1 :サニ-レタス :2007/01/03(水) 23:43:53.80 ID:Tcef0TsZ0
妹「お兄ー!ちょっときてー!」
「なんだ。部屋にこもって一人フェスティバルだった俺を
呼び出したからには、相当な理由じゃなきゃ叩くぞ」
妹「ちょっとそこのリモコン取ってくんない」
「……ちょっと歩けば届くだろ」
妹「いや。コタツから出たくない」
「オーケー。もういい、俺は部屋に帰る。リモコンなんて知らん」
妹「取ってよー。夕飯はお兄が好きなものにするからさ」
「バカな。今時小学生でも引っかからないだろ」
妹「では私の目の前に突き出されたリモコンは一体」
「カレーだからな」
妹「はいはい」




12 :サニ-レタス :2007/01/03(水) 23:49:56.74 ID:Tcef0TsZ0
妹「お兄、ちょっと」
「何だよ」
妹「玉葱切ってくんない?」
「何故に玉葱」
妹「だって切ってると目が痛くなるし」
「周りにロウソクでも立ててろ」
妹「薄暗いキッチン。まな板の四方に蝋燭。揺らめく炎。振り下ろされる包丁」
「何かの儀式か」
妹「だからお願いってば」
「あいよ」

「できたぞ」
妹「凄いね」
「玉葱切っただけだろ」
妹「目が」
「見るな」




15 :きょうな :2007/01/04(木) 00:00:17.79 ID:D6pQXmSm0
妹「ご飯できたよー」
「やっぱりカレーだな」
妹「お兄の涙が染み込んだカレーだよ」
「そんなに涙してねえよ」
妹「大会で惜しくも敗退した野球部みたいだったけど」
「マジ?」
妹「マジ。お兄玉葱切るのヘタクソ」
「関係ないだろ」
妹「綺麗に切ると、涙する成分が出ないとかテレビでやってた気がする」
「……嘘吐け」
妹「嘘だったとしても、この玉葱はないよ。
  お兄が沢庵切ったら、全部繋がってるんじゃない」
「お前だって、この人参は何だ。一つ一つが個性的なサイズじゃねえか」
妹「む」
「んだよ」
妹「お兄は今度から自炊しなさい」
「……それは嫌だな」
妹「ふんだ」




17 :きょうな :2007/01/04(木) 00:07:53.19 ID:D6pQXmSm0
「悪かったって」
妹「お兄が何言ってるのか聞こえないなあ」
「明らかに聞こえてるだろ、それ」
妹「見ざる聞かざる言わざる」
「山に帰れってんだ。いいだろう、そっちがその気なら、
こっちにだって考えがある」
妹「………?」
「実は俺の部屋には、今日買ってきたドーナツがある」
妹「……」
「夕飯食ったらお前にもくれてやろうかと思って、少し多めに買ってきた」
妹「!」
「でも聞こえてないんじゃしょうがないなあ。一人で食べるかあ」
妹「っ!」
「ん?」
妹「ど、ドーナツ、ちょうだいよ」
「俺の声は聞こえていないはずなのに。これはもしや怪現象か」
妹「も、もう自炊しろって言わないから」
「本当に?」
妹「言わない言わない」
「じゃあ食うか。お茶頼む」
妹「はーい」




18 :きょうな :2007/01/04(木) 00:13:41.03 ID:D6pQXmSm0
「ドーナツと言えば紅茶じゃないのか」
妹「ティーバック無いし」
「緑茶はお茶っ葉から淹れるのに、紅茶はティーバックなのか」
妹「緑茶美味しいじゃん。緑茶さえあれば十分だって」
「クッキーでも?」
妹「緑茶」
「ケーキでも?」
妹「勿論」
「俺には考えられない世界だ」
妹「ご飯と焼き魚の組み合わせでコーラ持ち出すお兄の方が信じられないって」
「あー、そんなこともあったな」
妹「現在進行中でしょ。もうお兄はコーラ禁止」
「じゃあ俺はピザを食う時何を飲めばいいんだ!」
妹「グリーンティー」
「絶対に嫌だ」




19 :きょうな :2007/01/04(木) 00:18:17.42 ID:D6pQXmSm0
妹「ねえ、お兄」
「んー?」
妹「お風呂沸いてると思う?」
「多分なー」
妹「ちょっと見てきてよ」
「お前が行けよ」
妹「コタツから出たくない」
「俺もコタツから出たくない」
妹「………」
「…………」
「せーの、だ。いいか、いっせーのーせで一緒に
立ち上がろう。それなら公平だろ」
妹「うん」
「「いっせーのーせ!」」
妹「はい、見に行こ……って、何でまだ立ち上がってないのですかお兄様」
「引っかかったな純粋少女め。さあ立ち上がったんだ、行け、行くんだ」
妹「覚えてろっ!」
「何をだ」
妹「ムカつくぅ……っ!」




21 :きょうな :2007/01/04(木) 00:22:32.82 ID:D6pQXmSm0
「おう、どうだった」
妹「……とてもよい湯加減でした。私入ってくるね」
「行ってこい」

妹「上がったよー」
「んじゃ、俺も行くか」
妹「ごゆっくり」

「よーし、身体も流したことだし、レッツ入浴!」
ザブン
「……ひぐっ」

「つ、つめてえーーーっ!!!!」


22 :きょうな :2007/01/04(木) 00:30:21.53 ID:D6pQXmSm0
「いいか、お前」
妹「なあに?」
「アレはな、禁じ手だ。やっちゃダメなんだ」
妹「何のことやら」
「この寒い日にな、アレはいかん。兄ちゃんはな、
ショックで心臓が停止したかと思った」
妹「知りません」
「心停止は洒落にならんからな。自宅の風呂場で発見、
死因は妹の悪戯による模様、とか、新聞に載りたくない」
妹「お兄はそんなヤワじゃないって信じてる」
「信じるとかそういう問題じゃねえよ!」
妹「いやね、妹のお茶目にムキになって」
「一瞬暗転したんだよ!マジで死する五秒前だったんだよ!」
妹「わかった」
「は?」
妹「もうしません。だからお兄も、さっきみたいなのはナシ」
「……了解。次ああいう状況になったら、公平にジャンケンで決める」




24 :きょうな :2007/01/04(木) 00:39:50.48 ID:D6pQXmSm0
「おい、妹」
妹「なに?」
「今は何時だ?」
妹「朝の七時」
「そうだな。朝の七時だ。どう考えても休日に起きる時間じゃない」
妹「健康的でいいじゃん」
「本来なら絶対に起きないはずなんだ」
妹「たまにはそういうこともあるって」
「ない。断言してやろう。ない」
妹「じゃあ何で今起きてるの?」
「目覚ましがな、目覚ましがセットされてたんだ。七時に。鳴ったんだ、七時に」
妹「早起きしなきゃならない理由でもあったの?」
「まだしらばっくれるのかお前は!」
妹「寝てる隙?悪戯?何のことです?」
「やっぱりお前か。どういうつもりだ」
妹「お兄の生活習慣を根本から叩き直してあげようと思って」
「嫌がらせか、嫌がらせなんだな」
妹「違う違う」
「じゃあなんだよ」
妹「買い物に付き合え」
「……そんな理由でお前は俺に早起きを強いたのか」




25 :きょうな :2007/01/04(木) 00:47:42.72 ID:D6pQXmSm0
妹「でも断らずに付き合うあたり、お兄も人が良いね」
「俺は二度寝はできない性質なんだよ」
妹「長い間一緒に暮らしてきたけど、それは初耳」
「教えた覚えもない」
妹「ダメだよ、そういうことはもっと早くに言わなきゃ」
「言う必要が無いだろ」
妹「もっと色々と悪戯ができたかもしれないのに」
「お前にはもう何も教えてやらん」
妹「でも知らないことの方が少ないしー」
「いやなやつを妹に持ったもんだよまったく」
妹「『こんな可愛らしい妹を持って幸せだ?』」
「ほぼ全て改竄されたな。お前の耳はどうなってんだ」
妹「こうなってる」
「……耳垢が溜まってるな」
妹「嘘っ!?」
「そういや耳掃除が嫌いだったなお前」
妹「うっ……」
「帰ったら覚悟しとけよ」




26 :きょうな :2007/01/04(木) 00:55:46.83 ID:D6pQXmSm0
「う、さぶっ」
妹「デパートは暖房がんがん効いてたからね」
「デパートに住みてえ……」
妹「戻りたい、じゃなくて住みたい、なんだ。厚かましいの」
「お前も住みたいと思わね?家の暖房事情とは天と地ほどの差がある」
妹「思わない」
「お、意外と意志の強い女だな」
妹「――いつも人が多いし」
「………」
妹「なんてね。営業時間が終わったら、物凄く寒くなるに決まってるもん」
「……そうか。そうだな」
妹「まーでも、昼間ならいいかな。隅っこの方でも暖かいだろうし」
「それは住んでるとは言わんだろ」
妹「だね」
「…昼、何食う?」
妹「パスタが食べたい」
「おし、こっちだ」




27 :たかな :2007/01/04(木) 01:01:11.44 ID:D6pQXmSm0
妹「信じられない」
「一応聞いてやろう。何がだ」
妹「お兄がこんな洒落たお店を知ってるなんて」
「失礼な奴だなお前は!」
妹「だって前に一緒に外食した時はファミレスだったじゃん」
「お、俺だって日々進化してんだよ」
妹「ふーん」
「……」
妹「……」
「……」
妹「……」
「……」
妹「……で?」
「先輩に前教えてもらった」
妹「だよね」




29 :たかな :2007/01/04(木) 01:13:08.04 ID:D6pQXmSm0
妹「ごちそうさま」
「俺に手を合わせるな」
妹「ごちそうさま」
「わ、割り勘だからな」
妹「ごちそうさま」
「だから、」
妹「ごちそうさま」
「……」
妹「はい、伝票」
「どうしてお前の買い物なのに、お前の財布は一円も減らないんだろうな」
妹「お兄の財布からお金が出てるから」
「ああ、先月を生き抜いた戦友がとんでもない勢いで消費されている……」
妹「お年玉だと思って、ね!」
「お前が言うな」
妹「まだ諭吉レベルの被害じゃないんだしさ!」
「こういう時は親戚が少なくてよかったと思うよ……」
妹「沢山いたらお年玉のせいで家計がかつかつだもんね」
「最近のガキは札じゃないと満足しないらしいからな」
妹「あ、でもほら、私がもらう分とかも足せば問題ないじゃん」
「足すのか、お前」
妹「……フフッ」
「笑って誤魔化すなよ」
妹「もしもの話ですから。その時の私がどうするかなんて、
   この私にはわからないよ」
「普通に誤魔化すなよ」
妹「どうしろっていうの!」
「誤魔化すなよ」
妹「どうせ足しませんよ!自分の買い物に消費しますよ!
  利己的な女ですよ!嫌な妹だと蔑めば!?」
「キレるなよ……」
妹「そうだね。奢ってもらったエネルギーの無駄遣いはよくないよね」

(結局払いは俺なのか……)

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最終更新:2007年01月10日 20:53