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Armored Core - Execution - 1‐1 * Armored Core - Execution - 1‐2 * Armored Core - Execution - 1‐3




 誘導灯が不規則に明滅する薄暗い搬入路を十数秒で突き抜け、内郭部出口へリスタートを滑り込ませる。
「これは──結構な有様だな……」
 進入に成功した内郭都市部の惨状を目にした時、先ほど作戦領域上空より緊急離脱した輸送機から通信要請が発信されてきた。戦術支援AIに口頭指示して、戦時回線を確立させる。
「此方、戦力コード【リスタート】。大丈夫か、カテリーナ──?」
『はい。後部カーゴをパージしましたが、何とか……。現在、友軍増援部隊との合流進路にて待機中です。ヴァロージャ、其方は──?』
「現在、シェルター内部へ進入した所だが──」
『成程、酷いようですね──』
 稼動中のデータリンクシステムによって転送され続けている有視界映像を目にしたのだろう、カテリーナは自身と似たような言葉を口にした後、小さく息をついた。
 搭載センサー群が戦域周辺部の環境情報を収集し、直後、頭上部から崩落してきた瓦礫片がリスタートの足先で粉々に爆ぜる。
 ヴァロージャは視線を巡らし、既に戦場の成れの果てと化した都市部の惨状に、僅かに眉を顰めた。
 密集して林立する超高層建築物群はその各所から黒煙と炎を燻らせ、時折起きる爆発が建築物から瓦礫を派手に吹き飛ばす。シェルター内壁部に敷設配備された環境維持用の大型照明群はその大半が破壊され、奇跡的といっていい割合で残った照明だけが地上の都市群を照らし出している。
 超高層建築物によって照明の遮られた部分は深い闇に包まれ、その先端がリスタートのすぐ傍まで延びて来ていた。
 しかし、夜間戦闘支援システムを起動するほどの光量の心許無さではない──ヴァロージャはそう判断して機能起動を撤回した。
 第一種狭域索敵態勢で稼動中の搭載レーダーが現場領域で、自機以外に唯一動きを見せる動体の反応を捕捉する。カテリーナもデータリンクでそれを確認したらしく、
『未確認動体反応、捕捉しました。位置座標09335-S1252を現在南下中、此方へ接近してきます──』
「此れより戦闘機動を開始、作戦支援室とのデータリンクは第一種戦闘態勢を継続の限り、此れを維持する」
『了解しました──』
 カテリーナの落ち着いた声を聞き届け、ヴァロージャはブースタペダルを軽く踏み込んだ。出力を絞った噴射炎がリスタートの機体を前方幹線道路へ押し出す。
 聳える超高層建築物群が演出する影と光のコントラストが伸びる幹線道路を直進し、メインディスプレイに出力中のレーダーで動体反応を逐次確認。
 前方数十メートル、幹線道路右舷の位置に鋼鉄の塊が黒煙と共に残り火を燻らせているのを、有視界に捉える。それは周囲に遍く散乱している瓦礫などではなく──ヴァロージャはその著しく破損したかつての友軍の亡骸を視界の隅に押さえて、傍を通り過ぎていった。
『動体反応との接触距離まで、想定443㍍。生存者が一人でも居る事を、祈りましょう──』
「ああ──」
 現況では、全て撃破された機体のどれに生存者が居るかどうかも把握できない。
 ──ならば、一刻も早く未確認動体を無力化し、その後の経緯に望みを託すことこそが、最優先とすべき行動規範になる。
 最精鋭の第85強襲分遣隊を、単機で瓦解に追い込んだ異端戦力──どれ程のモノだろうな。
 脳裏でそんな事を考えたとき、レーダー上を此方へ接近してきていた動体反応が不意に移動速度を跳ね上げた。
『動体反応、急速接近してきます──!
 レーダー上で急速接近してくる動体反応の機影は未だ捕捉できない。しかし、突き当たりに聳える高層ビルを挟んだ向こう側の道路に、相対すべき存在が肉薄してきている事を、ヴァロージャは的確に認識していた。
 とるべき進路は、互いに決まっているだろう──。
 幹線道路を突き当たると共に背部ブースタの出力方向を右舷へ変え、高出力の噴射炎が機体の進行方向を弾くように変える。搭載センサー群が高層ビル群を挟んで併走する未確認動体の駆動反応を詳細に捕捉、インナーディスプレイへ絶え間なく転送してくる。
 併走する路上のすぐ後方、高層ビルの側壁が内部から派手に弾けとんだ。白燐の燃焼による光の軌跡を残しながら掃射の暴風が吹き荒び、ガラス片と瓦礫を大量に撒き散らしながら迫ってくる。
 現在前進中の進路を行き当たると、いずれ併走する進路は一つの連絡車道に合流する。
 ──其処が、ひとまずの転換期になる。
 後背を轟音を立てながら迫り来る砲掃射の嵐を従えつつ、ブースタペダルを更に強く踏み込んだ。此れまで以上の機動力を要求されたブースタ機構が最大出力の噴射炎を吐き出し、未確認機影に先行して機体を僅かに突出させる。
 寸分の差で連絡車道に先行し、先制打撃を先方に与える──連絡車道の合流路が前方十数メートルに迫った時、不意の情報を搭載センサーが拾い上げた。
 高推力機構──オーバード・ブースト機構特有の甲高い起動音が、周辺戦域を突き抜けた。
 併せてきたか──
 驚異的な瞬間推力を得た未確認機が瞬く間に接近、機銃掃射の弾幕が後背部に肉薄する。
 ヴァロージャは瞬間的に意思判断し、フットペダルを踏み込んで脚部膝関節機構を屈伸させ、【リスタート】の前進姿勢を半ば強引に引き下げた。リスタートの頭上数センチを掃射弾幕が吹き荒び、有視界に連絡車道への合流路が間近に迫っているのを視認。
 ヴァロージャは機体姿勢を低く維持したまま攻撃態勢を整え、更に突進推力を機体に与えて合流路へ突出した。
 先手を取られる格好になったが、此処まで踏み込んだ状態では機動停止は間に合わない──未確認機は、恐らく其れを接敵の瞬間から見越していたのだ。
「やはりコイツは──」

 ──戦場に、無秩序の惨禍を振り撒くモノ

 合流路への突出と同時に機体を左舷へ急速展開──激しく流動する有視界の中、此方へ飛来してくる物理飛翔体の弾影とその奥の黒い機影を、フレームシステムが瞬間的に捕捉。
 低姿勢を維持していた為に寸分の狂いを見せた多目的対装甲榴弾が、頭頂部装甲を掠めて飛び去り後方のビルに着弾して大きな爆発を引き起こす。
 その轟く爆発音と震動に気を取られる事なく、ヴァロージャは間断なく襲い掛かってきた次の脅威に目を向けていた。前方数メートルに着弾した多目的対装甲榴弾が炸裂、赤々しい爆炎と加害性破片を撒き散らす刹那、ヴァロージャはリスタートの機体姿勢を緊急浮上させた。背部背部兵装のミサイルコンテナを展開、爆炎の切れ目に捕捉した機影に向け小型ミサイル群を連続射出した。
 後方ノズルから噴射炎を吐き出し、多目的対装甲榴弾の着弾によって大きく抉られた路面を裂けて小型ミサイルの群列の背後に追従、前方に広がる黒煙の中を突き抜ける。
 捕捉目標の位置は高層ビル群が作る大きな暗闇に包まれており、未確認機の宿す頭部カメラアイの不気味な眼光と一瞬、視線が交錯──小型ミサイルの群列が捕捉目標を含む有効範囲で次々と炸裂、一際巨大な爆発音が都市内部に反響する。
『動体反応、まだあるわ。気をつけて、ヴァロージャ──!』
 カテリーナが緊張感のある声で伝えてくる。
 彼女の言うとおり、この程度でやられてくれるのならばそもそも第85先遣部隊を相手にした時点で排撃されていても充分におかしくはない。
 インナー・ディスプレイに戦域環境情報が出力され、此方からのミサイル攻撃が命中する直前に瞬間的な妨害伝播が発生していた事を把握。其れが、射出した小型ミサイル群の追尾機能を著しく狂わせたのだ──。
 そして、其れとは別に捕捉目標がまだ生存していると確信できるものが、ヴァロージャには有った。
 ──燃え盛る戦場の全てを包み込み浸透する、永久凍土の様に矛盾した殺意。
 そしてヴァロージャとカテリーナの見解通り、先ほど先制攻撃を行ってきた掃射弾幕が前方に轟く爆炎を切り裂いた。最初の数発を外部装甲で強引に弾いていなし、残りの集中弾幕を機体転回によって明後日の方向へやり過ごす。その回避機動に的確に反応した未確認機が、未だ燻る噴煙の向こうからその姿を突出させた。
 回避機動によって左右に振り乱れた有視界の中、暗闇の中を此方へ突進してくる姿をヴァロージャの肉眼は正確に捕捉し、フレームシステムが其れに追従。
 捕捉目標の左腕に備えた鈍色の銃口が煌き、同時に背部ブースタを最大出力で左舷展開、複数の射出弾体を置き去りにする。捕捉目標の背部搭載型機関砲から同時に吹き荒ぶ弾幕の中を、独楽の様に急速旋回して駆け抜け、互いの機体が肉薄した瞬間──ヴァロージャは【リスタート】の左腕に備えていた重散弾銃の銃口を捕捉目標の頭部へ突きつけた。

 ──ヴァロージャは微動だにしなかった。

 自らの登場機【リスタート】にも同様に、眼前の機体が備える散弾銃の銃口が当てられていた。
 高密度に交錯した戦火の末に訪れた空白──深い闇の深遠から現出した敵性動体と、人工の陽光のもとに相対する。
 その極めて"見知った"敵性動体の機影を正面から直視し、ヴァロージャは表情を変えはしなかったが、眉を僅かに顰めた。
 相対する敵性機体から通信要請が入り、ヴァロージャはHMDの分割画面に映る作戦支援室内のカテリーナと視線を重ねた。
 彼女はオペレーターとして冷淡に勤め、しかし、額に手を当てていた。
 重ねる視線の中で互いの意図を汲み、ヴァロージャは自らの手でマルチコンソールを叩いて通信回線を確立する。
 回線確立後、極めて聞きなれた声が其処から届いた。
『アンタが増援とは、願ってもなかったな──』
「お前が殺したのか、──ウーヴェ……」
 中量二脚機体を基本に構成される敵性動体を見咎める。

 その機体に搭乗している少年──"教え子"の名を、ヴァロージャは平淡に勤めて口にした。

『俺が殺した、か──。確かにそうだが……共喰いなんて今時、珍しいものでもないだろう、どうだ?』
 最初の教え子──ウーヴェは自身が此処で犯した所業を隠す事もなく、此方に伝えてくる。戦況推移だけを見れば、此方からしてもその事実関係に戸惑う余地などありはしないのだが。
 しかし、ウーヴェが共喰いという言葉を口にした時、ヴァロージャはその冷え切った殺意が見え隠れする言葉の裏に何らかの違和感を感じ、問いかけの言葉を返した。
「──なんの話だ」
『あんた達に拾われて十一年──俺も踊らされた一人だと知った時は、まあ、呆れたもんさ……』
 十一年──まだ少年と呼ぶにも小さい年齢だったウーヴェを、彼自身の言う通り拾った頃だ。だが、十一年前に有った何か、彼が踊らされたと口にしたのはその事ではない。
 ヴァロージャは蘇る過去の記憶を、脳裏にのみ押し留める。しかし、その抑え込んでいた疑念をウーヴェは自ら口にした。
『俺達のような"鴉"は、群に靡くもんじゃない。そうでなければ……【ミスティックハウンド】も死なずに済んだだろうよ、──ヴァロージャ』
 その言葉と共にウーヴェの放つ冷え切った殺意が一挙に膨張し、ほぼ同時に突き付け合った得物から砲火を煌かせ、メインブースタを吹かした。
 削り取られた頭部側面装甲の被害状況を戦術支援AIが報告してくるのを聞き流し、ヴァロージャはリスタートの機体を右舷後方へ下がらせる。
「何処で、何を知ったというのだ──」
『俺に問うなよ。アンタもその場に居たんだろう。なら、アンタ自身、よく知っているはずだ……』
 最早これ以上の応答は無用、ヴァロージャはそう判断した。
 教え子のウーヴェが何を知って、このような凶行に及んだのか──それは彼が口にした通り、ヴァロージャ自身がよく分っているからだった。
 ヴァロージャもその発端に、十一年前に関与していたのだから。
 機械化特殊戦力群帰属レイヴン・"ウーヴェ"の駆るAC機体【サージング・レイジ】を無力化、此れを制圧すべく、ヴァロージャはブースタ・ペダルに掛けた足に力を込める。
 後方ノズルから機動戦闘用の噴射炎を吐き出そうとした時、搭載センサー群から出力された戦域環境情報がHMD画面にアップロードされ、ヴァロージャは其の中の一つに着目した。
 位置座標1500534432に、重度の都市火災反応──
 ヴァロージャの意思判断にフレームシステムが反応、【リスタート】のカメラアイ内蔵の視覚センサーを移動させた。高層建築物の間を縫った先に搭載センサーの出力した戦域環境情報の位置座標があり、ヴァロージャは其処を注視する。
 一際大きな黒煙が轟々と吹き上がり、直接肉眼で確認はできないが真上の天蓋部が赤銅色に染まっている事からその位置座標で大規模な火災が発生しているのを把握できる。
 程度の違いは有れど、戦域での火災反応は至極当然のものだが、ヴァロージャはその火災反応が意図するものを瞬時に察し、眉間に皺を寄せた。
 この都市の武力制圧を担当した第一戦力群第8強襲分遣隊はブリーフィングの際に、都市制圧の時点で生存していた非戦闘員は全て所定の地下避難施設へ収容するよう明確な指示を受けていた。
 その地下避難施設のある位置座標が正に今、視覚センサーが向いている位置座標にある──。
【リスタート】のセンサー・アイが示す方角に気付いたのだろう、【サージング・レイジ】の搭乗者である"ウーヴェ"が確立状態の無線を通じて分かりきった補足を述べる。
『──手始めに殺した。そうでないと、奴らの火の付きが悪かったからな。何も言わなくて言い、ヴァロージャ──怨恨ならこの世に溢れている。3000人程度増えた所で、何も変わりはしない。其れに、生き延びた所で待っている末路に絶望するよりは、遥かにマシな最後だったろうさ──』
 そうのたまう"ウーヴェ"の口調は淡々としており、その行為そのものに大した感慨などは無い事を、直接聞く者へ明らかに知らしめる。
 ──そうやって、3000人以上の非戦闘員の命を地下の奥底へ押し潰したというのか
 最早、師と弟子の間の諍いではない。
 相対する一つの敵性個体として認識し、ヴァロージャは相応の年季を経た鋭利な殺意を双眸に湛える。
 それを感じてかどうか、無線の向こう側で少年が言外に笑んだ気がした。
 両者の機体が同時に戦闘機動を開始しようとした時、確立状態にある輸送機との通信回線を通じてカテリーナが、
『──ヴァロージャ、其処から至急離脱してください』
 若干の抑揚を欠いた彼女の声を聞き、其処から現況に只ならぬ妨害因子が介入し始めているのを察する。そしてそれは、すぐにヴァロージャの目に見える形で頭上に現れた。
 頭上の天蓋部が軋みの交じった重厚な動作音を立て、続いて起動した開閉設備が大型シェルターを左右へゆっくりと、しかし確実に押し開いていく。その隙間から天然の陽光が差し込み、致命的な戦火に見舞われていた内郭都市を明るく照らし出していく。
 それに反応した搭載センサー群がシェルター外部の戦域環境情報を収集更新し、HMD画面とインナーディスプレイへ分割して情報を出力。それと同時に、索敵レーダーに多数の動体反応が浮上した。
『クレスト社陸軍は戦域都市の全面破棄を決定したようです。多数の重爆撃部隊が、都市上空の効力範囲へ侵入しています──』
 全戦域に散在する陥落した前線都市をそのまま残す位ならば、重爆撃機を飛ばして敵対勢力の占領軍諸共、跡形もなく吹き飛ばしてしまおうというのだろう。
 サージング・レイジもまた同じ情報を既に把握している様で、後方ノズルから準備推力の噴射炎を噴き出している。
『──俺はアークを抜ける。アンタ達のような鴉を、俺は決して逃さない──全て殺す』
 灼け付くような、しかし同時に限りない冷たさを孕んだ怨嗟の言葉が──"ウーヴェ"という存在が決して、後の無い狂気に走ろうとしているのでない事を、ヴァロージャに否応無く理解させる。
 今、この場に於いてはかつて教え子として導いたレイヴンが、ただの狂気に置かされて暴走しただけであってほしかった。
 ──そうならば、此処を生きて去る事などできはしなかったはずだ。
 レーダー上を接近してくる多数の爆撃部隊の機影を振り仰いで有視界に捉える。
 各重爆撃機の底部ハッチが開放され、其処から無数の弾頭群が降り注ぐ。
 数秒後、幾重にも折り重なる激しい爆発が都市全域を揺るがした。
 容赦ない震動によって多数の瓦礫片が頭上から崩落し、そのうちの幾つかがリスタートの機体を叩く。
 フットペダルを踏み込んで準備推力用の噴射炎を吐き出しつつ、ヴァロージャはぎりぎりまでウーヴェと対峙した。
『──ヴァロージャ。アンタも、いずれ必ず殺す。鴉の巣の、腐り切った暗部を全て焼き尽くしてやる』
 絨毯爆撃の猛威が両者の留まる領域に降り注ぐと同時、ウーヴェは【サージング・レイジ】の機体を反転させ、襲い来る爆撃の嵐の中にその機影を呑み込ませていく。
 ヴァロージャは追跡することも、呼び止める言葉をかけることもせず、かつて教え子であった少年の去っていった軌跡を視界の隅に残し、自らもまた搭乗機体を離脱軌道へと向かわせた。

 40分後、介入領域外回収地点──

『──無事で何よりです、ヴァロージャ──』
「ああ。カテリーナ、助かった……」
 BITCS接続を解除した後、被っていたヘルメットを脱いでマルチコンソールの脇に置き、ヴァロージャは汗ばんだ赤銅色の髪を前から掻き揚げた。
 第一種広域警戒態勢で稼動中の搭載センサー群と索敵レーダーが、前方に臨む事のできる戦域環境情報を逐次収集、コンソールを叩いて幾つかの主要情報をピックアップしながら随時確認する。
 約40分前にクレスト社空軍重爆撃部隊の攻撃を受け、その後増援戦力として到着した友軍航空部隊が戦闘を継続する機械化都市の成れの果てを、ヴァロージャははるか後方の焦土と化した丘陵地帯から、【リスタート】の有視界を解して静かに眺める。
 友軍増援部隊からパージした機体部分の補填を受けた輸送機が牽引用フックを下げ、メインローターのけたたましい回転音を轟かせながら徐々に高度を下げてくる。
 機体の回収作業を展開する輸送機から上空から牽引用フックを下げ、メインローター音を轟かせながら徐々に機体高度を降下させてくる。
 回収作業が行われる傍ら、輸送機は作戦支援室内のカテリーナが、小さく呟く。
『まさか、あの子がね──』
「──カテリーナ。この件、わかっているな?」
『──心得ています。直ちに手配しますので、ヴァロージャ、貴方も早急に本社へ帰還してください──』
 動揺や狼狽と言った感情を彼女は一切見せる事無く、完結した通信技官として作戦支援業務に徹する。
 だが、心の内の在り様は互いを深く知った双方の間では隠しようもない。
 そして、ディスプレイを介して交わるヴァロージャとカテリーナの視線が、その胸中に在るものを如実に物語っていた。
 僅かな震動がコクピットを揺らし、メインディスプレイに牽引用フックの接続完了を知らせるメッセージが届く。
 間もなく輸送機が高度の上昇を開始。
 残るもの全てを焼き尽くす戦火に包まれた機械化都市の顛末を見届ける事なく、ヴァロージャは作戦領域を後にした──。






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