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/ /第二話



 バイザー越しに白銀の世界を見回しつつ、内壁部分へと進む。隔壁を隔てた先ほどの空間と異なり、緩いカーブを描いた環状形の空間構造になっているらしい。内壁部分には人型大程度のシリンダーが密集して納められており、果実の房が成るように多重構造となっていた。
 その内の一つに近づき、外装部にこびりつく氷結を手でこそぎ取る。
 中身が透過できる程度に氷結部分を処理し、少し背を伸ばしてシリンダーの内部を覗き込んだ。
「──人間?」
 一瞬ぎょっとしたが、取り乱すさず内部を見渡す。シリンダー内部には人間のものと思しき痩せ細った死体がちょこんと収まっており、状態から推察するに完全にミイラ化しているという事がとりあえず分かる。
 自身は学者でも何でもないので分からないが、素人目に見ても、数十年やその程度の時間で形成された代物でないという位は推測できる。
 マイは数歩足を下げ、頭上にも広がるシリンダー群を一瞥した。
 これの全てに、人間の死体が収納されているというのか──
「低温生命維持装置──間に合わなかったのか」
 変わらず推測の域を遠くでない。しかし、もしかしすると、何らかの理由によって装置に機能障害が生じたのではないだろうか。その為にここの人々は閉じ込められたまま、その生涯を終えてしまったのだろう。先ほど覗き込んだシリンダーの内郭部には、引っかき傷のような痕跡が無数に残されていた。
 まだ空間の一角しか歩いてはいないが、相当な数の個体が収められているはずだ。
 ──旧世代に、何かあったのか?
 その単純な問いかけに暫くしてから、マイは声を出して軽く笑う。
 当然だろう。何かがあったのだから、旧世代は長い人類史の闇に淘汰されたのだ。
「奥って、あそこか……?」
 〝声〟は、奥へ来いと言っていた。環状型空間の中心内壁に開放された扉を見つけ、マイは足早に入り込む。
 その先にも機能停止、過度の氷結状態にあるシリンダー群が吊り下がっていた。円柱状の空間の天井は、それを肉眼で確認する事が出来ないほどに高い。
 あてどなく歩いて探査し、位置もかなり深まった辺りに来た時不意に、マイは最果てと思われる場所へ到達した。そこには個別の保存施設があり、硬く閉められた扉の前でマイはどうしたものかと佇む。
 扉の脇の制御盤を見咎め、氷結部分を削って画面に触れてはみるものの反応は全くない。そもそも指示された場所か本当に此処なのかどうか疑い始めた、その時だった。
 自動的に制御盤が起動し、硬く閉ざされていた扉ががりがりと音を立てながら開いていく。
「ご親切にどうも……」
 通り抜けた先に見たものは流石に三度目だった為、類似したシリンダー群が配列されていた事にさして驚きはなかった。ただ、空間自体はそれほど広い訳ではなく最奥部と思われる内壁までせいぜい一〇メートルほどしかなかった。
 その奥に一箇所、淡い灰青色の光が明滅するシリンダーが視界に飛び込む。
 周囲を警戒しつつ、これまでより幾らか早く足を進めてその場所へと歩み寄った。
「──システムが、生きているのか?」
 他の画一的な類似物とは異質なシリンダー群を見て、マイは呟く。特別精緻な設計のもとに製造されたと見えるシリンダーは全てで九つ確認できるが、反応を示しているのは目の前に立つ最端部の一基のみであった。
 シリンダーの外殻部は金属素材で構築されており、内部を直接確認する事はできない。しかし、脇に備わった専用の制御盤と思しきコンソールが生きており、マイはそれに指を這わせた。
 羅列表記されている文字に見覚えはなく、それらは恐らく旧世代に使用されていた体系文字なのだろう。しかしながら、タッチパネルに記されたガイドマークから凡そを把握する事は可能だった。それを頼りにマイは制御盤を手探りで操作し、苦心の末にようやく外殻部の開口に成功した。
 零下十数度に及ぶ気温下、起動した外郭機構の隙間から噴気が溢れ、氷結部分を削りながら外殻機構がゆっくりと開放してゆく。
 乳白色の噴気が溢れる中、マイはシリンダー内部を慎重に覗き込んだ。
「これは──。何でこんな所に、生きた人間が……」
 々に晴れ行く白霧の残り香の下に人──少女〟と思しき者の姿を見咎めた。
 異様な光景を目の前にし、乾いた咽喉で息を僅かに嚥下する。
 類の知れない恐怖ゆえではなく、少女が明らかな敵愾者であったからでもない。
 目の前に横たえられた少女が発する、一種の異質性に意識を絡めとられたのだ。
 人間の体躯としてはかなり幼く、その事から少女が自分より一回りかそこらほどに歳が離れているであろう事が分かる。軽くウェーブがかった淡青色の長髪は柔らかな煌きをみせ、それはマイにとって異世界のものの如き輝きであった。
 そして、少女の纏う純白の衣服も見慣れぬものだった。その衣服は纏う者の自由を簒奪する目的と思しき革帯が備えられている。
しかし、少女の幼い身体はそれによって自由を阻害されている訳でなく、少女は胸の上で手を組み、ただ、深い眠りの中にあるようだった。
 異世界──遥か遠い何処かから旅してきたその存在を前に、マイは静かに呟く。
「過去からの来客か……」 そう呟いた時、

『──早くこっちへ!』

 全くの不意にかけられたその声に反応、素早く身体を後背へ向けなおし、カービン銃の銃口を突きつけた。
 しかしそこでマイは、眼前に〝再現〟されていた光景に眉を顰める。
 白衣を着た長身の男と、彼に手を握られた小柄な少女がこちらへ向けて走り寄ってくる。持ち上げた銃身をそのままに立ち止まっていると、男と少女はまっすぐにこちらへ走ってきてそのままマイの身体を擦り抜けていった。
 ──記録映像か。
 一歩下がって反転し、自分に代わってシリンダーの前に立つ二人の人間の映像を視界に納める。
 二人は何か言葉を交し、やがて男性が小さな身体の女の子をシリンダー内へ押し込む。現実世界で横たわる少女と重なり、記録映像の中の少女が叫ぶ。
『今はお休み、〝00〟……』
「待て、待ってよ──何も分からないままなんて、私は嫌だ!」
 少女が涙交じりに上げる慟哭を前に、白衣の男はそっと少女の額に口付けると、タッチパネルを操作してシリンダーの外殻機構を閉鎖し始める。外殻が完全に密封される直前、男性は淡い笑みを浮かべて小さく少女に囁いた。
『君が次に目覚めた時は、やさしい世界でありますように──』
 それを最後に記録映像は掻き消えるようにしてノイズに紛れ、ふっと冷気の中へと紛れ込んでいった。

 ──何だったんだ?

『やっと、ここまで来てくれたんだね──』
 再度、またもや意識していなかった背後からどこかで聞いたような声が届き、マイは胸中で舌を打ちつつカービン銃の銃口を跳ね上げて振り返る。
「お前は──!」
 マイが銃口を向けた室内の中ほどに、これまで流れていた記録映像の人間と同一の男性が佇んでいた。その姿は半分透過状態にあり、背後の風景が透けて見える。
 その光景を眼にしてマイは若干眼を細め、しかし不必要に焦る事もなく冷徹に銃口を突きつける。
 恐らく意味はないと理解していながら、しかし、最低限の抵抗をすら放棄したつもりはないと知らしめる為に。
『ここまで来たのなら、自己紹介は必要ないかもしれないけれど。僕は、【CUCO】──』
「この施設の──管轄人工知能か」
『ご明察……いや、当然というべきかな──』
「その姿は、擬似映像体か」
『一応、この施設に縁のあった人間のものだ。それで不服はないだろう──?』
 そうのたまう擬似映像体の男は、腰に手を当ててみせる。長身の身体に白衣を纏い、耳辺りまで伸びた髪は深く、しかし艶やかな墨色を宿している。
「──お前が、助けたのか?」
『その解釈で問題はないね──』
 先ほど通信回線に介入してきた合成音声との関連性を問いかけるつもりは、今のマイにはさらさらなかった。眼前の男──この旧世代軍事施設を統括する管轄人工知能、つまり中枢設備に基幹サーバを持つ擬似生命体が、その正体であった事は最早疑うべくもない。
「何故、俺をここに呼んだ」
 気後れする事無く、単刀直入に問うた。その行為に恐れがなかったといえば、若干の嘘を孕む。しかし、一度は確実に死んだであろう命なのであれば、今更自身の行動を遠慮する理由はどこにもなかった。
 先ほど蒼竜騎に向けて圧倒的物量の防衛兵器を送り込んだのもこの管轄人工知能で、直後にそれらを引き下がらせ、ここまで誘導したのもコイツだという事は容易に想像がつく。
 そこで残る疑問は管轄人工知能の実態などではなく、何故ここへ連れてこられたのか、その一点だった。
『中々聡明なんだな、君は──。僕も時間が残されていない、簡潔に伝えよう』
 そこまで言って管轄人工知能という電子上の擬似生命を可視化した擬似映像体は軽く眼を伏せる。そしてそれから、
『その子を、連れていってくれ──』
 余計なものを排した、要諦のみの言葉。しかし擬似映像体の男が作る鋭い眼差しから察する限り、それは要請や要求などといった生温い意図は一切汲み取れない。
 ──命令、或いは脅迫とも取れる言外の凄みを帯びた言葉だった。
 だからマイは極力刺激しないよう、冷静に勤めていくつか気になる事柄を訊き返す。
「何故この子を──?」
『──要求事案に対する該当権限を付与されていない』
「何故俺なんだ──?」
『──要求事案に対する該当権限を付与されていない』
「何故この子が生き残った──?」
『──要求事案に対する該当権限を付与されていない』
 一拍置き、
「……要求を断った際、施設外離脱までの俺の生命維持確度は?」
『強制執行措置に基づき、当該施設階層を離脱する前に排除する──』
「──この子は、何なんだ?」
 管轄人工知能の擬似映像体が静かに身を翻し、長い白衣の裾が控えめに揺れる。その動作は人間を模しただけの擬似生命体のそれとするには聊か人間的で、弱々しく頼りのないもののように、マイには写っていた。
『──私達の、希望』
 ──【CUCO】の名を持つ彼が小さく告げる。それ以降あちらから何か行動を起こす様子はなく、その男は緩やかなシルエットを保つ。
 直後、マイは先ほど管轄人工知能が、自身に時間があまりないという旨の発言をしていたことを思い出した。その真意に関してマイは敢えて問わない。
 問う必要がなかったからだ。
 マイを始めとしてこの施設の制圧に臨んだ第二陣主戦力の目的は、自身の目の前に立つこの男だからだった。中枢設備の物理的破壊による施設全域の制圧──それが、最終的な目的である。
 途切れる前の通信では、中枢設備への進入経路が発見されたと総合通信士が言っていた。
 ──時間がないというのは、そういう事の筈だ
 マイはこれ以上、どのような疑問に端を発するどのような問いも、管轄人工知能に問いかけるべきでないと感じていた。
 ──彼の見せる背中は酷く儚げで、切なる願いの情が溢れている気がしたからだ。
 低温生命維持装置の中に横たわる少女を見下ろし、一時瞼を伏せる。
 マイは意思を決めて、次の行動に移った。カービン銃を装置の脇に立て、背嚢を背中から下ろす。固定ベルトを解除してフレームから背嚢のみを取り外した。酸素ボンベはハーネスのフックに吊り下げた。
「……安全の確度はともかく、連れていってやる」
 作業の傍ら視界の隅に移っていたはずの擬似映像体の方へ顔を向けると、既にそこにはあの男の姿はどこにも見当たらなかった。まるで最初からなかったように、マイはただの幻影とでも会話をしていたとでもいわんばかりに。
 少しの間呆気に取られた後、気を取り直して作業を再開する。
 ──中枢設備が破壊されたのか?
 作戦推移からその可能性を考えつつ、緊急時には担架として機能する背嚢のフレームを組み立てる。シリンダーの中に眠る少女を改めて観察したが、堅く閉じられた両瞼に意識の存在は確認できない。
 僅かに眉を顰め、一応少女に呼びかけの声を発した。
「──おい、大丈夫か?」
 当然ながら、返事らしい返事はない。頚動脈に指を当てると確かな脈動を感じ取る事ができ、少女の命がある事は分かる。
 マイは少女の身体を起こし、すっと抱き上げた。見かけ通り軽い身体を座式担架に座らせ、傾いて落とさないよう皮帯で身体の各部を固定した。
 大気状態に異常は見られないが念の為にと、背嚢から取り出した予備のマスクを少女の顔に当て、供給ホースを酸素ボンベに繋いだところで座式担架をひょい、と背中へ背負い込んだ。
「さて、おいとまと行きますかね──」
 気を入れなおす為にひとりごち、カービン銃を両手に携えるとマイは元来た道を全速力で駆けて戻った。

 数分後、主人の帰りを待っていた蒼竜騎のもとへ戻った。
「待たせたな、相棒?」
 慣れた足取りでタラップを駆け上って外部基盤を操作しハッチを開口、コクピット部がせり出す。
 座式担架を蒼竜騎の装甲板に乗せてから皮帯を解き、抱き上げた少女と共にコクピット内部へと身を滑り込ませる。担架フレームと酸素ボンベを収納ボックスにしまい込み、小柄な少女の身体を普段は扱う事のない補助シートに優しく座らせ、再度皮帯で固定した。
 そこでようやくマイは一息つく。そのまま油断しないようにとマルチコンソールを叩いて待機状態にあった蒼竜騎の機体姿勢を上昇、自動開放された隔壁から隣接区画のスペースを通常歩行で通り抜ける。この階層へやってきた大型昇降機へ直結する設備隔壁へ到達した時、背後に何らかの気配を感じてカメラアイを後背へと振り向かせた。
 半透明の地表部に、男が佇んでいた。
 片方の手は白衣のポケットに、もう片方の手を軽く上げ、口許には淡い笑みを浮かべている。
 それがマイの見た、最後の姿だった。見届ける中で擬似映像体の姿がノイズに紛れて乱れ、消失した。
 その直後、戦術支援AIが通信体制の回復を報告し、ほぼ同時に作戦司令部から連絡が入る。
『高濃度の電波障害により、データ・リンクが一時断絶したようですね。状況の報告を、レイヴン──』
「01、戦闘で機体を小破した。地区探索及び継続戦闘を中断、これより戦域を離脱する」
 一拍の後、総合通信士が返信をよこす。
『──了解しました。中枢設備はつい先程制圧されました。これから残存防衛戦力の制圧作戦に移行しますので、速やかに施設外周部戦域へと離脱してください。──それと、』
 総合通信技官はそう前置きを述べる。
『施設最下層部で、何か発見されましたか?』
「──未踏査地区は出来うる限り踏破したが、中枢設備に類する機構群などは一切発見できなかった」
『──分かりました』
 総合通信士の口調は終始同じものだったが、マイはその抑揚のない言葉の何処かに、敵意にも似たどす黒い意図の介在を感じ取っていた。
 まるで、蒼竜騎がそのまま戦線離脱することを良しとしていないかのように、マイには聞こえたのだ。
 それに最後の言葉──。
 結局、どれも推測の域を出ない。マイは最後に周囲を一瞥し、蒼竜騎を帰投経路へと向かわせた。
 ──十数分後、施設外周部戦域に戻ってきたマイが目にしたのは、主任務を終えた第一陣主戦力がそれぞれ、黄塵が控えめに吹く荒野の何処かへと去っていく光景だった。
 施設進入前は高かった日も、かなり傾いている。
『施設外離脱を確認──依頼報酬は提供情報をもとに歩合制で算出し、〇二三〇時までに所定口座へ入金致します。任務遂行ご苦労様でした、レイヴン──』
 淡白な労いの言葉を最後にミラージュ社作戦指令部とのデータ・リンク状態も解除、蒼竜騎はようやく任務から解放され、単独行動状態となった。
 緊張状態は適度に維持したままブースタペダルを踏み込み、第一種戦闘態勢での巡航機動を開始した。
 帰還経路となる進路上の荒野に見覚えのあるエア・クッション型強襲艦艇が鎮座しており、その重厚な搭載装甲は作戦開始時に垣間見たときよりも、幾らか磨耗していた。周囲にはミラージュ社の派遣した多数の機動兵器からなる機械化部隊が展開し、攻囲網を敷設している。
 どうやら、それなりに奮戦はしたようだ──。
 口許を歪めてそんな事を考えながら蒼竜騎を進ませ、前方から高速で接近してくる一機のACをマイは捕捉した。
 一瞬何事かと身構えたが、周囲のミラージュ社部隊も目立った動きを見せないことから、どうやら今回の依頼に絡んだ別のAC戦力なのだろうと直ぐに行き当たった。
 一応搭載センサー群に情報を収集させると共に、拡視界へ接近機体のシルエットを映し出す。
 濃い黒灰色を基調とした機体は中量二脚級の体裁を整えて構成されており、搭載武装は高い汎用性を備えている。同時に実用性も重視した武装である事から、その機体性能を表層的には容易に推し量れた。
 近距離で交錯する間際そのAC機体のカメラアイと視線が一瞬交錯したが、それだけ何事もなく、マイは入れ違いに外周部戦域を完全に離脱した。
 ここから数時間ほど荒野を北方へ縦断した先にある閉鎖型機械化都市が帰還予定地であり、そこへ到着した頃に待っているであろう事を考えると、マイはふと憂鬱な気分になった。
 万全の整備状態で作戦に臨んだ蒼竜騎は左腕部を武装ごと喪失、今後回収するアテもなくそのまま置き去りにしてきてしまった。しかも作戦自体は自分の命を持って帰ったという点に於いては成功したといえるが、稼ぎ出した報酬は機体の修理費やその他諸々の経費を天引くと恐らく、雀の涙程度にしかならないだろう。
 帰還予定地の都市に繋留停泊中の帰属先の独立系遊撃部隊【サンドゲイル】のボス猿こと、シェルブ親方と整備班筆頭の苦労人であるショーンという鉄火場の両雄にこっぴどくどやされるのは想像するに難くない話だ。
 進路上に障害物のないことを確認してから、視線をコクピット脇の補助シートに横たえた少女へと移す。
 生物ですらない管轄人工知能までもが願いを託した、旧世代からの訪問者──。
 一人のレイヴンである以前に、己の矜持と覚悟を持って戦場に臨む一人の戦士として、マイは少女を地の底から連れ出してやる事を決意した。
「さて、どう皆に報告するかな。遺跡で女の子を拾ったなんてどう説明すりゃいいんだか──」
 そんな突飛話を真に受けるような人間は、サンドゲイルには殆どいない。二大親方は論外だし、唯一信じてくれるとしたら同じ部隊に所属して労苦を分かち合う妹分くらいのものだろう。
 さて、彼女を頼ってどうやって帰還後の危難を乗り切るかと考えると、やはりマイの口から出てきたのは深い嘆息であった。
 全く、ひどいの一言に尽きる単独出向任務だった。
 しかし、少なくとも今回の作戦に関しては後悔の一欠片も胸中に抱いていない。
 少女の穏やかな寝顔と見て、マイは僅かに顔を綻ばせた。

 旧ナルバエス地方旧世代軍事施設【アスセナ】制圧作戦、遂行完了。



 第一話 終

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