Discovery Instituteの「インテリジェントデザインの反証可能性」


インテリジェントデザインはつまるところ「進化論で説明できないものはデザインだ」というものである。このような"Negative Argument"形式の定義であるインテリジェントデザインは「進化論で説明できないと見られていたものが、進化論で説明できた」ことによって、反証されることになる。

たとえば、インテリジェントデザイン理論家Dr. William Dembskiはまさしく、そのような形式の反証可能性を掲げている。


もちろん、Popperの意味で、これは「インテリジェントデザインの反証可能性」ではない。

たとえば、「進化論で説明できない鞭毛はデザインだ」というインテリジェントジェントデザインの主張を反証すべく、「鞭毛の進化経路」を提示したとしよう。この「鞭毛の進化経路の提示」は「鞭毛は進化論で説明できない」という主張を反証しているが、「鞭毛はデザインだ」という主張にはまったく触れていない。検証対象はあくまでも進化論であって、インテリジェントデザインは反証の対象になっていない。

つまり「進化論で説明できないものはデザインだ」という主張は無傷である。「進化経路の提示」はインテリジェントデザインの主張「進化論で説明できないものはデザインだ」を反証できない。別な方法を考えないと、インテリジェントデザインは原理的に反証不能。

しかし、このような反証可能性をインテリジェントデザインの本山たるDiscovery Instituteも掲げている

インテリジェントデザインは反証不能あるいは検証不能、経験的証拠で反証できないと理由で、インテリジェントデザインは非科学であるという考えが、メディアの解説者たちに広がっている。しかし、この批判はまったくの誤りである。もちろん、宇宙のデザイナーが存在するという主張を反証する方法はない。これについては我々も同意する。しかし、現在のデザイン論はそのようなあいまいな主張ではなく、自然界にあるデザインの検出可能な証拠にフォーカスしている、したがって、現在実行されているデザイン論は反証可能である。

Michael Beheが自著Darwin's Black Boxで使った論を見てみよう。Beheは、細菌の鞭毛などの多くの「分子機械」で、デザインが検出可能だと提唱している。Beheは、この小さなモータは、すべての部品がそろわないと機能しない「還元不能に複雑」である。そのようなシステムは我々の経験では、デザインされたシステムの証拠である。というのはそれらは、インテリジェントエージェントにのみ見られる先見の明が必要だからだ。これと対照的に、自然選択とランダムな突然変異というダーウィンのメカニズムでは、機能するシステムは段階的に進む必要がある。自然選択では未来の機能ではなく、現在の機能に対して選択が働く。Beheの論は無知に基づくものではなく、我々がデザインされたシステムについて知っていることに、インテリジェントデザインの因果力、細胞世界や多くのメカニズムのついて発展しつつある知識に基づいている。

どうやって、Beheの論を検証あるいは反証するのか? 単純な祖先から現在のモータへの連続的に機能するダーウィンの経路を記述することだ。Kenneth Millerのようなダーウィにストは将来の発見および、Type III Secretory systemが鞭毛へのコオプションした可能性のあるマシンだと指摘している。その論には多くの問題があるが、Millerは少なくともBeheの論が完全に検証可能なことを理解していることを示している。同様に、インターネットには、現在のデザイン論を論破するという想定が満ちており、自然界にある情報を使って、自らの論を作り、多くを記述している。ひとつの論は反証可能かつ反証不可能ではありえない。


[1] 科学哲学の最近の研究では、ハイレベルの科学理論は単純な反論には抵抗する傾向があることを明らかにしている。事実、一貫して適用されれば、科学理論はすべて速やかに棄却される。結果として、多くの解説者たちが前提としている、Karl Popperの反証可能という基準は、多くの科学哲学者によって数十年前に、科学のリトマス試験紙として放棄されている。しかし、いかなる証拠によって反証可能か言えるということは科学的提案の長所である。


非常に明瞭に、「進化論で説明できたら、インテリジェントデザインは反証された」という形式である。もともとの論の定義が"Negative Argument"なので、誰が考えても、それ以外の形式にはなりえない。

なお、Discovery Instituteの注釈[1]は間違っていない。


これに対して、通常版インテリジェントデザインがつまるところ「進化論で説明できないものはデザイン」という"Negative Argument"形式の定義に基づいているのにたして、宇宙版インテリジェントデザインは少し違っている。わりと巧妙にできていて、Discovery Instituteは、宇宙版インテリジェントデザインの本を引用して、これでインテリジェントデザインは反証可能だと主張する。

我々の論全体を完全に反証する方法は、地球から遠く離れた、地球とは全く異なる環境で、生命にまったく敵対的であるが、我々の地球よりも、はるかに多くの発見が可能なプラットフォームを見つけることである。これと逆で、同じ意味を持つのが、非常に生命に適していて、生命がお存在するが観測にまったく不適なプラットフォームを見つけることだ。

これらほど効果的ではないが、関連することとして、我々の個々の主張の間の矛盾を見つけること。そのような発見で大きいのは、複雑な生命が居住可能な条件が、もっと広くて、もっと多様であることを発見することだ。たとえば、不透明な大気を持つガス状天体内部に知的生命を発見する。あるいは銀河中心のX線天体の近くや、暗い夜のない惑星などに、知的生命が見つかれば、我々の論はかなり反証される。我々は第1章で、皆既日食が起きることが惑星環境の居住性に寄与している示唆した。したがって、インテリジェントな地球外生命が存在するなら、皆既日食を観測しているはずだ。しかし、我々が複雑でインテリジェントな固有の生命を、大きな自然衛星を持たない惑星に発見したなら、我々の論は崩壊する。

我々は少なくとも。この銀河の複雑な生命はすべて、ほぼ確実に炭素生命であることを前提としている。炭素を基礎としない生命を見つければ、我々の前提の一つが崩壊する。これらの発見は、直接あるいは間接的に我々の論と矛盾する。

同様に、我々の論を支持する未来の発見もあるだろう。天文学の発見は実質的には、我々の論を支持するか、否定する。我々が生命の居住に必要な、より厳格な条件を発見するなら、我々の論は強化される。


これについての直接的な反論は、Mark Isaacの創造論者の主張 Claim CI302 にある。

反証可能性について、話を戻せば、「生命は、宇宙の中で科学的発見ができるような環境にのみ誕生する」について検証・反証することは可能だが、「宇宙は科学的発見ができるようにファインチューニングされている」という主張について検証・反証する形になっていない。






最終更新:2010年06月21日 21:03