Argument from poor design(しょぼいデザイン論)


" しょぼいデザイン論 "というのがある。これは...
  • 全知・全能・慈しみ深い神は最適なデザインの生物を創造するはず
  • 生物は最適デザインではない
  • 従って、神は全知でないか、全能でないか、慈しみ深くないか、生物を創造していないか
というもので、"デザイン論"(Argument from Design)の対抗議論として提示される。

wikipedia:Argument from poor design に挙げられた"しょぼいデザイン"の例は次の通り:<UL>
  • アフリカイナゴの神経細胞は腹部から始まって翼につながる。これは材料の無駄遣い[ 1 ]
  • 人間の女性では、受精卵が子宮ではなく卵管や頸部や卵巣に入ると子宮外妊娠になる。卵巣と卵管の間の隙間は欠陥デザインである。現代の手術ができるようになる前は子宮外妊娠は母親と赤ちゃんの死を招いた。現在でも母親の命を救うために妊娠中絶する。[ 2 ]
  • 人間の女性では、産道は骨盤を通過していて、出生前の赤ちゃんの頭は驚くべき変形をする。産道よりも赤ちゃんの頭が大きすぎると自然出産できない。帝王切開が発展する前は、これは母親と赤ちゃんの死を招いた。また逆子のような分娩複雑化は産道がこの位置にあることによって悪化する。産道が腹部の正面を通っていれば、出生は容易であったはずである。[ 3 ]
  • 人間の男性では、精巣は腹部内で成長する。その後に腹壁中を通って、陰嚢へ移動する。これは腹壁に2つの弱点を作り出し、後でヘルニアができる可能性をつくる。現代の手術技術がなければ、壊疽などを含むヘルニア合併症は死に至るものである。[ 4 ]
  • 人間の男性では、尿道の一部が前立腺に囲まれている。前立腺が何らかの理由で膨脹すれば、尿道は通れなくなり、排尿は困難で痛いものなり、極端な場合は通らなくなる。現代の手術技術がなければ、排尿できないと死に至る。[ 5 ]
  • ほとんど使われない神経や筋肉(足底筋など)は一部の人々にはない。またそれらは予備部品として必要があれば収穫される。
  • 他の花では異なる用途に使われる部品から作られる、ランの生殖機構。
  • 他の動物が親指のかわりに、巨大化した放射種子骨を使うパンダ。
  • 人間の虫垂の無意味な存在あるいは、虫垂炎の対応する潜在的に致命的な条件。生肉を食べる野生動物で非常に発達した虫垂は、病気になることなく生肉を消化するのを助ける。人々が今や火と熱で料理するので、虫垂は役に立たない。生後1年以内の免疫系の発達に関わるという説もあるが、それ以後は機能がない。しかし、虫垂が先天的に欠如していても免疫系機能障害の例はない。
  • 飛べない鳥(例えばダチョウ)の不必要な翼の存在
  • 反回神経の経路は、大動脈弓をループして脳から咽頭に至っている。多くの動物が同じ構成であり、キリンは余分に6メートルも長くなっている。
  • ジャンクDNAと呼ばれる部分
  • ジストロフィン遺伝子は最大のものでDNAの240万塩基対で構成されヒトゲノムの0.1%を占める。しかしその既知の機能は筋ジストロフィーの抑制である。そんな大きな遺伝子は有害な突然変異に非常に影響されやすい。
  • ハンチントン病のような先天性疾患た遺伝的障害の有病率と、自己修復できないDNAは、劣った遺伝的パフォーマンスにつながり、形成異常や死につながる
  • 人間の脊柱の共通の奇形は、脊柱の脊柱側弯症、座骨神経痛と先天的な不整列(椎骨亜脱臼)に至る
  • たとえ太陽光の出力ピークがこの波長だとしても、光合成工場は緑色の光を反射する。最適な光合成なら太陽光の全スペクトルを使えるはずで、従って植物は黒色になるはずだ。
  • 窒息する危険性を激増させるような食事と呼吸の両方に使う通路たる咽頭の存在
  • 人間や哺乳類の目の構造。網膜は裏返しだ。多くの無脊椎動物は神経と結果が網膜の背後にある。このような配置では複雑な調整が必要で、その結果として哺乳類には盲点がある[ 6 ]
  • ヒトの顔が有意に他の霊長類よりも平板であるために、混雑した歯と劣った副鼻洞の排液となっているが、他の霊長類と同じだけ歯がある。この結果、問題が多く、その代表例は親知らずである。
  • ほとんどすべての動植物は自らビタミンCを合成する。しかし、この酵素のための遺伝子に欠損がある(偽遺伝子ΨGULO)ため、人間はビタミンCを合成できない。ビタミンCの欠乏は、壊血病と死につながる。不完全なビタミン合成経路はより高等な動物の特徴であり、それらの動物の多くは肉食動物である。これは餌食が植物から得たか体内で合成したビタミンを蓄積しているからである。このような高等動物はもはや純粋な"菜食主義者" 生活様式にはもどれない。しかし、そのような遺伝子的合成経路を維持するコストはほとんどかからない。</UL>

これについて個々の反論もあるが、全般的反論として、 wikipedia:Argument from poor design に記載されているのは次の3点:
  • "しょぼいデザイン"論は、生物デザインの判断基準として、効率と巧妙さを仮定している。
  • 神は職人ではなく芸術家
  • "しょぼいデザイン"論は、人間の判断に対する神の説明責任を前提にしている</UL>

さらに再反論・再々反論:
Arguers from poor design regard all these counter-arguments as a false dilemma (God designed it, or it's flawed), leading to the unfalsifiability of intelligent design if it's good design, God did it, if it's bad design, it's a result of the Fall, so any conceivable evidence will fit.

Arguers against poor design argue in turn: if it's poor design, then God would not have done it, so natural selection must have, but wonderful design shows how wonderful natural selection can be.

"しょぼいデザイン"論者は、これらの反論を誤ったジレンマ(神のデザインか、欠陥か)とみなし、インテリジェントデザインの反証不可能性につながると考える。すなわち、よいデザインなら神がデザインした。しょぼいデザインなら堕落の結果であり、いかなる証拠も合致する。

"しょぼいデザイン"論に反対する論者はこれを逆転させる。"しょぼいデザイン"なら、神はデザインしていないので自然選択のはず。素晴らしいデザインは自然選択の素晴らしい証拠。
wikipedia:Argument from poor design の記述はここで打ち止めになっている。

"しょぼいデザイン"論への全般的反論3点について考えてみる。この3点はいずれも、「神は人間の考える基準に従うわけではない」「神の判断基準は人間にはわからないかもしれない」という不可知論に近いものになっている。

この方向に論を進めると、「意図は不明だが、意図的部品の配置たるデザイン」とか「行き先は不明だが、行き先を考えて選択するインテリジェンス」といったインテリジェントデザインの主張になる。

すなわち、インテリジェントデザイン支持者が「デザイナーの意図不明」と主張するのは、宗教ではないと主張する以外に、"しょぼいデザイン"論に対抗する手段としても有効だと考えている可能性もある。






最終更新:2010年05月18日 08:03