も先ほどの戦闘で消費してしまっている。チャージには時間が掛かりそうだ。

要のマシンガンを使用不可能にされたのは痛手だった。

それに比べて相手はマシンガンとライフルを巧みに使い分け攻撃しており迂闊に近づく事も出来ない。まさにダンスを踊るような華麗な動きでこちらを追い詰めてくる。

回避行動で手いっぱいで攻撃すらさせてくれない。

――状況はこちらが不利…なら…

エクステンションのエネルギーシールドを展開しブーストのアクセルを全力で踏んで一気に漆黒の機体との間合いを詰めた。被弾覚悟の特攻だ。

漆黒の機体は逃げなかった。留まってコアを集中攻撃する事を選択したようだ。

『右腕部、破損』AIのナビゲートと共に右腕が無数の銃弾を受けてバラバラに飛散する。修理費が酷いことになりそうだが、もともと動かない腕だ。こうすれば盾として役立つ。

――これでどうだ!

至近距離での投擲銃。
どう動いても直撃は避けられない…はずだった。

――勝った!

そう思った。

しかし漆黒の機体はあわてる様子も無くエクステンションをパージした。そして少し下がる。

決死の覚悟で放った投擲銃の弾丸は漆黒の機体にぶつかる事無く…

「く、これでは…」

投擲銃の弾丸がエクステンションに着弾し、大きな爆発を起こした。
至近距離まで迫った二機の間合いが爆風で無理やり引き離される。
漆黒の機体も自分の機体も無傷では済まなかった。

ドドドオン!

激しい衝撃で愛機が倒れた。

漆黒の機体の方はと言うと、素早く体制を立て直し何事も無かったかのように着地する。

特攻のためにエネルギーシールドとブーストを酷使してしまった為にチャージングが発生、被弾も酷く機体が言う事を効かない。

――命をかけた特攻が失敗…ここで…こんなところで俺は終わるのか…!

『なかなかいい動きでした。最後の特攻は驚かされましたよ。しかし、貴方では私の相手は務まりませんでしたね。その腕に敬意を表して…死になさい』

漆黒の機体が装備したマシンガンとライフルの銃口が愛機、シックザールのコアに向けられた…その時だった。

二発の銃声と共に目の前のマシンガンとライフルが爆発したのだ。
そして新たな声が通信に加わった。

『パルヴァライザーを撃破するだけのミッションだなんて、私にうってつけだと思ったのに…なんでレイヴン同士が争ってる訳?』

若い女の声だった。
漆黒の機体のライフルとマシンガンが爆発したのは、その女の機体の放った弾丸が見事に直撃したからだ。

『…また貴方ですか。マユ・キリシマ』

漆黒の機体のレイヴンがため息をついてそう言った。

キリシマ…

確か第一陣で地上を担当していたレイヴンの名前だ。

『悪いけどそれはこっちのセリフ。なんであんたは相変わらずレイヴン同士の殺し合いをするの!?』

『人間同士で殺りあって、わざわざ戦力を減らすなんてバカバカしいと思わないの?』

この二人には浅からぬ因縁がありそうだ。
もう俺の事など忘れたかのように論争を繰り広げている。

『その説教は聞きあきましたよ…。まぁ、貴方と戦うつもりはありません。そこのレイヴンにトドメを刺せないのは名残惜しいですが、撤退させて頂きます』

そう言うと黒い機体は高速で遺跡の出口へ向かっていった。

俺は…生きてるのか…?

『そこのレイヴン、大丈夫!?』

マユ・キリシマと呼ばれたレイヴンが通信で声をかけてくる。

しかし、安心感と共に意識は闇に飲まれた。

 第三話 終

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