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 執筆者:継@(適当にどうぞ)

「AC用新型EN兵器運用試験」

 今回ファレが請け負ったミッションだ。
 新型と言うフレーズに胡散臭さを感じつつミッションを受託したが、怪しげなものに胸が躍るのは、技術者上がりの性だろうか。
 おそらく一般的な傭兵には味わう事のない感情だろう。
 まぁ、味わったところで、なにか得をする訳でもないような気もする。

 彼の愛機「パスカル」は一足先にクライアントへ出向いている。
 今回試験を行なう装置との相性や、試験兵器の情報漏洩を防ぐ調査のためだ。

 そしてファレ自身も作戦領域まで、これまた機密保持のため、愛機との再会を禁じられている。
 試験対象と、変わり果てた愛機の姿を想像し、期待と不安を交互に感じながら、彼はクライアントの輸送機の中で作戦領域への到着を待っていた。

 作戦開始30分前、一人の背の低い、インテリ風の技術者がファレを呼んだ。

「ファレさん、作戦領域に到着しました。これから作戦内容の説明を行ないますので、私と格納庫までご一緒願います」
 ファレは軽く返事をし、技術者に案内され格納庫へ向かった。
 その道中、技術者は簡単な自己紹介をし、今回の試験が自分がメインで担当する最初のプロジェクトによるもので、他のプロジェクトのメンバーからファレの噂を聞き、今回のミッションを依頼した事を、少年のように目を輝かせながら順を追ってファレに話した。

 暗い格納庫の入り口に到着すると、その技術者はファレに向きかえり、サーカスの司会のような大げさな動作をして、高らかに叫んだ。
「これが、今回テストしていただく、AC用大型ENキャノン、XAEC-960 ハロウィンです」

 その声に反応して、格納庫内のスポットライトが、これまたサーカスのように格納庫の一点を照らした。
 そこに映し出されたのはACの丈を超える長さと、重量級腕部の太さほどもある砲身を持つキャノン砲を、両手で抱えるファレの愛機「パスカル」だった。

「試験の関係で両腕部の手持ち武装はこのハロウィンに限定させていただきます。また、重量の関係で両肩の武装も装備させていませんが、それでも、若干重量過多状態となっておりますので、機動性がそれなりに低下しています」
 両手で装備する、しかも従来の物とは比べ物にならないくらい大型の腕部用武器に、ファレは声を失った。
 そして少しして技術者の言葉に疑問を抱いた。
「中量二脚とはいえ、コアや腕は重いものを装備しているわけでもないのに、それでも重量過多になってしまうんですか?」
 パスカルは中量二脚機体で腕部は軽量クラス、コアも中量クラスの中では比較的軽いものを装備している。
 手持ち武器がハンドガンとブレードであれば、グレネードを両肩に装備しても、重量過多になる事は無い。
 その上での疑問だった。
 しかし、そんな疑問は技術者の想像通りのリアクションだったのだろう、嬉々として技術者は答える。
「両腕での保持が必要なほど重いので、よほどコアや腕部を軽いものにするか、積載量がウリの脚部でないと重量過多となってしまいますね。ただ、理論上では制限される機動性を補って余りある威力と射程距離を実現できるはずです!」
「手持ち武器を制限されるくらいなら、武器腕でも良かったのでは?」
 どうやらこの質問も想像通りだったらしい、技術者は特にうろたえた様子も無い。
「それは開発当初から言われていました。ですが、両手持ちと言うことから、重量の問題さえ、クリア、あるいは無視すれば、腕部を自由に変更する事が可能です。つまり、同じ武器にも関わらず、APや実弾・EN防御力は任意の腕部の物になるわけですし、武器をパージした後には、格納兵器の装備も可能です。また、両手で保持する関係上、コアからの1点保持だった武器腕よりも、射撃時の安定性能も格段に向上しています」
 確かにスジは通っている。
 それに、現状では背面武装を除いた強力な武器となると武器腕くらいしか無い、手持ちではどうしても弾数や威力が制限されてしまう。
 そんな現状に一石を投じてみるというのも面白い試みである。
 そう思いをめぐらせ、小さな笑みを浮かべ巨大な煙突を大事そうに抱える愛機に、ファレは長い髪をなびかせ飛び乗った。
 ――あとは使ってみてのお楽しみ……か。
 システムを起動させた途端、コクピット内に腕部と脚部の重量過多の警告アラームが鳴り響く。
 重量過多機体が初めてと言うわけではないが、このアラームは慣れるまで時間がかかる。
 そんなやかましいコクピット内のアラーム音に混じって、技術者から連絡が入る。
「今回の作戦内容は"ハロウィン"の運用試験です。作戦領域内に無人ACやMTを複数待機させておりますので、こちらの指示に従って、待機している目標を撃破してください。これより格納庫のハッチを開きますので、出撃をお願いします」
 通信の切断と同時に格納庫のハッチが展開する。
 出撃可能のシグナルを確認し、ファレは愛機パスカルを輸送機から空へ跳び立たせた。
 機体が降下し始めると、ファレはコクピット内のコンソールに目を向ける。今のところ、ゼロに向けてカウントダウンをする高度計と、腕部と脚部の重量過多以外は特に目に付くようなものは無い。
 続けて、機体を少し揺らす。重量過多特有の鈍重な動きで機体が応えるが、腕部だけは特別反応が悪い。巨大な"ハロウィン"の重量だけではなく、その破格な外見による空気抵抗だろうか。
「全体的に動きが鈍いですが、重量過多の影響と思われます。ただ、腕部の動きの悪さが酷いですね」
「想定の範囲内の動作ですね。こちらでも遠隔で状態を監視していますので、何か気になることがあれば、こちらからも連絡します。……間も無く地上に到達します。機体もそうですが、特に"ハロウィン"に傷がつかないよう、慎重に着地してください」
「了解です」
 ファレは通信を切り、意識を足元に集中させる。機体のメインブースターを徐々に吹かし落下速度を減速させ、地上数メートルの高さで一度ホバリングする。
 そして、機体を前傾させないように体勢を整え、"ハロウィン"を厳重に機体に保持させ、ゆっくりと着地する。
「さすがですね。それでは運用試験を始めます。現在のパスカルの位置から北東方向、距離1100先の座標に無人ACが待機しています。特に目標までは遮蔽物が無いので、パスカルからも確認出来ると思いますが、まずは現在の位置に留まり、この目標を撃破してください」
「了解」
 ファレは短く返事をし、機体を北東に向ける。地平線にぽつんと人型と確認出来るかどうかという影が見える。
 距離1100と言うと射程距離強化型のスナイパーライフルの射程距離と同等か、少なくとも現在パスカルに搭載されているFCSのロック範囲外である事は確かな為、ロックオンも出来ず、コンソール上にも目標までの詳細な距離は表示されない。
 ロックオンモードを解除し、マニュアル操作で照準を目標に向ける。
「目標を確認。これより"ハロウィン"にて攻撃を行ないます」
 そう通信機の向こう側に告げ、ファレは操縦桿のトリガーを引いた。
 その瞬間、周囲は真っ白な閃光に包まれ、激しい衝撃がコクピットを揺さぶる。
 至近距離で射突型ブレードを被弾した時とも比較にならない衝撃に、ファレは声にならないうめき声を上げた。
 そして、気を取り戻す為に軽く頭を振り、あわてて機体の状態を確認する。
 損傷:なし、EN:レッドゾーン……
「EN容量をほとんど消費して1発……、それにこの反動……」
 ファレの驚きは、そのまま口から出ていた。
 それを聞いてか聞かずか、輸送機から通信が入る。
「目標への着弾を確認しました。初弾命中とは恐れ入ります。これが"ハロウィン"です。どうです、驚きましたか?」
「当たったの…? って、驚くも何も、こんなの初めてですよ! これだけの消費ENにこの反動、非常識すぎますよ!」
「お褒めの言葉と受け取っておきます。ですが、まだ目標の撃破には至っていませんので、引続き攻撃をお願いします」
 技術者は淡々と、だが、とても嬉しそうに話す。
 ――反動、消費ENは驚異的だけど、さすがに一撃必殺とはいかないか……。
 そう心の中でつぶやき、次の反動に身構え、目標を捉えなおし2発目のトリガーを引く。
 2度目の反動を全身に受けつつも、初弾の衝撃を経験したからであろうか、今度はそこまで衝撃の重さを感じなかった。
 そして"ハロウィン"から放たれたEN弾が地面を焼きながら目標へ一直線に進み、地平線上の影が光に包まれ、爆炎を上げる。
「目標の破壊を確認しました。1発目よりも機体の挙動が安定してますね」
 輸送機からも撃破確認の連絡が入る。
「2発で無人ACを撃破……、威力も非常識ですね」
「当然です。これだけの威力が無ければ、武器腕や背面武器と競争できませんからね。それに今回の目標は装甲もAPも低い軽量機ですから」
「なるほど、どおりで。でも、これだけの威力で、機体も武器自体も損傷が無いのも不思議ですね」
 そう、ファレが口にした途端、技術者の声のトーンが下がった。
「目の付け所が違いますね。詳細は機密ですが、ACの装甲よりも頑丈な素材を使っています。その為、高出力のEN弾にも耐えられますし、機体本体にも衝撃以上の影響は与えません。私からはこれ以上の情報は伝えられませんし、ファレさんにも知る必要は無いですよね?」
 当初の印象とは違う冷徹な声で、技術者は半ば脅迫するように言った。
 ファレは無言で答えるほかなかった。
「さて、それでは次の目標に移りましょう。次の目標はパスカルから東方向、距離2000で待機しているMTです。先ほど同様に現在の位置から攻撃してください。と言っても望遠カメラでも恐らく視認出来ないと思いますので、そちらのカメラに、目標の位置をマーカーで表示させます。マーカーの方向に向かって"ハロウィン"を撃ってください。着弾確認はこちらで行い、射撃の都度そちらに連絡します」
 気を取り直したのか、取り繕っているのか、技術者の声は元の声色に戻っていた。
「了解しました。これより攻撃を開始します」
 技術者の声を聞き、ファレも気持ちを切替える。
 パスカルのコクピットには、通信の通り東の方角にマーカーが表示されていた。
 そのマーカーに照準を揃え、トリガーを引く。
 "ハロウィン"から放たれる光弾が徐々に小さくなっていき、点滅する光の点になって、そして消える。
「着弾点がずれました。左に4度、上に7度修正してください」
 ファレは指示の通りに照準をずらし、再び"ハロウィン"を撃つ。
 小さくなっていく点が、消え行く刹那、明るく光を放つ。
「目標への着弾、及び撃破を確認しました」
 その後、複数の密集するMTへの射撃や、走行中の射撃に飛行中の射撃(これは射撃後チャージングになってしまったが)を行い、射撃のたびに襲い掛かる衝撃に脳みそがシェイクされながら、ファレは今までの武器をはるかに凌駕する威力、射程距離、攻撃範囲を見せ付けられた。
「これで今回の試験課程は全て終了しました。お疲れ様です。おかげさまで良いデータが取れました。ここまできちんとしたデータ取れるとは思ってもいなかったので、かなり助かりました。これより機体を回収しますので、こちらの指示するポイントに……」
 急に途切れる通信にファレは戦慄する。
「何かあったんですか?」
「ファレさん、良く聞いてください、未確認のACがこちらに向かっています。今回の試験の情報が外部に漏れていたようですね。私どもも護衛のACを雇ってはいますが、苦戦しているようです。"ハロウィン"を見られるわけには行きません。データは取得できていますので、至急"ハロウィン"を破壊してください」
「了か……」
 輸送機への返答の最中、パスカルの横を銃弾が掠める。
 通信にあった未確認ACが既にパスカルの近くまで到達していたのだ。
 あわててパスカルに回避行動を取らせるも、重量過多では全てをかわしきれない。
 数発の銃弾を受けつつ、敵対するACを確認する。
 ――軽量二脚…、武装は手持ちのライフルとブレードのみ……。こちらが重量過多で両手も塞がっているなら、あるいは……。

 敵ACはライフルを撃ちつつ、徐々に距離を詰めてくる。
 その行動にファレは一つの確信を持つ。
 そして必要な情報を技術者に確認する。
「一つ聞かせてください、今回パスカルには格納武器は搭載していますか?」
「搭載していませんが・・・、それを知ってどうするつもりですか? 早く"ハロウィン"を破壊してください!」
 技術者からの返答に少しガッカリしつつファレは応えた。
「依頼内容を中断。自機の生存を最優先とし、これより敵ACを破壊します」
「何を言ってるんですか!それでは困りま……」
 ファレは無理やり通信回線を切り、嬉々としてひとり言をつぶやく。
「まずはこちらが接近されたくないと、相手に思わせるために……」
 言いながら、ファレは惜しげもなく"ハロウィン"を敵ACに向け撃つ。
 しかし、目標は無人ではなく人の乗るAC、しかも軽量二脚型であればたやすく避けられてしまう。
「そう、それで良い……」
 怪しげな笑みを浮かべつつ、EN容量に気をつけながら"ハロウィン"を撃つ、それなりに回避行動も取っているが、やはり全弾回避はできず、散発的にパスカルの装甲は削られる。
「どうしました? ライフルだけでパスカルを削るには時間が掛かりますよ?」
 徐々に減っていくパスカルのAPをファレは気にしていない。
 そして、あたかもファレのひとり言が聞こえているかのように、敵ACはライフルでの攻撃を控え、パスカルに接近を始めた。
 幾度と無く襲い掛かる"ハロウィン"の高出力EN弾をことごとく避けながら、"ハロウィン"の長大な砲身が届くほどまで接近したところで、敵ACは ブレードに光をたたえさせる、その瞬間。
「そう、普通ならそうしますよね」
 ファレは短くつぶやき、パスカルの腕を"ハロウィン"ごと、敵ACに向けて思い切り振り回した。
 その超重量の金属の固まりは、今まさに切りかかろうとする腕をへし折り、コアを押しつぶす。
 "ハロウィン"の重量もさることながら、高出力EN弾に耐えうる為の頑丈さが、この野蛮とも言える攻撃をファレに行なわせた。
 大型ENキャノンと言う名の鈍器の直撃を受けたACは機体の半分以上を大きく変形させ、ところどころスパークを起こし横たわっている。
 その鉄くずに、ファレは"ハロウィン"を向けて、最後の一発を撃ち込み、通信回路を開いた。
「こちらパスカル、敵ACの破壊を確認しました。以降の指示を願います」
「こちらでも敵ACの破壊を確認しています。こちらの指示に従わなかった事は非常に遺憾ですが、そのお陰でこちらでも想定していなかったデータも取れました。命令違反分の報酬を差し引かせて頂き、追加で収集できたデータ分としての報酬は上乗せさせて頂きます。これが、"武装を選ばない『ファレノ・プシス』"なんですね。脱帽しました」
「大した事はありません、"普通"の事をしたまでです」
「なるほど。それでは、これよりパスカルを回収します。回収後は1週間ほど、こちらでパスカルのデータの収集・確認を行い、ファレさんのガレージへ返却させて頂きます。なお、今回の試験内容についてはくれぐれも口外しないよう、よろしくお願いします」
「了解です」

 ――アレからしばらく経つけれども、まだ"ハロウィン"が製品化されるという話は来ない。
 一部の情報屋の話では、結局実用性、汎用性が無いと言う事から、背面武装や武器腕にプレゼンで敗北を喫し、採用が見送られたとか。
 また、とある話では、安定した兵器供給の需要がある現状のACの戦力バランスを崩す恐れがあるとかで、企業だか、管理者だかに存在を抹消されたとか。
 まぁ、噂が出ている以上、後者の話はゴシップのような気もする。
 仮に製品化されたとしても正気のレイブンなら、まず使うことは無いと思うけど、あのEN弾はその名の通り"ハロウィン"の日に死後の世界からやってくる亡者のように禍々しくも人をひきつける魅力を秘めていたように思う。



外伝―Trick or treat―終


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