ラノロワ・オルタレイション @ ウィキ

問答無用のリユニオン

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問答無用のリユニオン ◆LxH6hCs9JU



 この光景を映しだすのも、もう何度目になるだろうか。
 愛しの彼を待ち望む眠り姫、玖渚友は白く光る白い部屋の白いベッドの上で、白いシーツにくるまれていた。
 窓からは燦々とした陽光が眩しいほどに入り込んでくるが、目を瞑ったままの彼女にはなんの影響もない。
 朝だろうと昼だろうと夜だろうと、《来たる時》がくるまで、玖渚友は眠り続ける……のだろうか?

「むにゃむにゃ……う~ん、いーちゃん……」

 現在、彼女が住まいとしているこの摩天楼という建物。こことて、いつまでも無人の過疎地というわけではない。
 いずれは人が押し寄せ……というよりも、今、まさに、人が押し寄せてきているのだった。
 その事実に、彼女は気付けない。むしろ関心がない。寝ている子に関心もなにもあったものではないが。

 コン、コン、コン、と。

 蒼の眠る白い寝室に、三回のノックがやってくる。
 もちろん、玖渚友はその程度の騒音では目覚めもしない。
 あるいは、これが待ち望んでいた彼によるものだったならば、違うのかもしれないが。

 健やかな寝息が、寝室を埋める中――扉は、ゆっくりと開かれていった。


 ◇ ◇ ◇


 ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ……――。

 けたたましい目覚まし時計の音が、室内を埋め尽くさんほどに響き渡る。
 シングルベッドの枕元に置かれていたそれにそっと手が伸び、二度三度、空振りを経てから捕獲。
 パチン、とスイッチを切るとともに、騒音が鳴り止んだ。

「ん……」

 うつ伏せの状態から、眠りについていた少女――黒桐鮮花がゆっくりと起き上がる。
 手にある目覚まし時計に目をやって、時刻確認。十二時前。寝坊せず起きられたことに安堵した。
 目覚まし時計を再び枕元に置き、周囲を見渡してみる。
 特にこれといった変化はない。入室したときと同じ、殺風景な光景が目に付く。
 窓から差し込む光は微かにではあるが輝きが増し、日が高くなったことを告げていた。

「……案外、眠れるものね」

 そこは、礼園女学院の寮とほとんど変わらない、一人で暮らす分には不自由しない広さの部屋だった。
 ベッドの質はこちらのほうが若干上をいっていると分析できたが、快眠を得られたのはそのせいだろうか。

「あー……っていうか、ばか。わたしのばか」

 起き抜けの頭を左右に振りながら、鮮花はいきなり自己嫌悪に襲われた。
 よく眠れた。目覚めるべき時間に目覚めもした。それはいい。
 ただ、どうしてこうも“安心して”眠ってしまったのだと、鮮花は苦悩する。
 そもそもが、危険を孕んだ表面上だけの親切であったかもしれないというのに。

「……でも、ま、いっか」

 まずは顔洗お、と鮮花は部屋に備え付けられた洗面台へと向かう。
 彼女がこの部屋で眠っていたのは、ほんの二時間程度のこと。
 発端は、“先生役”を買って出てくれたあの男、クルツ・ウェーバーの言によるものだった。

 銃を教えるのはいい。が、その前に体を休めておけ――と。
 ここ、摩天楼で目的の銃器を手に入れた鮮花は、クルツに仮眠をとることを勧められた。

 眠気は如何なるときでも障害となりうる。
 緊張感を維持できるならば問題はないだろうが、ただでさえ鮮花は身内を亡くしているのだ。
 この緊張がいつ、ぷつりと切れてしまうかもわからない。
 気休めでもいいからせめて肉体疲労だけは回復しておけ、と。
 いわばこれは、クルツ先生による初めての指導とも言えた。

 水道の蛇口を捻り、水を出す。
 豪快に洗顔を済ませると、傍にあるバスルームに目がいった。
 本音を言えばシャワーの一つでも浴びたいところだったが、さすがに自重する。

「あ……」

 ……鏡を見ると、目元に妙な違和感があることに気づいた。
 微かに赤くなっているような、一度の洗顔では拭い切れなかった変化。
 鮮花はその正体を確かめるべく、ベッドに戻った。
 使っていた枕を手にとると、ほんのりと湿っている。
 よだれではない。涙だった。
 自分のことだからこそ、すぐにわかってしまった。

「……幹也」

 ぽそり、とその名前を口にしてしまう。
 思い出すだけでも飲み込まれてしまいそうなのに、わざわざ口に出して、感傷に浸ってしまう。
 いけない――鮮花は咄嗟に、枕元に置いてあった黒い物体に手をやった。
 コルトパイソン。
 幹也の仇への復讐を誓った、力の代替物を視界に納め、意思を強く保つ。

 悲しむのは、寝ている間だけにしよう。
 泣きじゃくるのは、夢の中だけにしよう。
 覚えてなんていないけれど、きっと、二時間の間に見ていた夢は――心地良いものだったのだと思う。

 火蜥蜴の革手袋、デイパック、そしてコルトパイソン。
 今後を生き抜くために必要な道具の数々を点検、装備し、再出発のための身支度を整えた。
 正午の放送も近い。出発は放送を聞き終えてからの予定だが、その前にクルツと合流を済ませておいたほうがいいだろう。

「……銃以外に関しても、認めてあげていいのかな」

 仮眠を勧めたのはクルツだ。勧められたままに仮眠をとったのは鮮花だ。
 しかし、その勧めに危険性がなかったとは、夢にも思わない。
 眠っている間、鮮花は襲われてもおかしくはなかったのだ――他でもない、クルツに。

 一応、クルツとは“仲間”と言ってしまっていい関係を築いている、と思う。
 だからといって、クルツが完全に鮮花寄りの味方かといえば、一概にそうとは言えない。
 彼にだって、優先するべき目的があるだろう。隠し事の一つだってあるかもしれない。
 鮮花に銃を教える、という言もどこまで信用し、頼ればいいものか。
 裏切られることが容易に想像できるだけに、信用し切り、頼り切ることが、鮮花には難しかった。

 結果だけを見るなら、杞憂だったのだろう。
 鮮花は警戒があったにも関わらずぐっすりと二時間睡眠、クルツはその間、こちらになんの干渉もしてはいない。
 鮮花が眠る間は摩天楼の調査をすると言っていたクルツだったが、今頃はどこにいるのか。
 時間になったら迎えに行く、とも言っていた。時間になったが、彼はまだやって来ない。
 摩天楼の調査を続けているのか、なにかトラブルがあったのか、鮮花を放って早々に出発したのか。答えは知れなかった。

「やっぱ、なかなかに難しいものよね。赤の他人を信用するのってさ」

 ただでさえ、軽薄で軟派な男は嫌いな鮮花だった。
 銃を教えてもらえるから、なんて単純な動機で、クルツの言いなりになる気はもちろんない。
 こういうときこそ、女は強くあるべきだ――というところまで思って、鮮花はいい加減、部屋を出ることにした。

 待っていても来ないというのであれば、こちらから探すしかない。
 現在鮮花がいるこの部屋は、例の銃器を見つけた部屋と同じ階層に位置している。
 この縦に広い建物の中から人一人探すのは大変だろうが、最悪、放送前にでも玄関口で待っていれば合流はできるだろう。

 扉を開き、廊下に出る。
 とりあえずはエレベーターで下に降りよう。
 鮮花は廊下を道なりに行き、エレベーターホールへと出た。

 そこに、クルツはいた。
 仰向けの状態で、床に倒れていた。
 彼の傍には、二人の少女と一匹の猫がいた。
 猫のほうは知らないが、二人の少女には見覚えがある。
 いつかの“ですの口調”白井黒子と、“RPG娘”のティーだった。

「なっ――」

 曲がり角を折れていきなりの光景に、鮮花は唖然とするしかなかった。
 白井黒子は鮮花の存在に気づくなり、「あら」と口にするだけで特になにもしない。
 ティーと猫――可愛らしい三毛猫だった――もこちらを一瞥するだけで、リアクションは薄かった。

「お久しぶり……というほどでもありませんわね。こうも早く再会するとは、妙な縁ですこと」
「な、な、な……」
「わたくしの名前、覚えていますか? 『風紀委員(ジャッジメント)』の白井黒子ですの」
「なん、で、あんた……」
「黒桐鮮花さん、でしたわよね? とりあえずはまだご存命だったようで、なによりですわ」

 わなわなと震える手で、白井黒子に向かって指を指す。
 まさかの場所、まさかのタイミング、まさかの状況での再会に、鮮花の唖然は驚愕へと変化した。

「な、んっ、でぇ! あなたがここにいるのよ、白井黒子――っ!」

 エレベーターホール一帯が、鮮花の大声で満たされた。
 あんまりな反応に、白井黒子は顰めっ面を浮かべながら言った。

「……そんなに力いっぱい驚かれなくても」
「こ、ここであったがひゃくねんめぇぇぇ!」

 頭の中を、忌まわしき回想が駆け巡る。あのときの屈辱は、忘れてなんかいない。
 即座に右手を翳す、その手中にあるのは火蜥蜴の革手袋。
 鮮花が示すストレートな攻撃行動、発火が、白井黒子へと向く。

「またそれですの? 忠告しておきますけれど、こんなところで火花でも散らそうものなら、すぐさま火災報知器が作動しますわよ?」
「そそ。俺としちゃ、スプリンクラーを浴びてびしょびしょになった鮮花ちゃんってのも拝んでみたいが……ま、やめといたほうがいいぜ」

 呆れ顔の白井黒子の声と重なり響いてくる、軽薄な声。
 その一声で鮮花は制止し、仰向けに倒れていたクルツへと目がいった。
 彼は大の字になって天井を仰いでいる。どうやら、衣服のいたる箇所が釘か杭のようなもので床に固定されているようだった。
 いつもと変わらぬ飄々とした態度、出血の様子が見られないことを鑑みるに、身動きを封じられているだけに留まっているらしい。

「なんせこのアングルじゃ、見えるものも見えないしな。ああ、もっと短かったらなぁ……おっと、なんでもないぜ」
「…………」

 まるでリリパット国民に磔にされたガリヴァーのようだ、とは口に出さない。
 この男は、この状況下で、どうしてこのように余裕を保っていられるのだろうか。
 感嘆を通り越して、呆れる。やっぱり、こういうタイプの男は嫌いだった。

「それはそうと」

 ため息の一つでもつこうとした、そのとき。
 白井黒子の声が、鮮花の背後より発せられた。
 目の前にはもう既に、彼女の姿はない。
 すぐに鮮花が振り向こうとして――その身は宙を舞った。

「あ、ぐっ!?」

 自重を支えていたはずの両脚がふわりと浮き、視界が九十度ほど揺れる。
 受け身を取るという発想すら起こらないほどの速度で、背中のあたりを痛みが襲った。
 瞬間的に変わった視界が、天井と、白井黒子の顔を映す。
 腕を取られ、足を払われ、地面に叩きつけられたのだと知った。

「早速ですが、わたくしから一つ質問させていただきますの」

 言いながら、白井黒子は自身の太股のあたりに手をやった。
 スカートを少し捲った先に見える、ガーターリング。そこに装着された何本かの鉄釘。
 鉄釘に白井黒子の手が触れることによって、フッと消失。立て続けに、カカン、という小気味いい音が鳴った。
 音の正体はすぐに判明する。クルツと同じように、鮮花の衣服を鉄釘で床に縫いつけた音だった。

「お考えは以前と変わらず、なのでしょうか?」

 白井黒子の『空間移動(テレポート)』。
 対象を任意の空間に移動させる、魔法のような力。初邂逅の際には、これが要因となり勝敗を決した。
 百円ライターと大して変わらぬ鮮花の発火能力では、絶対に敵わない。白井黒子が保有する超上の武器。
 二度目であるということを踏まえ、十分に警戒をしていたとしても、攻略できるものではなかった。
 鮮花は為す術もなく、再びの拘束状態に置かれ、歯噛みする。

「答えはノーだぜ、黒子ちゃん」

 鮮花に先んじて返答したのは、クルツだった。
 両者ともに仰向けで磔にされている現状、互いがどんな表情をしているかはわからない。
 しかし鮮花には、クルツの飄逸な顔をありありと想像することができた。

「君は要するにこう問いたいわけだろう? 黒桐鮮花に殺し合いを続ける意思はまだあるのか、ってさ」
「クルツさんでしたわね? 察するに、黒桐鮮花さんとは共闘関係にあるようですけれど……」
「おう、フレンドよフレンド。だから君のことも当然、鮮花ちゃんから聞いてる」
「興味深いですわね。彼女はわたくしのことをなんと?」
「魔法使いみたいな女の子にコテンパンにされちゃったので、馬鹿な真似はやめることにしました――ってな風にさ」

 そんなこと言ってない、と口を挟もうとして、鮮花は思いとどまる。
 誇張表現ではあるが、たしかに鮮花は、白井黒子との対峙をきっかけに考えを改めた。
 それは直後の放送――黒桐幹也の訃報も影響し、百八十度方向を転換することになる。
 今の鮮花は、白井黒子にケンカを売った頃の鮮花とは違う。白井黒子の鮮花に対する認識も、間違っているのだ。
 クルツはあれで、鮮花の弁護を試みようとしているのだと気づいた。

「懸命ですわね。まあ、黒桐幹也という方が亡くなられたとあっては、否応なしに目も覚めるというものでしょうか」

 あっさりと幹也の名前を出されて、ムカっとした。なんてデリカシーのない女だろう。
 挑発なのかもしれないが、いや挑発なのだろうが、ここは奥歯を噛み締めぐっと我慢する。

「そんなわけで、黒子ちゃんが心配するようなことは俺たち二人にはなにもないわけよ。いい加減、解放してくれないかな」
「そういうわけにはいきませんわね。なにせわたくし、ある方に『覚悟がなってない』だのと説教されたことがありますので。
 ここはわたくしの覚悟を示すためにも、厳格に、非情に、正しき『風紀委員(ジャッジメント)』として対応したいと、そう思いますの」

 もしかしなくても鮮花のことを言っていた。案外というか印象どおりというか、根に持つタイプなのかもしれない。

「黒桐鮮花さん。今一度お尋ねします。お考えは以前と変わらず、なのでしょうか?」

 白井黒子は鮮花を見下ろす形で、視線を合わせてくる。
 望む返答はクルツの弁護などではなく、あくまでも鮮花本人からの言葉ということか。
 沈黙の時間が流れ、黒桐鮮花はどう答えを返すか考え抜いた末に、それを言葉にする。

「――変わらないわ」

 強い一言に、白井黒子の表情が強張った。
 鮮花の視点からでは姿を捉えられないクルツ、それにティーという名の白髪の少女も、別段騒ぎ立てたりはしない。
 好都合だと言わんばかりに、鮮花は自身の主張を続けた。

「白井黒子さん。あなたが以前語っていた方針を否定する考えは、わたしの中ではなにも変わっちゃいない。
 あのときも言ったけれど、わたしたちは既に負けているのよ。与えられた選択肢以外を選ぼうだなんて論外もいいところ」
「それはつまり、あの人類最悪なる男の口車に乗り、決して逆らうこともなく、一つの椅子を巡る戦いに従事すると。
 生きて欲しいと願っていた方が既に亡くなられた今となっても、生存への願望が自分自身に転換されただけだと。
 そう仰られるわけでしょうか、黒桐鮮花さん? だというなら、わたくしも然るべき対処をしなくてはなりま――」
「いいえ、違うわ」

 諦観の様相を見せた白井黒子に、鮮花が言う。

「わたしはもう、一つの椅子には執着しない。わたしが執着するのは、一つの椅子を巡るために他者を蹴落とせるという権利だけ」

 視線で相手の目を射抜くようにして、黒桐鮮花は白井黒子を見る。
 瞳と瞳が正面衝突し、どちらも逸らさず、向き合わせたまま。
 鮮花の目には確かなる決意が、白井黒子の目にはわずかな驚きがあった。

「ふくしゅう」

 ぼそっ、と口を開いたのが、意外なことにティーだった。
 鮮花が抱える願いを簡潔に表したその単語を、この場にいる全員が汲み取る。
 黒桐鮮花は、自分を含めた誰かが生き残ることよりもまず、復讐を優先する――と。

「……呆れてものも言えませんわ」

 鮮花の決意を汲み取って、白井黒子は率直な感想を述べる。
 理解してくれるとも思っていなかった。理解して欲しいとも思わない。

「復讐、いえ、この場合は仇討ちでしょうか。どちらにせよ、浅はかな指針ですこと」

 非難するだけならばまだいい。が、邪魔をするというのであれば容赦なく叩き潰す。
 鮮花は口には出さないものの、瞳を敵意の色を染めて、白井黒子を睨み続けた。

「……でもまぁ、以前よりはマシになったみたいですわね」

 敵意を受け、しかし白井黒子は睨み返しはしなかった。
 そんな価値すらない、と呆れ果てているのだろうか。
 白井黒子は身を屈め、鮮花の衣服を縫いつけていた鉄釘に触れる。
 フッ、とその内の一本が消えた。

「あなたの意思はお強いようです。それゆえに、邪魔をしない限りは安全である……とも解釈できるのですが。どうでしょう?」

 白井黒子はまるでこちらの考えを見透かしているような、いけ好かない笑みを浮かべた。
 鮮花が睨むことをやめなくとも、白井黒子は鉄釘を抜いていくことをやめない。
 体が自由になったら即、その脳天にネリチャギでもお見舞いしてやろうか――とも考えたが、思いとどまる。
 行動の意図を探り、言動の裏を読む。白井黒子が鮮花の身を自由にしようとしている、その意味を考えた。

「……なんのつもり?」
「無害な人間をいたずらに拘束する趣味はない、ということですわ」
「あら、それって信用を得られたってことかしら?」
「勘違いしないでくださいまし。完全に無害だと判断するのは、まだまだこれからですわ」

 気を許した、というわけではないらいしい。
 白井黒子はしたり顔で、次々と鉄釘を抜いていった。

「言っておきますけれど、覚悟なら十分ですわよ? 交渉に大事な要素は、なによりも誠意だと思いますので」

 以前のように誠意のない対応をしたならば――今度はこちらが打ち負かされる。
 鮮花は本能でそう察し、やはり、歯噛みした。


 ◇ ◇ ◇


 三回のノックを経て、部屋に《侵入》してきた人物の性別は、男だった。
 眠りにつく蒼、玖渚友の待ち望んでいた人物も男ではあったが、これぐらいの一致点ではぬか喜びもできない。
 彼は玖渚友をどんな風に起こすのだろうか。まず、そこから試される。

 すぴー、くかー、ぐーぐー、といった寝息のシンフォニーが響き渡る。
 部屋の中に余計な騒音はなかった。男は足音の一つも立てず、少女の眠る寝台の横に立った。
 無機質な視線が、玖渚友という蒼の個体を見下ろす。見下ろして、大したリアクションはない。

 玖渚友の寝息に混じり、微かに、荒い呼吸音が響いたような気がした。
 男が女を見て抱く感情は、劣情――と言ってしまうのは彼の名誉に関わることなのかもしれないが、男は明らかに興奮していた。
 《侵入者》は、はたして玖渚友のロリィな体躯に欲情してしまったのだろうか……?


 ◇ ◇ ◇


「ところで、クルツさんはどうして拘束されていたんですか?」
「出会うなりそちらの彼女、ティーに対して劣情を抱いた様子でしたので。とりあえず、と」
「うわぁ……」
「おいおい、誇張しないでくれよ。俺は見るからに迷子な風だったこの子に、優しく話しかけてあげただけだぜ?」
「さりげなく話しかけるのはガールズハントの基本、でしたものね」
「そりゃ土御門の言葉だ。ま、俺も否定はしないけどよ」
「そういった趣味趣向をお持ちであることについて、ですか?」
「いやいや、そっちじゃなく」

 場所は変わらず、エレベーターホール。
 鮮花に続いてクルツの拘束も解いていった白井黒子は、すべての鉄釘を太股のガーターリングに収め、その場での話し合いを始めた。

 ちなみに、この鉄釘とガーターリングはここ、摩天楼で入手したものである。
 『風紀委員(ジャッジメント)』の勤務中に常備していたものよりは強度が劣るが、あればなかなかに便利なものだ。
 『空間移動能力者(テレポーター)』である白井黒子には、こういった軽く、硬く、小さいものが武器として向いている。

「さて、先程のお話の続きになりますが、まず黒桐さんの復讐のお相手……仇には、見当がついていますの?」
「ええ。っていうか、実際に襲われもしたわ。式に似た格好の、獣みたいな動きをする男……男、よね。あれ」
「ああ、ありゃ男だよ。俺が言うんだから間違いない。あと、ステイルとかいう魔術師もグルの可能性があるな」
「また妙な説得力ですわね……って、ちょっと待ってください。今、なんと? 魔術師……?」

 耳慣れぬ単語に、白井黒子は怪訝な顔を浮かべた。

「魔術師だよ、魔術師。黒子ちゃん、土御門と同じ学園都市っていうところの出身なんだろう。知らないのか?」
「魔術だなんて、そんな非科学的な……その土御門という方も存じ上げませんし、そもそもどういったものなんですの?」
「どういったものもなにも、わたしが一回見せたじゃない。初めて会ったときに使った、発火魔術」
「発火魔術……? あなた、『発火能力者(パイロキネシスト)』ではありませんの?」
「鮮花ちゃんは魔術師だぜ。もっとも、土御門が言う魔術師とは微妙に違うモンみたいなんだがな」
「微妙どころか、まるで別物ですよ。土御門さんの話は、橙子さんに聞いた話とだいぶ食い違っていましたし」
「……順を追って説明していただけますでしょうか」

 彼女らと情報交換の席を設けたのは、正解だったかもしれない。
 と思う一方で、予想の範疇を超える情報量に、白井黒子は軽く混乱しかけた。
 ティーやシャミセンの例を踏まえたとしても、黒桐鮮花とクルツ・ウェーバーの齎す情報は信じがたい。

「魔術……能力とは違う別系統の力。ステイル=マグヌス……黒桐さんの上をいく炎の魔術師。
 黒桐さん自身は蒼崎橙子さんという方を師に持つ魔術師であり、そして獣じみた身体能力を持つ男……」

 だが、信じなければならない場面と状況なのだろう。ここは。
 なにより、クルツの話に出てきた“上条当麻”。この名前がキーワードになった。
 白井黒子が敬愛するお姉様――御坂美琴から、その名は聞き及んでいる。白井黒子自身、何度か顔を合わせたこともあった。
 土御門元春という人物が提供した学園都市の概要にも間違いはないし、上条当麻の知り合いという言も大いに納得できる。

 そういった面からくる信憑性が、魔術師なる存在の胡散臭さに拍車をかけてもいるのだが、目の前には鮮花という実例がある。
 彼女の発火能力について詳しく訊いてみると、確かに『発火能力(パイロキネシス)』とは発動のメカニズムが異なるようだった。
 学園都市という世界――その極めて近くに存在していた魔術――そしてそれともまた違った黒桐鮮花の魔術。
 初めて遭遇する――実は魔術師には不認知のところで既に遭遇しているのだが――異能力というものに、白井黒子は感嘆した。

「わたしにとっては、学園都市やら能力者やら、そっちの話のほうがよっぽど信じがたいけどね」
「わたくしにとっては、一般常識レベルの話なのですが……それにしても、魔術。魔術ときましたか」
「おいおい大丈夫か? そんなんでAS(アーム・スレイブ)の話なんてしたら、頭パンクしちゃう?」
「ま、まだなにかありますの……?」

 続くクルツからの情報。AS(アーム・スレイブ)なる巨大兵器の普及に関しては、もちろん頭を抱えた。
 普段なら正気を疑いたくなるような話。それでも信じざるを得ないという状況が、いい加減嫌になってくる。

「……なぜ、人型にしますの? なぜ、大きくしますの? コストにも見合うとは思えません。
 ロマンを求めたSF小説じゃあるまいし、そんなものが軍事運用されているだなんて、ありえませんわ……」
「ありえない、って言われてもなぁ」

 放送で人類最悪が言っていた内容、『元の世界』、『別の世界』、『物語』、そして『文法』。
 今なら、なんとなくレベルではあるが理解できるような気もする……それでも、多分にSF小説的な解釈を交えた理解だが。
 頭に浮かんできたのは、『パラレルワールド』――そんな単語だった。
 頭に浮かべただけで、決して口には出さない。まだ、仮説を立てるにも早すぎる段階だった。

「……で、今後のことですけれど。お二人は、その仇とやらをお探しになられるおつもりで?」
「いや、それよりもまず訓練だな。今の鮮花ちゃんじゃ、返り討ちに合うのが関の山だ」
「それはご本人も認めていらっしゃるようですけれど、些か考えが悠長すぎやしませんこと?」
「時間がないのはわかってる。だからわたしは、他のすべてを捨てたのよ。この身は、あいつを殺すためだけにある――」

 真剣な表情で、鮮花は銃を握っていた。
 自身の発火能力では仇を殺せない。ゆえの代替物が、このコルトパイソン。
 クルツはその筋のエキスパートらしく、これから鮮花に対し射撃指導を行う予定だったのだという。

「それで、その射撃訓練とやらはどこで行うつもりでしたの? まさかここで、というわけではないのでしょう?」
「候補地としては、二つある。一つは警察署。そこなら、射撃訓練場の一つや二つくらいはあるだろう」
「なるほど……もう一つというのは?」
「飛行場さ。ここは敷地が広い上に、照明灯も完備されている。なにより僻地で、すぐ近くには『消失したエリア』がある」
「部外者に邪魔をされる心配も少ない、というわけですわね。どちらにするかは、まだお決めになっていませんの?」

 白井黒子の質問に、クルツは揃って首肯した。
 それは鮮花が仮眠から目覚めた後に決める予定だったらしい。

「わかりました。そういうことでしたら、飛行場へ向かいましょう」

 なので、今のうちに言っておくことにした。

「ちょっと待って。なんであなたが勝手に決めてるのよ」
「わたくしたち、ちょうど北へ向かう予定でしたの。飛行場なら、いろいろと都合がいいんですのよ」
「そういうことじゃなくて……決定権の話よ!」

 声を荒らげて突っかかってくる鮮花に、白井黒子は嘆息する。

「黒桐鮮花さんにクルツ・ウェーバーさん。当面の間は仇とやらを標的にし、それ以外は狙わないと、そう判断させていただきました。
 とはいえあなたには前科があるわけですから……ここは譲歩し、“監視”ということで一つ手を打たせていただくことにしますわ」

 と、わざとらしい作り笑顔で言ってのける白井黒子。
 今すぐ罰しないだけありがたく思え、そんな声が聞こえてきそうな、小悪魔めいた笑顔だった。
 これに対する反応は、当然。

「あ、ん、た、ねぇ……!」
「まあまあ、鮮花ちゃん。抑えて抑えて。別にいいじゃないの、旅は道連れ世は情けってね」

 鮮花は面白いくらい簡単に挑発に乗ってきてくれたが、すぐにクルツが諫めに入った。
 クルツ・ウェーバー。彼も彼で、謎が多い。そもそも、なぜ鮮花に協力をしようとするのか――。
 そのあたりも含め、この二人はもう少しじっくりと見定める必要がある。
 故に、行動を共にする。『黒い壁』と『消失したエリア』の調査も、同時に行う。
 北へ向かうというのなら、正に一石二鳥の良案だった。

「……いえ、上手くいけば一石三鳥ですわね」

 呟き、白井黒子はクルツに対して訊く。

「一つお尋ねしますが、車の運転はできますでしょうか?」
「クルマ? まあ、どんな車種でも一通り動かせはすると思うが……なんで?」

 問い返すクルツを見て、白井黒子はニヤリと笑った。

「よかった。わたくしやティーでは宝の持ち腐れでしたもの。ずっと探していたんですのよ? ドライバー」


 ◇ ◇ ◇


 摩天楼一階、正面玄関口まで降り、ティーと鮮花、クルツの三人が外に出る。
 日は高く、正午が近い。寝起きの鮮花には、特に強烈な日差しだった。

「…………」

 ティーはなんの予告もなしに、デイパックを開け放った。
 中から出てきたのは、巨大な大型車両。ただし、車輪はついていない。
 一見してただのステージとも思えるそれは、使い手を選ぶがために死蔵されていた、ティーの支給品だった。

「ホヴァー・ヴィークル……ね。さすがに、動かしたことはねーや」

 一台のホヴィー(注・=『ホヴァー・ヴィークル』。浮遊車両のこと)が、クルツの目の前にあった。
 運転席と助手席、それに荷物が積める後部デッキという形は、軽トラックにも似ている。
 運転席を見るに、動かし方は一般車両とそう変わらないようだ。

「あなたにはそれを運転していただきます。移動するための足が手に入るわけですし、悪い話ではないでしょう?」

 ホヴィーをしげしげ眺めるクルツの横に、突如として白井黒子が現れた。
 彼女お得意の『空間移動(テレポート)』とやらで、摩天楼の中から飛んできたらしい。
 その証として、彼女の手には今までは持っていなかった“荷物”が握られている。

「まあ確かに、自転車で移動するよりは……って、黒子ちゃん。その手に持ってるのはなにさ」
「ああ、これですの。わたくしたちが摩天楼を訪れることになった原因……とでも説明しておきましょうか」

 それは、少年だった。
 歳はどちらかと言えば、黒桐鮮花よりも白井黒子に近い印象を受ける。
 あちらこちらに生傷が窺え、それを治療した形跡もあった。おそらくは白井黒子がやったのだろう。
 本人は気絶しているのか眠っているのか、白井黒子に首根っこを掴まれながらも、起きる気配がない。

「本当は彼が目覚めてから出発といきたかったのですが、ホヴィーが使えるのなら運ぶのに不自由はしませんものね」
「なるほどね。こればっかりはさすがに、デイパックに詰めておくってわけにもいかないもんな」

 白井黒子は『空間移動(テレポート)』を駆使し、ホヴィーのデッキに少年の身を置く。
 続いて、ティーを彼女が抱えていた猫ごと、同じ要領でデッキに乗せる。
 運転席と助手席にはクルツと鮮花が乗るよう指示し、白井黒子自身もデッキに身を落ち着かせた。

「……クルツさん。なんか、彼女の言いなりですね」

 白井黒子の仕切りに納得がいかないらしい鮮花は、助手席につくなり不満を口に漏らす。

「いいのいいの。それと、俺のことは先生って呼んでくれ。初めに言っただろ?」

 クルツはやんわりと返すが、

「まだ直接の指導は受けていませんので」
「ありゃりゃ、手厳しいことで」

 鮮花はどうにも、不機嫌な様子だった。
 それは白井黒子との問答が原因か、はたまた新しく入ってきた女の子ばかりに目がいくクルツへのヤキモチか。
 後者であるなら嬉しいが、まあ、そんなことはないんだろうな……と、クルツは少し淋しげに黄昏てみた。
 もちろん、鮮花はまったく気づいてくれない。

「そもそもそれ、いったいどこの誰なのよ? 面倒事はごめんよ、わたしたち」
「それは彼が目覚めてから訊く予定でしたの。ま、今は疲れが溜まっているだけのようですから、その内目覚めるでしょう」
「せっかく車が手に入ったわけだしな。移動しながらでいいだろ、そういうのは」

 運転席とデッキでやり取りを交わしつつ、クルツはホヴィーのエンジンをかけた。
 と、

「待ちたまえ」

 デッキのほうからやたらと低い声が聞こえ、クルツと鮮花は揃って後ろを振り向いた。
 そこには、白井黒子とティー、気を失っている少年の三人だけが存在している。
 今の老獪な紳士のような声は、万が一にも少女二人の裏声などであるはずもない。
 だからといって、少年が実は起きているというわけでもなさそうだった。

「そろそろ放送だ。出発するのはいいが、この場で情報をまとめ終えてからでも遅くはあるまい」

 訝るクルツと鮮花の視線を買いながら、声の主は再び発声した。
 信じがたいことに、口が動いたのはただの一人――いや、一匹だけ。
 ティーが手に抱いていた、シャミセンという名前の三毛猫だった。

「……」「……」

 クルツと鮮花は一度顔を見合わせ、またすぐに、後ろのデッキに視線をやった。
 シャミセンは――世にも奇妙な喋る猫は、気持ちよさそうに「にゃー」と鳴いた。

「……猫がしゃべったぁぁ~!?」



【E-5/摩天楼前・正面玄関口/1日目・昼(放送直前)】

【黒桐鮮花@空の境界】
[状態]:強い復讐心、ホヴィーの助手席に乗車中
[装備]:火蜥蜴の革手袋@空の境界、コルトパイソン(6/6)@現実
[道具]:デイパック、支給品一式、包丁×3、ナイフ×3、予備銃弾×24
[思考・状況]
基本:黒桐幹也の仇を取る。そのためならば、自分自身の生存すら厭わない。
1:クルツと行動。飛行場へ向かい、クルツから銃の技術を教わる。
[備考]
※「忘却録音」終了後からの参戦。
※白純里緒(名前は知らない)を黒桐幹也の仇だと認識しました。


【クルツ・ウェーバー@フルメタル・パニック!】
[状態]:左腕に若干のダメージ、疲労(中)、復讐心、ホヴィーの運転席に乗車中
[装備]:エアガン(12/12)、ウィンチェスター M94(7/7)@現実、ホヴィー@キノの旅
[道具]デイパック、支給品一式、缶ジュース×17(学園都市製)@とある魔術の禁書目録、BB弾3袋、予備弾28弾、ママチャリ@現地調達
[思考・状況]
基本:生き残りを優先する。宗介、かなめ、テッサとの合流を目指す。
1:ホヴィーで飛行場へ向かい、鮮花に銃を教える。
2:可愛いい女の子か使える人間は仲間に引き入れ、その他の人間は殺して装備を奪う。
3:知り合いが全滅すれば優勝を目指すという選択肢もあり。
4:ステイルとその同行者に復讐する。
5:メリッサ・マオの仇も取る。
6:ガウルンに対して警戒。
7:鮮花に罪悪感、どこか哀しい 。
[備考]
※土御門から“とある魔術の禁書目録”の世界観、上条当麻、禁書目録、ステイル=マグヌスとその能力に関する情報を得ました。


【白井黒子@とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康、ホヴィーのデッキに乗車中
[装備]:グリフォン・ハードカスタム@戯言シリーズ、地虫十兵衛の槍@甲賀忍法帖、鉄釘&ガーターリング@現地調達
[道具]:デイパック、支給品一式、姫路瑞希の手作り弁当@バカとテストと召喚獣、
     伊里野加奈のパイロットスーツ@イリヤの空、UFOの夏
     デイパック、支給品一式 、ビート板+浮き輪等のセット(大幅減)@とらドラ!、カプセルのケース
[思考・状況]
基本:ギリギリまで「殺し合い以外の道」を模索する。
1:ホヴィーをクルツに運転させ、北へ移動。『消滅したエリア』の実態を間近で確かめる。また『黒い壁』の差異と、破壊の可能性を見極める。
2:移動中に浅羽が目覚めたら詳しい事情を聞く。その後の処遇はまだ保留。
3:“監視”という名目で鮮花とクルツの動向を見定める。いつまで行動を共にするかは未定。
4:当面、ティー(とシャミセン)を保護する。可能ならば、シズか(もし居るなら)陸と会わせてやりたい。
5:できれば御坂美琴か上条当麻と合流したい。美琴や当麻でなくとも、信頼できる味方を増やしたい。
6:伊里野加奈に興味。
[備考]:
※『空間移動(テレポート)』の能力が少し制限されている可能性があります。
 現時点では、彼女自身にもストレスによる能力低下かそうでないのか判断がついていません。


【ティー@キノの旅】
[状態]:健康。ホヴィーのデッキに乗車中。
[装備]:RPG-7(1発装填済み)@現実、シャミセン@涼宮ハルヒの憂鬱
[道具]:デイパック、支給品一式、RPG-7の弾頭×1
[思考・状況]
基本:「くろいかべはぜったいにこわす」
1:RPG-7を使ってみたい。
2:手榴弾やグレネードランチャー、爆弾の類でも可。むしろ色々手に入れて試したい。
3:シズか(もし居るなら)陸と合流したい。そのためにも当面、白井黒子と行動を共にしてみる。
4:『黒い壁』を壊す方法、壊せる道具を見つける。そして使ってみたい。
5:浅羽には警戒。
[備考]:
※ティーは、キノの名前を素で忘れていたか、あるいは、素で気づかなかったようです。


【浅羽直之@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:全身に打撲・裂傷・歯形。右手単純骨折。右肩に銃創。左手に擦過傷。(←白井黒子の手により、簡単な治療済み)
     微熱と頭痛。前歯数本欠損。気絶中。ホヴィーのデッキに乗車中。
[装備]:毒入りカプセル×1@現実
[道具]:なし
[思考・状況]
0:????(気絶中)
1:伊里野の不調を治すため、「薬」と「薬に詳しい人」を探す。
2:とりあえず、地図に描かれていた診療所を目指そう。
3:薬に詳しい「誰か」の助けを得て、伊里野の不調を治して……それから、どうしよう?
4:ティーに激しい恐怖。
[備考]
※参戦時期は4巻『南の島』で伊里野が出撃した後、榎本に話しかけられる前。
※伊里野が「浅羽を殺そうとした」のは、榎本たちによる何らかの投薬や処置の影響だと考えています。
※まだ白井黒子が超能力者であることに気付いていません。シャミセンが喋れることにも気付いていません。


【鉄釘&ガーターリング@現地調達】
白井黒子が摩天楼にて確保した。
『風紀委員(ジャッジメント)』の勤務中に彼女が常備しているアレ。
摩天楼内にあった工具店から適当に見繕ってきたもので、鉄釘の明確な本数は不明。

【ホヴィー@キノの旅】
ティーに支給された。
正式名称は『ホヴァー・ヴィークル』。浮遊車両のこと。
宙に浮いているので悪路にも影響されることがなく、海の上を移動することも可能。
大人数が乗れるデッキがついており、車両自体はかなりの大型。


 ◇ ◇ ◇


「――友! こんなところでなにやってるんだ!」
「う~ん……うに? いーちゃんだ……おはろ」

 《侵入者》は興奮した息遣いで玖渚友を揺さぶり起こし、とっくに昼だということを告げた。
 僕様ちゃんには朝も昼もないんだよ、そういやそうだな、とどこかで見たようなやり取りを交わす。
 ふわぁ~、とのんきにあくびをして、玖渚友はわずか上半身だけ身を起こした。

「髪くくって」
「ん」

 求められた《侵入者》は、玖渚友の長い長い蒼色の髪を、黒いゴムでポニーテールに結ってやった。
 その出来栄えに少女は大いに喜び、はしゃぎ、《侵入者》に好きと連呼し続けた。
 そして、もう一度寝た。


 ――――という夢を見たのさ☆


「さんくー、いーちゃん…………ぐー」


 眠り姫の蒼は、四人や五人不法侵入者が訪れたくらいで、起きるはずなどなかった。
 彼女を起こしに来る権利があるのは、どう足掻いても決められた一人だけ……?



【E-5/摩天楼東棟・最上階(超高級マンション)/1日目・昼(放送直前)】

【玖渚友@戯言シリーズ】
[状態]:健康、睡眠中
[装備]:なし
[道具]:デイパック、基本支給品、五号@キノの旅
[思考・状況]
 基本:いーちゃんらぶ♪ はやくおうちに帰りたいんだよ。
 1:いーちゃんが来るまで寝る。ぐーぐー。
[備考]
※登場時期は「ネコソギラジカル(下) 第二十三幕――物語の終わり」より後。
※第一回放送を聞き逃しました。


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前:A new teacher and a new pupil 黒桐鮮花 次:交差する意志/潜伏する意志
前:A new teacher and a new pupil クルツ・ウェーバー 次:交差する意志/潜伏する意志
前:そんなことだから。 白井黒子 次:交差する意志/潜伏する意志
前:そんなことだから。 ティー 次:交差する意志/潜伏する意志
前:そんなことだから。 浅羽直之 次:交差する意志/潜伏する意志
前:群青――(Madonna) 玖渚友 次:不通の真実――(a silent call)



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