『雇用・利子および貨幣の一般理論』ージョン・メイナード・ケインズ

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概要

本書は、経済学者ジョン・メイナード・ケインズによって書かれた。

当時の古典派経済学では市場は自律的に調整されるために失業は存在しないとされたが、1912年にアメリカから世界に波及した世界恐慌で大量の失業が発生し、現実との齟齬が指摘されてきた。ケインズは本書で需要によって生産水準が決定され、それが失業を発生させることを明らかにした。その構成は第1篇緒論、第2編定義および基礎概念、第3編消費性向、第4編投資誘因、第5編貨幣賃金および価格、第6篇一般理論の示唆に関する若干の覚書から成り立っている。そして失業の解消を図るために政府による財政金融などの政策の理論的根拠を与えた。

ケインズは古典派経済学の理論において貨幣を物々交換の媒体として位置づけられており、また市場には現在の資産を将来にわたって合理的に配分する機能があると考えられているが、このような想定は批判することができる。そもそも市場が機能するためには将来に発生する事件の内容と確率分布を知らなければならない。ケインズは不確実性が市場経済を本質的に支配していることを指摘している。貨幣は必ずしも交換の媒体になるのではなく、誰にでも受容されるという信頼性が伴って初めて貨幣として機能するものであり、もし全ての人が貨幣を保有しようとすると流動性の罠が生じる。

将来的な不確実性に対する人々の不安は市場においては需要の低下として示される。経済システムを動かしている社会的要因はさまざまな心理状況からもたらされている。将来に対する不安が増大すれば、市場では資産の売却による利益の確定と貨幣の保有を増大させる事態を招く。ケインズは資産としての価値が低下する際にそれを売却して貨幣を保有しようとする選好を流動性選好と概念化した。流動性選好に基づいて判断すれば、投資とは社会の心理的状況が上向きであり、行過ぎればインフレーションが起こる。逆に不安が増大すれば貨幣を保有し、設備投資や消費を抑制する。不確実性に対する楽観しや不安感が常に社会において変動するために、景気が循環している。

こうした概念は当時の経済学界に衝撃を与えた。ケインズより若い世代はこの本を熱狂的に支持し、一方古い経済学者たちは本書を批判した。ポール・サミュエルソンは「南海島民の孤立した種族を最初に襲ってこれをほとんど全滅させた疫病のごとき思いがけない猛威をもって、年齢35歳以下のたいていの経済学者をとらえた。50歳以上の経済学者は、結局、その病気にまったく免疫であった。」と語っている。

著者

ジョン・メイナード・ケインズ(John Maynard Keynes、1883年6月5日 - 1946年4月21日)はイギリス生まれ、20世紀学問史において最重要人物の一人とされる。経済学者、ジャーナリスト、思想家、投資家、官僚。経済学において有効需要(着想自体はミハウ・カレツキが先であるとされる)に基いてケインズサーカスを率いてマクロ経済学を確立させた。
経済学者の大家アルフレッド・マーシャルの弟子であり、論敵アーサー・セシル・ピグーとは兄弟弟子、ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインやブルームズベリー・グループとの交流は有名。父のジョン・ネヴィル・ケインズも経済学者である。

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最終更新:2009年11月24日 11:56
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