リワマヒ国ver0.8@wiki

24 リワマヒ国の様子 ニンジャ脱走

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riwamahi

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1/24 リワマヒ国の様子 ニンジャ脱走 (作:室賀兼一)



(このSSは幻痛@わかばさんの要望をもとに作成されました)
「さいきん、藩王様が病院あたりでよく見かけられるんですって」
「誰かのお見舞いかしらねえ」

――――リワマヒ国、猫士たちのうわさ 32107002


 リワマヒ国には昔、お庭番なる人物がいた。名前をニンジャという。

 現在のように「電網適応アイドレス」参加プレイヤーと国民とが明示されてはいなかったころ、
担当プレイヤーがリワマヒ国SSを書く上で必要だったため生まれた、
狂言回しキャラクターである。

 設定上は藩王の個人部下、国民ではない、という扱いになっており、
汚い役、ひどい目にあう役、国民の前に立ちふさがる敵役として、
文族、つまりSSを担当するプレイヤーには、便利に現在も使われている。

今回もそんな話である。


/*/


 リワマヒ国、御茶ノ水地区、病院街。
遺跡街にも程近いこの高台には、大小さまざまな病院、医院が軒を連ねていた。

毎年の水による被害が比較的少ないこと、長城にも近く急病人の搬送が楽であることから選定された
この地域だが、
リワマヒ国では医師の地位が高いこと、国内のエリートたる吏族の多くが医師をかねることから、
医師や吏族を目指すものたちの通う私塾、学校なども多かった。
これをしてリワマヒのカルチェ・ラタン、と呼ぶものも、少数ながら、いなくもなかった。


 すでに退院したイド、平を見舞うでもなく病院に通う藩王のうわさは、
国民の大半が知ることとなっていた。

時に学生の寄り集まるカフェで。
時に私塾の教室で。
時に病院の待合室で。

寄り合い話を好む、猫士の多いリワマヒ国ならではの光景である。
もっとも国民自体もそう多くはないから、でもある。
アイドレス生産イベントも終わり、みな、暇をしていたのだった。


やがて藩王のいない間のおこた部屋でも、藩王の秘密は話題にのぼるようになった。
話題に敏感な猫士シコウはせんべいを食べつつ、藩王様も春がきたのねう。と思い、
藩王秘書のイドはバイト疲れの肩をもみつつ、人に言えない病気にちがいありませんね。と断じた。


 ともあれ暇な国民らにとって藩王の秘密は格好のおもしろネタであり、
すぐさまひみつ調査員として一人の国民が派遣された。 
名前を幻通という。白衣をはためかせつつ、いつも長城を走り回っている吏族/文族である。

 この人物、岩田(ACE)なる人物を捜し求めて幾星霜、いろんな国を渡り歩いた最後に
職業のアイドレスで医師をもつこの国に流れ着いた、生粋の岩田ファンである。
今日も自作の自爆ボタンを胸に、面白せりふの反復に余念がない。

リワマヒ国が特産品のあまりない貧乏国だったことが災いした、こともあり、
流れ着いたものの岩田にはあえない、課題は毎度大変そう。と、
やばい俺、選択まちがった? な気分な幻痛だったが、

(すみません 藩王プレイヤー談)

持ち前の行動力を生かし、さっそく調査に向かった。



 藩王はすぐに見つかった。金の総髪に金ヒゲの猫士などそうそうはいない。

藩王はある病院の通用口から、手馴れた様子で守衛の前を潜り抜け、
非常階段を下りていく。 追う幻痛。
外のクリーニング屋の車から制服を拝借し、変装している。

 階段の下りた先は鉄格子のはまった窓の並ぶ、隔離病棟であった。
空調の効きすぎか、やけに肌寒く、足元のリノリウムがサンダル越しに、熱を奪っていた。

藩王は王猫から鍵を受け取り、ある一室の鍵を開け、入っていく。
そっと近づく幻通。鉄格子から中をのぞいた。


そこは一面ピンクのタイル張りのなされた個室だ。
部屋の中央には拘束具を着せられた青年がベッドの真ん中で沈んでおり、 
うなるような、くぐもった声を発している。
藩王が何かを問いかけ、それに対してわめき返している、ようだった。

幻通は扉のほうに耳をつけ、目を閉じて聞き入ることにした。




兼一王 「とまあ、生産イベントまではそんなかんじで終了したわけなんですけども」

拘束衣の男 「そんなことはBBSみてますからわかるんですよ! そうじゃなくて! わんわん帝國所属とはいえ同じプレイヤーがですよ! せっかく苦労して作った藩国ごとおとりつぶしの危機、それも同胞たるプレイヤーに攻め滅ぼされるかもなんて、ひどいじゃないですか! こんな非道を許すんですか藩王!」

兼一王 「まあまあ。
     君の千里眼は知ってるし今も助かってるけど、共和国のほうからはなにも告知出てないし。
     それに、現状はまだ、君の予測なんだろう?」

拘束衣の男 「ちがいますよそうじゃないんです、最新の更新ではですねシロがジェントルラットに絶滅部隊を送ってて、FVBが首を出せいわれてて、人狼領地の討伐がでてるんですよ! それでタマ宛にリーク情報を送ってFくぁwせdrftgyふじこlp」

兼一王 「君は疲れているんだよ」

拘束衣の男「つかれているのはあなたですいいですか、わんわんは内乱でいまが肥え太ってるんですしかも各国とも亡命者を大量に出して戦力は激減、士気は落ちてぼろぼろです、いまこそ攻め込みわんわんの専制政治を打倒、宰相シロにキャン言わせる最大のチャンスなんですよそれに根源種族のリンクゲートに共同調査団を派遣できればすべての疑問を解決する情報を得る最大のチャンスになるんですよそれをあなたしゅうkあwくせdrftgyふじ」

兼一王 「うんうん。気遣ってくれてありがとうね。
     でも、尚書省あっての私たち、共和国も帝國もあっての私たち、だから、
     ここはみんなで問題を考えようよ」

拘束衣ニンジャ「みんなでもなにもみんな仲良くはゲームの基jikolp;@:[」

兼一王 「薬を」
王猫 「にゃ」

王猫はおぼつかない器用さで、鎮静剤を青年に投入しようとする。
そこからは、まるでスローモーションのように、幻痛には見えた。

拘束衣の男は王猫に体当たり。
もろともに転倒するとともに、床のタイルに頭突きする。割れるタイル。
男は口に含んだタイル片で腕の拘束具を掻きちぎると、両腕で器用に足の拘束を解除した。
そのまま入り口に突進、とめる藩王ごとドアに体当たりする。二人分の体重で破られるドア。

拘束具の男はしりもちをつく幻痛を振り返ることもなく、走り去っていった。




 このことは誰にもいわないでおこう。 

幻通はそう思い、乾いた目をしばたたかせていると、
破れた扉のすきまから、こころもち白い顔をした兼一王がじっと、幻痛の顔を見ていた。

兼一王は表情なく、ゆっくりと近づいてくる。
扉だった破片をまたぐと、息を吸った。

兼一王 「入ってきたらいい。そんな場所じゃ風邪を引


幻通は逃げ出した。


追う兼一王。





/*/

後日、本件について何も咎めのなかった幻痛により、
藩王のひみつは後肢肉球の感染症、という暴露発表がなされた。

藩王水虫になる。という話題は国内を駆けぬけ、
やがて藩国内にて宮廷服のソックス使用について再検討がなされるきっかけともなるが、
病院地下の住人については、誰のくちにも上らなかった。


ここリワマヒ国にも、不穏の風が吹こうとしていた。





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