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◇◇◇

 以前感じていた違和感がなんだったのかわかった。沙都子の服が少しずつだけど減っている。本当に微妙な数で、あの違和感を感じなければ多分絶対気づかないようなもので一度それを見つけてしまってからというもの、私の中にある考えたくもない不安が頭をもたげ始めた。
 その日の沙都子はいつもとは違う空気を纏っていた。それが何かは分からない、けどその空気のせいで私の不安は更に膨張する事となる。だから沙都子に問いかけたんだ。


 私を飢え死になんかさせないと言った沙都子はちゃんと帰ってきた。
 買い物はもう既にしてあると言ったのにも関わらず買い物をして帰ってきた。手に持っているのは…私の好きなもの。今日の夕食は野菜炒めかしら、なんてこんな時にも関わらず少し嬉しくなってしまった。
料理を作っている最中の沙都子は常に上機嫌で、そんな沙都子を見るのは嬉しくて私も色々と沙都子に話しかけたり一緒に歌を歌ったり久々の穏やかな晩御飯になるだろうという事が楽しみでならなかった。

 ――…きっと、沙都子は心の整理がついたんだろう。なら私もそう接しよう。それが一番の最善手…だから。

 料理は私の好きなもののオンパレードだった。嬉しかった…けどまるで何かに対しての詫びのようにも感じた、そう感じるのは私が沙都子を信じ切れてないからと自分で自分を戒める。沙都子の荷物が少しずつ減っているのだって沙都子の気まぐれなのかもしれない。沙都子は突然不思議なことをしてくれるから、だから一緒にいて飽きない。どんなに長く生きていても沙都子のような柔軟な発想が出来ない、沙都子のように強くなろうという事が出来ない。沙都子から学ぶ事はまだまだたくさんあるからきっと今回の荷物の移動だって私の学ぶことはあるだろう。

 不安を打ち消すかのように沙都子の料理を平らげた。料理、大分上手になったな。
 ここまで腕を振るって私の好きなものを作ってくれたのだから労いも必要だろう、片づけくらいは私がしようと立った時の事。

「最後くらい、私が――」

 ……なんか今聞きなれない言葉を耳にした気がした。
 ひょっとして私が浮かれているから聞き間違えたのかもしれない、もう一度聞いてみよう。違うよね、沙都子?

「今日で終わりにしようと思いますの」

 ――ああ…聞き間違えなんかじゃなかった、今までの幸せな時間と雰囲気は一気に飛んでしまった。顔が強張ってくる。手が震えてくる。沙都子の言葉を聞きたくない、とめて欲しい…でも止めてくれない。

「私、家を出ますわ…梨花、今までありがとうございました」