◆直廊の戦い (ジークムント vs ギィ)








ジークムント :  東袖門を攻略せよ、内陣東へ向かう。

 ──時間がない、急げ!!


ギィ    :
[戻ってきた東の戦場は、明らかに押されていた。
 敵騎士団の波状攻撃に陣形が乱れ、効率的な反撃が出来ずにいる。]


 何をしている!

 相手の動きにいちいち対応するな。
 前列、盾構え!戦列を維持する事だけを考えよ!
 後列、槍構え!馬を狙えといっただろう!


[一喝して、隊列の再構築に着手する。
 と、反乱軍の先頭に立って槍を振るう白い姿が目に入った。]


 …ここにいたか、ジーク。


[にやりと呟いて。
 城壁の上の弓兵に手を挙げる。]


 奴だ。敵将を狙え。


[その指は、真っ直ぐに白い姿を指していた。]



ジークムント :  ───、なに。


[ふと、前方から押し返す圧力が変わる。

 突き崩されつつあった敵が盾を構え、戦列をじわりと押し返してくる。
 崩れるかと思われた戦列が立て直され、突き返す。
 その奥に、再び将を乗せた輿が見えていた。]


 ……、ギィ。


[一瞬、身体の奥から震えが走る。
 ぎ。と、奥歯を噛み締めた。]


 ───、総大将が不用意な!!!


[拍車を当て、輿をめがけて馬を駆け出す。
  だが、そこに向けて矢が放たれ]


  ─────ッ!??


[馬の首を射抜き、愛馬は悲鳴を上げてどうと倒れた。]



ギィ    : 
[兵の頭上越しに視線が交錯し、真っ直ぐにこちらを狙って騎馬が駆けて来る。
 その馬の首へと突き立つ矢。
 倒れたその姿に、一瞬だけ瞑目し、腕を振って指示を下す。]


 右翼より徐々に前進。斜形陣に移行。
 敵軍を、内陣の壁に押し付けてやれ。


[味方弓兵に背を向ける形を強いて敵の出血を増すべく、部隊を展開させる。
 直廊という狭い空間を利しての用兵。
 全軍を袖に撤退させる為には、僅かにでも、押し戻さねばならなかった。]




ジークムント :  
[馬が倒れた瞬間、咄嗟に身を庇ったものの、地に叩きつけられる勢いで一瞬息が止まる。
 ルートヴィヒの剣で切裂かれた右の脚が、爆破で火傷を負った左上腕が、激烈な痛みを走らせた。]


 ────っは…。


[その傍らに、新たな矢が突き立つ。
 身を転がしてそれを避け、駆けつけた騎士の手を借りて身を起こす。]


  …………… …


[視線が絡んだのは、一瞬のこと。
 けれどもその瞬間が、酷く長い時のように焼きついていた。]


  ……、左手を交代させよ。右手、列を崩すな!!
 少し戦列を下げる、敵の思惑に嵌るな!!!


[寡兵を斜線陣に編成し、押し返してくる手腕は鮮やかなほど。
 内陣壁からは、総大将の指示に力を得たのだろう。驟雨のように矢が降り注いでいた。
 盾を掲げ、矢を防ぐ騎士の動きが鈍る。
 陣はじわりと後退を余儀なくされた。]


ギィ    : … 思い出すな。


[机上の模擬戦で、陣形を戦わせた、過去の日。
 半瞬の追憶を追い払って、敵軍の動きに視線を注ぐ。

 戦列を斜めにした分、陣は薄くなっている。
 まともに突きかかられれば、中央から破られかねない。
 機を窺いつつ、東袖の門前に空間を確保し、門を開けさせた。]


 さて。無事に家に帰してもらえるかな?


[戦列のすぐ後ろで戦況を睨みながらタイミングを計る。]


ジークムント : ……陣を引け。

 右、そのまま防御。左を突出して、一度押し返せ!
 後衛、50騎ずつ陣を再編。
 紡錘の構えを。


[撤退する兵、常ならば捨て置けば良い。
 けれども今、そこにいるのは敵総大将だった。

  ───ここで、落とせば。]


   『…詰めが、甘かったな』
   『この戦いでは──…』


[ふと過ぎるのは、いつかの幻想]


 狙うは───、中央。
 ギィ・ルヴィエ・ド・コルベールただ一人!!!

  突き崩せ!!!!


[サッと白い軍服の腕が振り下ろされた。]





ギィ    :  ――― …。


[ゆらり、陣の端に圧が掛かって、揺らぐ。
 視線の先で、騎兵達が隊を整える。
 真っ直ぐに獲物を狙う、鏃の形。

 戦慄が、背筋を駆け上がる。]


  ……ああ、そう。

 あの時、大将を落としていれば、お前の勝ちだったのにな。


[過去と今が交錯して。
 高揚が、全身を包む。]


ジークムント :
[突撃は苛烈を極める。
 だがその分、甘くなった防御に対し矢は降り注ぐ。
 既に開かれた門。
 僅かな空隙は──どちらにとっての幸いなるか。]


ギィ    :  …、右翼、下がれ!

 外側に、圧を逃がせ!


[斜線を、逆へと傾け、騎兵の切っ先を滑らせるように受ける。
 だが、突撃の勢いはすさまじく、陣は、見る間に削られていった。
 迫る騎兵に、自らも剣を抜いて応戦する。
 一騎、二騎。斬り掛かる兵を馬から落とし、同時に後退を始める。]


ジークムント :
[騎士たちが、一本の鋭い矢となって解き放たれる。
 狙い定めるは──、赤毛の青年ただ一人。]


  ……、…ッ…


[痛みに眉を顰めて、再び馬上の人となる。
 その視線の先、帝国の陣を食い破らんと力の奔流が襲い掛かっていた。]


ギィ    :  騎兵が抜けたら、撤退する!

  急げ!

[怒濤のように騎馬が駆け抜けたその一瞬を狙って、陣全体が、撤退すべく門へ向かう。
 輿を降りて、最後尾で兵を急がせながら、視線を白衣の将へ向け、笑った。]




ジークムント :  
[突撃は重く、後戻りが効かない。
 その分効果的でもあり、また柔軟性にも欠けるのだ。
 さすがに彼の周囲には、精強な兵が揃えられていたのだろうか。
 突撃の勢いは薙ぎ払われ、受け流される。
 兵を減らしながらも、敵の本陣は健在な様子が見て取れる。
 陣を食い破られながらも統制を失わない兵の動きは、賞賛にも値した。]


 ……、さすが。といったところか。


[そのような場合ではないと知っているのに、懐かしさが過ぎるのは何故なのか。
 変わらぬ鮮やかな用兵に、感嘆の声が混じる。


  あれは、かつて戦術論を戦わせた、赤毛の友。
  あれは、年若き友を無残に傷つけ殺した男。
  あれは、冷徹なる──帝国の将。


 突撃の後、その一瞬の間に見事に兵が門の中へと引いていく。
 それには片手を挙げて合図をし、呼吸を合わせて退くしかなかった。]


  ───…ギィ。
   お前は、この手で──…


[笑みに向かって、きつく睨みを返す。
 間に合わぬと知って、拳を握った。

 ──今、ここから駆けても間に合うまい。]




ギィ    :  
[示し合わせたように、敵兵が退いていく。
 気持ちいいほどに、整った兵の動き。
 やはり、こうでなくてはな、と満足の息を零し、最後の一団と共に、
 滑り込むように、門へ入る。]


 ……やはり、見事だな。
 並の指揮官なら、無理に押し込んでむやみと流血を増やすだけだろう。


[閉ざした門にもたれ、称賛の言葉を呟く執政官に、傍らの兵が、不審の目を一瞬向けた。]


 ……最大の理解者は、敵の中にある、というだろう?


[薄く笑って、そのまま門の守備を命じる。
 身を起こそうとして、身体が揺らぎ、ずる、と地面へくずおれる。]


  ……ああ、問題ない。心配するな。


[慌てて駆け寄る兵たちを抑え、長く深く息を吐いて、身体を整える。
 その間にも、不思議と笑みが止まらなかった。

  最後に見た敵将の鋭い目。
  そう。―― それを、見たかったのだ。]


ジークムント :  ───ギィ…。


[遠い日。
 あの時は、負けて悔しがっても、最後には互いに笑ったものだ。

   今はどうであろう。
   互いの表情は、鈍色の石壁に遮られ、目にすることは叶わずに。]




 こっそり灰でエールをおくる二人




ジークムント : ギィ、重傷だな!!!
 その矢仕掛けたの、私だな。すまん。www
 wwwそのうちちゃんと怪我に気付こう。
 いいねいいね、ギィのそれ凄い好きだ。
 ギィww すきだ。wwwほんとうすきだ。
 ギィたまらん。wwwなんだこの楽しいの。
 過去縁故ありがとうとしか、言わないわ。




ギィ    : それにしても、ジークの、人の設定を拾う能力はすごいと思うのですよ。
 というか、昨日の火災現場で、旧市街の長老をわざわざアンカー付きで拾ってきてくれたのには、泣けた!
 他の人がプロローグで出した設定を覚えているのもさることながら、
 あの長大なプロログから拾ってくるのもすごい!
 ちょっと感動。
 ああ、ここでいろんな陣形とか試してみたいな。
 ジークなら、ちゃんと掛かって相手してくれるから!(おひ)


薔薇の下国からキャラクター画像をお借りしています。
うゆき絵師thx!
最終更新:2019年07月15日 13:15