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2006年の投稿より by ゆう

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2006年の投稿より by ゆう

目次

この年、ja2047さんはますますの円熟期を迎えます。「事実」「常識」から出発する説得力のある論法。とんでもない相手を軽くいなす軽妙な語り口。ja2047さんの議論を拝見することは、私の大きな楽しみでした。

この頃のja2047さんの投稿数は、例年にも増して膨大です。その多くの部分は「国際法」をめぐる論議で費やされていますが、私のこの方面に対する知識は十分なものではありませんので、以下では「国際法」以外の部分に絞ってja2047さんの投稿を紹介していくことにします。


1.南京事件の全体像

「南京事件」の全体像についてja2047さんがどう考えていらっしゃったのか、それがわかる投稿を何点か紹介します。



投稿者 :
ja2047

「肯定派」「否定派」という分類自体は相対的なものであってナンセンスだと思います。

以前は4万~6万説の秦郁彦氏や、1万数千説の板倉由明氏は、大虐殺実在を強調する人からは「否定派」に分類されていましたし、同じ時期に代表的な「否定派」である田中正明氏は秦氏や板倉氏(これを引用した加登川幸太郎氏)を「肯定派」に分類していました。

現在の日本のまともな研究者の見解の最大公約数を取れば、「不法殺害はあったので虐殺はあったが、それは30万よりはずっと少なかったであろう。」という点では一致しています。

  • 捕虜の大量殺害はあった
  • 民間人への暴行、掠奪、殺人はあった
と言うところが事実でしょう。

犠牲者総数は十数万(戦死含め)、明確な不法殺害は数万と言うところが実態だと思います。

これは メッセージ 35815 に対する返信です


ja2047さんは、私とのメールのやり取りの中で、自分を「事実派」と呼んでいました。掲示板には、「事実」から出発せずに、いい加減な情報をベースにした「思い込み」で投稿する方が、あまりに多すぎる。自分としては、「事実」は「事実」としてきちんと伝えたい。そんなところが、ja2047さんの出発点ではなかったか、と思います。

個人的なことですが、私も「肯定派」と呼ばれることを嫌います。「事実」を「事実」として論じているだけなのですから、わざわざ肯定「派」のカテゴリーに入れられて「相対化」されることには抵抗があります。

さて、上に続く投稿群です。



投稿者 :
ja2047

数十万とか数万とかかなり大雑把な推定の数字し現れないのがこの件の特徴ですね。

そうなのですね。
結局は本格的な調査というものが一度もなされなかった。今日となっては断片的な資料から全体像を組み立てるしかないので、資料の曖昧さや解釈の違いが積み重なって、積み上げの数字がいくらでも変わるんです。

今となってはどうしようもないのですけど、私は、1937年の末か38年の年明け早々に、南京事件が世間に発覚し、軍が不祥事を把握したた段階で、第三国の調査団を入れて関係者の処分をしていれば、何も問題はなかったと思うのですね。

そうすれば「民間人を中心に何十万もの虐殺」というような評価が定着することもなかっただろうし、今また無謀な全否定論がまかり通って、国際的に「日本人は卑怯な国民である」という印象を振りまくこともなかったでしょう。

当時の日本軍の姑息な隠蔽体質が、ここまで問題をこじらせた第一の原因であると思います。

これは メッセージ 35830 に対する返信です



投稿者 :
ja2047


事件発生時点で現地で調査が出来たのは日本軍だけなんです。
隠蔽したつもりが結果的に「ない」ことまで押し付けられたのではないかという疑問は否めません。

後でも調べることが可能ですよ。軍や政府の資料や帳簿、命令書などがそれですし、ちょっとした組織ならばそういうのは都合が悪かろうが残っていますし、仮に改ざんまたは破棄されたとしても見る人が見ればわかると言うものです。


ところが、日本の場合は敗戦時に公的な書類はほとんど焼却してしまっているのですね。これは戦記をよく読む人にとっては常識であるわけですが、これさえ知らない人は結構多い。
http://www5a.biglobe.ne.jp/~kinsei/0311.htm
http://www32.ocn.ne.jp/~modernh/paper53.htm


それを放棄して「向こうが調べないのがおかしい」と言うのはさて歴史を調べると言う観点からして正しいのでしょうか?

「向こうが」というのか、1938年時点で日本側がきちんとした調査と発表を行えば結果的に「大日本帝国」の名誉を守ることに繋がったのではないかというのが私の言ってることなのです。

日本軍が南京で残虐行為をしていると欧米で報道されているのは1938年の前半には外務省や軍は知っているわけですから、多少まずいことが明らかになったとしても、オープンな調査をすれば、結果的に「ない」ことまで背負わされる可能性は低かったでしょう。


とんでもない、日本軍が蛮行を行ったというので、大量の記事を配信しています。

三日しか残っておらず、部分的にしか調べていない人々の情報が信用できるかが問題ですね。

そうですね、けど、新聞記事というのはだいたい半日ぐらいで記者が関係者の取材と自分の見たことをまとめて報道するものですから、一般の新聞記事と同等の信頼性があるのではないですか。もちろん日々掲載される新聞記事も、あとで間違いが指摘されることはあります。そこで公的な機関の詳細な調査と発表が重要になるわけです。

で、これも、公的機関の発表が正しいという保証はないのですが、これはこれで重要な資料ですから、それが欠けているというのは大変残念なことなんです。

松井大将は後に東京裁判の宣誓口述書で
「予は上海帰還後、南京に於ける暴行事件の噂を聞き、特に昭和十二年十二月下旬、部下参謀を南京に派遣して、重ねて南京滞在将兵に戒告を発し、事件の厳重なる調査と違反者の処罰励行を命じたりしも、予の離任迄、格別重要なる報告に接せざりき。」(法証三四九八)
と述べているので、一応調査は命じられているわけです。
この報告書というのが残っていない。その調査が実際に行われたのかさえ不明なのですね。

南京から日本軍が居なくなったのは戦争終結後のことです。

日本軍は結果として負けて去ったのですから証拠を完全に消去させるほどの能力または余裕があったのか疑問です。

先に紹介したように、基本的には文書は全て焼却したのです。その結果、現在南京攻略戦の軍の公式書類は1/3しか残っていないと言われてます。

これも、公式に保管されたものではなく、個人が隠匿したり、米軍が押収したものの中から発掘されたものなのですね。防衛庁はまだ未公表の軍関係書類を所蔵しており、内容確認の上で順次公表している最中ですから、今後もいろいろな資料が出てくることを期待します。
http://www.nids.go.jp/military_history/military_archives/news/index.html

これは メッセージ 35844 に対する返信です


「旧日本軍関係の資料の多くが終戦直後に焼却・廃棄された」というのは、ちょっとでも「戦前」に関心を持つ方ならば「常識」なのですが、この掲示板にもそんな「常識」を持たない方がいらっしゃったようですね。参考までにこの点は、吉田裕氏が『現代歴史学と戦争責任』の中で、詳細に解説しています。

続く投稿では、「日本軍には主観的には「事情」があったとしても、第三者にそれを納得させることができるかどうかはまた別の問題である」という、注目すべき視点を提供しています。



投稿者 :
ja2047


ここに引用されている記事のうち殺害に関する部分は、通常の戦闘行為とユウ江門の同士討ち以外は全て、敗残兵の掃蕩、便衣兵の掃蕩・処刑に関するものと解釈できるものばかりですな。
蛮行どころか、正当な軍事行動だ。

日本軍にとってはそれなりの理由があって行った行動だったのでしょうが、それを第三者に納得させることができなかったのですよ。そこが問題なんです。

「日本軍にとってはこれが戦争なのかもしれないが、私には単なる殺戮のように見える。」
(スティール 二月四日シカゴデイリーニュース記事)

「日本軍は統制が失われたと言えば簡単だが、私はそうは思わない。アジア人の戦争の進め方は、われわれとは異なるのだ。日本と中国の立場が逆でも、事態に大差はなかっただろう。とくに扇動の仕方は同じである。」
(シャルフェンベルク ドイツ大使館事務長 二月一日付けの漢口のドイツ大使館宛の報告書)

「ラーべ氏も含め、ここにいるドイツ人は全員、アジアの戦争というものが、われわれの考えている戦争とは本質的に異質だということが身にしみてわかった。捕虜にしないということは、とりもなおさず冷酷な行為につながる。略奪などはあたりまえで、まるで三十年戦争の時代に戻ったようだ。」
(シャルフェンベルク ドイツ大使館事務長 二月十日付けの漢口のドイツ大使館宛の報告書)


「現在の日本のまともな研究者の見解」では
  • 捕虜の不法殺害は、あったとしても軍事的必要性によって説明可能なものだった。
  • 市民に対する少数の暴行はあったが、不法な殺人は確認されていない。
  • 軍が市民に対する暴行を黙認又は放置していたという事実はない。
ですね。

そういう説明をする人もいるが、公式には受け入れられていない、ということです。地球が平面だという主張をする人もいれば、アポロ月着陸は捏造だと主張する人もいます。そういう説明をする人がいるということと、それが世間で、あるいは専門家に通用するかどうかは全く別の話です。

これは メッセージ 35845 に対する返信です


掲示板では、「南京大虐殺とは「30万人説」のことである。虐殺数は30万人に達していない。従って「南京大虐殺」はなかった」という奇妙な「三段論法」を、しばしば目にします。

「南京大虐殺」を文字通りに「南京における大規模な虐殺」と定義するのであれば、そこまで否定する論者はほとんど存在しませんので、私としてはこの「三段論法」はトリックめいたものであると考えていますが、ja2047さんの「反論」は、例によって軽妙です。



投稿者 :
ja2047


私個人南京大虐殺の焦点とは「日本軍による組織的犯行か否か(個人レベルの犯行は戦場だろうがあるに決まっているから)」ですのでこの調査命令はそれがないとの証明になると思いますが。

軍中枢は「虐殺せい」という命令を出したわけじゃありません。
南京事件というのは、せいぜい師団とか地方軍レベルでの暴走でしょうね。ベルリン大強姦だって、「強姦せよ」というソビエト軍中央の命令書がある訳じゃないのと同じです。

日本軍が不要に死体の山を作ってしまった事実が後に犯罪とされたわけですし、松井大将も「不作為の責任」で有罪判決を受けたのです。
あなたが「30万」「軍全体の組織的犯行」を以て「南京大虐殺」の定義とするのであれば、東京裁判の結果「南京大虐殺」は認定されていない、ということになるわけですよ 
d(^^

これは メッセージ 35865 に対する返信です



2.重慶爆撃


さてここで、いかにも「事実派軍事マニア」であったja2047さんらしい投稿がはさまります。



ある資料によれば、重慶を襲った日本の重爆撃機はのべ2400機、投下した爆弾は1万5000トン、

これの出所が不明なのですが、あるいは「嶋田繁太郎大将備忘録」の記述、1941年7月28日~8月31日の「百二号作戦総合戦果」の
「我が使用機数
  • 陸攻二〇五〇機 艦攻、艦爆二〇一機 艦戦九九機 陸偵 三九機  計二三八九機
  • 攻撃回数二〇回
  • 消耗爆弾
    八〇番九四 二五番(陸用)二九〇六 その他一一一四八  計一五〇三六」
を誤って引用したのかとも思います。

1938年末から1941年8月まで行われた重慶爆撃の最後の一ヶ月の出撃機数を作戦全体の機数と読み誤った上に、爆弾の個数をトン数と読み誤っているとすれば、バカとしか言いようがありません。


その前に行われた「百一号作戦ノ概要」での
  • 攻撃延機数
    中攻三六二七機 九七重七二七機 司偵一七七機 零戦二四機 計四五五八機
  • 使用爆弾
    一〇〇二一発
    一四〇五屯
から見て、当時の日本軍の使用爆弾の重量は単純平均で150kg程度、爆撃機一機の実搭載量は300kg強と言うことになるかと思いますね。

これは メッセージ 36532 に対する返信です

このように、細かいデータを挙げての「解説」は、ja2047さんの最も得意とするところでした。


3.国際法


最初に述べた通り、この時期のja2047さんの議論は、「国際法」問題をめぐるものが大半です。「国際法」音痴の私は当時の議論を紹介する責に耐えないのですが、「音痴」の私でも面白く読めた投稿がありましたので、紹介します。



このトピで、例のmisareiji氏などは、国際法違反と主張するのをあきらめて、日本軍にとっての軍律違反を問えるという主張に転換してましたね。それにしても現実には軍律裁判をやってないわけですから、アウトには変わりないですが。

ここでも指摘したことがあると思いますが、当時の日本軍の記録で、安全区の敗残兵について、「私服戦闘は戦争犯罪だから処刑した」と書いてある記録は現存しないのですね。

単に中国兵を拘束し、処分したという記述だけしかなく、そこには私服で潜伏していたことの違法性を問うた形跡は全く見られません。後の東京裁判でのやりとりでも、検事側はこれを捕虜殺害として告発しており、これに対して弁護側中山証人は「殺したと言うことはないはずで釈放した。 若干は裁判に掛けた後処刑したかもしれない。」という趣旨の供述をしています。

無裁判処刑が合法であるなどという主張はまったくなされていません。実は、今日の「無裁判処刑合法論」というのは当時の軍人の常識では考えられない論だったのではないでしょうか。

「無裁判処刑合法論」というのを誰が最初に言い出したのかは気になりながら確認できていないのですが、「現代歴史学と南京事件」では東中野センセが言いだしのように書かれていますね。

やはり実際のところは、当時の日本軍としては捕獲した中国兵は軍服を着ていようといまいと、その場の勢いで殺してしまったというのが実態で、国際法違反だの戦時重罪だのまではなにも考えていなかったと見るのが正解なのでしょう。 だって記録がないんだもん。

「無裁判処刑合法論」はずいぶん後になって東中野センセか田中正明センセあたりが苦し紛れにひねり出したもので、井上久士氏からも色摩力夫氏からも批判されている、学問的にはお話にならない説のわけです。

(以下省略)

これは メッセージ 37049 に対する返信です

「当時の日本軍の記録で、安全区の敗残兵について、「私服戦闘は戦争犯罪だから処刑した」と書いてある記録は現存しない」というのは、鋭い指摘であったと思います。


4.インターミッション 復刊投票にご協力を!


堅苦しい「議論」ばかりではなく、たまにはこんな楽しい「会話」が登場することもあります。


投稿者 :
ja2047

復刊リクエスト投票
南京戦史増補改訂版 資料集とも全3巻
http://www.fukkan.com/vote.php3?no=14439

皆さん。
よろしければ、復刊リクエストに投票お願いします。
ぺこ<(_ _)>


うむ、他ならぬでりちゃんの手を付いての頼みなら、聞かないわけには行かないな。

って、実はわたしも投票済みだ、最初の方見てごらん。
おなじみの名前がほかにも出てるから。


で、ついでに、こちらの方にもご協力をお願いいたします 

日中戦争の航空戦というのは、南京渡洋爆撃、嗚呼梅林中尉、
樫村機の片翼帰還、重慶爆撃、零戦の初陣、とエピソードには
事欠かないのですが、なにしろ本が少ない。
まとまったものというと「中国的天空」と「戦略爆撃の思想」
ぐらいしか思い浮かびません。

ということで、復刊署名にご協力下さる方はぜひお願いします。
http://www.fukkan.com/list/comment.php3?no=13913

ふかぶか <(_ _)>

これは メッセージ 37281に対する返信です




投稿者 :
ja2047

良く知らないのだが、「支那側から見た支那事変・航空戦史」というところが何となく警戒してしまうな。

なに、筆者の中山雅洋氏はソビエトがフィンランドに侵入した「冬の戦争」を題材にした「北欧空戦史」で名高い人だ。別に偏りはない。


『満州国出現の合理性』
『リンドバーグ第二次大戦日記』全2冊
『極東国際軍事裁判速記録』全10巻
↑この3つに投票してくれるなら、協力しよう!

よし、乗った。
と言いたいところだが、『リンドバーグ第二次大戦日記』はすでに文庫化されているので入手性はいいよ。代わりに軍学者兵頭二十八の「ヤーボー丼」ということにさせて貰おう。

これは メッセージ 37290 に対する返信です



投稿者 :
ja2047

一つ協力してもらうのに三つ協力するのは割があわんな。

ついでにこいつも協力してくれ。
http://www.fukkan.com/vote.php3?no=27355

これは メッセージ 37291 に対する返信です

なおここに出てくる「でりちゃん」というのは、私が「思考錯誤」板で紹介したことのある通り、とんでもない人物です。


このやりとりは、ja2047さんとデリ氏との長大なやりとりの中で、ほとんど唯一、「友好的な会話」であったかもしれません。


5.こんなHPをつくりたかった


これ以降、ja2047さんは、「国際法」に関する長大な議論を行なうことになります。「国際法」議論へのja2047さんの貢献についてはeichelberger_1999 さんにお書きいただくことになりますので、私は最後にひとつ、印象的な投稿を紹介して、この項を終えることにします。

ja2047さんがお亡くなりになる2か月前の投稿です。



こんにちは、オメガさん
jaさんは色々と国際法や軍事知識等がおありなのですから、HPを作成してみてはどうでしょうか?

実のところは私はあまり平和主義者でも、進歩主義史観の信奉者でもなく、ビジュアルを中心とした戦史マニアにすぎませんので、大方の期待を裏切るHPになると思います。

私が理想としているHPはこんなのだったりします (^^;
http://www.warbirds.jp/heiki/43000.htm
http://www2.ttcn.ne.jp/~heikiseikatsu/

これはメッセージ38200に対する返信です


そう、まさに我々も、ja2047さんにはそのようなHPをつくっていただきたかったのです。

我々の「近代史」系の議論では、しばしば「軍事知識」が必要となることがあります。当時の「軍装」はどうだったのか。この年式の戦車はどのような形をしていたのか。

ja2047さんは、そのような方面で、我々の「知恵袋」でした。ja2047さんの早すぎる突然の死に、我々は呆然とするしかありません。


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