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第七話/ /第八話/ /第九話


 第八話  執筆者:ヤマト

「また、この感覚」
生体と機械が感覚を共有する時の独特の不快感、知らない筈の知識、わからない筈の感覚が一瞬で未知から既知へとシフトする。ついで自分の中に他人がいる。旧世代の技術を復活さようとしている組織を攻撃する為にナインボールを起動させたハスラーワンという名の男だ。
「っ…ハスラー、入り過ぎ」
(解った)
私の中に入り過ぎたハスラーワンの意識を外側へ追い出しながら起動シーケンスを立ち上げる。
本来ならナインボールの起動に私は必要ない。このナインボールは負荷低減型ネクストのためAMS適正の高いハスラーワンなら一人で操れる。にも関わらず生体CPUである私が同乗しているのは戦闘になるとハスラーワンが機体の限界以上の性能を要求し機体がオーバーロードするからだ。パイロットを守るはずの私は機体を守るためのリミッターになっていた。システム、機体、武装、すべての情報が意識に流れ込んでくる。問題無し。
「Active」
そう告げると同時に体中が継ぎ接ぎになった気がする。
脆弱な肉の皮は強固な複合金属の装甲へ、心臓は重厚な電磁音を響かせるジェネレータへと、それぞれ感覚を共有していく。機体全体にコジマ粒子が潤滑するにつれて力が漲るのを感じる。
(コジマ粒子は?)
私と同じく機体とシンクロしているハスラーワンの意識を感じとる。
「安定している。」
答えると今度は満足そうな意識が飛んできた。
(結構だ…行くぞ)
そう言うと機体の巡航用OBを起動させ、目的地である旧世代技術解析財団、通称ジシス財団の研究所の一つへと駆け抜けていく。
道中、ふと冬眠前の事を思い出した。

「調子はどうだ?」
「問題ありません。パイロットとの相性ですかね、負担が目に見えて少ないですよ」
実験室を見ながら科学者と思われる白衣を着た男達は話す。ネクスト開発研究所では今日も制御機構の実験が繰り返されていた。
(エネルギー源もないのに馬鹿な人達)
既存のエネルギーではネクストの性能は生かせない。故に現在でも新たなエネルギーを求めて調査隊は各地を周り、科学者は新エネルギーを開発中だ。その間に制御機構だけでも確立させたいのだろう、毎日同じ事の繰り返し。
「ナカジマ、どうだ?」「軽い違和感はあるが、これならノーマルと変わらん」
今日のパイロットは新人だ。昨日までの人は元々AMS適性も低かったからか死んだようだ。
(私がクッションになっているからそんな酷い負荷も無いのに)
生体CPUとして生まれて2年と4ヶ月…私の体は13歳くらいの少女になっていた。人では無くモノとして扱うように遺伝子操作を受けて生まれたのだから成長は早くプログラムされた体型になると後は安定期を迎え、死ぬまで老いる事もなく身体は維持される。機動兵器に同乗するのだから、背は低く、体重も軽い方がいい。試験的に06は大人の女にしたそうだがパイロットとの相互干渉が酷く、早々に凍結されたらしい。
生体CPUといえど、やはり人間である。ホルモンなどの影響を受けてパイロットと生体CPUの双方に悪影響を与え、その内の1件は社会上あまりよくない程の精神汚染を引き起こしたそうだ。他にもパイロットの意識を食い破ったり、逆に06が突然発狂する等、挙げていけばキリがない。結局、生体CPUは13歳前後で性別機能が曖昧な状態の方が扱い易い、という事が決定したため、私の体は少女のままになった。
ナカジマというパイロットとは相性がいいのか、開発は加速度的に進み、6ヶ月もすればネクストの開発は一応の完成を迎えた。肝心の動力源が無いままに…。

「おい09!避難するぞ!ついて来い!」
「避難?」
待機室で休憩していた私の所へ血相を変えた主任が飛び込み乱暴に手を引いた。
「何があったんですか?」
「近くの施設でテラ・ブーストの実験に失敗したんだ。大規模な粒子汚染が観測されている!だから06は使うなと言ったのに!」
 06?確かパイロットとの相互作用が酷く凍結されたはず…
「06は凍結処分と記憶してます」主任に抱き上げられながら記憶を口にする。
「そうだ。パイロットに悪影響を与える支援機構なんて使えない、だけど無人機なら大丈夫とか言う馬鹿がいたんだよ。テラブーストの制御をやらせてみたらこれだ!」
言い終わると同時に激しい振動と爆発音が施設を襲う。
『パルヴァライザーの接近を確認。非戦闘員はシェルターに移動して下さい。』
通路を主任に抱き上げられて進む中、アナウンスが聞こえる。
「パルヴァライザー!?くそっ!やりたい放題だな!」
毒づく主任はシェルターとは別方向へ走り出した。
「シェルターはこの先には無い筈ですが?」
「解ってる、念のため君を最深度地下施設に連れていく。君がネクスト特化型でなければそこでパルヴァライザーを止める事ができるんだが…」
話す内に最深度地下施設に到着する。
「今からカプセルを用意する、お前は一時冷凍保存だ」
端末を操作しコールドスリープ用のカプセルのハッチを開けると私を中に横たえる。
「その内迎えに来るよ、九玉(こだま)」
「コダマ?」
「君の名前だ。昨日思い付いてね、データには僕が登録しておく。少しの辛抱だからいい子にしてるんだよ?」
私の頬を優しく撫でてハッチを閉じるとすぐに装置が動いた。急速に失われる意識の中でメモリーに自分の名前をセットする。
ー九玉ーそれが私の名前。
そして、目が覚めると見知らぬ施設にいた。聞けば私の生まれた時代は旧世代だという。
―随分と眠ってたのね―

身体が安定してからは冬眠前にしていた事を最初からやり直す日々が続いた。驚いたのはここではコジマ粒子という新たなエネルギー源があり、プロトタイプといえどネクストが開発されていた。さらに驚いたのはそのネクストの名前を聞いた時だ。
<ナインボール・セラフ>
それは私と同じ名のネクストだった。

プロトタイプ・ネクストのパイロットに会ったのは少ししてからだ、ハスラーワンという名のあまり好きになれそうに無い男だった。
シンクロを繰り返す内に彼の意識内に企業に対する敵意を感じ始めていた。いつまでも自分達の利益のみを求め、真に世界の安定を望んでないのだ。
「個の利益は企業の利益の先にある。焦る必要はあるまい?」
ハスラーワンへ依頼を届けにきた企業の重役はいつもそう言った。やがて利用されているだけと解った時には行動は速かった。負荷低減型ネクストを奪い、さらに長期間の稼動を見越して私も連れだした。
追っ手は凄まじかった。当然だ。最高のレイヴンが最高の機体を奪い企業に牙を剥いたのだ。説得あるいは抹殺を見越しての編成か常に20機以上の大部隊を送りこんできた。だが、負荷低減型とはいえ、こちらはネクスト。MT相手なら100機でも相手にできる。
ACとの戦闘も何度かあったが機体の性能とパイロットの技量からか全て撃破している。…ただ一人、施設を襲撃した際、施設を防衛していた「アロウズ」と名乗ったレイヴンを除いて。

 第八話 終

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