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McLean v. Arkansas Board of Education (1982年)


創造科学という名のものとで"若い地球の創造論"を理科の授業で教えた時代。 しかし、義務付けられたのはテネシー・アーカンソー・ルイジアナの3州だけ。最短1年・最長6年で違憲判決により無効化された。このMcLean v. Arkansas Board of Educationは、1981年に成立したアーカンソー州法を翌年に無効化した裁判。

これは創造科学の定義を定め、創造科学は宗教であり、理科の授業で教えることは違憲であると判断した裁判。


wikipediaの記述



McLean v. Arkansas Board of Education, 529 F. Supp. 1255, 1258-1264 (ED Ark. 1982)は1981年のアーカンソー州の裁判である。

裁判は創造科学・進化科学均等州法(Balanced Treatment for Creation-Science and Evolution-Science Act)(Act 590)として知られるアーカンソー州法が、アーカンソー州の公立学校で創造科学の教育を義務付けており、連邦憲法修正第1条に違反しており、違憲であると論じる多くの両親・宗教団体・生物学者・その他の人々による訴えを、アーカンソー州Eastern Districtの連邦地方裁判所が受理したものである。

William Overton判事は1982年1月5日に判決を下し、判決の基礎として明確に科学の定義を定め、創造科学を宗教であり、科学ではないと判断した。この判決はアーカンソー州Eastern Districtの外には効力が及ばないが、創造論教育に対する、その後の判決に双頭の影響を及ぼしたと考えられる。[1][2]

アーカンソー州はこの判決について控訴しなかった。そして、同様の州法がルイジアナ州で成立し、創造科学の教育は違憲であるという最高裁判決の出た1987年のEdwards v. Aguillard裁判により、この判断は全米に及ぶこととなった。[3]

Act 590は、Institute for Creation Researchの素材を使って用意されたモデル州法案をベースとした州法案の提案を求める、Greater Little Rock Evangelical Fellowshipの要望に基づいてキリスト教原理主義者たちにより推進された。これは多くの宗教団体やその他の団体に反対された。


裁判の関与者


創造科学・進化科学均等州法に反対する、この裁判の原告は合同メソジスト教会牧師William McLean師に率いられた。[4][5]

その他の原告は:

  • アーカンソー州合同メソジスト教会Kenneth Hicks監督
  • アーカンソー州聖公会教区牧師Herbert A. Donovan師
  • Little Rockカトリック教会Andrew Joseph McDonald司教
  • アーカンソー州アフリカンメソジスト監督教会Frederick C. James監督
  • 個人資格及びJoel Randolph Porterの父親であるNathan Porter師
  • Little RockのPulaski Heights Presbyterian Church牧師George W. Gunn師
  • Little RockのWestover Hills Presbyterian Church牧師Dr. Richard B. Hardie, Jr
  • 合同メソジスト教会牧師及び合同メソジスト教会北アーカンソー会議プログラムディレクターEarl B. Carter師
  • 合同メソジスト教会牧師及び合同メソジスト教会北アーカンソー会議プログラムディレクターGeorge Panner師
  • Little RockのSt James合同メソジスト教会牧師及びアーカンソー州の政教分離のためのアメリカ人連合副議長Dr. John P. Miles
  • 合同メソジスト教会牧師及びアーカンソーメソジスト編集長Jerry Canada師
  • アメリカユダヤ人会議・アメリカユダヤ人委員会(アメリカの2つのユダヤ人団体)
  • アメリカユダヤ会議連合(改革ユダヤ人全米連合)
  • アーカンソー州SpringdaleのSpringdale High Schoolの生物教師Frances C. Roelfs
  • 個人資格及びCordelia Ann FelixとChristopher Felixの父親Charles Bowlus
  • 個人資格及びAndrea Schultzの父親Lon Schultz
  • The Arkansas Education Association(アーカンソー州の教員組合)
  • The National Association of Biology Teachers(全米生物教師協会)
  • Arkansas Technical Universityの生物科学E. E. Hudson準教授
  • 弁護士で、アーカンソー州Jacksonville選出の州下院議員で、Act590に反対したMike Wilson
  • National Coalition For Public Education and Religious Liberty (National PEARL)(公教育及び宗教の自由のための全米連合)

被告は:

  • アーカンソー州教育委員会および委員
  • アーカンソー州教育長
  • アーカンソー州教科書教材選定委員会
  • Pulaski County Special School District(学区)及び責任者(1981/10/1に原告により対象外に)


背景


1920年代に、進化論教育を禁じる州法が多くの州で提案された。それらは1968年のEpperson v. Arkansas裁判で、「字義通り読んだ聖書の記述に反すると思われることを理由として、特定理論を排除しようとするものである。州法は憲法修正第1条の義務付けに反しており、憲法修正14条に反している」[6]と判決された。創造論者の運動は、創造論と進化論を公立学校の理科の授業で同等の扱いをさせる方向に転換した。

アーカンソー州 Act 590


"Balanced Treatment for Creation Science and Evolution Science Act"(創造科学・進化科学均等州法)という名称のアーカンソー州Act 590 of 1981は公立学校で進化論と等時間の創造科学の授業を義務付ける。

創造科学は次のように定義されている:

創造科学は創造の科学的証拠及び、これらの証拠からの推論を意味する。創造科学は以下を示す科学的証拠と推論を含む:

  1. 宇宙とエネルギーと「無からの生命の突然の創造」
  2. 単一の生命からすべての生命を発展させることの「突然変異と自然選択の不十分性」
  3. 「創造された植物及び動物の原種からは、限定された種類(kind)の範囲でしか変化しない」
  4. 「人間と猿の祖先は異なる」
  5. 世界規模の洪水を含む、地球の地質と天変地異説の説明
  6. 「地球と生命の最近の登場」


進化科学は次のように定義されている:

進化科学は進化の科学的証拠及び、これらの科学的証拠からの推論を意味する。進化科学には以下を示す科学的証拠と関連する推論を含む:

  1. 自然の過程による混沌物質からの宇宙の出現と、無生物からの生物の出現
  2. 単純な初期の生命から現在の生命を発展させるに十分な突然変異と自然選択
  3. 突然変異と自然選択による単純な初期の生命から現在の生命の出現
  4. 猿と共通祖先からの人類の出現
  5. 斉一説による地球の地質と進化系列の説明
  6. 数十億年前の地球及び、それより少し後の生命の出現

この州法は1981年3月19日にFrank D. White州知事が署名して成立した。


McLean v. Arkansas判決


1982年1月5日に下されたWilliam Overton判事の判決は、アーカンソー州法Act 590に定義された創造科学は科学ではないと結論した。判決は科学の不可欠な特徴として以下を定義した:

  1. 自然法則に導かれる
  2. 自然法則を参照して説明される
  3. 経験的世界に対して検証可能である
  4. 結論は一時的なものであり、最終的なものではない
  5. 反証可能である

William Overton判事は、創造科学が以下の理由で、これらの不可欠な特徴を満たしていないと判断した:

  1. 「無からの突然の創造」は科学ではない。これは、自然法則に導かれない超自然の介入に依存しており、自然法則を参照した説明ではなく、検証不可能かつ反証不可能であることによる。
  2. 「突然変異と自然選択の不十分性」は不完全なネガティブ一般化である。
  3. 「創造された植物及び動物の原種からは、限定された種類(kind)の範囲でしか変化しない」は種類(kind)の科学的定義がなく、種の範囲に変化の限界を設定しようとしているが、自然法則に導かれた限界についての科学的説明がなく、それが何であれ限界を自然法則で説明できない。
  4. 「人間と猿の祖先は異なる」は何も説明していない主張であり、科学的事実あるいは科学理論を参照していない。
  5. 天変地異節及びいかなる創世記洪水も超自然の介入に依存しており、自然法則で説明できない。
  6. 「地球と生命の最近の登場」は科学的意味を持っておらず、自然法則によるものではなく、自然法則で説明不可能であり、一時的なものでもない。
  7. 州法に書かれた創造科学理論を提示した論文は科学学術誌には見られない。科学界は閉鎖的で創造科学論文は掲載されないと示唆する証言があるが、掲載拒否された科学論文の存在を示す証言はなく、検閲されているという主張は信頼できない。
  8. 科学理論は、その理論と矛盾あるいは反証する事実ともとで、改訂あるいは破棄される一時的なものである。独善的で、絶対のもので、海底の対象とならない理論は科学理論ではない。
  9. 誰にも自分の選択した方法で科学的探究にアプローチする自由がある。しかし、結論から始めて、調査の過程で見つかった証拠に関わらず、それを変えないのであれば、その方法論を科学的とは言えない。創造論者の方法はデータを取らず、反する科学的データに重きを置かず、そして州法案に書かれた結論に到達する。その代わりに創造論者は創成にの字義通りの記述を取り、それを科学的に支持するものを探そうとする。

州法が取る教育への2モデルアプローチは、生命の起源と人間と植物と動物の存在について2つしか説明が存在しない、すなわち創造か否か、と仮定した、Institute for Creation Researchによって推進されるアプローチと同一である。創造論者たちはこの仮定をとって、進化論を支持しない科学的証拠はすべて、必然的に創造論を支持する証拠を意味するものだとした。法廷は、これは不自然な二元論であり、科学的事実に基づくものではなく、正当な教育目的も持っていないと判断した。

判決は「州法は宗教を推進するという州議会の特定意図によって可決されたもの」であり、憲法修正第1条の政教分離原則に反すると結論した。

Michael Ruseの証言に基づいてOverton判事がつくった検証方法は、後に科学哲学者Larry Laudanに批判された。[7]


References


[1] Understanding the Intelligent Design Creationist Movement: Its True Nature and Goals. (pdf) A Position Paper from the Center for Inquiry, Office of Public Policy Barbara Forrest. May, 2007.
[2] McLean v. Arkansas Board of Education
[3] Creationism/ID, A Short Legal History By Lenny Flank, Talk Reason
[4] Scott, Eugenie (2004-06-30). Evolution vs Creationism. Greenwood Press. pp. 1590–1628 Kindle ed.. ISBN 978-0-313-32122-1.
[5] Frank Spencer, ed. (1996). History of Physical Anthropology: An Encyclopedia (Garland Reference Library of Social Science) (illustrated ed.). Routledge. p. 297. ISBN 978-0-8153-0490-6.
[6] http://straylight.law.cornell.edu/supct/html/historics/USSC_CR_0393_0097_ZO.html
[7] Laudan, L. (1982). " Commentary: Science at the Bar-Causes for Concern " . Science, Technology and Human Values 7 (41): 16–19.





最終更新:2012年06月30日 18:16