リワマヒ国ver0.8@wiki

01/27 薊の手記 お迎え準備

最終更新:

riwamahi

- view
メンバー限定 登録/ログイン

01/27 薊の手記 お迎え準備


「薊の手記 お迎え準備」

 ここはリワマヒ国。
伯爵領を有しながら少人数で慎ましい生活を送っている不思議な国。
この国の国民は戦争を望まぬ者ばかりであり、藩王は戦力を極力放棄する政策をとり続けてきた。
その結果、リワマヒ国は驚異的な食糧生産量を誇る食糧大国として名を馳せるまでになった。


 私こと薊は、いつものように宮城のおこたの間で猫士のシコウと茶を飲んでいる。
「そういえば、戦勝パレードの様子は共和国全土に中継されるみたいですよ」
「そうなんですか~。国際デビューですね~」
「この機会に国民さんが増えてくれるといいですね」

拡大した食糧生産地を維持していくには人手はいくらあっても多すぎるという事はない。このまま過疎が続けばいずれ手が回らなくなり、終いには首が回らなくなるかもしれない。
こんな状況ではパレードの宣伝効果に期待したくもなるというものである。


「それでですね、新しい国民さんをおもてなしする時のために料理を作ってみたんです」
シコウに丼を差し出す。
「ジンギスカン丼ですか~。おいしそうですね~」
「いえ、親子丼です」
「親子丼なんですか~?」
「はい。これがマトンでこっちがラムです」
「そうなんですか~。いただきます~」

もしもこの場に蒼燐が居たら盛大にツッコミを入れて摂政権限で却下しているところなのだろうが、
幸か不幸か蒼燐は執務中だった。


「あと、お茶は紅茶にしてみました。私物ですけど秘蔵のウバを出しちゃいますっ」
ウバは三大紅茶の1つとされている高級茶葉で、セイロンの茶葉の一種である。
「ちょっと匂いが強いですね~」
種類にもよるが、ウバはメンソール系の香りがするものが多い。その系統の香りは好みが別れるため敬遠される事もある。
「藩王様が堅苦しい話をしちゃうかもしれませんから眠気覚ましによくないですか?」
「あ~。最初はしちゃうかもしれませんね~」
「それにお出しする時はミルクティーにしますから香りは和らぎますよ」
そもそもウバは渋みが強い。ストレートで出すよりもミルクティーにした方が好まれるだろう。


「あとはお茶菓子なんですけど……さすがに煎餅って訳にはいきませんよね?」
「おせんべには緑茶がいいです~」
「ですよねぇ。じゃあ花林糖にしときましょうか」
「しときましょう~」
「お迎えできる日が楽しみですね」


 もてなしの茶にウバを選んだ理由は単に高級茶葉だからというだけではない。
この紅茶はカップに注ぐと光の加減で鮮紅色の水面の淵が金色の輪のように見える事があるのだ。
人が増えればカップも増える。
こんな風に人の輪が増えて広がっていけば、それがいつか和につながるかもしれない。

でも、それは内緒の話。
早く平和になるといいなぁ。

<了>




目安箱バナー