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今、地方公務員の良心の危機(自由法曹団決議)

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今、地方公務員の良心の危機(自由法曹団決議)

2005年06月26日 | 民主主義と人権問題

何がこの国で起きているのか?きちんと見つめていきましょう。
以下、自由法曹団六月十八日決議

地方公務員等の政治的行為処罰を図る地方公務員法等「改正」に反対する決議

1 自民党は、地方公務員や公立学校教職員等の政治的行為に対して、国家公務員なみの懲役刑を含む刑罰規定を導入するため、地方公務員法・教育公務員特例法・地方公営企業法等の一部「改正」案を公表し、今国会に提出しようとしている。300万人もの地方公務員、公立学校教職員(約90万人)、地方公営企業職員(約40万人)等の政治的自由が刑罰の威嚇をもって奪われようとしているのである。

2 しかし、公務員資格を有する市民の政治的行為について、刑罰をもって禁止することは、そもそも許されないものである。

(1) 政治的行為は、憲法21条の「表現の自由」によって保障されている。政治的な言論や表現活動は、民主政治の根幹をなすものであるから、民主主義社会の中で最大限の保障が与えられなければならない。わが国の国家公務員法のように公務員の政治的行為を一律に刑罰をもって禁ずるような法規制は、他の先進諸国では例のない極めて非常識なものである。1974 年の猿払事件判決で最高裁判所は、国家公務員に対する政治的行為の制限を合憲としたが、その判断はおよそ全ての憲法学者から批判されている。今回の「改正」は、地方公務員等の政治的行為について、現在の国家公務員法と同様に、公務との関連性や公務に与える影響の有無に関わらず、一律に刑罰を課そうとするものであって、憲法21条に反する。

(2) 現行法上、地方公務員や公立学校教員については、罰則規定こそないものの政治的行為が制限されている。国民の政治活動の自由については広く豊かに保障されるべきであって、民主主義の観点から今真に求められている法改正は、国家公務員法上の規制も含めて、これらの制限規定を廃止することである。現行法の規制に加えて違反行為に対する刑罰規定を新設することは明らかに民主主義に逆行する。ましてや、現行法では規制の対象となっていない地方公営企業職員に対してまでも、新たに罰則付きの政治的行為禁止規定を導入することなど論外である。

(3) 刑罰規定を導入すれば、対象とされる公務員等とその周辺の市民に対する深刻な人権侵害も起る。東京地検は、2004年3月、社会保険庁職員の政党機関紙等の配布行為について、国家公務員法違反で起訴した(堀越事件)。同法違反の起訴は実に33年ぶりのものであった。同事件は、現在、法廷で検察側の立証が進められているが、そこで明らかになった公安警察の捜査態勢は異常というほかないものであった。公安警察は、29日間にわたって、のべ171人の警察官を動員し、当該公務員を尾行・監視した。そして、この監視活動では、公務員ではない市民までもが、当該公務員と接触したというだけで捜査の対象とされた。
このような捜査によって、当該公務員やその周辺の市民のプライバシーは大きく侵害されたのである。

(4) それだけではない。刑罰規定を導入するということは、刑罰を課すことを前提とした逮捕・勾留・捜索・差押等の捜査を司法警察に許すことになり、権力にとって好ましくない特定の政治的行為を狙い撃ちにした「弾圧」を可能にするのである。堀越事件とは、まさに、国家公務員法を「活用」した政治的「弾圧」事件であった。地方公務員法等の「改正」は、このような「弾圧」の対象を地方公務員等にまで広げようとするものにほかならない。

3 自民党は、9条をはじめとする改憲を狙っている。今回の「改正」は、全国400万以上の自治体関連労働者を「物言わぬ国民」にすることにその目的がある。
国民投票法案における「運動規制」ともあいまって、国民の口を封じて、日本を「戦争する国」にしようとする策動の一環であり、日本の民主主義を破壊するものである。
私たちは、このような重大な問題をはらむ地方公務員法等「改正」に断固反対する。

2005年6月18日自由法曹団常任
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