In a small cafe
「……ふぅ」
香ばしいコーヒーの香りがただ、小さな部屋の中に広がっていた。
その部屋には5人程座れる小さなカウンターと3つのテーブルセットが置かれている。
そこは所謂喫茶店と言われる場所。
洒落たアンティークのインテリアや小物があちらこちらに置かれていた。
そのカウンターの座る逆側にあるキッチンにその青髪の齢、25ぐらいの男はいた。
彼はキッチンに備え付けてある食器棚から勝手にコーヒーカップを取り出し準備をしていた。
そして先程挽いたコーヒー豆をドリップにいれお湯を注いだ。
途端周囲に溢れるコーヒーの香り。
彼はそれを味わいつつカウンターの一席に座った。
その部屋には5人程座れる小さなカウンターと3つのテーブルセットが置かれている。
そこは所謂喫茶店と言われる場所。
洒落たアンティークのインテリアや小物があちらこちらに置かれていた。
そのカウンターの座る逆側にあるキッチンにその青髪の齢、25ぐらいの男はいた。
彼はキッチンに備え付けてある食器棚から勝手にコーヒーカップを取り出し準備をしていた。
そして先程挽いたコーヒー豆をドリップにいれお湯を注いだ。
途端周囲に溢れるコーヒーの香り。
彼はそれを味わいつつカウンターの一席に座った。
「んー美味いな……まぁ竹内が淹れるより美味くできただろ」
ミルクも砂糖も入れず飲んだコーヒーに男――上倉浩樹――は感想を言う。
その後も浩樹は静かにコーヒーを飲み続けていた。
今、行われている殺し合いの事には無関心のように。
名簿も確認はし、そこに知り合い4人の名前が書かれていたことも彼は知っていた。
その後も浩樹は静かにコーヒーを飲み続けていた。
今、行われている殺し合いの事には無関心のように。
名簿も確認はし、そこに知り合い4人の名前が書かれていたことも彼は知っていた。
「エリスに霧……それに竹内と藤浪か」
彼は東京にある学園、撫子学園に勤める美術教師である。
この殺し合いには自身の生徒と同僚が巻き込まれていた。
それと従妹と幼馴染が。
浩樹自身思う事があるがそれについて深く考える事も無く、またコーヒーに口をつける。
ほろ苦いものが口の中に広がっていき頭をすっきりさせいく。
しかしそれでも浩樹はコーヒーに映る自分の顔を見つめるだけ。
そして、また一口。
この殺し合いには自身の生徒と同僚が巻き込まれていた。
それと従妹と幼馴染が。
浩樹自身思う事があるがそれについて深く考える事も無く、またコーヒーに口をつける。
ほろ苦いものが口の中に広がっていき頭をすっきりさせいく。
しかしそれでも浩樹はコーヒーに映る自分の顔を見つめるだけ。
そして、また一口。
暫くそのままゆったりとした静かな時間が流れていた。
浩樹は唯、コーヒーをゆっくり飲み続けていた。
そんなゆったりとした時間にカランコロンと突如割り込む鐘の音。
それは喫茶店の玄関扉に付いていた来客を知らす為の鐘の音だった。
それは喫茶店の玄関扉に付いていた来客を知らす為の鐘の音だった。
浩樹はその来客者に向く事も無くコーヒーカップ持ち上げ飲もうとする。
だがそれは浩樹の着ているベージュのセーターの脇腹に刃先が突きつけられた事で停止するしかなかった。
浩樹はそのまま振り向くとそこには長い黒髪の少女が浩樹を見据えていた。
だがそれは浩樹の着ているベージュのセーターの脇腹に刃先が突きつけられた事で停止するしかなかった。
浩樹はそのまま振り向くとそこには長い黒髪の少女が浩樹を見据えていた。
少女は長い十文字槍を浩樹に突きつけ唯睨んでいる。
少女はベージュを貴重とした制服にブルーのチェックのスカートを穿き黒のストッキングを纏っていた。
その顔は端麗だが今は警戒に滲んでいた。
やがて、口を開き
少女はベージュを貴重とした制服にブルーのチェックのスカートを穿き黒のストッキングを纏っていた。
その顔は端麗だが今は警戒に滲んでいた。
やがて、口を開き
「アンタは殺し合いに乗ってんか?」
浩樹にそう訛りが入った言葉でそう問うた。
浩樹は一口コーヒーを飲むと
浩樹は一口コーヒーを飲むと
「その前に……名前は?」
「木瀬、歩」
「木瀬、歩」
木瀬歩と名乗った少女は無愛想にそう告げた。
それに特に反応も示さず浩樹はは問い返す。
それに特に反応も示さず浩樹はは問い返す。
「そうか……で、お前はどうなんだ? 殺し合いに?」
「……さあ? どうやろ?」
「……さあ? どうやろ?」
くくっと自嘲気味に笑う歩。
その顔は何処か寂しげで、しかしだからと言って突きつける槍から力が抜けるようなことはない。
それに特に動じず浩樹はゆっくりとコーヒーカップを置いて。
その顔は何処か寂しげで、しかしだからと言って突きつける槍から力が抜けるようなことはない。
それに特に動じず浩樹はゆっくりとコーヒーカップを置いて。
「……俺は一応教師やってるが。撫子学園で」
「へぇ? 撫子」
「知ってるのか?」
「まぁ有名やし……それで? それがどうかしたん?」
「生徒を沢山見てるしちょっとは解るんだ。んで……お前迷ってるだろ?」
「はっ?」
「殺し合いに乗るか乗らないか、そんな感じで」
「へぇ? 撫子」
「知ってるのか?」
「まぁ有名やし……それで? それがどうかしたん?」
「生徒を沢山見てるしちょっとは解るんだ。んで……お前迷ってるだろ?」
「はっ?」
「殺し合いに乗るか乗らないか、そんな感じで」
浩樹は唯淡々と、されど明確に歩の悩みを看破していった。
そして、冷め始めたコーヒーをもう一口。
歩はそんな態度に顔を歪め嘲る様にいう。
そして、冷め始めたコーヒーをもう一口。
歩はそんな態度に顔を歪め嘲る様にいう。
「はん、せや、なんやの? 教師のように、殺し合いは駄目だ!というに諭すん? アンタは」
続けざまに言う歩。
まるで弘樹を貶すように軽蔑の眼差しを向けていた。
が、浩樹はそのまま答えを静かに返す。
まるで弘樹を貶すように軽蔑の眼差しを向けていた。
が、浩樹はそのまま答えを静かに返す。
「かったるい。生徒の好きにすればいいさ。俺は知らん」
ただ、一言。
干渉せずと。
理由はかったるいと何ともやる気のない事を言って。
歩はその教師らしからぬ姿に思わず、
干渉せずと。
理由はかったるいと何ともやる気のない事を言って。
歩はその教師らしからぬ姿に思わず、
「なんでやねん!」
何時ものように突っ込みをいれてしまう。
まさかこの返答は予想外であった。
また、そんな飄々とした態度にイラついてきているのも事実であったが。
まさかこの返答は予想外であった。
また、そんな飄々とした態度にイラついてきているのも事実であったが。
「生徒の自主性を尊重するんだ、俺は」
ちょっと面白おかしく言う浩樹。
その態度に歩の沸点の限界を超えた。
何か知らないけど腹が立ったのだ。
その態度に歩の沸点の限界を超えた。
何か知らないけど腹が立ったのだ。
「はぁ!? ちょっとふざけるのもいい加減にしぃや! 生徒を正しい方向に導くのが先生やんか!?」
歩が怒りにそう言い放つ。
浩樹の態度が何となく気に入らなかったから。
怒りに顔を染めただ、怒っていた。
だが浩樹は笑い
浩樹の態度が何となく気に入らなかったから。
怒りに顔を染めただ、怒っていた。
だが浩樹は笑い
「……なんだ。答えでてるじゃないか」
「……はぁ?」
「自分の中で正しいと思っているの解ってるじゃないか。じゃあそれをやれよ」
「……っ!?」
「……はぁ?」
「自分の中で正しいと思っているの解ってるじゃないか。じゃあそれをやれよ」
「……っ!?」
そう告げコーヒーを飲む。
狼狽する歩に続けて
狼狽する歩に続けて
「正しい方に導いてというのなら……自身は正しいと思ってる選択が既にあると思っている証拠だろ。ほんとに迷ってるならどっちが正しいか悪か解ってねぇよ」
「……あ」
「……あ」
唖然とする歩を尻目にコーヒーを飲み干し
「なら、もうお前が取るべき選択肢は解ってるだろ」
そういってコーヒーカップをカウンターに置く。
暫しの無言空間が形成され、やがて
暫しの無言空間が形成され、やがて
「……ちっ」
歩は舌打ちと共に十文字槍を下ろし穂先を返した。
その行為を浩樹は唯見つめて、けど何も言わなかった。
そんな空間に耐えられず
その行為を浩樹は唯見つめて、けど何も言わなかった。
そんな空間に耐えられず
「なんで迷ってたか……きかないんか?」
そう、ポツリと呟く。
浩樹はその言葉を皮切りに立ち上がりそして
浩樹はその言葉を皮切りに立ち上がりそして
「生徒の自主性にまかせる。それが俺の学校の校風だ。俺はその学校の先生だ、以上」
そう告げた。
歩は溜め息と共に椅子に座り
歩は溜め息と共に椅子に座り
「いや私……そもそもアンタの学校の生徒あらへんよ……まぁ、ええわ」
頬杖を突いて虚空を見上げた。
その歩の席に淹れ直したコーヒーを置き浩樹も自分の分を持って隣に座る。
また、無言のゆったりとした時間が流れ始める。
浩樹は歩が話し始めるのを待っていながらコーヒーを飲む。
やがて
その歩の席に淹れ直したコーヒーを置き浩樹も自分の分を持って隣に座る。
また、無言のゆったりとした時間が流れ始める。
浩樹は歩が話し始めるのを待っていながらコーヒーを飲む。
やがて
「恨んでいる奴が居るんや……」
ポツリとそう歩は言った。
短く……けど複雑な感情の篭った言葉。
浩樹はそのまま聞きつつコーヒーを口にする。
短く……けど複雑な感情の篭った言葉。
浩樹はそのまま聞きつつコーヒーを口にする。
「私、薙刀を幼い頃からやってたんよ」
「ほう……」
「それで、自信があったんよ。上手にできる自信が」
「へぇ? どれくらい」
「インターハイ出場。それで、スポーツ推薦で千羽谷大学にや」
「千羽谷大……なんだ凄いじゃんか」
「知っとるん?」
「阿呆、高校の教師だぞ」
「あぁ……そうやったね。余りに阿呆そうで忘れとった」
「……おい」
「ほう……」
「それで、自信があったんよ。上手にできる自信が」
「へぇ? どれくらい」
「インターハイ出場。それで、スポーツ推薦で千羽谷大学にや」
「千羽谷大……なんだ凄いじゃんか」
「知っとるん?」
「阿呆、高校の教師だぞ」
「あぁ……そうやったね。余りに阿呆そうで忘れとった」
「……おい」
歩は備え付けの砂糖へと手を伸ばし、コーヒーの中へと多めに入れそしてミルクも多めに入れた。
かき混ぜながら言葉を続ける。
かき混ぜながら言葉を続ける。
「その人はそれでも私よりも上手やった……叶わないくらい」
「……」
「せやけど、そんな上手な人に尊敬していたんよ、最初は」
「……」
「せやけど、そんな上手な人に尊敬していたんよ、最初は」
そうして一口飲んで、重く言う。
「せやけど……ある一件のせいでそれは粉々に打ち砕かれおったんよ……あの女が」
「……一件?」
「薙刀の演舞という競技で一緒に組むことになったんよ。うまい人同士ちゅうことで」
「それで」
「大会で惨敗や。浜咲学園薙刀部でも珍しい……惨敗やった」
「浜咲? 神奈川のあの進学校」
「知っとるん?」
「まぁな」
「……一件?」
「薙刀の演舞という競技で一緒に組むことになったんよ。うまい人同士ちゅうことで」
「それで」
「大会で惨敗や。浜咲学園薙刀部でも珍しい……惨敗やった」
「浜咲? 神奈川のあの進学校」
「知っとるん?」
「まぁな」
歩は拳を握りそして力を篭めて。
怒りに堪えるように。
怒りに堪えるように。
「アイツは……互いの協力が大切やのにアイツは責任を私の「実力不足」で片付けた……私のせいにしたんよ! 全部!」
力の篭った一言。
それは恨みの深さを裏付けるような。
それは恨みの深さを裏付けるような。
「私は……頑張ったんよ。自身の持てる力で。全力で。やりきったんよ……なのに、アイツは……アイツは!」
声が震えていた。
恨みと哀しみと。
恨みと哀しみと。
尊敬が打ち砕かれたその瞬間が現れるような。
歩の深いコンプレックスとトラウマが。
今の歩の姿を切実に現していた。
浩樹は何処か考えてる風に歩を見ている。
次の言葉を待っていた。
次の言葉を待っていた。
「それから……憎しみに変わった」
言い放たれるのは……敵意。
コンプレックスとトラウマの螺旋が示す憎しみだった。
歩の拳が強くカウンターを打つ。
憎しみの深さを表すかのような強さで。
コーヒーが波立った先で歩は続きを言う。
コンプレックスとトラウマの螺旋が示す憎しみだった。
歩の拳が強くカウンターを打つ。
憎しみの深さを表すかのような強さで。
コーヒーが波立った先で歩は続きを言う。
「そんな時にや……こんな殺し合いに巻き込まれて……」
歩は一口コーヒーを飲む。
甘さが彼女を安らがせ、やがて。
甘さが彼女を安らがせ、やがて。
「…………私は…………私は」
震える声。
紡がれる言葉は
紡がれる言葉は
「憎しみの余り……私は……あいつ……を……殺したい……一瞬でも……そう……思ったんよ」
殺意。
刹那によぎった事。
それは許さざる行為。
それを歩は……ほんの一瞬でも思ってしまった。
刹那によぎった事。
それは許さざる行為。
それを歩は……ほんの一瞬でも思ってしまった。
「勿論、悪い事やってしっとる……けど……けど一瞬……思ってしまったんよ……」
震えた言葉で言い切った。
俯きその顔は長い髪で隠れた。
その表情は浩樹からは伺えなかった。
俯きその顔は長い髪で隠れた。
その表情は浩樹からは伺えなかった。
歩の言葉はそれ以上紡がれる事が無く、唯沈黙が続く。
歩は待っている。
浩樹の言葉を。
浩樹の言葉を。
浩樹は思い、考え。
そしてやがて
「……………………時間が…………解決するんじゃないか?」
言った。
淡々と。
淡々と。
「お前は若いんだ。焦っても仕方ないぞ」
そう、軽く言って。
コーヒーを呷る。
熱いコーヒーを一気に。
苦味が口に一杯広まって。
浩樹の思考を隠していく。
コーヒーを呷る。
熱いコーヒーを一気に。
苦味が口に一杯広まって。
浩樹の思考を隠していく。
歩はその言葉に反発するように。
「なんやの!? それ!」
おもわずそう声を荒げる。
納得がいかなかった。
この、憎しみが。
時間の問題で解決される事が。
納得がいかなかった。
この、憎しみが。
時間の問題で解決される事が。
単純に納得いかなかった。
浩樹を睨み……そして怒りを治める。
歩は浩樹の目が。
何処か哀しそうで。
何処かせつなそうで。
何処かせつなそうで。
何か、何か浩樹自身が一瞬でも自身に通じる所がある。
そう思ってしまい
そう思ってしまい
それ以上。
言葉を重なる事ができなかった。
そして静寂が訪れる。
浩樹はゆっくりコーヒーを飲み干すと
「さて……もう終わったし俺は行くぞ」
これまたゆっくりと立ち上がった。
歩はその様子に慌てて
歩はその様子に慌てて
「いや、私おいてくん!?」
浩樹は歩に振り返って。
「ああ、どうするかは生徒の自主性にまかせる」
そう一言だけ告げ出口に向かう。
歩は髪を掻き、一気に残っていたコーヒーを飲み干す。
あまったるさが口を支配するも気にせず
歩は髪を掻き、一気に残っていたコーヒーを飲み干す。
あまったるさが口を支配するも気にせず
「ああ、もう。そればっかやないか」
そのまま、立ち上がる。
付いていく理由は単純。
浩樹の真意が聞きたいから。
付いていく理由は単純。
浩樹の真意が聞きたいから。
それだけ。
イラつきながらもしっかりした足取りで。
その気だるそうな男の背を静かに追った。
小さな喫茶店に残されたのは香ばしい匂い。
そして、おそろいの小さなコーヒーカップが取り残されていた。
【C-2 中央部 喫茶店前/1日目 深夜】
【上倉浩樹@Canvas2~虹色のスケッチ~】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式×1、不明支給品(0~3)】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:殺し合いに乗らないが特になし
1:歩が付いてくるなら一緒に行動。
2:霧やエリスに対して……?
【装備:なし】
【所持品:支給品一式×1、不明支給品(0~3)】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:殺し合いに乗らないが特になし
1:歩が付いてくるなら一緒に行動。
2:霧やエリスに対して……?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「それだけや……それだけやないんよ」
浩樹に聞こえる事無く呟いた、歩の言葉。
それはもう、誰も居ない喫茶店に静かに響いて。
歩はゆっくりと喫茶店をでた。
カランコロンと鳴る鐘の音。
そして浩樹が気付かなかった事。
いや、気付くわけが無い事。
木瀬歩が。
歩が。
参加者名簿に。
『名前が無い』
という事を。
それが意味する事。
それは
まだ
まだ
解らない。
【C-2 中央部、喫茶店前/1日目 深夜】
【木瀬歩@Memories Off ~それから~】
【装備:金房兵衛尉政貞@終末少女幻想アリスマチック】
【所持品:支給品一式×1、不明支給品(0~2)】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:???????????????
1:浩樹の真意を確かめる為に付いていく。
2:雅に対して……?
3:??????????????????
【装備:金房兵衛尉政貞@終末少女幻想アリスマチック】
【所持品:支給品一式×1、不明支給品(0~2)】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:???????????????
1:浩樹の真意を確かめる為に付いていく。
2:雅に対して……?
3:??????????????????
【備考】
※木瀬歩は名簿に名前がありません。
※木瀬歩は名簿に名前がありません。