87 :レタス :2007/01/04(木) 21:55:02.63 ID:D6pQXmSm0
「妹ちゃん、ちょっと」
嫌なことを思い出してぼーっとしていたところを先生に呼ばれて我に返る。
先生の隣には、私より少し大きいくらいの背丈をした男の子がいた。
「この子も、今学期からお仲間。仲良くしてあげてね」
「……」
どこか怯えたような目で私を見ている。私もきっと、似たような目をしている。
「…よろしく」
それだけ言って、私はやりかけだった問題集に視線を戻す。
「うん…」
小さな声が、私の耳に届いた。




88 :サニ-レタス :2007/01/04(木) 22:06:53.79 ID:D6pQXmSm0
昔のことを思い返すのは好きじゃない。
考えなくてもいいことまで考えてしまうし、
嫌な記憶に振り回されて気分が落ちてしまう。
結局あの時私は、台本を部長に投げ付けるでもなく、次々に「おねがい」と
言ってくる部員達を突っ撥ねるでもなく、承諾してしまった。
押しに弱い自分が憎い。
逃げてしまえばよかったのに、逃げることもしないで、練習にも励んで。
学生らしいな、なんて考えて自分を誤魔化した。
その先にあるに違いない末路から、目を逸らした。

「あの」
そう言えば名乗ってないことを思い出して、向かいで
じっと教科書を睨んでいる男の子に声をかけた。
びく、と大きく肩が震わせて、私の方を見た…のだと思う。
男の子の前髪は長く、目を殆ど覆い隠しているから、正面から向き合うと、
目を開いているのかもわからない。
さっきは位置の関係で見えたけれど、ほぼ同じ目線だから、
本当に見られているのかも怪しかった。




90 :サニ-レタス :2007/01/04(木) 22:25:28.15 ID:D6pQXmSm0
「私、一年の、妹って言います。あらためて、よろしく」
言い終わった途端に顔を下げてしまう。
まるで言いたいことだけ言った、みたいで、
傍から見れば無愛想極まりないに違いない。
どれだけ待っても返事はなくて、本当に私みたいだな、と思った。
再び問題集にペンを走らせる。向き合うのが人じゃないから、勉強は楽だ。
「…男」
突然の声に驚いて、シャーペンの芯が折れた。
視線を上げると、男さんは私から少しずれたところを見ていた。
「君と同じ、一年。…よろしく」
私と同じように、言うだけ言って顔を下げた。




91 :サニ-レタス :2007/01/04(木) 22:38:25.19 ID:D6pQXmSm0
それから会話という会話もなく、ただ時間だけが過ぎ去っていた。
高校という場所においては、それが私の日常だから問題はない。
保健室仲間が増えたからと言って、変わるものじゃない。

一度引き出された記憶は、関連した記憶を否応なしに思い出させる。
思い出したくないその先を思い出してしまう。
我武者羅に勉強しても消えないビジョン。大衆の目の前で傾いていく自分。




92 :サニ-レタス :2007/01/04(木) 22:46:54.89 ID:D6pQXmSm0
――嫌な筈の練習は、いつのまにか私にとって楽しい時間になっていた。
誰かと話すこともなく黙り続けている、クラスでの自分を忘れられるから
だったのかもしれない。
ぎこちなかった私の演技は見違えるほど上達したし、何より部員との間に、
友達関係とも言えるものができた。
これからきっと立て直せる。
これからきっと、上手くやっていける。
私の中ではそんな考えが生まれていた。
そんな筈ないのに、信じていた。




93 :サニ-レタス :2007/01/04(木) 22:55:29.35 ID:D6pQXmSm0
本番は間もなくやってきた。
文化祭の二日目。一般公開もしているため、今日の演技は
生徒以外にも見られるらしい。
私は自信に満ち溢れていた。
大勢の前でも立派に演じきってみせる。
…楽しみだと言ってくれた、お兄のためにも。
わざわざ休みを取ってきた、と、とても楽しそうに言っていた。

――続いて、演劇部。演目は――
アナウンスが流れる。
緩んでいた顔を引き締めて、ステージの中心へ。
下りている幕の向こう側には、きっと沢山の人がいる。
速まる動悸を少しでも抑えようと深呼吸を何回かして。
そして、幕が上がる。




94 :サラダ菜 :2007/01/04(木) 23:05:58.01 ID:D6pQXmSm0
人、他人、ひと、ヒト。
講堂には見渡す限り人で埋め尽くされていた。
治まった筈の胸の高鳴りは、さっきの軽い緊張時に
感じていたそれの比じゃなかった。
顔面に血液が集まるのがなんとなくわかる。
喉が急激に渇く割には、唾液が異様に分泌される。
軽い眩暈。
大丈夫、大丈夫。演技を始めれば、きっと緊張もなくなる。
さあ口を開いて、一言目を、最初の台詞を。
何度も何度も練習を続けて、もう目を閉じても浮かんでくる、始めの一言を。
あれ、でも、
何を言えば、いいんだっけ。




95 :サラダ菜 :2007/01/04(木) 23:16:40.12 ID:D6pQXmSm0
何もかもが消え失せていた。
台詞も、動きも、物語の流れも。
全てが吹き飛んで、頭の中が真っ白で、何もわからなくなった。
心臓が破裂しそうなほどに暴れ狂う。見ないで。
何秒経ったのか何分経ったのか何時間経ったのか、
ただ無音だけが支配する。見ないで。
始まらない芝居に、ざわめきが混じる。私を見ないで。
講堂にいる人間の目という目が全て私を見ている。お願いだから。
息が詰まる。お願いだから私を見ないで。
喪失は自信を巻き込んで、何もかもを崩壊させる。
耐えられない。どれだけ思い出そうとしても、台詞が思い出せない。
早く始めろよという野次が聞こえた。
「――、――――、」
私は何かを言ったような気がする。
でも自分が何を言ったのかなんて、意識を失った私にはわからなかった。




96 :サラダ菜 :2007/01/04(木) 23:31:17.50 ID:D6pQXmSm0
目が覚めると、お兄がこちらを見ていた。
聞くと、私は何か台詞を言いかけたところで倒れたらしい。
主役が倒れてしまっては劇を続行することもできず、結局中止。
午後に予定されていた吹奏楽部の演奏が急遽繰り上げでやっているそうだ。
――あがって気絶するだなんて、聞いたことねえよ。
お兄はそう言って、笑った。




98 :サラダ菜 :2007/01/04(木) 23:47:24.86 ID:D6pQXmSm0
劇が終わったらお兄と一緒に見て回ろうと思っていたけど、
そんなことは言えなかった。
劇は中止になったし、何より今は人前に出たくない。
――もう少し休んでる。
それだけ言って、また目を閉じた。
お兄は、そうか、と答え私の額の辺りを撫でる。
動く気配はなかった。




99 :たかな :2007/01/05(金) 00:07:05.68 ID:KgZMYP530
放課後、部員の皆に謝りに行った。逃げたかったけど、
お兄がいたからそうもいかなかった。
幸い、部室には全員揃っていた。頭を下げて、思いつく限りの謝罪の言葉を言う。
部長は私の肩を叩いて、顔上げてよ、と言ってくれた。
――無理に誘ったのはうちらなんだしさ、悪いのは君だけじゃないって。
嬉しかった。折角の劇を無駄にした私を罵倒するでもなく、逆に慰めてくれるなんて。
――もう二度と誘わないよ。
え?
――君はこの部に向いてないみたいだし。
でも、裏方とか、あるじゃないですか。
――そういうのは足りてるから。君は今まで通りでいいよ。
今まで通りというのは、きっと幽霊部員だった頃のこと。
明らかな拒絶だった。
上手くやっていけるなんて思っていた自分はもういない。




100 :たかな :2007/01/05(金) 00:08:00.97 ID:KgZMYP530

翌日、学校を休んだ。




102 :たかな :2007/01/05(金) 00:16:01.21 ID:KgZMYP530
振替休日が明ける頃には、学校へ行く気なんてもうこれっぽっちもなかった。
けど惰性で学校へ向かう。
行き交う人々が、全て私を嘲笑っている錯覚。
早く教室に入りたかった。あそこは私に無関心だから。
教室に入ると、何人かがちらりとこっちを見ただけで、直ぐに談笑に戻る。
あんなことがあった後でも、やっぱりクラスは私に関心を
向けていないようで、とても安心した。




103 :たかな :2007/01/05(金) 00:23:07.99 ID:KgZMYP530
――それじゃあ、この問題を……妹、やってくれ。
数学はいちいち前に出て問題を解かなければいけないから嫌だった。
私としては、声を出して答えるのも嫌だけど。
席を立とうとしたところで、不意に声があがった。
――センセー、妹チャンニヤラセチャダメデスヨー!
――ソウソウ!気絶シチャウヨ!
アハハハハハ、と皆が笑っている。
何を言ってるんだろう、このひとたちは。




105 :たかな :2007/01/05(金) 00:32:41.55 ID:KgZMYP530
そんなわけないと否定しようとして、でも何も言えない。
汗が滲む。チョークを持つ手が、妙に震えていた。
書き終えると、笑い声に混じって拍手も聞こえてきた。
――ヨクデキタネ!偉イ!
――ヨカッタナ保健委員、仕事ガデキナクテ!
前を見ないで、俯いたまま早歩きで席に戻る。
途中、何かに躓いて転んでしまった。それは人の足。引っ掛けられたらしい。
笑い声は大きくなった。
静かにしろ!と先生が注意をする。
私が席に戻る頃にはもう爆笑はなかったけど、
押し殺した笑い声があちこちであがっていた。




107 :たかな :2007/01/05(金) 00:36:42.69 ID:KgZMYP530
次の授業でも笑われた。
その次の授業でも笑われた。
その次の授業でも笑われた。
更に笑われる前に、私は逃げた。




108 :たかな :2007/01/05(金) 00:51:32.47 ID:KgZMYP530
翌日から私は学校に行かなくなった。
今日も休むのか?というお兄の問いかけに今日も頷く。
今日もお兄の顔は悲しそう。
その顔を見ると胸が痛む。けど、学校には行きたくない。
笑われるのが怖い。






148 :セルリー :2007/01/05(金) 16:36:26.66 ID:KgZMYP530
ある日お見舞いと称して担任が家に来た。
溜まっていたらしいプリント類を手渡される。
どうして学校に来ないのか、と尋ねられた。
心当たりはあるでしょう、とだけ答えて、後は何も言わない。
皆心配してるから、とか、あまり休むと単位が危ないぞ、
とか、どこかで聞いたことがあるような言葉ばかりかけられる。
クラスの誰かが心配しているはずがない。成績なんてもうどうでもいい。
一人になりたかった。
何も考えずに、自分の殻に篭っていたかった。




152 :セルリー :2007/01/05(金) 16:46:02.96 ID:KgZMYP530
何も考えずに適当に相槌を打つ。
早く帰ってほしかった。貴方の言葉は全て無駄ですから
早く帰ってくださいと言ってしまいたかった。
中身のない会話がその後十分程度続いた頃には、
担任もうんざりした様子を見せる。
やがて担任の方から、早く元気になって学校来てくれよ、
と締め括られた。
ええ、だったか。はい、だったか。
憶えてないけど、多分肯定の返事をしたと思う。
担任が帰ってから、手元にあるプリントを一枚一枚チェックした。
文化祭の感想を書くものがあったので破っておいた。




153 :VIP皇帝 :2007/01/05(金) 16:55:16.22 ID:KgZMYP530
――そういえば。
本日新しくできたお仲間は、どういう経緯で保健室登校をするようになったのか。
普通は家に引き篭もってしまうものだろう。私もそうだったし。
考えられるのは私と同じく、引き篭もりから少しは立ち直って、
そうするようになったというケース。
けど、あの何もかもに怯えている目をした人間に、そんなことを
決断するだけの意思なんてあるのか。
あの目をしていた頃の私にそんな意思はなかった。何か切欠があったのか。
私にとってのお兄のように、何か。
……やめよう、後ろ暗い。
やっぱりあの頃のことを思い返すのは、よくない。
考えなくてもいいことまで考えてしまう。




154 :アスパラガス :2007/01/05(金) 17:01:52.79 ID:KgZMYP530
仲間が増えたという事実以外は何も変わりなく、今日も一日の終わりを
告げるチャイムが流れる。
先生に挨拶をして、そっと保健室を後にする。
「さよなら」
後ろから声。振り向くと、男さんがこっちを見ていた。多分。
「あ、はい…また明日」
曖昧に挨拶をして今度こそ保健室を出た。




155 :アスパラガス :2007/01/05(金) 17:09:58.42 ID:KgZMYP530
翌日は復習テスト。
ここで勉強するようになってから、試験は一人でやっていたので
カンニングがどうこう、というのはなかったけど、今回からは違う。
昨日は向かいに座っていた男さんだけど、今日は少し離れた隣にいる。
他人と同じ空間にいるというのは、必要以上に緊張する。
今まではリラックスしてやれていたテストも、そのせいかやたらと難しく思えた。




156 :VIP皇帝 :2007/01/05(金) 17:21:11.53 ID:KgZMYP530
別に成績が悪くなって困るものでもないけど。
誰かと点数を見せ合うこともないし、まして競っている相手がいるのでもないし。
張り出されるテストの順位を見たことなんて一度もないのだし。
あまりに酷い点数を取ったら、流石にお兄に馬鹿にされるかもしれないけど、
今までそんなことはなかったし、これからもないだろう。




158 :アスパラガス :2007/01/05(金) 17:52:36.52 ID:KgZMYP530
「点数自信ある?」
二教科ほど終えたところで、何気なく聞いた。
自分でも驚くくらい自然に言葉が出てきたので、
言った私が呆けてしまいそうになる。
まあ驚いているのは向こうも同じなんだけど。
「え、うん、そこそこは」
聞き取りづらいぼそっとした声が返ってくる。
何処か戸惑っているような声色。
間違いなく私の態度に困っているんだろう。
無愛想なのか馴れ馴れしいのか解りにくい。
どういう距離を置いて接したらいいのか解らない。
それは、私もそうなのかもしれなかった。

280 :VIP皇帝 :2007/01/06(土) 17:57:34.54 ID:++4strIN0
人付き合いっていうのは段階があるんだから、
最初からこんな馴れ馴れしくしたらダメだろう。
かと言ってどうすればいいのかなんて、私が知っている筈もない。
そもそも無理に仲良くする必要なんてないのでは?
でもそれじゃあいつまで経っても前には進めない。
考えはまとまらず、私は溜息を吐く。
今頃になって他人とのコミュニケーションで悩むなんて、
私は相当成長が遅れているとしか思えない。
もう一度、溜息を吐いた。




284 :ブロッコリー :2007/01/06(土) 18:07:45.59 ID:++4strIN0
「ただいま」
妹「お帰り。夕飯、もう少し待っててね」
「別にいいけど、珍しいな」
妹「ちょっと寝ちゃってて」
「疲れてたんなら、俺に作らせればいいだろ」
妹「お兄は私なんかよりよっぽど疲れてるでしょ」
「……」
妹「なに、その信じられないものを見るような目」
「初めてそんなことを言われた。間違いなく明日は
世界が核の炎に包まれるな」
妹「…お兄」
「あん?」
妹「玉葱切って」




288 :ブロッコリー :2007/01/06(土) 18:18:24.77 ID:++4strIN0
「いや、すまなかった。マジで」
妹「泣いてもダメですー」
「これは玉葱だ」
妹「知ってる」
「…だから悪かったって」
妹「労わりの言葉を素直に受け止められないお兄なんて許してあげません」
「とても怒ってらっしゃる」
妹「当然です」
「……あー、そのだな。……ちょっとした、照れ隠しだったんだ……」
妹「照れ隠し?」
「とても嬉しくて」
妹「…本当に?」
「本当だとも」
妹「神に誓って?」
「誓っていい」
妹「神、信じてる?」
「まさか」
妹「……」
「ま、待て、今のはなしだ!やり直しさせろ!」




289 :ブロッコリー :2007/01/06(土) 18:27:46.17 ID:++4strIN0
妹「私にもね、人の心はあるんです」
「はい…」
妹「心がありますからね、傷付いたりもします」
「はい…」
妹「まさに今がその時です」
「申し訳ない…」
妹「だからさ、口で謝るばっかじゃなくてさ、行動で示してよ」
「行動、行動か」
妹「そう。例えばドーナツ買ってきてくれるとか」
ギュ
「…ありがとう。嬉しかった」
妹「……」
妹(これは予想外)




291 :ブロッコリー :2007/01/06(土) 18:35:31.60 ID:++4strIN0
妹「こ、行動で示せと言いましたけどね」
「……」
妹「わ、私の怒りが抱きしめて鎮まるわけないでしょう」
「……」
妹「ま、まあでもさっきの抱擁に心が篭っていたというなら」
「なあ」
妹「特別に許してあげなくも…なに?」
「腹が減ったから早く飯くれ」
妹「……」
「どうした」
妹「え?さっきの衝撃的な行為は?殊勝な態度は?」
「飯が欲しかったから」
妹「お兄」
「どうした」
妹「カップ麺でも食ってろ」




307 :ブロッコリー :2007/01/06(土) 18:46:18.77 ID:++4strIN0
「はは、カップ麺うめえ……」
妹「じゃあ一生カップ麺で暮らしなさい」
「それはちょっと。あと人の目の前で美味しそうに飯食うの止めろ」
妹「美味しい物を美味しそうに食べちゃいけない?」
「や、悪くはないけど」
妹「食べたい?」
「とても!」
妹「じゃあ一口だけ、はいあーん」
「あーん」
ヒョイッ
妹「なーんちゃって、うっそー」
「……」
妹「お兄、必死すぎ」
「ちょっと玉葱微塵切りしてくる」




308 :ブロッコリー :2007/01/06(土) 18:54:43.07 ID:++4strIN0
妹「何%マジ泣き?」
「50%くらいか」
妹「情けないの」
「だってお前……お前……」
妹「やめてよ、まるで私が悪人みたいじゃんか」
「さっきの行為が悪くないとでも!?」
妹「単なる仕返しですよーだ」
「……こ、こいつ」
妹「ふふーんだ。その辺に蹲って反省でもしてなさい」
「…そうする」
妹「本当にするんだ」
「とりあえず食事してるお前を見たくない」




309 :レタス :2007/01/06(土) 19:01:17.88 ID:++4strIN0
妹「お兄ー」
「なんだ…」
妹「反省した?」
「理不尽な気がしないでもないがした」
妹「もうしない?」
「何をしないよう心がければいいのかはわからんがしない」
妹「……本当にわかってんの?」
「よくわからんがわかってる」
妹「不安な答えだからちょっとだけしか許してあげない」
「ケチだなお前…」
妹「半分残したから食べていいよ」
「俺犬?残飯食らう犬?」
妹「いらないならいいけど」
「いるいる、超いる。俺超犬」




313 :レタス :2007/01/06(土) 19:20:44.29 ID:++4strIN0
「やー、美味しかった。とても」
妹「当たり前でしょ」
「…妙に嬉しそうだな」
妹「嬉しいっていうか、なんかスッキリした気がするだけ」
「え、酷くない?犬な俺を見てスッキリって酷くない?」
妹「違うよ。今日ちょっと悩んで、妙にもやもやしちゃってたの。
  でもお兄とこうやって話してたら、悩んでた自分が馬鹿らしくなったの」
「馬鹿をやって気分を晴らしたわけだな」
妹「そんなとこかな」
「よかったな」
妹「うん、まあね」
妹「…ねえ、お兄――」




1.兄に未だ保健室登校を続けていることを言う
2.言わない

下5レスくらいで多数決




314 :サラダ菜 :2007/01/06(土) 19:21:40.08 ID:aqSqNsaH0


315 :もも :2007/01/06(土) 19:22:18.98 ID:eu3Ot0k20
2


316 :鯱 :2007/01/06(土) 19:22:22.08 ID:D1XsO7dV0
1


317 :ジョナゴールド :2007/01/06(土) 19:22:49.41 ID:LSCNIPhp0
2


318 :なめこ :2007/01/06(土) 19:22:59.75 ID:wea9/SnXO
1


321 :レタス :2007/01/06(土) 19:29:43.70 ID:++4strIN0
「ん?」
妹「――ううん、なんでもない」
「わけのわからん奴だな」
妹「それより、お風呂見てきてよ」
「こういうときは公平にジャンケンだって決めたろ」
妹「明日は私がやっとくから」
「明日になってやっぱなしとか言うなよ」
妹「言わない言わない」
「信じるからなー」

妹「……また、嘘吐いちゃった」
妹(結局、ちっとも前進してない)






326 :レタス :2007/01/06(土) 19:44:05.27 ID:++4strIN0
妹(昨日は言えなかった。いつ言えばいいんだろう。いつかは
  解っちゃうことなんだから、やっぱり、言わないとダメだよね)
妹(言ったらお兄はどんな反応するんだろ。怒る?
  哀しむ?それとも――)
ガラッ
妹「……?」
「ああ、どうも。君が妹さんか」
妹「え、あの…」
「私は女、という。そこに座ってる男君の…友人、だな」
妹「はあ…」
女「今日から私もここにお世話になることにしたから、よろしく頼む」
妹「は、はい」

妹(何、この妙に押しの強い人…)




370 :パセリ :2007/01/06(土) 22:18:21.90 ID:++4strIN0
妹(女さんが相手だと、男さんも普通に喋ってる。
  友人っていうのは本当なんだ)
妹(ちょっと、羨ましい)
女「なあ妹さん」
妹「は、はい、なんでしょう」
女「ここは君が一番先輩だろう?色々決まりとかあるようなら
  教えてほしい」
妹「特にそういうのはないですけど…」
女「ないのか?」
妹「ある意味、自習室みたいなものですから。たまに先生が来て、
  授業をしてくれるくらいです」
男「…そうだったの」
女「む、君は教えてもらったんじゃないのか?」
男「教えてもらったとは思うけど、聞いてなかった」
妹(い、意外とマイペースな人?)




385 :パセリ :2007/01/06(土) 22:42:07.34 ID:++4strIN0
女「ふうん…。それで、考査を受ければ単位をもらえるのか」
妹「はい。少し成績は下がりますけど」
女「…それは厳しいな」
妹「まあ、基本自力で勉強しなきゃならないですからね」
女「いや、私ではなくて男がな」
男「言うなよ、そういうことは」
妹「えと、成績、危ないんですか?」
男「それちょっと…言えない」
女「やばいぞ、こいつの成績は。多分下から数えた方が早い」
男「だから言うなってば」
妹「よければ、教えますけど…」
女「それは妹さんに悪い」
妹「私は構いませんけど」
女「こいつに勉強を教えようとしたら、自分が勉強する時間がなくなってしまう」
妹「…そんなに酷いんですか」
男「本人の目の前でそこまで吊るし上げなくてもいいのに…」




388 :チンゲンサイ :2007/01/06(土) 23:02:48.60 ID:++4strIN0
女「だからまあ、こいつの勉強は私が見ている」
妹「女さんの勉強は、いいんですか?」
女「なあに、これでもこいつとの付き合いは長いからな。
  どう教えればいいかくらいはわかる」
男「…助かってます」
妹「仲、いいんですね」
女「今まで二人、長く一緒にいたからな」
妹「私にはそういう友達いませんから、よくわからないです」
女「なら、これから仲良くなっていこう」
妹「え?」
女「さあ握手」
妹「は、はあ…」
女「ほら男も」
男「それって握手じゃないと思う」
女「うるさいな、いいから手を貸せ。はい、コンゴトモヨロシク」
妹「よ、よろしくおねがいします」
女「ではこれからこの三人、生まれた日は違えど死ぬ日は同じだ」
男「普通に仲良くやりましょうでいいんじゃないかな…」
女「うるさいな」
妹「…あはは」




392 :チンゲンサイ :2007/01/06(土) 23:18:45.23 ID:++4strIN0
女「では妹さん」
妹「は、はい」
女「その一歩引いた敬語をやめるように」
妹「急に言われても…」
女「友人関係とは、精神的なおしくらまんじゅうだと、私は思ってるんだ」
妹「おしくらまんじゅう?」
女「おされたら痛いかもしれないし、泣くかもしれない。
  でもそういうことを乗り越えたら、いつかぽかぽかと温まれるだろう」
妹「面白い喩えですね」
女「私は常にそうあろうと心がけている。だから、友人である君には
  一歩引いてもらいたくない」
男「…本当は敬語が苦手なだけ」
女「折角人がいい話をしてるところにちゃちゃを入れるな!」
妹(押されて痛くなることを怖れちゃ、ダメ、か)
妹「……うん、そういうのも、いいかもしれない」
女「よし。これでいちいち背中が痒い思いをせずに済む」
男「やっぱり自分が嫌だっただけなんじゃないか」
女「うるさいな!」
妹(もっと、こういう人達と早くに出会えてたら…。
  違うか、探そうとする努力を怠ったのは、私の方か…)

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最終更新:2007年01月10日 20:56