「継承の設問と回答」


問題1: 人間社会から断絶された島に隔離された環境で生息するキツツキの新種を生物学者が発見したとしよう。これらのキツツキのくちばしは平均2.5cmで、食物は樹皮に下に棲息する昆虫のみで、昆虫は樹皮より平均3.75cm下に生息しているとしよう。このとき、2羽の親キツツキよりも、その子供は、どのような特徴を発達させるだろうか?

(a) より長いくちばし
(b) より短いくちばし
(c) より長いくちばし、あるいは、より短いくちばし。どれでもない

のいずれかを選択し、理由も説明してみよう。

回答1

「変異」な回答(スコア+1) :
(c): 子供は親からランダムに変化するから。
(c): 環境は突然変異に影響を与えないから。

「変容」な回答(スコア-1):
(a): 長いくちばしが生存に必要だから。
(a): 鳥は環境に適応するから。
(c): 一世代では長いくちばしを進化させるのに十分な時間ではないから。

回答状況1

No Content -1 0 +1 平均
1 くちばしの長さの継承 19 11 15 -0.09

子供が生まれた時点では、くちばしの長さについて自然選択が働く前で、その後に生き延びる確率・子孫を残せる確率とは無関係。しかし、正しく回答できたのは1/3でしかない。なお、あいまいな回答はスコア0扱い。


問題2: 生物学者が一部のキツツキの羽を刈り込んで飛べなくしたとしよう。他のキツツキの子供と比べて、これら羽を刈り込まれたキツツキの子供は、どんな特徴を持つだろうか?

(a) より短い翼
(b) より長い翼
(c) より短い翼、あるいは、より長い翼。どれでもない

のいずれかを選択し、理由も説明してみよう。

回答2

「変異」な回答(スコア+1) :
(c): その変化は遺伝的ではないから。
(c): 子供は親からランダムに変化するから。

「変容」な回答(スコア-1):
(a): 生物学者が新たな特徴を持ち込んだから。
(c): その変化は生存に有利ではないから。
(c): 一世代では変化が始まるのに十分な時間ではないから。

回答状況2

No Content -1 0 +1 平均
2 刈り込まれた羽の継承 10 6 29 0.42

これはすなおに「獲得形質は遺伝しない」が答えなので、正解率が高い。それでも「その変化は生存に有利ではないから」といった間違い方をしている例が見られる。なお、あいまいな回答はスコア0扱い。



問題3: ひとつがいのキツツキを、もっと樹木が少なくて、風の強い島に移したとしよう。風に強い環境で飛翔した結果、このつがいのキツツキは、翼の筋肉を発達させた。元の島のキツツキの子供と比べて、このつがいのキツツキの子供はどんな特徴を持つだろうか?

(a) より強い翼の筋肉
(b) より弱い翼の筋肉
(c) より強い翼の筋肉、あるいは、より弱い翼の筋肉。どれでもない

のいずれかを選択し、理由も説明してみよう。

回答3

「変異」な回答(スコア+1) :
(c): 生存中に獲得した特徴は遺伝しないから。
(c): その変化は遺伝的でないから。
(c): 子供は親からランダムに変化するから。

「変容」な回答(スコア-1):
(a): より強い翼の筋肉は生存に必要だから。
(a): キツツキは新たな環境に適応するから。
(c): 一世代では強い翼の筋肉を進化させるのに十分な時間ではないから。

回答状況3

No Content -1 0 +1 平均
3 強い筋肉の継承 17 6 22 0.11

これも「獲得形質は遺伝しない」が答えだが、「より強い翼の筋肉」が生存に有利なことに惑わされて、正解率が問題2より低くなったようだ。なお、あいまいな回答はスコア0扱い。



問題4: キツツキの研究において、生物学者たちは、毎年、この集団のわずかの比率のキツツキしか子孫を残せていないことを発見した。大多数のキツツキが子孫を残せる集団に比べて、環境への適応はどう進むだろうか?

(a) より速く
(b) より遅く
(c) より速い、あるいは、より遅い。どれでもない

のいずれかを選択し、理由も説明してみよう。

回答4

「変異」な回答(スコア+1) :
(a): 最も適応したキツツキだけが子孫を残せるから。
(b): 突然変異の発生確率が小さくなるので、変異も少なくなるから。
(c): 各集団の変異の幅がわからないから。

「変容」な回答(スコア-1):
(b): キツツキの適応の機会が少なくなるから。
(b): キツツキは適応できないから。
(c): 子孫を残すことと、適応とは関係がないから。

回答状況4

No Content -1 0 +1 平均
4 繁殖の差異 17 7 21 0.09

どれを選択しても、理由が正しければ正解、間違っていれば不正解。ちょっとむつかしい気もするが、問題3と正解率はほぼ同じ。なお、あいまいな回答はスコア0扱い。



問題5: 生物学者たちが100年後の2100年にキツツキのくちばしを再測定して、100年かけて、くちばしの長さの平均が2.5cmから3.75cmになったことを発見したとしよいう。しかし、一部のキツツキのくちばしは3.75cmより短い。これらのくちばしの短いキツツキは、100年前に生息していた、どの集団の子孫だろうか?

(a) 平均より短いくちばしのキツツキ
(b) 平均より長いくちばしのキツツキ
(c) 平均より短いくちばしのキツツキ、あるいは、平均より長いくちばしのキツツキ。どれでもない

のいずれかを選択し、理由も説明してみよう。

回答5

変異(Variational)な回答(スコア+1) :
(b): 平均より長いくちばしのキツツキは、より子孫を残しやすいから。
(b): 平均より短いくちばしのキツツキは、子孫を残せずに死にそうだから。

変容(Transformational)な回答(スコア-1):
(c): 平均より短いくちばしのキツツキの特徴を継承したから。
(c): 平均より長いくちばしは、両集団にとって有利だから。

回答状況5

No Content -1 0 +1 平均
5 子孫の系統 16 13 16 0.00

これは、わりと間違いそうな問題。









最終更新:2012年04月23日 01:24