ARMORED CORE Handed Down Heroism @ ウィキ内検索 / 「本編十六話」で検索した結果

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  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十六話②
    本編十六話*②* ③  マイはリナリアと名乗った少女の手をとり、共に簡素な照明が照らす艦内通路を歩む。少女の手は小さく繊細であり、僅かながら冷えている。歩みにややぎこちなさがあるのは、緊張のためだろうか。  マイは立ち止まり、少女に向き直る。 「それじゃ、改めて……俺はマイ――マイ・アーヴァンク。よろしくな」 「は、はい……。リナリアです……」  硬い動きでお辞儀をする少女。制動のはっきりした動作ゆえに、その勢いに負けて少女の頭部に乗っていた白磁の帽子が零れ落ちる。栗色の長い髪が扇状に揺れる。  マイは帽子が地に落ちる前に掴み取る。 「あ――」 「――ふー。何とか落ちずに済んだ。はい、これ」  マイは薄蒼色のリボンが小さく備え付けられた帽子を、少女に手渡す。少女――リナリアは栗色の髪を押さえ、俯きつつも言葉を紡ぐ。 「あ、ありがと……ございます」  途切れ途...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十六話
    第十五話/ /第十六話* ②  第十六話 執筆者:宮廷楽人・タカ坊 -Non omnia possumus omnes.(私達は皆、全てをこなせるというわけではない)-  サンドゲイルが所持する陸上装甲艦――リヴァルディ。その艦内に毛細血管のように張り巡らされている鈍色の廊下を足早に走る青年の姿がある。その駆けようたるや、一心不乱の一言に尽きるもの。脇目も振らずに、些かも我が身を労わることもなく走り抜けている。  一定の音階を続けて響かせる足音は、打ち付けるように強い。金属壁で囲まれた廊下の内側に反響している。嘆きの声音を思わせる音律は、青年の心の動揺を反映してのものか。  青年の名はマイ・アーヴァンク。この陸上装甲艦「リヴァルディ」を根城とする遊撃傭兵部隊――サンドゲイルに所属する傭兵の一人である。 マイは自身を追いかける存在を知覚するも、それに頓着す...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十六話④
    ③*④  干上がり罅割れた荒野。地平線から視線を覗かせる夕日にその身を焼かれ、赤銅色に染めあげられている。  数多ある自然の造形美の内にて、無機なる物は唯一つだ。それは地平線まで続いている錯覚させるほどに長大な灰色の道路である。片側の車線を一際大きな輸送車両が移動している。  機動兵器――アーマード・コアを運送することを主とする専用の大型輸送車両。その搭乗席に座しているのは、二人の男性と一人の女性である。 整備士を髣髴とさせる装いの若人の名はシーア・ヘルゼン。前者よりもやや年上と思わしき男性の名はキース・ウォルナント。そして――童書の中より現れたとさえ思える、妖しい美しさを添えた少女――イリヤである。  ソグラト付近での一件から、事を終えた三人は、ターミナル・スフィアが存在する完全循環型都市――エデンⅣへと向かっていた、現在はその道中にある。  三人が搭乗する車両は、ACの運...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十六話③
    ② *③* ④  艦橋内に爆発が生まれ、耳を貫くような轟音が轟く。硝子がその爆発音を聞き入り、その慟哭に打ち震えている。  灰燼の後に残されたのは、胸からの上の上半身を失った少女の姿――だった者の姿だ。残された下半身だけが、血溜まりと蛋白質の海に倒れこむ。  マイは背後を見やり、自分の首根っこを掴む人物を見据える。黒衣の装いの男はアハト。  再び前方を見る。上半身のない遺体が血の海に沈んでいた。マイは駆け寄り、遺体を抱き上げる。遺体が纏う血に塗れた白の衣。 「あ、あ……」 「――死を祝別したまえ。何故なら僕がここにいるのは君のおかげなんだから……。ふふっ……最後の笑顔、最高だったね。悲しくて、怖くて、でもどうしようもなくて……」  カイは自身の顔を鷲掴みにするかのように顔を覆い隠し、微笑を打ち消そうと努める。その指の合間からは少女のような顔と、一層の狂気に染まる瞳...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第六話
    第五話①/ /第六話/ /第七話  第六話  執筆者:ユウダイ・ユウナ  少し外れにある小さな喫茶店にユウとレナはいた。特に任務や依頼がない時はレナは店の手伝いをしている。もともとこの喫茶店はレナの父親がマスターをしており、彼女もウェーターとして働いていた。ユウはこの喫茶店の常連客である。しかし、ユウにしろレナにしろ複雑な事情を過去に持つ人間だった。ユウの父親はレイヴンであり、トップランカーであった。しかし、イレギュラーの認定を受け殺された。レナの父親もレイヴンであり、同じくイレギュラー認定を受け殺されていた。今の父親は本当の父親ではなく、彼女の父親の兄が引き取って面倒を見ている。しかし、ユウは父親と同じレイヴンとして今を生き、レナは家業である喫茶店で働きながらユウの専属オペレーターとして活動していた。ユウが父と同じ道を進む可能性が高いレイヴンとして生きるのは理由がある。“父を...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十五話③
    ②*③/ /第十六話 ―AD109/07/23 二三 四七― 「ボス、スコープアイが、基地制圧を開始しました。 ポイントレッドのMTも、ほとんど撃墜いたそうです」 「よし。 少し早いが、作戦を開始する。 各員、レーダーには常に気を配れ」  予測の通り事が運べば、敵部隊は既に警戒している三方向からしか攻めて来ることはない。 だが、シェルブはもう一つ、ある可能性を懸念していた。  ――そんな事態に、ならなければいいが  そう考えずにはいられない。 レイヴンならば誰もがいつかは経験する、ある危険性をこの任務は孕んでいる。  だが、今このタイミングにおけるそれは、少しばかり厄介だ。  だが、同時にそれを経験することで、成長も期待できる。 いずれは超えねばならない壁なのだ。 「――マイ、聞こえるか」 『何ですか親方?』 「……気を引き締めろ、予測とは違う方向から...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第五話②
    第五話*②/ /第六話  リニアは少しもスピードを落とさずに目的地へと向かう。  運搬用リニアはもちろん無人で、入力されたプログラム通りの進路を走っていく。  今通っているのはサービストンネルと呼ばれる場所で、エデンの地下階層にクモの巣のように張り巡らされている。  同じようにエデンに路線が張り巡らされているリニアとの違いは行き先だ。  サービストンネルは工場や制御区の制御棟のジェネレーターや制御装置が設置されている地下階層に素早くアクセスする連絡通路で、業者や政府関係者しか利用できないのだが、グローバルコーテックスはエデンⅣ建設のおり、エデン内部での作戦時に素早く展開できるようにサービストンネルの利用許可と路線の開通権を取得していたのである。  政府も建設に巨額の出費をし、完全中立を掲げるグローバルコーテックスにノーとは言えなかったためだ。  程なくして、リニアは制...
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    ...Welcome, curious "Raven". 『ARMORED CORE -Handed Down Heroism- 』とは FROM SOFTWARE 製作のコンシューマゲーム『ARMORED CORE』の二次創作リレー小説です。 当WIKIでは小説作品と作品設定を一つのWEBコンテンツとし、誰でも閲覧が可能な状態で公開しています。 [ -TOP Information- ] [ 更新情報 ] ・04/21 トップページ更新 ・04/21 リンクページ更新 ・04/12 外伝『The Empress Strikes Back』アップロード ・03/02 外伝『Dies Ire 第一夜 -偽りの愛-』アップロード ・03/02 登場人物『ドライ』アップロード ...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十一話②
    第十一話*②*③ コーテックスの社有ガレージは本社施設の地下に備え付けられている。 地下に張り巡らせられたリニアなどの交通機関を利用しやすくするためだ。 もっとも、これは一般的な貸ガレージにも言えることである。 スワローはガレージの入口に取り付けてあるセキュリティーにIDカードを滑らせ、十六桁にも及ぶ暗証コードを空で打ち込む。最後に指紋と虹彩認証をパスすると、やっとドアロックが解除された。 ガレージに足を踏み入れると、赤外線センサーで人の入室を感知した照明が、自動でガレージ内を照らし出した。 只広いガレージ内には三機のACが立ち並んでいる。 一つは【ARROWS】――コーテックスの試作ネクストだ。 近日中に行われる換装作業のためか擬装装甲が外されており、専用の武器もこの間のクレスト新型戦で破壊されたため、ハードポイントには何も取り付けられていない。 ...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第七話
    第六話/ /第七話/ /第八話  第七話  執筆者:Ryo 夕暮れを走るリヴァルディに向かう途中で、突如通信が入った。 『シーア! また勝手に動いたわね!!』 エイミの怒声がコクピット内に響く。 「ああ、悪かった。 だがシェルブといいさっきのやつといい、あれだけの腕だ。 熱くならずにはいられない。 また近いうちに会えるといいが」 反省するどころかむしろ上機嫌のシーアに、エイミは呆れた。 『もう、まだシェルブたちとは会って間もないんだから、悪い印象を持たれるのは嫌よ』 エイミの言う通り、サンドゲイルのメンバーになったのはつい最近だ。 自分のことはあまり知られたくなかったが、そもそも有名なサンドゲイルに、噂の『暗殺者』が加わったのだから、情報が出回らないわけがない。 先程のレイヴンのオペレーターもこっちのことを知っていた。 まだ機体の詳しい情報が出回...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十三話⑫
    ⑪*⑫*⑬  理論的には実現可能だとその技術概念のみが、かの財団存続時に提唱されていた、とノウラがいつか言っていた。そして、こうも。  ──そんなモノが実用化されれば、現存する地上兵器は全て無意味になるだろうな  プライマルアーマー機能──軍事転用されたコジマ粒子の新たな可能性の形──  一瞬の空白だった。その間に、その白緑色の膜に守られていたネクスト機のカメラアイに一際強い光源色が宿り──アザミはその空白を掴み損ねた。  弾き上げられた二挺突撃ライフルの砲口が至近距離で煌き、致命的な反転攻撃をゼクトラは被った。  間断なく浴びせ掛けられる弾幕が機体各部を吹き飛ばし、ブースタ逆噴射による緊急後退の最中に左脚部関節部を撃ち抜かれたゼクトラが機体を傾しがせ、その場に片膝をついた。その間にも飛来する弾雨が外部装甲を切り裂き、ゼクトラの頭部と左腕部を破壊、短機関砲の銃身が被...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第二話
    第一話/ /第二話/ /第三話  第二話  執筆者:柊南天  殺した。取り立てて珍しいモノもない、地方によくあるような断崖都市で、殺せる限りの人間を殺した。敵対行動を取る者は無論、戦闘員であるなしを問わず逃げようとする人間は視界に映る隅から撃ち殺した。短機関砲から吐き出された高密度の火力を受けた彼らは例外なく、血霞になってその場から消えていった。  珍しくとも何ともない光景で、何度も繰り返し再現してきた事実だ。  殺しの為の大義などなく、大義を掲げるに足る主義理想もない。  惜しみなく注がれる王岳の報酬に雇われ、肉腫塗れの殺意を代行し、汚れ切った戦場を駆けずり回る、烏は時に独りで屍肉を漁り、時に群れを成して無垢な赤子を襲い、その白い肉を相食む。必要であるとされれば群同市ですら互いの肉を求めて争う。両翼に纏わりつく腐敗した欲望と殺意の残滓を撒き散らしながら。  ...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第一話②
    第一話*②*③  若干離れた場所から本来の進路へ復帰した直後、通信回線に指示が入る。 『施設外周部戦域の制圧が完了しました。隔壁開放と共に、速やかに施設内部へ進攻して下さい──』  総合通信士が述べ、マイは前方二四五メートル前方に聳える旧世代施設の大型隔壁を拡視界に納める。第二陣主戦力より先行していた供出軍の特殊工作MTが複数機、隔壁設備外盤部に取り付いている。  機構制御を直接掌握する算段なのだろう。遥か前方を突出していた友軍機〝シックザール〟が機動速度を緩め、後続戦力の到着を待つと共に機体姿勢を臨戦態勢へと移行する。 『──さあて。お仕事、お仕事♡』  今か今かと手を揉んでコクピット内部で待つ彼の姿を脳裏に浮かべ、アレで仕事上本腰入れているのだから何だかな──マイは一人思った。  特定周波数で結んである通信回線から漏れた独り言を聞き流し、蒼竜騎に戦闘態勢を取らせる。予...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第四話
    第三話/ /第四話/ /第五話  第四話  執筆者:CHU シェルター都市『MA31-HOPE』 ミラージュの庇護下にある人類の楽園だ。少なくとも居住している富裕層にとっての話だが。 ここに自分のオフィスを持つグローバルコーテックス所属レイヴン「スワロー」は、この日新人の専任オペレーター「ライラ・フェモニカ」と通信で依頼の吟味をしていた。 『レイヴン、こちらの依頼はどうですか。【MT部隊撃滅】報酬も悪くありませんし、ターゲットもMTですので簡単かと』 「うーん……、場所が森林区画だし、見通しが悪そうだなあ。そうすると死角からの被弾は避けられないだろうし、修理費がねえ……」 不平不満は聞き飽きたといった口調でライラが諌める。 『お言葉ですがレイヴン、この程度の依頼がこなせない様では、レイヴンとしての沽券に関わるのではありませんか?』 他にも色々な...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第九話④
    ③*④*⑤  瞑った眼を開けると、白磁の大地が静かに、遠くさざなんでいた。  その遠く、遠くを、見知った背中が歩いてゆく。  追いかけた。自分の吐息が、白い世界に溶けて感じられなくなるまで。  その人が、最後に囁いた。  君の手を取って共に生きてくれる人々が、その世界にいる筈だよ──  彼らと、同じ日々を歩いてみなさい。  ──君が次に目覚めた時は、やさしい世界でありますように──  アレから途方もない年月が経過したのだろう。水面に立つ波紋が緩やかに拡がるように、それまで半永久的な休止状態を維持していた意識が、閉ざされた白磁の世界から私の袖口を引っ張る。  来たというのか──。 「あ──ん、う……」  伸ばされた影が未練を残している。身体機能は未だ休止期間を必要とし、しかし、私は反抗するそれを強引に意識下へ隷属させた。統合意思が上手く機能し...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十話②
    第十話*②*③  Three years later...  細かい傷跡が残る古い銀製のオイルライターを擦過させ、点った火を紙巻煙草の先端に近づける。単に濃く苦い味ばかりが特徴の紫煙を肺腑へ流し込み、片手に持った電話子機の受話口に耳を当てながらノウラはワーキングチェアに腰を深く預けた。 「頃合いだと思っていたぞ、──シェルブ」 『その言草だと、既にコトは伝わっているらしいな。変らず、其方は業務熱心のようだ』  通信媒体を介しているとはいえ約二年振りに直接言葉を交わす、レイヴンズアーク時代からの古い知己の物言いに、軽くではあるが口許を歪めて見せる。とはいえ、特段互いの再会を懐かしむ間柄でもない為、一度紫煙を肺腑に含んでから吐き出した後、ノウラはそれに相応しい言葉を省略する事にした。 「其れは私達の要諦だ。この後に及んで気を害するモノでもあるまい」 『確かにな。だが、分水...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十話③
    ②*③*④                  * 『開始10分前です。出撃、スタンバイしてください』 「了解。出場資格コード:GCA-L013、出場機体コード:ラピッドタイド。スタンバイ開始します」  眼前の投射型ディスプレイから溢れる灰青色の光源が染め上げるコクピットの中、ヴァネッサは静かに、しかし大きく息を吐きだした。  コンソールキーを軽やかに叩き、機体制御プログラムの完結プロトコルを起動させる。空白に満ちたディスプレイに機体情報が関連画像と共に羅列形式で出力されていく。 『リサ、起動を完結。戦術支援プログラムを第三種準備待機態勢から、セミ・アクティヴへ移行する』 「おはよう、リサ。今日がいよいよ正念場よ。よろしくね?」 『お前の、10年の成果を見せる檜舞台だ。此方こそ、宜しく頼む』  完結プロトコルに最後に起動した機体搭載のリサ──ヴァネッサが10年前に...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十話④
    ③*④/ /第十一話                                *  新鋭レイヴンのアリーナ本戦出場を快く思わない武装勢力による妨害工作を阻止せよ──  事前にあらゆる手を使って【ターミナル・エリア】は、詳細情報を入手。予備大会決勝後の隙を狙って、新鋭レイヴンの命を頂戴すべく潜伏待機していた武装勢力を急襲、制圧した事により作戦は滞りなく成功した。  拘束された武装勢力の実行部隊が、ガロの指揮した機械化急襲部隊員に引連れられて傍の車道に待機していた装甲輸送車に載せられていく。  アリーナ内部に侵入せずに決勝終了後の隙を外部から狙おうとしていた当たりは、賢しいといっていいレベルだが、逆に出来ること言えばそんな程度のものだと、ガロは胸中で悪態をつく。  グローバル・コーテックス相手の新鋭レイヴンが本戦への出場資格を手にした場合、武装勢力は作戦自体を放...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第三話
    第二話/ /第三話/ /第四話  第三話  執筆者:ギリアム 一機のACが巨大なホバータンクの横を通り過ぎ、古代遺跡の中へ進行すべくブースターを吹かした。 その時、左腕を損傷したACとすれ違ったが、気にも留めなかった。 負傷したACなどに興味は無い。彼が求めるのは真の強者のみだった。 始まりは一通のメールからだった。差出人はミラージュ。 「滅多に依頼を受けることの無い私に依頼とは…」 訝しみながらもメールを確認すると、そこには簡単な依頼が書かれているだけだった。 『古代文明遺跡にて、古代兵器駆逐のために派遣したAC部隊を撃破して欲しい』 「古代文明遺跡…」 この言葉には聞き覚えがあった。 ミラージュが古代文明の遺跡調査のためにパルヴァライザーの掃討作戦をすべく、レイヴンをかき集めていたの...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第九話③
    ②*③*④  艦載レーダーと各種センサー群を最大レンジで展開した所、襲撃現場を中心にして南北二箇所から機動物体の動体反応を捕捉、その片割れに向かってシェルブはリヴァルディの舵を切らせた。  幾つかの事前情報を吟味した結果、南方戦域で探知できる反応の一つは先に派遣したフィクスブラウである事は識別信号からも疑いようはない。その搭乗者であるシーアがよこした情報に準拠すると、リヴァルディが現在急行中の北方戦域に探知した動体反応の一つが、嘗ての〝仲間〟である可能性は高い。  レーダー及びセンサ情報で把握していた戦況も急行する最中に収束しており、これ以上ないと言って良い手際の良さから、シェルブ自身もある程度の確信を持っていた。 「しかし、ごろつきと断定するには聊か、規模が過ぎるな……」  黒髪の総髪を掻きあげながら、地理情報の映像詳細を出力したデスクデバイスを注視する。  単純な兵力規...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第一話③
    ②*③/ /第二話  バイザー越しに白銀の世界を見回しつつ、内壁部分へと進む。隔壁を隔てた先ほどの空間と異なり、緩いカーブを描いた環状形の空間構造になっているらしい。内壁部分には人型大程度のシリンダーが密集して納められており、果実の房が成るように多重構造となっていた。  その内の一つに近づき、外装部にこびりつく氷結を手でこそぎ取る。  中身が透過できる程度に氷結部分を処理し、少し背を伸ばしてシリンダーの内部を覗き込んだ。 「──人間?」  一瞬ぎょっとしたが、取り乱すさず内部を見渡す。シリンダー内部には人間のものと思しき痩せ細った死体がちょこんと収まっており、状態から推察するに完全にミイラ化しているという事がとりあえず分かる。  自身は学者でも何でもないので分からないが、素人目に見ても、数十年やその程度の時間で形成された代物でないという位は推測できる。  マイは数歩足を下...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第五話
    第四話/ /第五話*②  第五話  執筆者:クワトロ大尉(偽)  人類を襲った未曾有の危機、『アーセナル・ハザード』により世界が荒廃して5年。  世界は混迷を極めていた。  企業は己の利権を広げようと躍起になり、政府は政治主導を企業に乗っ取られるのを危惧して勢力の立て直しと拡大にのみ力を注いだ。  誰も自分の手に余る世界などというものを救おうとはせず、ただ己の幸福を追求した。  結果、企業や政府に係り合いのない多くの人々は虐げられ弱肉強食の分かりやすい理論が横行していた。  金のない人間は常に古代兵器の襲撃に怯え、金のある人間は安全な場所で豊かな暮らしを約束された。  コロニー『エデンⅣ』。各企業がしのぎを削る商業区画の隣に位置する居住区画。  快適な環境のマンションが立ち並ぶ居住区画だが、その中でもひときわ快適な高級マンションの一室で、若い男が通信用マルチ...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第九話
    第八話/ /第九話*②  第九話  原案:マド録 文:柊南天  ──かつて〝私〟は、狂騒の世界に産み落とされた。  過ごす日々は過酷な実験と死の繰り返し──産まれた意図すら分からず、自分以外の何ものかの為だけに、生かされた年月だった。  私が自己の意義を知る必要は、死と退廃に満ちていたあの時代には、一欠片たりともなかった。  辛いかと問われれば、そうだったかもしれない。しかし、生憎と誰からもその言葉を掛けられた事はなかった。そしてそれ以前に、自分自身がそうとも考えようとしていなかった。  目にみえた日々だけが事実で、私の感情は自己に関与せず、流れ往く事実の前には私の全てが劣った。  普遍化され、小さく区切られた実験室。肌寒い部屋の中でまどろみ、淡々と流れた年月。  私の〝姉妹達〟──大空に遍く漂う星ほどもいた同類達は、時代の経過と共にその数を減らし、時には見も知り...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第九話⑤
    ④*⑤*⑥  停泊ポートに迫る制圧部隊を他施設との連結通路を隔てて圧し留め、水際での近距離戦に突入してから数分が経過していた。 練達した技量を持って連綿な戦術を駆使する制圧部隊を前に、サンドゲイの歩兵戦力は初期に築いた防衛線から順序後退し、既に最後衛へその拠点を移していた。 『正面第五、第六搬入通路の封鎖完了──』 「よくやった。迂回路を進行し、五〇秒で拠点に合流しろ」  地下へ遣した爆破工作班を労い、シェルブは次の作戦段階に意識を移す。 (戦局はまずまずといった所か……稼げて、残り一五分弱。そろそろ来るな)  敵征圧部隊の技量が確かな事も無関係ではないが、シェルブは時間稼ぎの為の機動防御を当初から指示していた。施設管理局の承諾を得て爆破工作班に地下の物資搬入路を封鎖させた事により、敵部隊が武力による進入を確実にするには正面から乗り込むしかない。  あらゆる時間稼ぎを使...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第八話
    第七話/ /第八話/ /第九話  第八話  執筆者:ヤマト 「また、この感覚」 生体と機械が感覚を共有する時の独特の不快感、知らない筈の知識、わからない筈の感覚が一瞬で未知から既知へとシフトする。ついで自分の中に他人がいる。旧世代の技術を復活さようとしている組織を攻撃する為にナインボールを起動させたハスラーワンという名の男だ。 「っ…ハスラー、入り過ぎ」 (解った) 私の中に入り過ぎたハスラーワンの意識を外側へ追い出しながら起動シーケンスを立ち上げる。 本来ならナインボールの起動に私は必要ない。このナインボールは負荷低減型ネクストのためAMS適正の高いハスラーワンなら一人で操れる。にも関わらず生体CPUである私が同乗しているのは戦闘になるとハスラーワンが機体の限界以上の性能を要求し機体がオーバーロードするからだ。パイロットを守るはずの私は機体を守るためのリ...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第九話②
    第九話*②*③  ミラージュ社直轄経済管轄領、閉鎖型自治区【ソグラト】── 午後一五時三〇分──。  艦艇上部区画の展望施設から臨む荒野に、黄塵を含んだ陣風が不規則に渦巻いている。  霞むその荒野の中に数日見なかった人工物──都市全域を覆う外殻機構を見咎めた時、艦内内線を通じてインカムに通信が届いた。 『繋留コロニーに着くわ、マイ。ボーディング・ブリッジに移動するから、手伝ってちょうだい』 「オーケー、すぐに行くよ」  外景に傾注していた視線を戻し、マイは艦内八階の乗降施設に直結する連絡通路へ再び足を向けた。  繋留施設への接近報告が艦内放送を通じて響き、先程まで落ち着いた静けさを保っていた艦内が俄かに騒がしくなり始める。繋留準備の為に通路を行き交う見知りのクルーらと目礼を交わし、込み合う昇降設備を避けて連絡階段で一気に八階まで駆け上がった。  すぐ右手、右舷第七...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十話
    第九話/ /第十話*②  第十話  執筆者:柊南天  Three years ago...  肺が爛れたように熱く、息は浅く短くでしか続かない。両脚も鋼鉄の足枷を嵌められたように重い。だが、それに対して焦燥を迫る必要性はない。無視できる。年月の経過に伴って老衰を経てきた身体を酷使し、残骸の散らばる連結通路を疾っていく。  戦場の一線を退いてから8年が経過して尚、あらゆる身体機能を現役時代のそれと同等に扱えるよう、研鑽を重ねてきた。しかしそれを鑑みてすら、今回の一連の騒乱を生き抜いた暁には、心肺機能の一部くらいは人工臓器に置換すべきだろうと、そう考えた。一線を退いたとはいえ、老衰を騙し続けている生身の人間のままでは、戦場に身を置き続けるには非常な困難を迫られるだろう。  ──北棟兵器格納庫に直接繋がる連結通路に漂う臭気を鼻腔が捉え、床上に散らばる瓦礫の残骸に交じって倒...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第一話
    第一話*②  第一話  原案:マド録 文:柊南天  プロローグ  遥か遠い過去──現在の統治企業や統一連邦でなく、純然たる主権国家が、この薄汚れた地上世界を治めていた時代があったそうだ。 しかし、繁栄を極めた国家群も時代の変遷と共に衰退し、それに代わって国家体制を支えていた軍産複合体が、世界の覇権を巡り競合するようになっていった。  統一連邦と名を変えたかつての主権国家群は、その骨肉の戦乱の中で意味もなく翻弄されるだけの存在に成り果てた。  熾烈を極めた覇権競合も現代では世界情勢の日常風景となり、戦争経済そのものが人類社会の存続の糧になっていると、知識人は云う。  そんな実情を体現する幾つかの存在が、ここ一世紀あまりで生まれたからだ。  人型機動兵器──アーマード・コア。  俗にACと呼ばれるその兵器と、それを自在に駆り、混迷の戦場世界を往く渡り鴉【レイヴ...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第九話⑥
    ⑤*⑥/ /第十話  蓋を開けてみれば何から何まで事前情報と異なるとは、こういう事を言うらしい──。  後退支援戦闘に当たって迎撃戦闘に転じた部下の二人ともが瞬く間に撃滅された状況下にあって、ウルフ・アッドは冷静に事態を捉えていた。  本社情報部の連中が遣した詳細に依れば、独立系傭兵部隊〝サンドゲイル〟は比較的優秀なAC戦力を保有しているものの、独立勢力としては目立った所のない一勢力に過ぎないとの事だった。  やはり、本社の情報部は信用ならんな──。  先だって投入された先行戦力群──グレイヴ・メイカーという戦闘に際しては素人の域を出ない技術屋集団が壊走したのは当然の顛末だったとして、それは否定しない。  同時に、その壊走が始まるまでの戦域映像が本社からの指示でデータリンク適用外とされていた事が、仇になったのもまた、否めない感があった。  仮にも特殊部隊管轄軍の精鋭部隊を...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十二話②
    第十二話①*②*③ アザミは人間を遥かに超えた動きでガトリングガンの暴風雨のような弾幕を掻い潜り、MTを翻弄していた。 目標が小さすぎる上に、あのスピードだ。MTのカメラアイとFCSでは捉えきれないだろう。 アザミの余裕すら感じられる動きに多少の安心感を覚えつつ、自分も加勢できる瞬間がないかと機会を窺う。 MT相手に少しも止まることを知らないアザミに業を煮やしたのか、MTのうちの1機のバズーカが火を噴いた。 その砲弾はアザミの前方の道路に着弾し、路面を派手に抉りながら無数の破片をまき散らす。 アザミは雨のように降り注ぐ瓦礫片に臆することもなく、腕の中のアリスを庇いながら抉れた路面を低い姿勢で軽々と跳躍しつつ、身体を捻り、片手でグレネードランチャーを自身へ狙いを定めているMTに向けた。 その砲口がMTのカメラアイへ向けられていることに気付いたソリテュードは自分も打...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十三話
    第十二話/ /第十三話*②  第十三話 執筆者:柊南天  五年前.南極大陸──  氷点下数十度に及ぶ極寒の冷気の中を乾いた銃撃音が伝播し、頭上数百メートル先の上層施設区画から届く。散発的に木霊するその銃声が何を意味しているのか即座に察知し、周囲で狭域警戒態勢を展開していた先遣分隊にハンドサインで指示を送る。的確に反応した隊員達が狭域警戒態勢から第一種戦闘態勢へ陣形を移行し、それぞれの小銃の銃口が上空に向けられる。  次第に接近してくる銃撃音を耳に捉え僅かな焦燥感を胸中に抑え込みながら、すぐ後背下方部の剥き出しになった地層断面の前に膝をついている二人の人物の背中を注視する。 「おい、嗅ぎ付けられたぞ」 「分かっている。焦るな……」  対放射線用の重厚な防護服を纏う、右手の大柄な女がこちらを振り仰ぐ訳でもなく、加えて此方に対してひどく抑揚のない口調で言う。...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十三話⑦
    ⑥*⑦*⑧  滑走路へ出てきたシックフロントを瞬時に捕捉した敵性部隊が応対射撃を開始し、無数の火線が吹きすさんだ。ガロはフットペダルを連続して踏み込み、小気味よくブースタ噴射を展開して弾幕の下を搔い潜りながら旋回進行を試みる。  その突出展開に呼応し、後方に待機していた友軍AC部隊が援護射撃を行いながら進軍を開始した。  複数の敵性動体による機銃掃射がシックフロントを追跡し、ガロは回避軌道の斜線上に放置された航空機を発見し、燃料タンクを解析捕捉してそこへリニアライフルの砲弾を撃ち放った。  一拍置いて被弾したタンク内の燃料が引火し、大型航空機を巻き込んで大規模な爆発を起こす。視界前方が赤々しい爆炎に包まれ、捕捉目標が途切れるもガロはそこへ向けて左腕に携えるレーザーライフルの光線を連射した。そのまま燃え盛る航空機を迂回して突き抜け、爆炎の向こう側で正確なレーザー攻撃を頭部に受...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十三話③
    ②*③*④ 「……良い味だ。こういった物が無くなっては、財産の損失だな」  立ち上がった所でもう一本抜き出した紙巻煙草を口許に咥え、先端に紅点を点した。何度か紫煙を吹かして静かな時間が過ぎた後、同じく紫煙を地べたで味わっていた男が切り出した。  「──生け捕りの割には、随分と迷いのない立ち回りだったな?」 「妙な言い回しだな。何が言いたい」  片頬を地べたに付けた格好のまま、壮年の男は何らかの意図を宿した鋭い視線をこちらに上げてみせる。その相貌に姦計といえる感情はなく、ただ、此方への純粋な問いかけのようにリサには感じ取ることができた。そして正にその通り、男はその言葉を口にしてみせる。 「なに、唯の問いだよ。──どうにも君は、見慣れない種類の人間のように思えてね」  その男の言葉は、彼という人間がこれまでに渡って来た世の凄惨さそのものを反映しているようであった。 ...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十二話③
    ②*③*④ これで多少は掛かるGが軽減される筈だ。 セントラルタワーを目指し、興行区画のメインストリートを疾走していくと、横道から1機の四脚型パルヴァライザーが滑るように姿を現した。 パルヴァライザーは両肩のレーザーキャノンの砲口をこちらに向けるが、それよりも速く高速徹甲弾がパルヴァライザーの頭部を射抜いていた。 ソリテュードはスナイパーライフルによる精密射撃でパルヴァライザーを一撃で沈黙させる。 閣座する機体を横目にセントラルタワーを目指しながら、先ほどのパルヴァライザーの挙動に少なからず違和感を覚える。 何というか、機動が甘いような気がする。 もちろん一撃で仕留めるつもりだったが、あそこまでまともに食らうとは思っていなかった。 違和感は拭いきれなかったが、目的地であるセントラルタワーが目前に迫っていたため、思考を脇に追いやる。 ゆっくりとスロットルを...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十二話
    第十一話/ /第十二話*②  第十二話 執筆者:クワトロ大尉(偽) コロニー『エデンⅣ』の居住区画。 現在の時刻は午前7時過ぎ。 いつもならば会社や学校へ向かうサラリーマンや学生が、せわしなく行き来し、活気づいているはずのメインストリートは混乱の渦に巻き込まれていた。 本来なら人工とはいえ燦々と降り注いでいるはずの朝日は見る影もなく、エデン4の高い天蓋は不吉な闇を落としている。 その混乱の最中、悲鳴と怒号が支配する闇を切り裂くように一人の男が、人々の流れと逆行しながら駆け抜けていく。 向かう先は居住区画と商業区画の間に位置する興行区画。 避難警報が発令されている現場そのものに全速力で走っていく。 グローバルコーテックス所属のレイヴン、ソリテュードは滅多に見せない焦りの表情を浮かべていた。 ――まずいことになった。 彼を焦燥させる理由は唯一つ。...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十三話⑩
    ⑨*⑩*⑪  変わらず抑揚を欠いた言葉。しかし、ガロはその口調の裏側に僅かな焦りの介在を感じ取っていた。  統合制御体がファントムヘイズとの近接対峙を前に、機体制御態勢の速やかな移行を推奨する。 「知らんだろうな。貴様が世界の裏側でのんびりとしている間に、この地上世界は大きく変容した──」  意思判断し、左腕部に携えた適合兵装を持ち上げる。それに合わせてファントムヘイズも狙撃銃の銃口を動かした。長鑓を思わせる長大なひとつの銃身を基軸とし、レールシステムの搭載によって多種兵装の搭載を可能にした実働試験機体:マルシアの為のみに製造された大型の適合兵装。 『貴様に見せてやる。この五年間、世界がどう動いたのかをな──』  その言葉を最後とし、一方的に通信回線を解除。  統合制御体に指示し、機体制御態勢の速やかな移行を指示する。  その間際、再びハルフテルが最後に言い...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十三話⑪
    ⑩*⑪*⑫  昇降機の下降制御情報によると、現在地下高度は千数百メートルまで下がっている。エデンⅣ全域に散在する区画隔壁管理局の運営する昇降機でも通常では、地下数百メートル程度の経済管轄階層までしか降りられない。それより先へ進むには、制御システムに専用コードでアクセス指令を出すかプログラム自体を改竄する方法と取らねばならない。  地下核部構造体は複数の空間層によって構築されているが、不定勢力の依頼主が指定してきた作戦領域はその最下層区域であった。  その最下層へ、間もなく到着する──  数十秒後、昇降機の停止と共に制御システムが最下層区域への到着をプログラムヴォイスで伝え、隔壁扉が開放される。 「動体反応はない、が──」  前方に伸びる連絡通路は赤黒く点滅する警戒灯によってその全貌を淡く映し出しており、ルートマップ上でゼクトラの現在位置を把握。搭載レーダー機能を戦術...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十一話
    第十話/ /第十一話*②  第十一話 執筆者:CHU 曰く――幾多の大企業の本社ビルが置かれ、常に権謀術数が渦巻く坩堝。 曰く――他者を少しでも出し抜き、甘露にありつこうとする狸共の巣穴。 あらゆるシェルター都市を凌駕した堅牢な都市防衛機能――最早要塞とも呼べるレベルのそれを備えたエデンタイプコロニー。それがこの〈エデンⅠ〉だ。 グローバルコーテックスもまた、他の巨大軍需企業と相違無く〈エデンⅠ〉に本社を置いている。 そのコーテックス本社ビルの地下三階から地下九階は、『自衛と自社占有利益の確保』を標榜する《特殊技術戦力開発局》の研究棟となっている。完璧な防音処理が施された研究棟の一室で、今まさに密談が始まろうとしていた。 一人は青いロングコートに身を包んだ若い風貌の男――グローバルコーテックス専属レイヴンのスワローだ。 そしてもう一人は、特殊技術戦力開発...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十三話⑭
    ⑬*⑭/ /第十四話  ノウラは既に、事実関係の大半を知り得ていた。  だからこそ、当事者達からの直接の言葉などは無為に等しきものであると断じ、代わりに彼らに告げるべき事実を告げる為に、次の口を開いた。 「──我々一族は、貴君等に多くの叡智を与えた。貴君等、統一政府が衰退した人類の復興の一助となり、賢明な統治者として君臨するであろう事を、望んだからだ」  ノウラは語る。自らの身体に流れる、何世代にも渡って受け継がれてきた血筋を。自身の一族が統一連邦政府と共に在り続けてきた過去を。彼らが今回の件──【エデンⅣ騒乱】で、人類の今後の在り方を確実に変えてしまう失態を犯した事を、彼ら自身に思い知らせる為に。 「貴君等の先達の遺した遺産を見誤り、貴君等は自ら王道を踏み外した。──末路は、自らが語れ」  十数時間前──【エデンⅣ騒乱】の引き金を引いた政府一派の暴走を、賢人会議は...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十五話
    第十四話/ /第十五話*②  第十五話 執筆者:Ryo ―AD109/07/23 PM12 00― 太陽が頭を真上から照らし、街を歩く人々の額に汗が流れる、真夏の昼時。 リヴァルディのガレージの中、シーアとショーンは茹だる熱気の中で黙々と作業を続けていた。 「シーア、そっちはどうだ?」 「エネルギー供給系のバイパスは済んだ、そっちは?」 各ACの防塵処理や注油等のメンテナンスを終え、今は二人ともフィクスブラウの改造に着手していた。以前ショーンが設計したオリジナルパーツである増設ブースターを搭載させる為には、どうしても機体側を直接改造する以外に方法が無かったためである。 コア内部のエネルギー供給パイプ、配線や電子機器、センサー等に干渉させずに改造を施すのは非常に骨の折れる作業だが、ジャンク屋時代からかなりの回数の改造を繰り返してきたシーアにとってはそれほ...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十三話⑤
    ④*⑤*⑥  つまり、今はそういう事態という事だ。  グローバルコーテックス支社内部には、その規定が発動した際に統合司令部として機能する施設が設けられており、ターミナルスフィアも招集令を受けて現在その指令機能を移転中なのだろう。  レイヴンであると同時に事務所所長であるノウラは、その陣頭指揮を取る為に出向しなければならないため、今回レイヴンとしての仕事をこなすのは若干の無理がある。  そうでなくともノウラの本業はレイヴンではないため、そこまで彼女に望むのは酷だとファイーナは軽く考えた。 「そこまで期待はしないさ。それよりノウラ、此れを観ろ──」  ファイーナは戦術支援AIに指示して予め編集保存していた先ほどの映像ファイルを、ノウラの下へ転送した。メインディスプレイに出力した通信映像に映るノウラは、左頬を人差し指でかく真似をしてみせる。 『ふむ、やはりナインボール...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十一話③
    ②*③/ /第十二話 着地の音は雨に紛れ、掻き消えていく。 雨粒が装甲を叩く音が、やけに大きく聞こえた。 「言い忘れたが、君にはオペレーターがついていないのでね、ボクがサポートすることになる」 『了解』 「早速ターゲットが出てきたぞ。数は四」 【ベルフェゴル】のレーダーが、坑道から出て来る機影を捉えていた。 「好きにやればいい。君の力を見せてくれ」 そう言ってスワローは【ベルフェゴル】を戦場を俯瞰しやすい高台に移動させる。 「ラフ、グレイ機の機体AIと同期しろ」 【了解――同期完了】 これであちらの機体情報がダイレクトに届くようになった。 同時に【ベルフェゴル】を索敵モードに変更。情報処理能力に特化させる。 そこでようやく異変に気付いた。 敵を示す熱源が、予想されたデータより遥かに大きい。 その理由はすぐに判明した。 ――坑道...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十三話⑥
    ⑤*⑥*⑦  含みを持たせた言葉にガロが冷静な返答をよこす。  中央メインモニターに都市全域への戦力配備状況が次々と舞い込み、統合司令部の指揮機能確立に従って戦線が徐々にではあるが、確立しつつある。 「此れからが本当の戦場だ。──貴様らが何を望んでいるのが、ゆっくり教えてもらう事としよう」  かつて自らが与えた叡知を使い統一連邦は何を求めているのか、この騒乱の終わりの時にどんな結末が用意されているのかを想起し、ノウラは口許を大きく歪めた。  AM08 05──                                   *  ──その戦闘は後に【ナヴラティロヴァの惨禍】と呼ばれ、30年以上に渡って戦争史に語り継がれる事となった。 『──完全な奇襲及び殲滅戦闘だ。目に映る者全てを逃すな、徹底的に蹂躙しろ』  無線を介した部隊...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十二話④
    ③*④/ /第十三話 ――ガレージに戻って武装を整えるしか手が無いな。 ミランダにガレージへの最短ルートの検索を頼もうとしたその時、嫌な予感がしてアリスを庇いながら咄嗟にフルブレーキングする。 直後、目の前で大爆発が起き、路面を大きく抉り返し、爆風と瓦礫がブリューナグを震わせる。 背後に迫る無機質な殺気を感じ、振り向くと、そこには1機の赤いACが立ちはだかっていた。 ――やはりな、とうとう現れやがったか。 「ナインボール・・・コピーか」 ―ナインボール・コピー― 統一政府がイレギュラーと認定したレイヴンを抹殺するために暗躍する、ネクスト技術を取り入れたAC。完全自律制御で、オリジナルよりもデチューンされているとはいえ、既存のACを凌駕する性能を持っている。 「な、ナイン・・・ボール、ですって?有り得ません!ソリテュードがイレギュラー認定されるなど!!」 ...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十三話②
    第十三話*②*③  兵器開発部の連中は、そういうイメージが重要だとも言っていた。搭乗者其々でイメージは異なり、それに合わせて統合制御体は意思判断の反映解釈を複雑化させていくのだと。  ──つまり、過去の経験に裏打ちされた意思判断が、自身によるネクスト兵器の制御技術の根幹となっているのである。  二度目に吹かした追加推力によって前方展開中の二機の目標との距離を瞬時に詰み切る。まともな迎撃態勢を取る事すらできずに隙を曝し出した二機の胸部に其々砲口を突き付け、至近距離からの掃射攻撃で胸部を吹き飛ばした。搭乗者の即死によって機体制御を崩した機体が明後日の方向に突撃銃の弾幕をばら撒きながら、路上に地響きを立てて斃れる。  死の間際、搭乗者達は無意識に呪っていたかもしれんな。  地下トンネルという閉鎖空間の中で、真正面から唯のAC機体が突っ込んで来ていたという事実を額面通りに信用し...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十五話②
    第十五話*②*③ 「恥ずかしながら、まったくもってその通りだ……他の部位の修理は大体済んでいるんだが、右腕は丸ごと無くなっちまってるからな、どうしようもないのさ。おまけに自分の身体の怪我も完治したワケじゃねぇのにエデンⅣ防衛にもなんだかんだで駆り出されるし、ツイてねぇよ……」 「そんなわけで、ウチで修理をすることになってんだ。運のいいことにパーツの在庫がある、なんとかなるだろ。それに俺たちはこのままトラキアに戻るから、ついでに乗せて行くことになったわけだ。 納得したか坊主?」  と、ショーンが突然マイの背中を叩きながら訳知り顔で顔を出した。 「ってなわけで、ゼオはシーアの基地制圧完了を見計らってからウチのガレージに寄って、それから作戦に参加ってことになるわけだ。これで満足したか?」  まだ完全に納得したわけではない、とでも言いたいような渋い顔のままだったが、マイは仕方なく...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十三話④
    ③*④*⑤  敵性目標は高密度火力で此方を釘付けにしつつ、通常歩行で距離を詰めてきている。  手堅く此方を粉砕するつもりか──  豊富な搭載火力を当てにした単純ではあるが、しかし、地形を有効に利用した確実な攻略法である。  いつでも応対射撃に出れるよう構えながら、左手で腰元のポーチをまさぐるがそこには既にハンドグレネード類は収まっていない。先ほどパルヴァライザーと交戦した時に使い果たしてしまっていた。  センサー群で集約した情報を吟味した上で対向戦術の確立を図ったが相手の電子機器を麻痺させる装備もなく単純火力ですら劣性である現状で、戦況を覆すだけの要素は考えうる限りでは見当たらなかった。 (単純機動での強襲成功率は34,5%──厳しいな)  強化内骨格である自身の身体機能を用いて正面からの強襲攻撃を試みた所で、相手の集中弾幕を被弾覚悟で搔い潜ったとしてその後殲滅...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十三話⑧
    ⑦*⑧*⑨  途中幾度か、前衛撹乱型のパルヴァライザーと交戦を経てガロは、大した損耗を被ることもなくコーテックスビルを中心とする建築物群エリアに進入した。周辺戦域に追跡動体が接近していない事を確認してから、エンシェントワークスの保有する運搬用の私設ターミナルへ滑り込み、同施設の制御ネットワークにアクセスする。 『──識別符号:TS002-EW011』 『──識別符号、照会完了しました。どうぞ、進入してください』  ネットワークの制御システムが承認の返答を遣し、それと共に自動シャッターが開口した資材搬入用の保管廠内部へシックフロントの機体を滑り込ませた。大型資材運搬用の昇降台へ機体を搭載し、制御ネットワークに最下 層地下核部への降下を指示する。 『了解しました。到着所要時間は五分です──降下を開始します』  通達と同時に一瞬接地面が震動、昇降台が降下を開始しガロは...
  • ARMORED CORE Handed Down Heroism 本編 第十三話⑬
    ⑫*⑬*⑭  その直後、兵士が手を輸送車の方向へさし出す。それに従ってコーテックス士官に背を向けた時、傍に歩み寄ってきたらしい別の兵士が僅かにトーンを下げた声で言った。 「ナインボールの沈黙が確認されました──」 「了解。我々は所定通り、区境界部に防衛戦線を構築する」  そんな短いやりとりを最後に耳にし、ノエラは兵士のエスコートで着いた輸送車両へベランジェと共に乗り込んだ。車内には他の何処かで保護されたのだろう一般市民の先客が数人おり、場所を選んで何れからも離れた席にノエラは腰をおろした。それから間もなくして輸送車が発進し、微弱な震動が足元から伝わってくる。  胸元に仕舞い込んでいたディスクを抜き出し、それを手に包みこむ。  背中を壁に預けてぐったりとしたベランジェが、その様子を見ていた。 「本当に、ヤバいもの撮っちまったんだな……。大丈夫なのか?」 「わか...
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