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 時は夕暮れ、夏の終わりに伴い部屋の灯りもつけず薄暗い部屋の中に想い合う二人が重なる影、そしてひぐらしの鳴く声だけが聞こえる―――。

「…ま、分かってはいたけどやっぱり…ね」

 目の前の少女の裸を見て溜息と共にしみじみと呟く。
 ――そりゃぁ確かに前からちょっとは沙都子の方が発育がいいなぁなんて思っていたけど…まさかここまでの差があるなんて誰が予想しただろう…いや出来るわけもない。(←反語)

「…ぁ、あんまり見ないで下さいましな…恥ずかしいですわ」

 落胆というか羨望というか複雑な発育途上の乙女心が入り混じった視線を少し勘違いして捉えた沙都子はこんなに薄暗くても分かるくらいに、顔が朱に染まっていた。
 そういや沙都子は自分の発育の良さに関してあまり快く思ってなかったみたいだった…きっと男子の目とかがあって恥ずかしいのかもしれない。…私みたいのも需要はあるけど、根強い人気はきっと沙都子みたいな子なんだろう…ってあれ何の話だ。
 とにかく、沙都子が沙都子である限りどんなに私より優れた身体つきをしていても関係ないわけで…わ、私だってループの世界から抜け出したんだからこれから成長するはず!と願いたい。

「そんな事言ったって仕方ないじゃない。今まで見たくても見れなかったんだし」
「お風呂に一緒に入った時とか着替えてる時とか見てたじゃありませんかっ!」
「それとこれとは別。そんな事言ってると部屋の電気つけちゃうわよ」
「そっそれだけは…! ………うぅ~…梨花は意地悪なんですのね…」
「沙都子には特別なのですよ、にぱ~☆」
「一般的に好きな子には優しくするもんじゃないんですのっ!?」
「ボク達は一般から少し外れているのです、みー」
「…っ」

 口にしてから、あ、と思ったけど、やっぱり同性同士がこういう関係になるって言うのは常識から逸脱していると思う。多分私か沙都子かどちらかが男と言う性別なら私も沙都子もあんなに頭を悩ますこともなかったと思うのだけど…。返す言葉が見つけられない沙都子はただ目を伏せて俯いてしまうだけ。こんな顔させたかったわけじゃないのに、失言。

「みー、でもボクは幸せなのです」
「梨花…」
「実る確率が男女に比べて大分低いのに、それでも実ったボクたちなのですよ? 少しズレていてもボクは満足なのです」
「………」
「ボクは沙都子がいてくれたならそれだけで幸せなのですよ」

 やはり少し自分の気持ちに、そして今この状況に戸惑いがある様子でいたけれど、その言葉を聞いて何かを思ったのか覆い被さっている私の手を取り自分の頬に触れさせ伏せていた目が私を射る。潤んだ綺麗な緋色の瞳に吸い込まれそうになる。

「そうですわよね…、折角梨花に受け入れてもらえて嘆くなんて贅沢すぎますわね…」
「みー! 沙都子は欲張りなのです」
「全くですわねぇ…ごめんなさ―むっ!?」

 ―突然のキス。あまりに勢いづきすぎて二人の歯がカチンとぶつかる。
 どうにも私からのキスは強引なものが多いような気がするけど…気のせいよね?みー☆

「…りっ梨花ぁ!?」
「謝ったら罰としてちゅーしてにゃーにゃーなのです」
「どうしてですの?」
「ボクは沙都子が笑っていてくれた方が幸せなのですよ」
「…っ、………………ゎ…わかりました、わ…」

 我ながらなんともこっぱずかしい発言が出来るものだなぁと自分で自分を褒めてあげたい。
 でも素直に口に出てきちゃったんだからこれはきっと私の本心なんだろうな、…こんなにクサイ台詞吐くとは思わなかったけど。今まで愛の言葉なんて囁かれた事のない沙都子の顔は100年一緒にいてもみた事がない顔。可愛い。

「そ、それでですね…えっと…これからどうするんですの?」
「へ?」
「あの…だからこれからどうするんですの?」
「これから? …いつまでも仲良く一緒に暮らして生きましょう…?」
「ち、違っ…! そういう事じゃなく…って、梨花!もしかしてわざと?わざとなんですのっ!?」
「え…えぇええええっと…ごめん、何?」
「だからその…何もないんでしたら…私、服を着たいんですけども……ぁの…」

 沙都子の言いたい事が理解できた。そりゃそうよね、自分一人だけ裸にされてたら恥ずかしいわよね。っていうか…性の知識が豊富でなくても、好き合ってるもの同士が裸ですることくらいは分かるんだな…とちょっと感心…とちょっと嫉妬。
 ――知恵の授業ではおしべとめしべからしか教えてもらってないからきっと誰かから教えてもらったんだろう…圭一?魅音?…考えたら段々ムカムカしてきた。まさか入江なんかじゃないわよね?だとしたらもう絶対沙都子連れて行ったりしないんだから!

「…り、梨花? 聞いてますの?」
「え!? あ、ごめん…ちょっと考え事してたわ」
「…もぅ、失礼な梨花ですこと………こ、こんなに恥ずかしい格好している想い人が目の前にいても物思いに耽るなんてっ」
「ごめんごめん…沙都子怒らないで」
「知らない知らない、知らないもん!」

 手足をばたつかせる沙都子もかぁいい。いやちょっと前にも思ったけど今までよくこれで理性保てたわね私。尊敬する。悟史もこんな可愛い妹いて幸せよね、詩音も憎きライバルと思っていたようだけどこれだけ可愛ければどうでもよくなるもんよね。

「ごめんって…大体沙都子を目の前にして他の誰かの事考えてるわけないでしょ」
「だ!だって目が遠く見てましたわよ!」
「え…そうだった? それは気づかなかったわ。ごめん」
「別に気にしてませんけど! どうせ私にはそんな魅力ありませんものね」
「沙都子、今日は何でそんなに怒りやすいの~!?」
「だってだってだって!! …………………梨花が他の人の事考えてるの見るの嫌なんですもの…」
「…………」
「私、梨花を好きになるまでこんなに自分が嫉妬深いなんて思いもしませんでしたのよ、ホントですのよ? …聞いてますの梨花ぁ?」

 ――聞いてます!聞いてますとも!なんだっていうのこの子の凶悪的なまでの可愛さというものは!もうそろそろこんな台詞もくどいって分かってる!でもこんなに可愛いなんて反則よ!私どうしよう!!これから先こんな葛藤と常に戦いながら日々沙都子と生活していかなくちゃならないのかしら…幸せなんだけどでもその内理性が崩壊しそうだわ……あぅ。
 とりあえず据え膳食わぬは一生の恥とも言うし、両思いになった事だし頂いちゃってもいいかしら…いいわよね、沙都子裸だし。ではでは…いただきま――

「も、もしかして梨花…私の事好きって言うのは冗談だったりしません…わよね……?」

 ――は?

「そ…その私が好きだから仕方なく好き、って言ったわけじゃない…ですわよね?」

 ――あ、こりゃヤバイ。ちょっとちょっとヤバイヤバイ警告出てきた警告。

「なんで…そう思うの…ですか?」
「いえ…ただあまり嬉しそうに見えない…というか…その」
「何? 何よ? 言いたい事あるならちゃんと言いなさいよ」

 ――ほらほらほらほらちょっとヤバイ方向に進んできたわよ…!ちょっと、誰かー!

「…あまりそういう感情を梨花から感じないので…やっぱり私、迷惑だったかしら…と」

 ――プチ って頭のどこかで音した。多分。いや絶対。

「そんなわけないでしょ! 今だって…今この瞬間だって! …一生懸命戦ってるんだから!!!」
「…は? 戦ってる?」
「そうよ! 100年しか生きてないけど千載一遇の大チャンス!こんな状況にまさか陥れるかと誰も思わなかった!だから今!私は!どうしたらいいのか分からない!それは何か、そうそれは沙都子への想いよ!沙都子が私に対しての想いを一つ一つ紡いで私に教えてくれる度に、今まで私は沙都子に対してよく何もしないで済んだわねって自分で自分を褒めてたわよ!沙都子が嫉妬深い!?何よそんなの私なんか嫉妬ばかりの毎日だったわよ!圭一に頭撫でられてにこにこしちゃって何よ!どうせ私は圭一や悟史みたいに手も大きくないし抱きしめても沙都子の全てを包んであげられるくらい背丈も大きくないわよ!私なんかにぱーとかみーとかしか可愛いって言ってもらえないし、どうせ胸だって沙都子より小さいわよ!だから何だっていうの!?こ れ だ け 沙都子を好きなのにそれを嘘だって!?沙都子をこんなに好きなのに疑うの?何でなのよっっっ!!!」
「………ぇと………り、梨花…………?」
「沙都子が私を好きになってくれるわけない、そんな事あるわけないってどれだけ自分に言い聞かせてきたと思ってるの!貴方がいない生活なんて考えられないから貴方に嫌われないように嫌われないように一生懸命だったわよ!沙都子が私を想うより先、貴方が生きてる年数よりもっともっと長い時間貴方を好きな私の気持ちが嘘だなんて、それこそありえないわよ!」
「…ぁ…あのぉ…」
「だから!それだけ長い期間欲求不満な人生送ってきたんだから少しはその幸せをかみ締めたっていいじゃないのよおお!!!」

 もう何がなんだかわけ分からないけど沙都子への想いが嘘だと思われた事が悔しくて泣けてきた。今までこんなに一気に言葉を発した事あるかどうか分からないくらいに喋ったけど…自分でも何言ったかよくわからないや。ごめん沙都子。

「り、梨花? …だ、大丈夫ですの?」
「何よぉ…まだ疑うつもりなのぉ…うぅっ、信じてよ沙都子ぉ」
「えぇ、信じますわ…その梨花を泣かせるつもりはなかったんですのよ…」
「うううぅぅう…沙都子のばか…バカ…バカバカ」
「ええ、ええ…私はバカですわね…本当にごめんなさい」
「うううーーーっ」
「梨花」
「何よ沙都子…っく…うぅっ」
「もう…自分で言った事も忘れてしまったんですの?…仕方ない梨花ですこと」
「さ、沙都子が何言ってるの、か…っ分からないぃ~」

 私の両頬に添える沙都子の手に力が篭る。引き寄せられる、唇に。涙していた私の両目を開いた時には沙都子の緋色の瞳に私がうつるくらい近くて。 ―――あ、思い出した。
 と、同時にちゅ、鳥の鳴くようなと音を立てて口付けられる。

「…梨花、ごめんなさい」
「貴方を信じれなくて、ごめんなさい」
「泣かせてしまって、ごめんなさい」
「今まで我慢させて、ごめんなさい」

 沙都子が一言謝るたびその都度、その都度私の唇に柔らかい感触が何度も何度も触れる。
 最初は唇だけだった口付けも頬や涙が溜まっている瞳や、瞼、おでこ、指先、掌。出来るところ全てを沙都子の唇に慰められる。なんだかくすぐったくて顔が綻ぶ。

「…やっと笑ってくれましたわね」
「…ん、ちょっと落ち着いた…ありがとう」
「いえ…私の方こそなんだか失言してしまったみたいで申し訳なかったですわ」
「あ…ぁあ、気にしないで…なんだか勢いに任せて恥ずかしい事口走っちゃったわ」
「んーまぁ要所要所意味が分からないところもありましたけど、でも一応は理解したつもりなんですのよ」
「…う~ん…出来れば忘れて欲しいんだけど」
「忘れてしまっては梨花にどれだけ想われていたのかも忘れてしまう事になりますからそれは却下ですわね」
「…沙都子はイジワルね」
「おあいこではありませんか」
「そうね……」

 でも、と思い出したように沙都子は紡ぐ。
 さっきの梨花はまるで圭一さんのようでしたわね―――なんて。


「―それで? 梨花は結局一体何に耽ってたんですの?」
「え? …あぁさっきの話?」
「他に何かありますのっ?」
「ふふふ…、言ってもいいけど聞いたらちゃんと答えてくれる?」
「え、んー…聞かれる内容にもよりますけど、善処しますわ」
「約束ね。―えぇっと…その、私とこれからするだろう…事について、なんだけど」

 ―ボンという音と共に沙都子の顔が突然真っ赤に染まる。

「………っっっ」
「…それは誰から教えてもらったの…か気になっちゃって、誰から聞いたの?」
「えぇぇええっと…そ、それは答えなくちゃだめ、ですわよね…?」
「うん」

 当然即答。当たり前。私の沙都子にいらん知識を…って別にいらん知識でもないけどなんか汚された感じがする。

「ですわよね……………。えと…た、鷹野さんとかレナさん…とか」

 ――ナンデスッテー!?

「とか!? とかって…ま、まだ他にもいるの!?」
「え、ええ…あとはねーねー…、詩音さんや魅音さんにも…」
「なっ!? って大体私たちの身近な人たちばかりじゃないの!ていうか私そんな事聞いた事ない…!!」
「確か、梨花には教えなくてもいいとかって言ってましたわね」
「何でよ!!」
「…さぁ?そこまではさすがに分からないんですけど…」
「まぁいいわ…それで? どこまで聞いたの?」
「どこまで、って特に…言うほどのものでも」
「だ、だってほとんどの女性陣がHOW TOを教えてるじゃないの!」
「ええ…でも相手は男性との場合ですし、それは梨花に対しては当てはまらないのでございましょう?」

 ――確かに男女の凹凸である凸の部分は私には当然沙都子にもついてないわけだし、沙都子の言いたいことも分からなくもないんだけど。

「全く当てはまらないかって言ったらそうでもないんじゃないかしら」
「そうなんですの?」
「ん…、ほら、圭一の家に前に遊びにいった時圭一のお父さんの本、ちらっと読んだことがあるのよね」
「え?確か圭一さんは見せてもらえないって言ってませんでしたっけ?」
「…ん、ま…そのほら…そこは、ね…こう…」

 圭一と身体の関係がある世界で知った話だから沙都子に話しても分からないわよね…伊知郎が同人作家って言っても。ましてや百合作家なんて言っても穢れてない沙都子の事だし、お花を描かれるんですの?なんて言いかねない。

「―梨花?」
「ああ…また考え込んじゃったわね、ぅん、でもまあとにかくやろうと思えば何でも出来ると思うわ」
「世の中には知らない事がまだまだたくさんあるんですのね…」
「知らなくてもいい事もあるけどね…」

 ――…とは言え純真無垢だった沙都子に吹き込んだ奴らめ…後で覚えておきなさいよ…!今度変なことしたらお供え物キムチにするんだから…っ!!! あーどっかであぅあぅ聞こえる、気がする。

「で、…梨花、あの私はどうしたらいいんですの?」
「どうしたら…って沙都子はどうしたいの?」
「…どう、って…………あの、り…」
「り? …り………???」
「……梨花を感じたい…ですわ…………」
「……………………」

 ―くらっ、と眩暈が。一瞬でも輪姦なんて思った私がバカでした。

「…だ、だめでしたら…そのっ全然構わないのですけど…あぁあのっ…そんな、あの」
「…危なく襲い掛かりそうになってしまったじゃないの…、沙都子…貴方さっきから何回私の理性を打ち砕くつもりなのよ」
「べべっ別にそんなつもりじゃありませんのですけど…!」
「まあいいんだけどね、元々そのつもりだったし」
「そっ、そうなんですの!?」
「ええ…ずっとずっと我慢してたわけだし、ね…」
「それは申し訳ないことをしてしまいましたわね、ごめんなさ―――ぁ」

沙都子の言葉を皮切りに、今まで待ちに望んだ行為が始まった―――