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SS:薊の手記 2/4のリワマヒ国篇 (作:薊さん)

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SS:薊の手記 2/4のリワマヒ国篇 (作:薊さん)


 ここはリワマヒ国。
中小国ながらも莫大な食糧生産量を誇る食糧大国。
国民が少ないため国内での食糧消費量は少なく、生産された食糧は主に貿易で輸出されている。今や市場の食糧部門はリワマヒ国が支えていると言っても過言ではないだろう。


「戦争……ですか」

私こと薊は宮城で会議に出席している。
どうやらまた戦時動員の省令が下ったらしい。今度はかなり大規模な戦争になるようだ。

「はい。でも、今回の動員令には応じられません」
兼一王が静かに言葉を紡ぎ始めた。
「この戦争には大義がありません。皆さんも疲弊されていることですし、今回はお休みしましょう」

「あの……藩王様? お休みしたら罰則金とか払わなきゃいけないんじゃないですか?」

確か前回の動員令では不足1名につき2億にゃんにゃんの罰則金が課せられていた。戦時動員であれば今回も同様の罰則が設けられているのではないだろうか。

「はい。今回は50人動員せよとの事ですので罰則金は100億にゃんにゃんになりますね」
兼一王が真顔で答える。

「ひゃ、ひゃくおくって藩王様、そんなに払える訳ないじゃないですかっ!」

リワマヒ国はあまりお金に縁が無い。それは私が移住を許される前からずっと続いている事であり、今までも困窮する度に内職をして塩おにぎりを食べながら苦境を凌いできた。
この国がそんな大金を支払えるとは思えない。
「実は、市場の相場が急騰しまして高値で取引をする事ができました」
内務大臣の猫士、うにが説明を始めた。


 話によると、動員令の発令に伴い多くの藩国が物資調達の必要に迫られたらしい。
そのため市場に買い注文が殺到し、総ての買い付け取引が停止される事態にまで発展した。
市場は需要の急増に対応しきれず混乱し、品薄となったために相場が急騰したのだそうだ。

「暴動が起きかねないほど深刻な状況だったようで、通常の倍の値で取引が成立しました」
なるほど。需要に応じるために早急に品物を揃える必要があったって事か。
「売却高は、83億にゃんにゃんです」
83億ねぇ。……ん?

はちじゅうさんおくぅ!?

「そういう訳なので、罰則金100億にゃんにゃんを納めて動員を免除してもらおうと思います」
晴れやかに笑う兼一王。


 こちらの意図がどうであれ、リワマヒ国が市場の混乱の収拾に多大な貢献をしたのは事実である。それは食糧部門のみの事ではあるが、貢献したという事実に変わりはない。
33万tもの食糧があればリワマヒ国は総力戦を2度行う事ができる。いかに共和国広しと言えどそれだけ莫大な量の食糧を供給できる国など滅多にあるものではない。
大国は国内での需要が多いので大量の供給は難しく、中小国は大規模な生産地を必要としない。
これは中小国の中でも極一部の国にしかできない事であり、だからこそ最大の武器となり得るのだ。
今回の一件で天領はリワマヒ国に利用価値ありと判断しただろう。事前に通達された罰則金さえ納める事ができれば新たに罰則が追加される可能性は低い。
現時点でのリワマヒ国の解体は不利益にしかならず、何よりも世論が味方についている。
そもそもリワマヒ国にはI=Dを運用できる人材は居ないのだから、動員に応じたとしても戦力としては微々たるものなのだ。


「それでも赤字ですからまた貧乏になっちゃいますねぇ」
塩おにぎりが頭をよぎる。
「国民以上に大切な財産などありませんよ」
そういう事を笑って言い切る藩王様はすごいと思う。
「それに、目先の損得で皆さんを戦地へ送り込む訳にはいきません」
深刻な面持ちで兼一王は続ける。
「もしもの事があったら人手不足で生産地が維持できなくなってごはんが食べられなくなります」


 翌日、事態は一変した。
宮城に来てみれば皆さんせっせと荷造りしてらっしゃるので詳しい事情は聞きそびれてしまったが、何やら重要な作戦が決行されるらしい。

「藩王様ぁ、重要な作戦ならお手伝いに行った方がよくないですか?」
来た早々に捕まり、とりあえず荷造りをするように言われたのだが事情が全く解らない。

「絶対に失敗が許されない極秘の作戦なので不安要素は可能な限り排除したいのだそうですよ」
コンテナのチェックをしながら兼一王が答える。

リワマヒ国は今回の動員令に対して人員を送っていない。
メンバーは表向きには戦時動員で集められた事になっており、武装していても怪しまれる事はない。しかし動員に応じなかった国の人間が居たら明らかに不自然であり、誰だっておかしいと思うだろう。
だからリワマヒ国はこの作戦の実動部隊に参加する事はできない。その代わりとして大量の支援物資を提供し、間接的に作戦に協力する事になったのだそうだ。

「シコウさんにあちらのサポートをお願いしてありますので薊さんは荷造りして下さい」
どうやら既に技士のシコウを派遣していたらしい。
シコウの実力は誰もが認めている。しかも逆境に強い……というか、むしろ楽しんでいるような印象すら受ける事がある。
リワマヒ国は存亡の危機を何度もシコウに救われてきた。

「シコウさんが行って下さったのなら安心ですね」
今頃は目が輝いているのではなかろうか。


 荷造りが一段落したので運搬作業の手伝いをしていると、リンクゲートの前で技士の和子が宛先のチェックをしているのが見えた。
実は和子さんは先日お仲間となったばかり。来たばかりなのにこき使ってしまって申し訳ないなぁとは思うものの、正直なところものすごく助かっている。
なんとなくコンテナがカラフルになってるような気がするんだけど、きっと気のせいだよね。
疲れてるんだなぁ、私……
和子さんの頑張りに感謝して、陰からこっそり拝む事にする。ありがたやありがたや。
後で紅茶を差し入れしますね。

そういえば幻痛さんが来て下さった時も戦時動員で大変だったような気がする。
うにさんとシコウさんは技士不在で泣いていた時に颯爽と現れた。
もしかして非常時に救世主が現れるのはリワマヒ国の伝統なんだろうか?

何にせよ、どうやらまだ神様に見放されてはいないみたい。
皆さんにおいしいごはんとお茶をお届けするために、もうひと頑張りしなきゃですね。


 ここはリワマヒ国。
命運を懸けて信念を貫こうとしている国。
どうかこの選択がよきゆめを導きますように……

<了>





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