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第五話①/ /第六話/ /第七話


 第六話  執筆者:ユウダイ・ユウナ

 少し外れにある小さな喫茶店にユウとレナはいた。特に任務や依頼がない時はレナは店の手伝いをしている。もともとこの喫茶店はレナの父親がマスターをしており、彼女もウェーターとして働いていた。ユウはこの喫茶店の常連客である。しかし、ユウにしろレナにしろ複雑な事情を過去に持つ人間だった。ユウの父親はレイヴンであり、トップランカーであった。しかし、イレギュラーの認定を受け殺された。レナの父親もレイヴンであり、同じくイレギュラー認定を受け殺されていた。今の父親は本当の父親ではなく、彼女の父親の兄が引き取って面倒を見ている。しかし、ユウは父親と同じレイヴンとして今を生き、レナは家業である喫茶店で働きながらユウの専属オペレーターとして活動していた。ユウが父と同じ道を進む可能性が高いレイヴンとして生きるのは理由がある。“父を殺した奴を見つけ出し、仇討をする”。その目標を達成するために、日々精進していた。ACやMTなどの勉強もし、父親から教わった操縦技術に磨きをかけた。アリーナにも意欲的に参加していた。しかし、アークは政治的な理由で彼を下位ランクにおいていた。実力はトップランカーにも迫るものだった。それは父親から伝授された操縦技術や戦闘のイロハと、持前の天性がもたらしているものである。だが、アークはランクを上げていくうちに自分たちが秘匿している様々な情報に近づくことを恐れていた。そんな背景があり、いまだに下位ランクのレイヴンとして一般には認知されていた。
「次の試合に勝っても、難しいわねぇ・・・・」
レナもその事情を把握しているため、ユウの苦しみを理解していた。だからこそオペレーターに志願したといってもいい。
「アークが先手を打ってるだけにすぎない・・・。こればかりはどうあがいても、難しいものがあるよな・・・・」
コーヒーを口に運びながらユウは、どこか諦めたように呟く。そんなユウを見て、レナは少し不安になった。彼との付き合いはかれこれ10年近くになる。レイヴンとオペレーターとしての関係以上に、私生活での付き合いは長い。それゆえ、“彼”がいる生活が半ば当たり前になっていた。それ故、ユウを失うことを恐れていた。レイヴンになった以上、いつ命を落とすかわからないのは知っているつもりだった。しかし、自分を娘のように育ててくれた今の父親同様、ユウにも非常に特別な想いを寄せていた。だからこそ、よけいに失うことを恐れていたのだ。だが、そのような話をあえて持ち込まないのは彼女なりの理由がある。彼女も彼女でアークや企業に対して不満を持っていた。ユウの父親とは違って、彼女の父親はイレギュラーの認定を受ける理由がなかったからである。一言で片づければ罪を押し付けられたということになる。なぜ殺したか・・・・その理由を知りたいがために、アークとの関係が強くなるオペレーターになったのだ。そんな理由をユウが知ってるかどうかはわからないが、ユウの目的のサポートもできるという利点があった。危険な賭け故、自分自身の命も危険かもしれない。でも、やらないよりはましだ・・・そういいきかす。携帯端末のコールでレナは我に返る。
「任務?」
「そのようだ。」
ユウは任務の依頼があった時は、持ち歩いている携帯端末に情報が届くようにしていた。今回はどのような任務がきたのか・・・、ユウは端末を取り出し目を通す。
「・・・・食糧不足が深刻なコロニーへ支援物資を輸送している車両が何者かに襲撃された・・・。任務は、襲撃現場へ行き被害状況を調査。敵が出現した場合は速やかに迎撃。可能であれば襲撃したものの特定・・・か・・・・。」
各地にはコロニーと呼ばれる居住地区がある。しかし、ほとんどのコロニーが食糧不足や治安などで頭を悩ませていた。各企業が資金を出し合って救援物資を送るものの、襲撃を受け救援物資を失ってしまうという事態もあった。
「受けるの?」
「そのつもりだ。すぐに出るから支度を。」
「わかった。」
レナはエプロンを脱ぎ、自室のある2階へ行った。ユウはコーヒー代の精算を済ませ、ACが係留されているトレーラーを表に出した。

襲撃現場に到着し、ユウは愛機-シャドームーン-を起動する。さっそく、周囲の調査を始めた。調査を始めていくうちに、ユウはある事実に気づく。
「こいつは・・・・」
車両のコックピット部分が的確に撃ち抜かれていた。そこから考えられる可能性を、ユウは頭の中で整理する。
『なにかわかった?』
「襲撃したのはスナイパーライフルを装備したACだ。おそらく、クレストの連射性能に優れたタイプだろう。」
『じゃあ、襲ったのはレイヴン?』
「おそらく。しかし、アーク所属なのかあるいは・・・・」
『サンドゲイル・・・・』
「否定はできんが、アークが雇ったレイヴンとみたほうが可能性高い。実際、ミーラジュ・クレスト・キサラギはコロニーの支援計画には反対の立場だ。そのいずれかがアークを介して依頼したのだろう。そうすれば自分たちの手を汚さずに計画の妨害ができる。」
『ひどい…』
確かに・・・とユウは思う。今回の件で何人の人が被害を受けるか・・・・いや、命を落とすのか・・・・・・それだけ状況が悪いというのに、このような襲撃事件は後を絶たない。と、ユウは周囲の状況が変化したことに気づく。レーダーにはなにも映っていないが、何かが動いているのだ。カメラの故障とも考えられるが、そうだとしてもやや不自然であった。
「ステルスMTか・・・・」
レーダーやカメラに映りにくく、それでいて動くことができるのはそれ以外なにもなかった。
『こっちでも確認してるわ。MTのいる所だけ空間がゆがんでる。それでも目視でかろうじているかどうかを確認できるぐらいだわ。レーダーが無意味だから、射撃武器は無駄よ。』
「承知している。」
シャドームーンの上半身を回転させ、その勢いを利用して背後の空間を月光で斬り裂く。なにもないはずの空間が、溶解する。背後に1機、MTがいたのだ。
「レナ!」
『スモークディスチャージャー起動!』
レナは輸送トラックに搭載されているスモークディスチャージャーを起動させた。状況を五分に持ち込む。それだけではなく、敵のステルス性能を低下させる狙いがある。
『敵MT、残り4』
スモークディスチャージャーを使ったことで、可視光線を利用して姿をけすことができなくなったMTをレナは特殊な暗視ゴーグルを使って見つけ出した。
「余裕だ!」
MTは何が起きているのか理解できてないのか、おどおど周囲を見渡しながらひとつに集まっていた。そこにめがけOBで一気に距離を詰める。月光が蒼い刃を形成し2機を斬る。OBを切り、通常ブーストで強制的に方向転換をし残りの2機に迫る。MTはライフルを乱射するがシャドームーンにかすりもせず、ただむなしく空間を過ぎる。再び月光が輝き、MTを切り捨てた。
『周辺に敵反応・・・・』
反応なしと言いかけたレナが言葉を改める。
『鈍足で接近する4足AC確認!』」
鈍足の4足と聞いた瞬間、ユウはため息をつく。
「またあいつか・・・・。」
『よう、助太刀に来たぜ!』
4足ACを駆るジャック・ロールが陽気な雰囲気で話しかける。ユウはため息をつくしかなかった。
『って、もう終わってるのかい?なんだよ・・・・』
「お前が遅いだけだ。」
『いやね、出撃しようとしたらチンピラに絡まれてさぁ・・・それで・・・。』
「レナ・・・今回の任務、もしかしたらチームトライアングルそのものに依頼しているみたいだな。」
チームトライアングルとはユウが所属するACのチームである。基本的にはアリーナでのチーム戦で活躍するが、任務でもチームとして遂行する時がある。リーダーはアンジェ・ブロウニングという女性レイヴンであり、搭乗ACは武装が射突型ブレードとレーザーブレードのみという超近接特化型のアイゼンを駆る。
『そのようね。今、アンジェに確認とったけど彼女はスナイパーACの追跡をしているって。』
「長くなりそうだな、この任務。」
『そうね・・・。』
『で、喧嘩に勝ったのはいいけど弾使い果たしたから補給して・・・』
「だれか、この馬鹿止めてくれ。」
『無理な相談ね。それは』
『それで・・・って、誰が馬鹿だ!』
「あ、聞いていたんだ。」
『普通に聞こえるよ!鴉はギャグを忘れないっていうじゃないか!』
「それを言うなら“鴉は恩を忘れない”だ。というか、使いどころが違う。」
『細かいこと気にするな。』
『いや、ここは気にしようよ。』
『レナちゃんまでそんなこというの?』
『黙れ!』
『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』
ユウはトレーラーに蹂躙される4足ACを見て、緊張がほぐれるのを感じた。ジャックが来たことで、不測の事態にもより柔軟に対応できる。備えあえばうれいなし・・・というわけではないが、近接戦闘重視のシャドームーンに対局するかのようにジャックのAC、クールデストロイは射撃戦に特化している。両腕にリニアライフルを装備し、エクステンションには迎撃ミサイル、両肩にはチェインガン、さらにエネルギータイプのEOを搭載したミラージュ製のコアを装備しているため火力はかなりのものだった。欠点と言えばシャドームーン以上に重量過多であるため、機動性が低い点である。ジャックいわく、「基本撃ちまくるだけ」のアセンでるため機動力はおろか、弾薬費すら気に留めていない。しかし、被弾時に与える熱量はシャドームーンよりもクールデストロイのほうが上回っている。そういった面でも、シャドームーンとクールデストロイは連携も視野に入れたアセンだということがわかるのだ。チームトライアングルはクールデストロイが弾幕を張り、シャドームーンがミサイルで牽制、アイゼンが突っ込み1機を射突型ブレードで仕留める。その後、アイゼンは軽量故の機動力の高さを活かして敵を翻弄、クールデストロイがけん制射を加えてシャドームーンがOBで敵との距離を一気に詰めて月光で斬り裂き1機撃破、最後にクールデストロイが残りの1機を仕留める・・・という戦法を基本としている。交互に攻撃・支援が入れ替わるため対応するにはそれなりのスキルが要求されるが、実行する側はよりスキルが要求される。連携はもちろんだが、仲間の機体特性も頭に入れておく必要がある。チームトライアングルの3人は、思想や理想に共通している部分が多く、それぞれの機体特性が互いに補い合うものであった。いうなれば、フォーメーションを組みやすい構成だったということである。それが、彼らのチームワークを可能とした。
「調査は終わった、アンジェと合流しよう。」
『待って、接近するACあり!』
「なに!?」
『んだよ、こんな時に・・・』
『でも、こんなスピードで接近できるACなんてありえないわ!』
レーダーを確認してみると、確かに異常なスピードで接近してきていた。ユウの知る限り、ここまで極端な性能を発揮できる機体は少ない。
『気をつけて、このAC・・・なにかあるわ。』
レナの警告と同時に、ACがライフルを構える。反射的にレバーをひねり、機体を射軸からずらす。だが、機体に弾が直撃する。
「何!?」
あまりにも正確な射撃にユウは驚きを隠せない。高速で移動しながら、瞬時に移動した物をノーロックで攻撃するなど通常のACでは不可能である。今度は敵ACのスピードが速まる。
「OBか!?」
シャドームーンの横を通り過ぎ、クールデストロイに向かっていく。反転させ、後を追うが、あまりにも速いため追いつけない。
『こっちにくるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
クールデストロイはチェーンガンで弾幕を張り、接近を阻止せんとする。敵は一旦距離をとる。
『敵AC判明、フィクスブラウよ。』
「サンドゲイル・・・。」
ACの名前から組織の名前が頭をよぎる。
『お前達はアークの刺客か?』
敵から通信だと気づいたのは、レナの声ではないと認識した時だ。
「違うな、今回のクライアントは救援物資を待ちわびていたコロニーだ。我々は、襲撃現場の調査、輸送中の車両を襲撃したACの追撃の任を受けている。アークは関係ない。むしろ、アークは俺にとって・・・仇そのものだ。」
個別回線であることを確認し、事実をありのままに述べる。それでも緊張は続いていた。
『では、お前たちが襲ったのではないと・・・・。』
「そうだ。」
しばらく沈黙が続く。先に比べて緊張の度合いは軽減している。ユウは無駄な戦闘を避けたかった。と、フィクスブラウが突如シャドームーン目がけ突撃する。
「それが・・・答えか・・・・。」
レーザーブレードを構え斬りかかろうとした瞬間、シャドームーンは月光を起動させ、敵の刃を受け止め、そしてはじく。距離が詰まった状態で再びにらみ合うシャドームーンとフィクスブラウ。
『やるな・・・・。その腕で下位ランクとは・・・・惜しい・・・』
「これもいろいろと事情があってね。」
『よかったらサンドゲイルに来ないか?その腕なら、こっちのほうが活躍できるぞ?』
意外な勧誘にユウは虚を突かれる。戦闘を仕掛けておいて、勧誘・・・・もしかして仲間を求めてるのか・・・一瞬、そんな考えをよぎるがすぐにしまう。
「せっかくの誘いだが、お断りしよう・・・。チームトライアングルが気に入ってるし、それにある目的を達成するためにも・・・。」
『そうか・・・。久しぶりに熱くなった。感謝する』
フィクスブラウは、反転し来た方向に向かって戻っていく。夕日に照らされたシャドームーンが幻想的な輝きを魅せていた。コックピットを解放し、頭部の横にでたユウはフィクスブラウの姿が見えなくなるまで見送り続けた。

「ったく、見失うとわねぇ・・・。」
アンジェは先ほどまで輸送車両を襲撃したACを追跡しいた。だが、MT部隊の妨害がはいり見失ってしまったのだ。
「これではユウやあの馬鹿に申し訳が立たない・・・・。さてどうしたものか・・・。」
機動力は高く、追いつける自信はあった。だが、それは逃走ルートが特定できていればの話であった。MTは逃走ルートを特定されないよう、巧みな戦術で襲撃してきたのだ。しのため、追撃する術を失ってしまったのだ。周囲には撃破したMTの残骸が静かに散らばっている。と、そこへ1隻のホバー船が接近してくる。
「あれは・・・・」
アンジェは記憶を呼び起こす。チームトライアングルを作る前、自身が所属していた組織・・・・サンドゲイルが所有するホバー船であった。



 第六話 終

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