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ナカイサヤカ氏の「インテリジェントデザインはスペンサーの焼き直し」


「謎解き超科学」でナカイサヤカ氏は次のように書いている。
創造科学では進化には目的があるというが (謎解き超科学 p.136)
一体、誰が「進化には目的がある」と言うだろうか?
  • 創造科学は「進化」を否定しており、「進化には目的がある」とは言わない。
  • インテリジェントデザインは「purposeless evolution (目的なき進化)」に「目的あるデザイン」を対置させる。「進化には目的がある」とは言わない。
  • インテリジェントデザイン運動が敵視する有神論的進化論者の中には、「進化には目的がある」という者もいるかもしれないが、それはインテリジェントデザインの主張ではない。
ナカイサヤカバージョンのインテリジェントデザインはそう主張するにだろう。

その考えは19世紀にスペンサーが唱えて一世を風靡した説の焼き直しである。(謎解き超科学 p.136)
Spencerは、「究極の到達点へ向かって進化する」という ラマルクの定向進化 の立場に立っていた。

この定向進化を、現在のインテリジェントデザインと比べると
  • 大きな進化の道筋について、Lamarckが理神論的なフロントローディングを想定するのに対して、インテリジェントデザインはデザイナーの超自然からの介入(intervention)を想定する。これは、神が存在することを知りうるか否かという決定的な違いである。
  • 小さな変化について、Lamarckが獲得形質の遺伝を、インテリジェントデザインが突然変異と自然淘汰による小進化を容認する。

さらに、インテリジェントデザイン運動は、社会的ダーウィニズムの始祖として、Francis GaltonとともにHerbert Spencerを敵視している。そして、インテリジェントデザインを、SpencerではなくWilliam Paleyのデザイン論の発展形と称している。これについて、批判者たちも同意見で、インテリジェントデザインはWilliam Paleyのデザイン論のの焼き直しだと言っている。

確かに、自然選択では進化は説明できないという立場から、還元不可能な複雑さについて、Herbert Spencerはインテリジェントデザイン支持者と見まがう記述を残している。その点で共通性はあるが、定向進化と超自然の介入という決定的な違いがある。Paleyを差し置いて、Spencerの焼き直しとはとても呼べない。

しかし、ナカイサヤカバージョンのインテリジェントデザインは「スペンサーが唱えて一世を風靡した説の焼き直し」である。とするなら、こにバージョンは
  • 進化は究極の目的へ向かっての進歩である。
  • その進化はデザイナーによって、超自然から自然界に介入するのとは違う、何らかの形で推進される。
というものになるだろう。







最終更新:2014年01月13日 09:31