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防空リバースSS(1)

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riwamahi

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防空リバース小説(1)「導入の風景:RIWAMAHI Side」


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「一番機、パイロット冬魔、オペレーターリーダーダムレイ、およびコパイロット、オペレートチーム搭乗完了です」
朝から晴れ上がっていた空は、二時間前から急に曇が増え始め、小雨がぱらつきだしている。

「冬摩さん、天気大丈夫ですかね」
ダムレイが不安気に聞いた。出来ることなら晴れていてほしかった。今日は共和国早期警戒システムと、芥辺境藩国の空港航空基地との連携訓練の初日である。

「まあこのくらいの天気なら大丈夫ですよ。これくらいで飛べないようなやわな機体じゃない」
にっこりとほほ笑むと、冬摩はコパイロットに指示を飛ばした。改修型双発ターボプロップエンジンが唸りをあげた。

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共和国初の早期警戒機は、遠目に見るとゆっくりと、そして徐々に速度をあげて曇天の空へと駆け上がっていった。

「飛び立ちましたね」
レンジャー連邦の「オレンジ伯」蝶子藩王が、そっとつぶやいた。
芥辺境藩国の空港航空基地の一室には、彼女を含め三人の人影がある。

「彼らにとっても、私たちにとっても最初の試練ですね」
銀色の髪の青年が言った。砂除けのゴーグルを今は室内なので額にあげていた。
この芥辺境藩国の王、荒川藩王である。

「信じましょう。我々の努力の結晶を。そして彼らを。」
そう言ったのは、リワマヒ国の室賀藩王だ。

「いつもどおりでいいんです。いつもどおりで」
若き世代の心に届くように、そっと呟いた。

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『お久しぶりです~。こちら芥辺境藩国のにわとりです』
スピーカーからの懐かしい声に、早期警戒機の二人は驚いた。

「にわとりさんか!」
ダムレイが素っ頓狂な叫びをあげる。

『はい~今日の地上オペレーターを担当させていただきます。あ、本日は万が一に備えて、レンジャー連邦さんのラスターチカがいつでもスクランブルできるようになっているらしいです。今日の当番パイロットは、七周さんと彩貴さんらしいですよ』
冬摩、ダムレイ、にわとり、七周、彩貴は、初心者騎士団の同期で、ともにNW防衛戦を戦った戦友である。

「はは、同窓会みたいだな」
冬摩が緊張がほぐれたように笑った。肩の力が抜けて、適度なリラックス状態。コンディションは完璧だ。

「了解、上空オペレーターリーダーはダムレイが担当します。よろしくお願いします。」

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最初の一時間、すべては順調に動いていた。異変が起こったのは、次の一時間だった。機内に敵機補足を示すアラーム音が鳴り響いた。

「敵だって!?計器の異常か!?」
まずは、そのことがダムレイの頭によぎった。

「くっ、地上コントロール?」
冬摩が、空港航空基地のにわとりに話しかける。

『こ、こちらでも確認してます~!』
普段よりも若干上ずった声で、返答が返ってきた。

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空港航空基地のにわとりも混乱していた。まさか、訓練中、初日にこのような事態が起こるとは想定していない。目の前がまわりだした。周りの音が一瞬遠くなる。

「落ち着こう。大丈夫」
肩に手が置かれていた。荒川藩王の温かい手だ。
となりに室賀藩王が来て、落ち着いた声でマイクに向かって話しかけた。

「いつもどおり、訓練通りです。あなたたちならできます」

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『いつもどおり、訓練通りです。あなたたちならできます』
藩王の声を聞いて、早期警戒管制機のクルーは落ち着きを取り戻した。どうやら空港航空基地も落ち着いたようだ。

「了解です。ありがとうございます。目標をアルファ1に設定! 追尾します」
コパイロットを指揮しつつ、ダムレイは各種電子機器を素早く操作していく。機体上部ロートドームからは、とてつもなく強力な電波が発信され、侵入した機体をとらえ続けている。

『こちら地上コントロール、アルファ1に設定了解です~!レンジャー連邦にスクランブル発進を要請します。引き続き他の侵入機がないか確認しつつ空港へ戻ってください!』

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レンジャー連邦の航空基地にスクランブル警報が鳴り響いた。
ラスターチカパイロットの七周と、コパイロットの彩貴はすでに機内にいる。各種計器、兵装、エンジンなどを確認。異常なし。

「わあ、スクランブル体制強化したばかりなのに、もう役に立ちましたね~」
彩貴が、緊張した面持ちで七周に話しかけた。

「そうだねえ。あ、彩貴ちゃん、敵を見つけたのはにわとりさんと、ダムレイさんと、冬摩さんらしいよ」
七周は言いながら、ハーネスの具合を確かめている。

「そうらしいですねえ。懐かしいです。あ~でも大丈夫かな。ちゃんとやれるかな」
彩貴は緊張しているのか、お下げ髪に無意識に触れている。
そんな彩貴を振り向いて、七周はへらりと笑った。

「まあ、なんとかなるっしょ」

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侵入機は補足されていることに気がついてないのか、同じ速度で芥辺境藩国に向かって飛んでいる。

「おとりか・・・?」
冬摩は不審に思っている。ダムレイは無言で機器の操作と、データの収集を続けている。地上の空港航空基地と連携して、どの方向から新たな機体が侵入してきても、即発見できるような対空レーダー網を維持していた。

「可能性はあります~。でも、まだほかの敵機は確認できません。」
にわとりの声はもう落ち着いている。その声は厚い外郭に囲まれた、早期警戒システムのクルーたちを安心させてくれる。

レンジャー連邦からスクランブル発進したラスターチカは、一直線に侵入機へと突き進んでいた。搭乗者の二人は、初心者騎士団でも特に優秀だった。リワマヒ国の二人はいつも、パイロット藩国レンジャー連邦のすごさをまざまざと見せつけられたものだった。

「あいつらなら、やってくれる」
期待と、それ以上の大きな信頼をこめて呟いた。

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“空の貴婦人”ラスターチカはただひたすら侵入機に向かって飛んでいた。あと一分もすれば、目標が視認可能なはずだ。

『機体速度そのまま、進路徐々に合わせて』
『よっし!理想的な航路だ!その調子!』
冬摩が、ダムレイが、そしてにわとりが地上と空から正確な最新情報を常に送り続けてくれている。見逃すはずがない。

「上手に後ろをとってみせる」
七周は、コンピューターがはじき出す未来予測と、絶妙な感覚を駆使して侵入機の背後を取るコースを繰り返し繰り返しイメージした。彩貴は、計器類に目を配りつつ、いつでも対空ミサイルを発射できるように準備していた。
30・・・20・・・10
黒い点が見えた。

「え・・・あれ?」
最初に異変に気がついたのは七周だった。黒い点はどんどん大きくなって、航空機のシルエットを結んでいく。彩貴も風防越しにその異変に気がついた。疑惑は確信に変わる。

「彩貴ちゃん、あれって・・・もしかして!」
「はい、はい?ラ、ラスターチカ!?」
それは、見間違うはずもない、レンジャー連邦所属のラスターチカだった。
それを聞いて早期警戒システム、空港航空基地も混乱しかけた。その時

「「「そこまで!訓練終了!」」」

三人の藩王の声が、二つの航空機のスピーカーから、そして地上オペレーターの耳元で重なり響いた。

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芥辺境藩国・空港航空基地。最近できたばかりのこの基地の作戦会議室で、冬摩、ダムレイ、にわとり、七周、彩貴はぶすっとした表情をして立っている。

その前には、室賀藩王、荒川藩王、蝶子藩王がニコニコしながら立っていた。蝶子藩王はパイロットスーツのままである。

「実戦さながらのいい訓練でしたね」
「うんうん、皆さんよく頑張りました」
「うふふ、対空ミサイル撃たれたらどうしようかと思いました」
三人の藩王は上機嫌である。
侵入機は蝶子藩王の操るラスターチカだった。今回の訓練中の突発的な領空侵犯事件はすべて狂言だったのである。

本当にことが起こったときに、この早期警戒システム、空港航空基地、そしてスクランブル発進の連携が本当にうまくつながるのかを試すために仕組まれたものだった。

そして、藩国の若い連中の腕を確かめるという意味もあったようだ。
結果は上々。いくつかの重要な提言が行われ、共和国の空の守りはさらに固くなるだろうと思われた。

「だからって、こんな訓練いじわるです・・・」
じとーっとした十の瞳に見入られて、三人の藩王は冷や汗をかいた。

「ま、まあまあ、せっかく同窓生が五人も集まったんですし、これからお休みにしますので同窓会でもしたらどうですか?」
一歩進みでた室賀藩王の言葉に、一同の顔が一気に輝いた。

「本当ですか!藩王様!」
「私もお休みでいいんですか~?」
「私たちもですか?やった~!」
他の二人の藩王も優しくうなずいた。

「よっし、じゃあ今日は飲みに行こう!」
七周が提案した。
「あ、私、この近くいいお店知ってます~」
芥辺境藩国のにわとりが、案内役を買って出ると、五人は弾むような足取りで作戦会議室を出て行った。

「よっし今日は俺も飲むぞ!」
「あんたお酒飲めないでしょ!すぐ酔っぱらうくせに」
「うちはホッケが食べたいな~バターしょうゆで」
「それおいしいんですか?」
「うふふ、みんなでお食事は楽しいですね~」
にぎやかな声が遠ざかる。

「わが共和国の未来は明るいようですね」
荒川藩王は微笑んでいる。
二人の藩王も、にっこりとうなずいて、彼らが出て行った扉を見つめた。
いつの間にか雲はどこかへ消え去り、芥辺境藩国の夕日が、会議室の中をオレンジ色に染め上げていた。

――END



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