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Soberは「インテリジェントデザイン理論が神の存在を要求している」ことを示す


University of Wisconsin の哲学科 Elliot Sober教授 が、インテリジェントデザイン理論が宗教であることを証明するPaperをまもなくPublishした:


今日はこのPaperを読むことにする。
まずはアブストラクトから:

Abstract: When proponents of Intelligent Design (ID) theory deny that their theory is religious, the minimalistic theory they have in mind (the mini-ID theory) is the claim that the irreducibly complex adaptations found in nature were made by one or more intelligent designers. The denial that this theory is religious rests on the fact that it does not specify the identity of the designer -- a supernatural God or a team of extra-terrestrials could have done the work. The present paper attempts to show that this reply underestimates the commitments of the mini-ID Theory. The mini-ID theory, when supplemented with four independently plausible further assumptions, entails the existence of a supernatural intelligent designer. It is further argued that scientific theories, such as the Darwinian theory of evolution, are neutral on the question of whether supernatural designers exist.

インテリジェントデザイン理論の支持者がその理論が宗教だということを否定するとき、自然界に見つかる還元不可能な複雑さを持つ適応がひとつまたはそれ以上のインテリジェントデザイナーによって創られたという最小理論を考えている。この理論が宗教だということの否定は、デザイナーの属性情報を特定せず、超自然の神でも異星人集団でもこのデザインを創ったと言えるという事実に基づく。この論文では、この反論が最小インテリジェントデザイン理論のコミットメントを過小評価するものであることを示す。4個の独立したもっともらしい仮定を補うと、最小インテリジェントデザイン理論は、超自然インテリジェントデザイナーの存在を要求する。ダーウィン進化論のような科学理論が、超自然デザイナーが存在するか否かという問いに対して中立であることを論じる。


最小インテリジェントデザイン理論に第1原因論を適用する

まず、第1原因すなわち超自然へとつながる論理をSoberは提示する。

  1. If a system found in nature is irreducibly complex, then it was caused to exist by an intelligent designer.
  2. Some of the minds found in nature are irreducibly complex.
  3. Therefore some of the minds found in nature were caused to exist by an intelligent designer.
  4. Any mind in nature that designs and builds an irreducibly complex system is itself irreducibly complex.
  5. If the universe is finitely old and if cause precedes effect, then at least one of the minds found in nature was not created by any mind found in nature.
  6. The universe is finitely old.
  7. Causes precede their effects.
  8. Therefore, there exists a supernatural intelligent designer.

In this argument, apparently non-religious premises lead to an apparently religious conclusion.


  1. 自然界に見つかるシステムが還元不可能な複雑さを持つなら、それが存在する原因はインテリジェントデザイナーである
  2. 自然界に見つかる心のうちいくつかは還元不可能な複雑さを持つ
  3. 従って、自然界に見つかる心のうちいくつかの存在する原因はインテリジェントデザイナーである
  4. 還元不可能な複雑さ持つシステムをデザインし構築する、自然界にある心は、それ自体が還元不可能な複雑さ持つ
  5. 宇宙の年齢が有限であり、かつ原因が結果に先行するなら、自然界に見つかる心のうち少なくともひとつは、自然界に見つかるいかなる心によっても創られない
  6. 宇宙の年齢は有限である
  7. 原因は結果に先行する
  8. 従って、超自然のインテリジェントデザイナーが存在する

この議論において、明らかに非宗教的な前提は、明らかに宗教的な結論につながる。

この8個の論は:

  1. 最小インテリジェントデザイン理論
  2. 追加仮定
  3. 1.と2.からの帰結
  4. 追加仮定
  5. 3.と4.からの帰結
  6. 追加仮定 .... 現在の科学の主張
  7. 追加仮定 .... 特に異論のない仮定
  8. 5.と6.と7.からの帰結

となっていて、2.と4.が追加されると、"神の議論"をしていることになる。

Soberの追加仮定2.と4.は巧妙で、これを否定すると、"心"が自然にわいて出て、還元不可能な複雑さをつくれてしまう。

で、ここから話が数学調になる。

最小インテリジェントデザイン理論は超自然的存在の存在について含意を持つか広義の定義を考える

最小インテリジェントデザイン理論が述べない2.と4.と6.と7.を言わないことで、超自然的存在を論じないことになるか:

According to a narrow definition of this type of implication, they do:
狭義の定義では超自然的存在を論じない:

(N) A proposition P has implications about the existence of supernatural beings if and only if P entails that a supernatural being exists or entails that there are no supernatural beings.

(N) 命題Pが超自然的存在が存在することを要求する、もしくは超自然的存在が存在しないことを要求するときのみ、命題Pは超自然的存在の存在について含意する。

これは当然のことで、字義通りなだけである。

続いて、Soberは超自然的存在の存在についての含意を持つ理論の広義の解釈がもっともらしく定義できるかどうかを論じる。

(B) A proposition P has implications about the existence of supernatural beings if and only if there exist true auxiliary assumptions A such that P&A entails that a supernatural being exists, or entails that there are no supernatural beings, but A by itself does not.

(B) 真である補助仮定Aがあって、PかつAが超自然的存在が存在することを要求する、もしくは超自然的存在が存在しないことを要求するときのみ、命題Pは超自然的存在の存在について含意する。しかし、A単独では超自然的存在を含意しない。


A: 超自然的存在について含意を持たない
P: 超自然的存在について含意を持たない
P AND A ==> P: 超自然的存在について含意を持つ


This broader criterion entails that the mini-ID theory has implications about the existence of supernatural beings.

この広義の規準は、最小インテリジェントデザイン理論が超自然的存在の存在について含意を持つと判断する。

これは、2.と4.と6.と7.が1.と同時成立すると、超自然インテリジェントデザイナーの存在を要求する論になることを指している。

しかし、この(B)には問題があることをSoberは論じる:

For if P is false, then “notP or supernatural beings exist” is true and P, when conjoined with this disjunction, entails that there are supernatural beings while the disjunction, by itself, does not.


A= "(Not P) OR (超自然的存在が存在する)"

とすると

P AND A ==> "超自然的存在が存在する"

となる。命題Pが真であれば、必ず"超自然的存在が存在する"ことになる。

そこで、Soberは同じような問題を起こす"観察的含意"について論じ、それと同様の扱いを"超自然的存在の存在についての含意"に適用しようとする。

This defect in (B) is reminiscent of the problems the logical positivists uncovered when they tried to define what it means for a statement to have observational implications,

(B)のこの欠陥は、論理的実証が、観察含意を持つ声明が何を意味するか定義しようとしたときの問題を連想させる。

そこで、Soberは概念の観察的な検証性を考えて、次を提案する:

(Ob) Proposition P now has observational implications if and only if there exist auxiliary assumptions A and an observation statement O such that (i) P&A entails O, but A by itself does not entail O, (ii) A is true, (iii) we now are justified in believing A, and (iv) the justification we now have for believing A does not depend on believing that P is true (or that it is false), and also does not depend on believing that O is true (or that it is false).

(Ob)補助仮定Aと観測声明Oが存在するときのみ、命題Pが観測可能な含意を持つ。

(i) PかつAはOを要求するが、AだけではOを要求しない
(ii) Aは真である
(iii) Aを信じることを正当化する
(iv) Aを信じる正当な理由は、Pの真偽およびOの真偽に依存しない

そして例として、光の直進と蝕を挙げる:

Criterion (Ob) judges, correctly, that the laws of optics now have observational implications about the occurrence of eclipses. The laws, by themselves, do not make any such predictions, but when independently obtained information about the earth, sun, and moon are added, the resulting conjunction does have such implications.

規準(Ob)は、正しく、光学法則が蝕の発生について、観測的含意を持つと正しく判断する。法則そのものは、そのような現象を予測しないが、法則とは独立に与えられた地球と太陽と月の情報があれば、それとの論理積により、含意を与える。


検証可能性の時刻について

しかし、規準(Ob)は時刻つきであり:

Criterion (Ob) is time indexed (“now” represents any time t) so that a proposition can fail to have observational implications at one time though it has such implications at another. This reflects the fact that there is a perfectly legitimate sense in which a proposition might be empirically testable at one time but not at another.

規準(Ob)は時刻つきであって、別の時点でそのような含意があっても、ある時刻には含意を誤りうる。命題がある時刻に経験的に検証可能であって、別の時刻には検証不可能であるという完全に妥当な意味があるという事実の反映である

原理的に検証不可能であると言いたくなる。しかし、それは適切ではないとSoberは論じる:

To say that a proposition is untestable in principle apparently requires omniscience about the future of inquiry; one would have to be able to say that no auxiliary principle A could ever be discovered that would permit P to have observational consequences.

ある命題が原理的に検証不可能であるというには、明らかに将来にわたっての全知が必要。
Pが観測的帰結を持てるようにする補助仮説Aが見つからないと言えなければならない。

This is why I prefer the weaker, less modal, concept of testability -- the concept of testability now. Of course, if a proposition is now testable, it is testable in principle.

なので、より弱く、形式的でない検証可能性の概念 -- 現在検証可能性の概念をとりたい。
もちろん、ある命題が現在検証可能なら、原理的に検証可能。


超自然的存在の存在についての含意の有無を判断する規準

ここで、ようやく準備が整う。規準(Ob)によって与えられる観測的含意の定義と相応するように
、"超自然的存在の存在についての含意"についての規準を提示する:

(E) Proposition P now has implications about the existence of supernatural beings if and only if there exist auxiliary assumptions A such that (i) P&A entails that there are supernatural beings, or entails that there are none, but A by itself does not have either implication, (ii) A is true, (iii) we now are justified in believing A, and (iv) the justification we now have for believing A does not depend on believing that P is true (or that it is false), and also does not depend on believing that there are supernatural beings (or on believing that there are none).

(E) 命題Pは、超自然的存在の存在について、今、含意を持つのは、以下の条件を満たす補助仮定Aが存在するときのみ

(i) PかつAが超自然的存在の存在もしくは不在を要求する
(ii) Aが真である
(iii) 今、Aを信じること正当化する
(iv) Aを信じることを正当化することは、
  • Pの真であるとあるいは偽であると信じることに依存しない、かつ 
  • 超自然的存在が存在するあるいは不在であることを信じることに依存しない


これに従えば:

命題P「1. 自然界に見つかるシステムが還元不可能な複雑さを持つなら、それが存在する原因はインテリジェントデザイナーである」の真偽

および

帰結「8.従って、超自然のインテリジェントデザイナーが存在する」の真偽

とは独立に補助仮説Aとして、

2. 自然界に見つかる心のうちいくつかは還元不可能な複雑さを持つ
4. 還元不可能な複雑さ持つシステムをデザインし構築する、自然界にある心は、それ自体が還元不可能な複雑さ持つ
6. 宇宙の年齢は有限である
7. 原因は結果に先行する

を採用できて、

命題P かつ 補助仮説Aが真であれば、

帰結「8.従って、超自然のインテリジェントデザイナーが存在する」が真となる。


つまり、規準(E)に従えば、最小インテリジェントデザイン理論が超自然的存在の存在についての含意を持つことを要求する。


何故、狭義の規準(N)ではなく規準(E)をとるのか

(N) 命題Pが超自然的存在が存在することを要求する、もしくは超自然的存在が存在しないことを要求するときのみ、命題Pは超自然的存在の存在について含意する。

この狭義の規準では、最小インテリジェントデザイン理論は超自然的存在の存在についての含意はないと判定される。

では、何故、規準(E)をとるのか。Soberは観測的含意の概念の問題との相応が理由だとする。

Duhem (1914) was right that physical theories, by themselves, do not have observational consequences. But it would be a mistake to conclude that these theories have no observational consequences.
...
A concept of observational implication is needed that takes Duhem’s point into account but explains how theories manage to make observational predictions.

物理的理論はそれ自体は観測的帰結を持たないことはDuhem(1914)は正しい。しかし、これらの物理的理論が観測的帰結を持たないと結論するのは誤りだ。
..
Duhemの指摘した点だが、理論が観測的予測をどうするのかを説明するのに観測的含意の概念が必要だ。

Duhem, P. (1914): The Aim and Structure of Physical Theory. Princeton: Princeton University Press, 1954.

ここで「男性は自身では子供を持てないが、男性が子供を持てないと結論するのは誤りだ。というのと同じだ。」という比喩をSoberは提示する。

「1. 自然界に見つかるシステムが還元不可能な複雑さを持つなら、それが存在する原因はインテリジェントデザイナーである」という命題それ自体が、"超自然的存在の存在についての含意"と持たないことが、それが"超自然的存在の存在についての帰結"と持たないことを意味しないというわけだ。


ダーウィン進化論は超自然的存在の存否についての含意を持つか

同じ規準(E)がダーウィン進化論を"超自然的存在の存否についての含意"ありと判定するかどうかを次に見る。この場合は、"超自然的存在は存在しないという含意"を持つかという判断である。神の存在は機械論では肯定も否定もできない。にもかかわらず、否定の含意を持つなら、進化論は宗教であると判断される。これをSoberは次のように論じていく。

まず規準(E)を再掲する:

(E) 命題Pは、超自然的存在の存在について、今、含意を持つのは、以下の条件を満たす補助仮定Aが存在するときのみ

(i) PかつAが超自然的存在の存在もしくは不在を要求する
(ii) Aが真である
(iii) 今、Aを信じること正当化する
(iv) Aを信じることを正当化することは、
  • Pの真であるとあるいは偽であると信じることに依存しない、かつ 
  • 超自然的存在が存在するあるいは不在であることを信じることに依存しない


ここでは命題Pは

By “Darwinian theory,” I mean a pair of claims that all the organisms alive today (on earth) trace back to a common ancestor and that natural selection has been an important cause of the similarities and differences we observe among extant organisms.

今日、地球上に生きている生物はすべて共通祖先にたどりつけることと、現存する生物に観測される類似性と多様性の重要な原因は自然淘汰であること。


進化論が超自然的存在の存否についての含意を持つような補助仮説Aの候補は

(i) either the Darwinian theory is false or a supernatural being exists;
(ii) either the Darwinian theory is false or no supernatural beings exist.

(i) ダーウィン理論が間違っているか、超自然的存在が存在するか
(ii) ダーウィン理論が間違っているか、超自然的存在が存在しないか

いずれも、ダーウィン理論が正しければ、ダーウィン理論は超自然的存在についての含意を持つことになる。

(i)と(ii)の少なくとも一方が規準(E)の(iv)を満たしているかどうかが、判断の分岐点となる。

Of course, a theist who thinks that God is a supernatural being will endorse (i) and a naturalist will endorse (ii). But notice that someone who has no opinion on whether naturalism is true and has the same agnostic attitude towards Darwinian theory has no basis for accepting either.

(i)を信じる条件は、有神論を信じていること
(ii)を信じる条件は、(形而上学的)自然主義を信じていること

(形而上学的)自然主義が正しいかどうか意見を持たず、ダーウィン理論についても正しいかどうか意見を持たないと、(i)(ii)ともに認められない。

いずれも、命題P(ダーウィン理論)が正しいかどうか及び、"超自然的存在の存否"についての見解を持たないと採用できない。従って、規準(E)を満たす補助仮説Aたりえない。

すなわち、ダーウィン進化論は"超自然的存在の存否についての含意"を持たないと、Soberは結論する。


超自然の含意は宗教か?

規準(E)によって、最小インテリジェントデザイン理論は、自然界の一つ以上の心を創造した超自然的インテリジェントデザイナーの存在を含意すると判定した。これがただちに宗教を意味するかをSoberは論じる。

Obviously, the claim falls short of asserting that the designer in question has all the characteristics of the Christian God. However, that isn't enough to show that the mini-ID theory isn’t religious; after all, there are religions other than Christianity.

キリスト教の神の全特徴を問われるデザイナーが持っていないから宗教ではないか。それは、キリスト教でないというだけで別の宗教かもしれない。

ここでSoberはその規準として

Perhaps, if the supernatural intelligence to whose existence the mini-ID theory is committed were worthy of veneration, that would show that the theory has religious, and not just supernatural, implications.

おそらく、最小インテリジェントデザイン理論がコミットする超自然インテリジェンスが崇拝に値するなら、理論には、ただの超自然ではなく宗教的含意があることを示すだろう。

ここで、最小インテリジェントデザイン理論から引き出される超自然インテリジェントデザイナーの属性情報をSoberは提示する。

「1. 自然界に見つかるシステムが還元不可能な複雑さを持つなら、それが存在する原因はインテリジェントデザイナーである」について、何故「自然界に見つかる」に限定したか?

Perhaps they will want to argue that a supernatural intelligent designer is an eternal and self-sustaining being, and thus does not need a cause external to itself to come into existence or to remain in existence. Or perhaps they will maintain that a supernatural designer is a simple being, and therefore won’t exhibits complex features at all.

超自然的インテリジェントデザイナーが、永遠の自律存在で、外的原因なく存在できた、あるいは存在し続けているか [訳注: 原因がないから、還元不可能な複雑さを持つかどうか論じなくてよい]

超自然的インテリジェントデザイナーが単純で、還元不可能な複雑さを持たないか

超自然的インテリジェントデザイナーが単純なら、超自然的インテリジェントデザイナーが自然発生してもよいことになる。そうでないなら、超越的な神でなければならなくなる。従って、最小インテリジェントデザイン理論は宗教と判断される。


Soberの結論

最小インテリジェントデザイン理論「1. 自然界に見つかるシステムが還元不可能な複雑さを持つなら、それが存在する原因はインテリジェントデザイナーである」は、超自然的存在の存在についての含意を持つ。

ダーウィン進化論は超自然的存在の存否について含意を持たない。(すなわち、方法論的自然主義であるが、形而上学的自然主義="神はいない"ではない)