SS / so crazy!?
http://w.atwiki.jp/akozuna/
SS / so crazy!?
ja
2012-12-27T14:05:30+09:00
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https://w.atwiki.jp/akozuna/pages/53.html
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**●MCZ
-[[不器用なアイツ]]
-[[あの娘]]
**●アケビ
-[[彼女の理由]]
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*2.5
**●7UK
-[[泣き虫王子と姫]]
2012-12-27T14:05:30+09:00
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あの娘
https://w.atwiki.jp/akozuna/pages/52.html
私、佐々木彩夏16歳は思う。
“夏菜子ちゃんと詩織ちゃんは付き合っているのだろうか?”と。
だっていつだって夏菜子ちゃんは詩織ちゃんの隣にいるような気がするし、何より証拠が多すぎる。横並びで撮影なんていつもの事だけど隣にいれば手を握ってたり腰に手を回したりしてて、私だって隣にいるのにそれは決して私の方に回ってなんてこない。寧ろ私なんていないように思われてるくらいに夏菜子ちゃんは私を見てくれないし視線は反らすし、ひょっとしたら嫌われてるのかななんていう考えが生まれてくるくらい。
夏菜子ちゃんはメンバーにべたべたくっついたりするのがあんまり得意じゃないのかなって思うけど、詩織ちゃんと一緒にいるところを見るとメンバーというよりかは詩織ちゃんだけは特別ってな感じもする。
れにちゃんはあの通りだし好きなように振舞って嫌がってる夏菜子ちゃんにちゅーしたりとかぎゅーしたりなんて本人の意志なんて余裕で無視して行われるし、杏果はなんとなく夏菜子ちゃんとベクトルが似てるのかあんまりべたべたしたりしない。たまーに気分が盛り上がってる時とかはちゅーとかするけど、それでもほっぺにちゅってくらいだしそれは私にもしてくれるし特に気にならない。
あかりんがいる時はそっちにいってたけどそれはなんとなくサブリーダーっていう立ち位置もあったから、仕方ないのかななんて私なりに納得してあかりんとのいちゃいちゃは容認してたところはある。色々とリーダーとして考えるところもあるんだろうし、サブリーダーのサポートあっての今の夏菜子ちゃんだからソロで活動してるあかりんでも夏菜子ちゃんとは特別濃い目に連絡しているのかなってのも分かる。あの二人には会話しなくても通じるっていう特別な絆みたいなのがあるんだろうって中学生だった頃から感じるものはあったし、ちょっと羨ましいなって思うところもありつつヤキモチみたいな感情はあんまり生まれない。私だってあかりんには色々教えてもらったり助けてもらったりしたし、素直に尊敬もしてる。目立ちたいなとかチヤホヤされたいななんて感情は当然あるものの、今のももクロメンバーが一緒にいるからその中ではしゃげる楽しさでやっていけてるんじゃないかなとも思うから、この厳しい芸能界で一人単身乗り込んでいくあかりんには敵わないのかななんて感じるところもある。まあでもそれはそれとして、私は私と
2012-12-27T14:01:38+09:00
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不器用なアイツ
https://w.atwiki.jp/akozuna/pages/51.html
私より少し声が高いところ、私より少し背が低いところ、私より少し歳が上なところ。彼女を形成するもの全てが好き。
少し不器用なところも、おバカなところも、えくぼも何もかもが愛しい。だから私は彼女の隣にいたいとそう願ってやまない。
あかりんが脱退したのはぶっちゃけ私にとっては降って湧いたような幸運だと、なんて自分はツイているんだろうとそう思った。サブリーダーとしてのあかりんは彼女にとってはとても大きな存在で加入時期なんてなんのその、それをも吹き飛ばす私には超えられない一線というか壁のようなものの存在であった。
彼女が幸せに笑ってくれているならそれでもいい、少しちょっかいをかけて軽口叩いて少し私を見てくれる時間があればいい、この気持ちは私の中で秘めたままでいれば誰も悲しむ事がない。
そう決めた矢先の出来事だったから、脱退の話を聞いたときは勿論驚きもあったし悲しくもあったけれど嬉しい気持ちが一番強かった。何より彼女との間にある超えられない壁がなくなるという事実が私の心を躍らせたから。
これで彼女の隣にいれる。そんな単純な発想しか湧かなかった14歳の自分が今となっては少々悔やまれる。
あかりんが彼女から離れたって彼女との絆が失われるわけではないし、私も当然含むメンバーにどれだけ愛されているかが近くになればなるほどはっきりと感じてしまう。彼女はリーダーであるからみんなに満遍なく分け隔てなく接しようとしているのが分かる。そしてそれには少しの無理があるという事にも気づいてしまう。
隣を陣取れば陣取るほど私の心は切なく痛む。だって、彼女はいつもあの子の事を追っているのが分かるから──。
◇◇◇
「夏菜子ーっ!」
なに、と口が開き発声されるよりも先に抱きついた。
「うわ、ちょ…いたたた、ちょっ詩織痛い痛い!」
振り向きざまに後ろから全体重をかけて抱きついているため夏菜子の体勢は少々無理のある体勢で、それでも私はそんなことはお構いなしに夏菜子の体温と匂いを楽しむ。
「あーいい匂い…」
「…朝から絶好調すね」
変態めーと笑いつつ辛そうな体勢を整える夏菜子はやれやれといった調子で私の頭を撫でている。別にこれはいつもの事で、まあ今日はちょっと勢いが強すぎたかもしれないけどそれでも夏菜子はいつもの恒例行事を邪険にしたりはしない。恒例行事っ
2012-12-27T13:53:42+09:00
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泣き虫王子と姫
https://w.atwiki.jp/akozuna/pages/50.html
もう何回目になるだろう、奈々ちゃんと肌を合わせるのは。
数え切れないくらい身体を重ねても奈々ちゃんは私を初めて抱いた時と変わらず優しく触れてくれる。
優しい手で私に触れてくれるだけで私の身体は敏感に反応してしまうのは、私が奈々ちゃんを好きなんだと改めて実感させてくれるもので正直ぶっちゃけ恥ずかしくて仕方ないけれど、その証を見てへにゃっと笑う嬉しそうな奈々ちゃんの顔を見ると私が一生懸命言い訳という名の悪態をついたって無駄なんだなと思う。きっと私がどんだけ奈々ちゃんを罵倒したって奈々ちゃんは嬉しそうな顔をしてくれるのは分かる、だって好きってことだから。
***
「いつも」より少し遅い時間の私たちは、外で会うと色々な人の目があるからあまりゆっくりとお互いに触れ合えない。
それはこういう仕事をしている宿命だとさすがに分かっているから、どうのこうの思うつもりも言うつもりもない。私は私のキャラを壊さずにそこにいればいい、共演が重なったりラジオにゲストに行ったり来たりただそれだけで熱愛の噂が出たって「ゆかりも有名になったもんだよね」なんてちょっと茶化して言ってればいいだけの話。
だってそれは所詮噂であって真実は誰も語らない。誰も知らない。そう、当人である私と奈々ちゃん以外を除いて。
その噂を本気にしちゃう人もいるのは事実で、ちょっと嫌な事言われたり思われたりされたりする事もあるけどそんな事は私にとって大した事ではない。学生時代を思い返せば別にそんな辛くはない、だってあの頃と今の私は同じゆかりであって違うゆかりだから。
隣に奈々ちゃんがいる、それだけで私は周りの好奇の目から守られてる気になる。
「ちょっと飲みすぎちゃいましたかね……」
そう言って冷蔵庫からお水を出して私にすっと差し出してくれる。きっと奈々ちゃんの方がお酒弱くて今の発言の飲みすぎたというのは私じゃないのに、こういう時でも私を最優先に考えてくれる優しいところがとても好き。
「ゆかりより奈々ちゃんの方が、でしょ? ゆかりそんな奈々ちゃんみたいに浴びるように飲んでないもん」
「あ、あはは……あっでもそんな! 浴びるようになんて飲んでないですよ! ちょっと……ちょっとだけです!」
「なんでもいいからお水飲んだら?」
上気している頬が気になる私は彼女の特有の言い訳を聞くよ
2012-12-21T20:32:28+09:00
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彼女の理由
https://w.atwiki.jp/akozuna/pages/49.html
─たかみな、男説またしても浮上する!?
「まぁ~たこんな事書かれてるよ、たかみなぁ」
先日収録した番組の放送が今日で、それの見出しがそれで、それを見た隣のやる気のなさそうな雰囲気を醸し出す黒髪の似合う彼女は笑いながら私にその番組表を見せてくる。
「えーっマジすか!? もう男性ネタは終わったんじゃないのかー?」
クリスマスで気持ちが盛り上がっていたのもあったし、観念してメンバーと一緒にお風呂入って証拠を見せざるを得ない状況になったのにも関わらずまたそういうネタが出るとは、私高橋みなみ(間違いなく女性でス☆)は少々その番組紹介には納得がいかないのであります。
ぶーたれたって収録はもう済んでしまっているし、今更撮り直しなんて自分勝手すぎる事は出来るわけもなく番組の方でも問題がなかったからそこをチョイスして放送するんだろうし、あと数時間後に迫るそれは免れる事も出来ないのは分かってはいるけど。
「おかしいね? たかみなは可愛い女の子なはずなのに」
そう言ってくすくす上目遣いで私を見あげてくる瞳の奥には”あの時”に見せる少しSっぽい雰囲気が感じて取れた。
「そ、それはどうも…ていうか私が男じゃないかって思われるのは少なくてもあっちゃんに原因があると思うんだけど…」
「えーそういうの責任転嫁っていうんだよ?」
不満そうな声をあげつつこのやり取りを楽しんでいるだろう隣の黒髪の子は相変わらずの真っ黒な瞳で私を見上げてくる。
「責任転嫁って…だって、あっちゃんいつも…その、跡つけるから…メンバーと入ると見つけられるんじゃないか心配で…」
「当たり前じゃん、だってたかみなは私のだし」
「う…うん、まあそれはそうなんですケド…」
はっきりそう言葉にされると正直恥ずかしい経験値の低い自分がちょっと情けない。とは言えこの二人きりの時に出してくるあっちゃんのデレに対抗できる術はワタクシ残念ながら持ち合わせておりません。という事でAKBのリーダーとして普段はキリリと見せてる私の威厳も、この可愛い悪魔の前では形無しです。
「たかみなは私にキスマークつけられるのが嫌だったりするの?」
なんだか予想外な質問が私の元に降りかかってきた。
「えっ?」
ちらちらと隣を見たり手元にある漫画雑誌を見たりと行ったり着たりさせていた目線を隣に改めて移すと、少々不満
2011-02-03T00:15:05+09:00
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不可解な重力
https://w.atwiki.jp/akozuna/pages/48.html
「ねえ…」
頭の上に感じる生命体に声をかける。
「? どうしたの、でこちゃん」
何故自分が問いかけられているのかさっぱりと分からないであろう声色が頭上から返ってくる。
「……なんであんた私に抱きついてるわけ?」
同い年とは言えないその…胸を押し付けてやよいが誕生日プレゼントと言ってくれたお気に入りのリボンを顎で潰して、体重をかけてくる。重たいわけではないけれど、腕の自由も利かないし正直気になる。
「なんでって…、でこちゃんこういう事されるの慣れてるの?」
「はっ!?」
出会ったときから突拍子もない言動ばかりをしてきたとは思うけど、なんでこんな意味の分からない質問をしてくるのか…。
「だってでこちゃん、やよいが近づくと顔真っ赤にして可愛いかったのに、ミキがこうやって抱きついても何のリアクションもないんだもん。つまんないよ」
「つ、つまんないって…あんたねぇ!」
本当コイツの思考回路だけは読めない。大体私がやよいと近づいていつ赤面したっていうのよ!? っていうかそれをどこで見られていたかっていう話―ってそうじゃなくて…!
「あ」
「今度は何よっ!?」
リボンから顎を外して私の右側から顔を覗き込んでくる美希の表情はなんだか勝ち誇ったような雰囲気を醸し出している。
「でこちゃん、おでこまで真っ赤だよ」
「んな…っ! そんなわけないでしょ!?」
言うが早いか私の胸の前で組まれてる美希の手を振り払っておでこに触れてみるも、いつもと変わらない熱さだ。
――はめられた、と心の中で苦虫を噛み潰す。それなのに美希ったら悪びれもない顔して笑顔を向けてくるなんて、いい度胸してるじゃないのよ…!
「…何考えてるのかな、でこちゃん」
少し探りを入れた何もかもを見透かしたような二つの瞳が私を見つめる。
「…べ、別にあんたの事なんか考えてないわよっ!」
――そうよ、あんたみたいな理解できない変なやつなんて考えるだけ頭がおかしくなるだけだわ。別にアンタの事なんてどうでもいい、大体なんでコイツは私に絡んできてるのよ?
「へ~そっか、でこちゃんはミキのこと考えて顔真っ赤にしてくれてるんだね」
後に、まるで茹でダコ状態の伊織と心底幸せそうな笑顔の美希を見かけたやよいが複雑そうな表情をしていた、らしい…?
END
2009-09-28T12:45:03+09:00
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眠れぬ夜に 「深夜の問答」
https://w.atwiki.jp/akozuna/pages/47.html
※[[眠れぬ夜に 「変化の不変」]]からの続きです。
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◇
今思えば…それがいけなかったのだろうか?
カチコチと時を刻む音が響く深夜。何度も眠りに入ろうと努力するも自然に瞼が開いてしまう。諦めて月明かりで時計を見ようとも月には薄っすらと雲がかかっていて、はっきりと明確な時刻を知る事が出来ない。短針の場所がかろうじて見えた場所は位置的に3時くらいだろう。
隣から規則的に聞こえてくるのは沙都子の寝息。私の方を向いて寝ているからかかるその息が少しくすぐったく感じる。
「思ったより熟睡しちゃったからかしら…」
天井に向かって吐く溜息、聞こえるか聞こえないかの声で数時間前の自分の行動を振り返る。
羽入の力でだかなんだか忘れたけど大空をふらふらと頼りなく飛んでいる、という夢を見ていた時に満面の笑顔の沙都子に起こされた。おぼつかないもののそれなりに気分よく眠っていた(飛んでいた)のに起こされたものだから、現実で何が起こってるのかイマイチ理解するのに時間がかかったけれど、どうやら沙都子が腕によりをかけて作ってくれたもの…らしい。
そろそろガタが来始めた小さなテーブルの上には所狭しと並んだたくさんのお皿。それを彩るものは精力のつくものばかりだった。入江からおすそわけしてもらった山芋、それに生卵や納豆やオクラなどのぬるぬるとしたもの、更には買い物に出たときに村のみんなからもらった食物の中に入っていたウナギまで見事に食卓を飾った。
久しぶりに料理をした沙都子は「少し腕が鈍りましたわね」と少し苦笑気味だったが、一緒に暮らし始めた頃…つまり一年前よりかは大分上達していると思える。それでも沙都子が言うにはウナギのタレがまだ少し煮詰まっていないから味が薄いだの、少し焦がしてしまって似つかわしくない匂いがするだの、どこから沸いてくるんだろうかと思える勢いで言葉がマシンガンのように降り注ぐ。
言われなければ分からない程だし、もしそうだとしてもそれはそれとして美味しく頂けるとは思うけど、こういうのは気にしてしまったらどうしようもないものだろう。沙都子もプライドは高い方だから失敗には何かしらの言い訳をつけてしまう癖がある。それもまた沙都子らしくて可愛らしく思い、留まる気配のない上ずった声で矢継ぎ早に紡がれる言い訳をBGMに愛情たっぷりの手料理を食
2009-09-10T04:27:03+09:00
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眠れぬ夜に 「変化の不変」
https://w.atwiki.jp/akozuna/pages/46.html
※[[眠れぬ夜に 「暗い心」]] からの続きです。
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◇
屋根を叩きつけるけたたましい雨音で目が覚めた。…いつの間に眠っていたんだろう? はらりと落ちるお腹にかけられたタオルケットと、二つの枕。
寝ぼけ眼でカーテンの隙間から外を見ればまるで私の心情を表すかのようにどんよりとした黒い雲が空一面に広がり、バケツを引っくり返したように雨がざんざんと降り続いている。天候に好き嫌いはないけれど、滅入っている時に雨天というのは暗い気持ちを増長させるような気がする。…こういうのは気持ちの問題なんだとは思うけど。
雨のせいで少し気温が下がっているためか、全身がぶるると震えた。どんな時だって隣にいて私に温もりを伝えてくれている沙都子は…いない。
「……沙都子?」
ぼそりと愛する人の名を呼んでもいつもの快活な返事はなく、代わりに降り続ける雨の音がザンザンと答えるだけ。
「沙都子…どこにいるのですか?」
きょろきょろと辺りを見回しても愛しい気配を感じる事が出来ない。防災倉庫に住居スペースを用いただけの小さな家、どこに沙都子がいるか分かるはずなのに、この全ての音を遮断する程の勢いで降る雨が私の感覚を鈍らせている気がした。
――寂しい。激しい雨音に包まれているとまるでこの世界には私だけしか存在していないような錯覚が生まれる。一人でいる事がこんなにも寂しかったなんて思いもしなかった…いや、きっと沙都子と一緒にいる事が当たり前で日常的過ぎたから、一緒にいる前の当たり前が当たり前でなくなっただけの事。二人で分け合える温もりを覚えてしまってからはもう、私は今の当たり前を離そうとはしない。決して何があっても自分から手放す事なんてしないだろう。例え沙都子が私を手放そうとしても縋りついてだって柔らかな温もりを逃がさない。それが優しい沙都子から私への同情の意だったとしても。
布団から抜け出してもう一つの部屋へ行こうと起き上がるも、どことなく身体に倦怠感を感じる。これも雨のせいだろうか? 今日はいつもとどこか調子がおかしい気がする、…大体沙都子が私を置いてどこかに行くことなんて結ばれる以前は当然、結ばれてからだって何度となくあったはずなのに何故今日に限ってこんなに心細くなっているんだろう? 私はこんなに弱い人間だったんだろうか?
「あら梨花、起きました
2009-08-29T12:38:49+09:00
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眠れぬ夜に 「暗い心」
https://w.atwiki.jp/akozuna/pages/45.html
※[[眠れぬ夜に 「襲い来る闇」]]からの続きです。
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◇
からっと晴れた日曜日。部活メンバーで集まる話もなく平凡な休日なので宿題をしたり、溜まった洗濯物を片付けたり何があるか分からないでございましょう? という沙都子の言葉で部屋の片づけを手伝わされる羽目になったりと、一人では気が進まずついつい先延ばしにしてしまう事も、私とは逆の性質持ちの沙都子と一緒にこなしてそれなりに充実した時間を過ごしていた。
午後には最近沙都子の体調が悪かったせいもあり二人一緒に買い物に出かけていなかったため、天気もいいことだし久しぶりに手を繋いで買い物に出かけた。二人で貰ったお駄賃の飴を頬張りながら行き同様に手を繋ぎながら家へ戻る途中、普段は自転車で通り過ぎていた横道を見つけた沙都子がぺかーっといい笑顔を向けて私に言う。
「少し寄り道していきません?」
キラキラと輝く大きな瞳に見つめられては断れるはずもなく、二つ返事で了承し未開拓であろう山道をざくざく進む。買出しに出てこれなかった理由が、沙都子の体調不良だったため村の人たちがみな気を揉んで心配していたのもあり、二人仲良く買い物している姿を見れば栄養をしっかりつけんと、とあれやこれやと手に持たされて気づけば通常の買い物の量よりも遥かに超える買い物量となってしまった。
自転車ではなく徒歩での行き帰りなので少なからず体力は消耗しているはず、更にこの体格に合わないだろうと言わんばかりのぱんぱんに膨れた買い物袋なんて何のその、そんなものはお構いなしにと沙都子は先を急ぐ。
「いつ何時何があるか分かりませんわっ、どんなところにでもトラップを仕掛けるようにしておきませんと。それにはまず地形を知ることからしなくてはいけませんものね!」
あの時、山狗達にトラップを存分に仕掛けたのがよっぽど気持ちよかったのか、それともまた私が狙われた時救ってくれるよう備えているのか、念入りにチェックをしながら進んで行く。女の子らしい線で描かれた沙都子の背中に頼りがいを垣間見ると、袋の重みが少し指に食い込んできていたとしても不思議と堪えきれると思える元気を与えてくれる気がした。
…そういえば沙都子のトラップワークって番犬にスカウトされていたんだっけ、どう考えてもM属性の沙都子が人をトラップに陥れて悦ぶっていうそのギャップが
2009-08-29T12:39:04+09:00
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大切なあなた 「彼女の事情」
https://w.atwiki.jp/akozuna/pages/44.html
◇◇◇
「給食費が払えない?」
午前のレッスンが終わり、昼食を挟んだ休憩時にやよいがバツが悪そうに私に言った。
「はわっ! 伊織ちゃん声が大きいー!!」
周りに聞こえるのを恐れてか慌てて私の口を塞ぐ。
「ぷはっ。ご、ごめん…って、でも給食費が払えないって…本当なの? やよい…」
今のこのご時世、給食費なんて払わない輩は多いものの払えない輩がいるだなんて思いもしなかった。そりゃ自分の家は超がつくほどのお金持ちだと自覚しているし、将来は素敵な男性と結婚する予定だったし、働く気なんかなかった。父親や兄に認めてもらうためでなかったらわざわざアイドルなんて目指そうとも思わなかったくらいだ。
それなのにこの目の前にいる子、高槻やよいは一家の大黒柱である父親の稼ぎが少ないから、弟妹のため、家族のためにお金を稼ぎたいと言ってアイドルを始めていた。
「う、うんー…ちょっと色々立て込んじゃってね、今月は特に厳しいみたいで…えへへ」
軽く頬を染めたやよいが、少し気恥ずかしそうにサンドイッチにかぶりつく。中身の卵がちょろりとはみ出す。
「まあ…私たちもまだEランクだし、一家を養えるほどのお給料もらえてるわけでもないからね。…正直悔しいけど!」
「そうだね…」
765プロだけでもたくさんのアイドル候補生がいて、全国に同じ夢を持つライバルはごまんといる。プロデューサーがついてデビューは済んでいるものの、スタートラインに立っただけ。まだまだトップアイドルの道は果てなく遠い。
毎日毎日レッスンの日々で本当にこんなんでトップアイドルになれるのかと、不安になる事なんて日常茶飯事だ。
「でも心配無用! この水瀬伊織ちゃんがいるんだから、今に飛ぶ鳥を落とす勢いでトップになれるわよっ!」
残りの100%オレンジジュースを一気に飲み干し、やよいに最上級の笑顔を向けてみる。こんな笑顔アイドルやってる時だってしない。疲れるし。やよいにだけ特別大サービスよ。
「…そうだね、そうだよね。伊織ちゃんがいればSランクアイドルなんてあっという間だよね! うっうー! 楽しみー!」
…エッ、えすらんくあいどる!? やよいもなかなか言ってくれるじゃないの…でもそうね、そうよね。
「そっ、そうよ! あっという間なんだからやよいもちゃんと私についてくるのよ!」
――広
2008-10-05T22:43:30+09:00
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