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武勇伝

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だれでも歓迎! 編集

とある料理人の食材調達戦記(SS)


これは重大な任務、新規入国歓迎パーティのための食材をとりにいったときのお話である。
食材は羊肉、ターゲットはリワマヒの森に棲むという鬼ヒツジだ。
農作物を荒らすので何とかして欲しいという国民からの要望もあり、今回の食材のターゲットとして決めた。
詳細はわかってはいないが、ヤツはでかいということと凶暴であるということだ。
軍服の襟を正し相棒の三八式歩兵銃を傍らに置き、祈りを捧げる。
料理のためとはいえ生命を奪う、糧を獲ることへの神への祈りだ。

ヤツを発見することができた私は、注意深く近くの藪の中へ隠れた。
ヤツに気づかれて暴れられるのはやっかいだ、一撃で仕留めてしまおうと私は思った。
姿勢を低くし三八式を構える、額には汗が滲む、いい子だそのままでいてくれ。
しかしヤツはやはり一筋縄でいかないようだ、私の殺気を感じたとでも言えばいいのだろうか。
その刹那、ヤツは私目掛けて一直線に突進してきた。
危険を感じた私は一目散に逃げることにした、これは敗北ではない戦略的撤退なのだ。

真正面からかかっていっては危険だと感じた私は次の方法を考える。
バックからスコップを取り出し私は落とし穴を掘り始める。
普段から炎を相手に格闘し重い中華鍋を振り続けてる私にとってはこの程度の仕事は軽い作業だ。
準備はできた、後はヤツを誘い出すだけである。
脚力には自身がある、毎日の出前で自転車に乗り続けて鍛えているから。
頭環についた歴戦の傷跡を眺め心を落ち着ける、決戦は近い。

私を見つけたヤツは一目散に追いかけてくる、予定通りだ。
走る、走る、走る。
次の瞬間、私は何かに足をとられ転倒してしまった。
私はヤツを仕留めるために誰かが仕掛けた罠に引っかかってしまったのだ。
私が転倒した隙にヤツは猛然と突進してくる。
そして、ヤツはなんとジャンプしたのだ。
やつの全体重をかけたボディプレスで私を圧殺するのだろうか。
それとも蹄による急降下蹄爆弾を仕掛けて悶絶させる気であろうか。
どちらにしろ私は大ピンチ、どちらをくらっても大変なことになる。
やつの大ジャンプ攻撃を前方回転で掻い潜り体勢を立て直す。
回転したときに石にぶつけ頭環にまた一つ傷が増えた、これはヤツとの勲章だ。
両者対峙、にらみ合い、じりじりとその距離が縮まる。
私は全てを相棒にかけることにした、最後に信じられるのはやはり相棒だ。

空気が爆ぜる。
ヤツの先制攻撃突進を私は紙一重で回避する。
軍服が破れたが備品なので問題はない、大事なのはこのスリルだ。
2度目の攻撃、私は闘牛士のように華麗に側転で回避する。
タイミングはとれた、後は私が仕留めるのみ。
三度目の攻撃、私はヤツが突進してくるその時に全てを賭けた渾身の一撃をお見舞いする。
チャンスは1度、失敗すればヤツの突進の餌食になるだろう。
集中力を高める、構える、そしてヤツを挑発。
頭に血が上ったヤツはただ我武者羅に突進してくる。
今がその時
「必殺、中華鍋で鍛えた自慢の筋肉アタック!!」
私はヤツの脳天目掛けて三八式歩兵銃を叩き付けた。
ヤツは強敵だった、私の相棒がへこんでしまい使い物にならなくなってしまったほどだ。
尊い犠牲を払ったが、なんとか私はヤツを生け捕りにすることができた。
こうして私は歓迎パーティで使われる食材を手に入れることに成功したのだった。



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