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第三話/ /第四話/ /第五話


 第四話  執筆者:CHU

シェルター都市『MA31-HOPE』
ミラージュの庇護下にある人類の楽園だ。少なくとも居住している富裕層にとっての話だが。
ここに自分のオフィスを持つグローバルコーテックス所属レイヴン「スワロー」は、この日新人の専任オペレーター「ライラ・フェモニカ」と通信で依頼の吟味をしていた。

『レイヴン、こちらの依頼はどうですか。【MT部隊撃滅】報酬も悪くありませんし、ターゲットもMTですので簡単かと』
「うーん……、場所が森林区画だし、見通しが悪そうだなあ。そうすると死角からの被弾は避けられないだろうし、修理費がねえ……」
不平不満は聞き飽きたといった口調でライラが諌める。
『お言葉ですがレイヴン、この程度の依頼がこなせない様では、レイヴンとしての沽券に関わるのではありませんか?』
他にも色々な依頼を蹴られたのだろう。ライラの顔には疲れと呆れが浮かんでいる。
「おっ、これなんてどうかな?」
ライラの苦言を完璧に受け流し、そう言ってスワローが指定した依頼は【旧兵器遺跡制圧】と銘打たれていた。
「複数のレイヴンに依頼しているようだし、ボク一人がサボっていてもバレないでしょ」
『――すみませんレイヴン。その依頼は既にサンドゲイル隊が受諾しています。手違いで表示されたままになっていました。今消しますね』
スワローの期待が、一刀の元に両断される。
「はあ……、旨い話だと思ったんだけどなあ。そう上手いこといかないか。何かカンタンそうなお仕事、他にないの?」
煙草とコーヒーカップを片手に、リクライニングチェアーでふんぞり返っているスワロー。
その姿を画面越しに見て、駄々を捏ねるレイヴンなんて聞いたコトない……、と呟いていたライラがとある依頼を提案してきた。
『こちらはどうですか。【クレスト資源庫襲撃】。クレスト社の保有する資源保管施設の設備と兵器生産用資源の破壊、とのことですが』
「お、カンタンそうじゃないか。報酬額はいくらだい?」
『30000Cです。良い条件かと』
「確かに破格だね。……依頼者は誰だい?」
施設襲撃の相場が10000C程度と考えると、かなり割りの良い条件である。
『武装集団クライムロック、だそうです。余り聞かない名前ですね』
「武装集団風情が相場の数倍で依頼、か。ふうん……怪しいな」
『そうですか?しかしレイヴン、これ以外今期の依頼で条件が合うものは見当たりませんが』
暫く黙考したスワローは、顔を上げると、渋々といった顔で画面のライラに向かって頷いてみせる。
「仕方ないな。分かった、その依頼受けよう」
『了解です。依頼の詳細を送ります。作戦は明後日0600開始です、機体の最終チェックはご自分でお願いしますね』
次の仕事も決まり、幾分晴れやかなトーンがライラの声色に混ざる。が、
「ねえライラ、この仕事が片付いたらどこか食事にでも行かない?ホラ、ボク専属になったお近付きってことでさ」
「お断りします」
スワローのナンパで一気に硬化した。


作戦当日の天候は、いつも通りスモッグと排気ガスを吸った灰暗い雲に覆われていた。『良い曇天』である。
絶好の殺戮日和――と、言えなくも無い。

『そろそろポイントに到達します』
ライラの声で思考の世界から現実に引き戻される。
(この子は仕事は出来るが、あんまり良いカオしてくれないなあ。まあ、そこが新人のいい所だけど)
スワローはコックピットのコンソールに作戦の詳細を表示させる。
施設と倉庫の破壊。新人でも楽勝な仕事だ。
「アナンタ、戦闘システム起動」
【ラジャー、戦闘システム起動します】
『味気ない』という理由だけで、有名女優のボイスサンプルでカスタマイズしたAI「アナンタ」が、重量2脚機体「アロウズ」を奮い立たせる。
ちなみにカスタム料は当然ながら自腹だった。

『ハッチ展開。降下OKです』
ライラからGOサインが出る。
「んじゃサクサクっと終わらせて帰りますか」
ブースターに火を入れ、アロウズが汚れた空から汚れた地表へと、その身を躍らせた。

重力に身を任せ落下していく。
鈍重な機体は落下速度を増しながら、大地に落ちていく。
【高度3000…2500…2000…1500…】
アナンタが艶やかで無機質な音声で高度を読み上げる。
【1000…500…、400、300、200】
残り100mともなると、地表の建造物が肉眼でもはっきり見えてくる。
スワローはフットペダルを踏み込み、ブースターの推力で落下速度を相殺する。

ドズンッッ

しかし、ブースター始動のタイミングが僅かに遅れ、無様な四股踏みを晒してしまった。
兵装であるバズーカなどは、全長が長いため、先端が柔らかい地面にめり込んでしまっている。
『見事な着地ですね、レイヴン』
間髪入れずにライラから皮肉が送られてきた。
「いやいや、これは演技だよエンギ。敵を油断させるための高度な駆け引きだよライラ」
「演技に夢中で奈落に落ちないようお願いします」
痛烈なライラの返しが来たところで、アナンタが周辺の状況確認を完了させる。
【スキャニング完了。周囲に動体反応、エネルギー反応ありません】
コホンと咳払いを一つ入れ、気を引き締め直し辺りを見渡す。
鬱蒼とした木々の中に、ポツンと人の手による建造物がある。
小奇麗な外見の建物の他に、格納庫や、(輸送機のためのものだろう)滑走路もついている。
「コレか。……倉庫というよりはなんか研究施設っぽいけどね」
『そうですね、私も同意見です』
「でもまっ、ここが指定ポイントだし、破壊してしまえば問題無いな」
話との食い違いにやや面食らいながらも仕事は仕事、細かな差異など良くある話だ。
スワローがバズーカを構え、トリガーを引こうと力を入れるのと、ライラが鋭く報告を入れるのは同時だった。
『広域レーダーに反応!3つの熱源体がこちらに高速で接近中!この反応は、……ACです!」
(タイミングが良過ぎるな。予感的中ってところか)
未確認ACは、レーダー上を真っ直ぐにアロウズの方へ向かってくる。
何が狙いかは明らかだった。
「ダメもとで何か言い訳でもしてみるかなー。ライラ、あちらさんに通信を」
『ダメです。応答ありません』
「うーん、『まだ』何もやってないから言い訳できるかなーと思ったけど、やっぱプロだよね。さすがさすが』
どのような言い訳を考えていたか知らないが、非情が売りであるレイヴンに、そのようなものが通用するわけがないのだが。
スワローはこの明らかな危機にも動揺が見られず、泰然としている。能天気なだけかもしれないが。
『え……、これは一体?未確認ACは接近を停止。こちらから一定の距離を保ち、第一種戦闘態勢のまま包囲している模様』
オペレーターのライラも困惑しているようだ。
攻撃もしてくるわけでもない。
しかし通信も受け付けない。
「変なことになったなあ」
『便宜上敵性と認定します。敵ACのデータの照合完了。どうやらクレスト所属陸軍のようです』
ライラがそっけなく報告を入れる。
「まあそうだろうね、クレストの管理下にいるんだから」
クレスト所属機ならば、何か警告なり威嚇なり――最悪攻撃をしてきても不思議ではない。
しかし、クレストACは沈黙を保っている。
気まずい硬直を打ち破ったのは、意外なものだった。
『資源保管施設に変化があり。格納庫が開かれていきます。……!?』
格納庫が開き、中のモノがスワロー達の目に映る。

『あれは、パルヴァライザー!?』
スピーカーからライラの驚愕した声がコックピット内に響く。

独特のシルエットに、オレンジを基調にしたツートンカラー。
両腕にはロングブレードの代わりにマニュピレーターが付いていてライフルを装備している。ディテールこそ違えど格納庫から姿を現した二脚型の機体は、幾度も人類と交戦してきた旧世代の機動兵器『パルヴァライザー』に酷似していた。

「いや、似ているが、違う。コアにクレストCCM-0V-AXEの特徴がある。アレは、少なくともACだな」
スワローが酷く落ち着いた様子で分析結果を述べる。
『ではクレストの新型AC?』
「……まあ旧兵器の技術は流用されているだろうね。鹵獲したパルヴァライザーから全く異なる機体制御技術のサルベージに成功したという話や、新物質によるジェネレーターのエネルギー効率の革新に成功したという話は耳にする。「ターミナル・スフィア」という墓荒らし集団の噂くらいは、ライラも知ってるだろう?」
『ええ、独立した軍事力を保有する少数精鋭の旧世代調査団体、と記憶しています』
「ま、あのババアは調査が一番仕事は二番とか抜かしてるしね。己の好奇心を満たすためだけに、パルヴァライザーをとっ捕まえることぐらいしてそうだな」
スワローの声に懐かしさが混ざる。
『レイヴンはターミナル・スフィアに知り合いがいるのですか?』
「……いや、まあ、ね」
ライラが不思議そうに聞くと、頬を掻きながら笑ってはぐらかされた。
この男にも何か言いたくない事があるようだ。
これ以上の詮索は無意味と悟ったか、ライラは新型ACの解析作業に移る。
『あの新型ACは起動していないようです。エネルギー反応がありません。それ以外の情報は残念ながら解析不可能です』
クレストの新型と思われるパルヴァライザーもどきは、不気味に首を垂れ、動く気配は無い。
クレスト軍のACも同様に動きは無い。
スワローも動くに動けず、バズーカを施設に向けたまま固まっていた。
この沈黙を破ったのは、やはりライラの状況報告だった。
『敵クレスト所属AC全機、こちらから離れていきます。索敵レーダー範囲から離脱を確認』
全く動きを見せなかった敵ACが、一斉にアロウズから離れていく。
やはり全くの無言だった。

「良く分からないな。何かあったのは確かみたいだが」
『衛星からの情報によると、どうやら北西に向かっているようです。我々の他にも侵入したACが居るようですね』
目の前の敵よりも脅威となると判断したのだろう。それともアロウズをこの新型に撃破させようとでもいうのか。
【敵眼前ACにエネルギー反応】
アナンタからの報告でスワローはレーダーから視線を引き剥がす。
今まで置物のように鎮座していた新型ACに灯がともっている。
数々のACを見てきたが、禍々しいと形容する他無い外見だ。
スワローは状況に対応できるように、敵新型ACをロックオン。いつでもトリガーが引けるように操縦把を握り込む。

だが注意していたにも関わらず、敵新型ACの機動が全く見えなかった。
レーダーで確認してようやく真上に垂直ジャンプしたのだと理解した。
「速い……!オーバード・ブーストか!」
エクステンションの補助ブースターではこれ程の推力は出せないはずだ。
しかし、ライラからの報告は予想を裏切るものだった。
『違います……、信じられませんが、通常のブースターとスラスターのみの推力です!』
通常のブースターのみでオーバード・ブースト並の出力があるということだ、この新型は。
(旧兵器だけかと思ったが、まさかあの技術まで組み込んであるのか!?)

アロウズの真上を取った敵新型ACは、両手のバーストライフルを交互に打ち込んでくる。
直上からライフルの弾丸が降り注ぐ。
スワローはレーダーで位置を確認しながら機体を急速後退。しかし避け損ねた幾らかの弾がアロウズの装甲を削っていった。
「結局こうなるのか!」
二次ロックの掛からないバーストライフルの特性上からか、それともロックオンシステムに不備があるのか、どちらとも言えないが、敵の狙いは甘く、鈍重であるアロウズを捉え切れていない。
(無人機か?狙いはお粗末だな……。まあ、あの加速では常人どころか並の強化人間でも耐えられんが)
しかし圧倒的なスピードでサイティングすらままならず、視界外からの射撃が容赦なくアロウズの装甲を削っていく。
【AP80%に低下】
アナンタがこちらの劣勢を淡々と告げる。
『本社に増援を要請しましたが、到着に1時間以上掛かります。レイヴン危険すぎます、撤退を』
ライラが撤退を推奨してくる。
だがスワローは無駄に冷静だった。
「あのスピードから逃げられると思うかい」
機動力に数倍の差があるため、尻尾を巻いて逃げたとしても、簡単に追いつかれるだろう。
あちらの通常速度は、こちらのオーバード・ブースト以上なのだ。
『しかし!』
尚もライラは食い下がる。「逃げて」と、そう言っているのだ。
小心者で、大した腕でもないこの男が、この方法意外で生き延びる術は無いはずだ。だから「逃げて」と、そう言っているのに――
「まあこのままだと――死ぬね。間違いなく」
『だったら!』
ライラの声は悲鳴に近い。
「いいかいライラ、良くお聞き。オペレーターというのは常に冷静でいなければいけない。冷静に状況を判断し、レイヴンのサポートをしなければならない。良いオペレーターになりたいなら、この事を忘れてはいけないよ、いいね?」
上を取られた状態でスワローは回避行動を取り続ける。
だが、コンデンサー内のエネルギーもそろそろ蓄えがなくなってきている。このままではいずれ捕まり、蜂の巣にされるだろう。
『こんな時に何を……』
【AP60%に低下】
アナンタが無情に報告を続ける。
「勿論ボクもこのまま死ぬつもりなど毛頭無い」
意外なことをこの三流レイヴンが言い出した。まさか玉砕でもするというのか。
しかし次のスワローの言葉は、ライラにとって更に意外なものだった。
「ライラ、本社に回線09Xで緊急通信を」
『え……?しかし援軍要請は既に……』
「いいから!言う通りにするんだ」
『りょ、了解っ』
尚も敵新型ACからの攻撃は続いている。
反撃でバズーカを打ち返すが、ロックオンすらままならず、カスりもしない。
『レイヴン、回線繋ぎます。どうぞ』
コックピットコンソールに白衣姿の妙齢の美女が映し出される。
"あらスワロゥ、どう…の?実験……ないのに"
回線が安定していないのか、ジャミングでも掛けられているのか、ノイズ交じりの映像だったが、やがてはっきりとした線を結んだ。
「やあディタ、雰囲気で伝わると思うけどピンチでね。機体の使用許可を貰いたい。ASAPだ」
スワローにディタと呼ばれた女性は僅かに驚いた様子だったが、すぐに合点がいったようで、手元のキーボードを打ち始める。
『火急のようね。分かったわ、使用を許可します。認証コードの入力はそちらでお願いね』
「ありがとう恩に着るよ」
『いいのよ。それよりも面白い土産話を期待してるわ。ご武運を』
最後にウィンクを残し、ディタの姿が消える。
『レイヴン、今のは?』
「あー、ごめんライラ。機密ってヤツでね、君の階位では話すことができないんだ。それより少しの間通信を切らなければいけない。けど心配しないでくれ、必ず戻る」
ライラは少し逡巡したが、すぐに頷いた。
『――わかりました。ちゃんと戻ってきたらデートのコト、考えてあげてもいいです。どうか、ご無事で』
ライラの声を聞き終えると、スワローは通信を切った。
「これは俄然やる気が出てきたな」
そう言ってスワローは獰猛な笑みを浮かべる。
普段の飄々とした態度とはかけ離れた、兇悪な猛禽の姿がそこにあった。

オーバード・ブーストで一旦距離を取り、左手の携行グレネードをパージして敵新型ACに投げつける。
勿論当てるのが目的ではない。
「ちょっと時間を稼がせてもらう」
ロックオンを『グレネードに』向け、トリガーを引く。
バズーカの砲弾が、放物線を描いてアロウズと敵新型ACとの間に投げ込まれた携行グレネードに当たり、弾薬に誘爆して紅蓮の壁を作り出す
炎の壁は、敵新型ACの姿を赫光で覆いつくす。
爆炎が視界を遮っている内に、アロウズを後退させコンソールにプログラムコードを入力。
「アナンタ!コードNX-28483だ!」
コードを確認したアナンタが命令を復唱する。
【イエス、マスター。コードNX-28483確認『ARROWS』起動します】

その瞬間、アロウズの機体が爆ぜた。
いや、爆発したように見えた。
実際には指向性の形成炸薬が増設した装甲を吹き飛ばし、本来の姿を晒し出しただけだ。
現れた新しい機体には、ミラージュ社に見る流線型の美しいフォルムに、クレスト社に見る直線のマッシブさが融合している。
塗装も迷彩も施されていない銀色の中量2脚が、鈍重な重量級の装甲を弾き飛ばし出現した。

腰部からパルスライフル程度の大きさの短身銃を取り出す。
小型軽量化されたプラズマライフルだ。
【インテグレイトコントロール接続】
コックピットのシートからプラグがせり出しヘルメットに合着。そしてスワローの脳神経と機体システムが直接接続される。
内部外部問わず、大量の情報がスワローの脳に直接流れ込んで来る。
「ぐ、うぅッ!」
脳を圧迫するほどの情報量に、スワローの顔が苦痛に歪む。
【コジマ粒子、安定しました。クイックブーストスラスターオールグリーン。200秒間のみ戦闘推力での稼働が可能です】
「……ふぅ。3分もあれば十分だ。」
自分の体に力がみなぎるような錯覚に、否が応でも気分が高揚する。
もはや自分は狩られる側ではなく、狩る側なのだ。

視界の回復したらしい敵新型ACが猛スピードで突っ込んで来る。
ライフルがアロウズの肌を喰い破ろうと襲い来るが、後方に一瞬で100m程飛び退り、回避する!こちらも通常ACでは考えられない速度だ。
強烈なGが、スワローの骨格を軋ませる。
「……ッ!飛ばし、過ぎだ!アナンタ!Gキャンセラー効いてないぞ、どうなってる」
【Gキャンセラーはオミットされています】
「そういやそうだった……。」
敵もこちらの変化に気付いたのか、今まで以上の速度で追い縋る。
「クソッ、無傷では帰れそうにないな!」
後退しながらトリガーを引き絞る。
破壊力を追求したプラズマがパルヴァライザーもどきに迫るが、弾速があまりにも不足していた。
余裕綽々で回避される。
「普通に撃っては当たらないか。……アナンタ、ロックオンを解除。手動でやる」
【ラジャー、オートロックオン解除】
相手の機動予測をコンピューターに任せていては当たらないと考えたスワローは、火器の生命線とも言えるロックオンを外す。
(無人と有人の決定的な差を教えてやるよ。閃光で怯んだりした所を見ると、視覚情報メインでの回避運動か。ならば!)

プラズマライフルをわざと一定の射線で撃ち、敵新型ACを研究施設の方向へ誘導していく。
(お前の弱点はその馬鹿げた機動力だ)
その時耳障りな警告音が響き渡る。聴覚も研ぎ澄まされているスワローは思わず耳を塞ぎそうになった。
【銃身異常加熱。40秒後に爆発します】
「これだからエネルギー兵器は大嫌いなんだよッ!」
スワローはアナンタに向かい怒鳴り散らす。
(まあいい、その前にケリをつけるだけだ!)
スワローは後退から一転して追撃の姿勢を取る。
プラズマの光弾に追い立てられた敵新型ACは、施設の壁に沿うように回避し続けている。
しかし目の前を壁で塞がれてしまった。スワローは最初からこの場所へ誘い込むために、ワザと避けやすく撃っていたのだ。

築壁とプラズマに挟まれた敵新型ACは、他に逃げ場が無いと悟ったか、真上に急速上昇する。
(そうだ、もう上にしか逃げ道はない)
スワローの予測通り、真上にクイックブーストをかけた敵新型ACの左足を、プラズマが撃ち抜いた。
パーツの部品と火花を撒き散らし、片足を失いバランスを崩した敵新型ACは、回転しながら施設の壁に叩き付けられる。
轟音を上げ、コンクリート片と埃煙が舞い上がった。
「チェックメイトだ」
ようやく体勢を立て直した敵新型ACのコアを、アロウズのプラズマが正確に撃ち砕いた。

【目標の沈黙を確認。エネルギー反応、動体反応共にありません。インテグレイトコントロール解除】
中枢を完全に破壊され、機能を停止した新型ACを確認し、スワローは溜め込んだ息を盛大に吐き出した。
「くはっ、色々と疲れた……」
一息ついたのも束の間、小型プラズマライフルが過剰熱量に耐え切れず爆発する。
格納武器はこれ一つだけなため、今のアロウズは丸腰ということになる。
「あー、……まあ敵を倒した後だからいいか」
自壊炎上する大嫌いなエネルギー兵器を見ながら、スワローはポツリと呟く。
【広域レーダーに反応。先程のクレストACが一機接近中です】
「ふむ。新型の反応が消失したから驚いて戻ってきたって所かな。一機だけだとすると、他の二機はまだ戦闘中か、あるいは……」
煙を上げ、動かなくなった敵新型ACを見やる。
「手土産に腕の一本でも持って帰りたいところだけど、荷物抱えて逃げ切れそうにも無いな。口惜しいけど諦めるか」
【クレストAC、索敵レーダー範囲内まで接近。マスター、ご命令を】
アナンタが状況の判断を促す。
「仕方ないな、このままサッサと逃げることにするか。アナンタ、亜音速推力でオーバードブースト機動」
【ジェネレーターの電圧が不足しています。亜音速推力では起動後116秒後に機能停止します】
「……、じゃあ準戦闘推力で起動だ」
【ジェネレーターの電圧が不足してい……】
「分かったよ!通常巡航用推力で起動だ!」
【ラジャー、オーバード・ブースト、スタンバイ】
溜息をつきながら、スワローは今回の戦闘を思い浮かべる。
あの新型には旧兵器の技術と、不完全ながらも「例の技術」が使われているのは間違いない。
このアロウズもその技術を流用して作られた試験機だ。
(やはり企業連中も本格的にNEXTに取り組み始めたか……。また面倒なことになりそうだなあ)
【オーバード・ブースト始動】
噴射炎を引きながら、アロウズがクレストの領空を疾駆する。
「アナンタ、グローバル・コーテックスに通信回線を開け。輸送機に迎えに来てもらおう」
【ラジャー、回線開きます……】
(さて、ライラには何て言い訳しようかな?)
スワローが何よりも真っ先に思い浮かべたことは、可愛い可愛い自分専任のオペレーターだった。

 第四話 終

→Next… 第五話

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