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ココカラトワニ

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ココカラトワニ ◆EKhCqq9jsg



 宿泊施設と言うものはなぜワザとらしく小奇麗に見せるのであろうか。
 確かに薄汚れた施設と小奇麗な施設、どちらかに泊まれと言うなら、有無を言わさず
小奇麗な宿泊施設の方にゴーサインを出すであろう。
 だがそう言うことではない、無意味に光沢を帯びるシャンデリア、
真紅の薔薇の如く紅に染まった絨毯、大理石で作られた受付机など
大多数の一般人には無関心な個所を無駄に豪勢にしている。
 そして今、自分が紫煙を吹きながらがっしりと座っているこのソファーも
決してホテル玄関付近に必要なものであるかと言えば……
 そんなことを考えながら赤木しげるはタバコをふかして淑女たちを待っていた。

 赤木しげる、南千秋、素晴らしきフラグビルドの三名は
赤木しげる──誤字脱字の類ではない──らと分かれ、何事も無く中継地点である
雀荘に到着した。
 もともとの地点から離れた場所ではなく、誰かと接触したりなどの事柄など無ければ
そう時間をかける距離ではない。
 雀荘につき、ひとまずなにか役に立つものは無いか、あるいは誰かいないのかと
一通り散策したが、やはり所詮雀荘は雀荘、精密な電気機も無ければ鈍器などの凶器も無い。
休憩所にある台所にはカレーらしきものを食べたあとがあるだけ、それも
自分たちがここに来る数時間前の物であり、もう既に当事者はかなり離れたところに行ってしまった可能性が高い。
 結局この雀荘という場所は中継地点という目的しか果たすことは無かった。

 ちなみに余談だが千秋は相変わらず赤木しげるのことをアカギと呼んでいる。
 理由はそちらの方が言いやすいからとか赤木しげる自身が名前で呼ばれるのは違和感があるとかで
結局もとの通りに名を呼んでいる。フラグビルドはつまらなそうな顔をしているがそれはまた別の話。

 で、今彼らはどこで何をしているかと言うと、冒頭で言った通り
赤木しげる──決して誤字脱字ではない──らと待ち合わせしてる場所
D-5のホテル内に点在している。
 なぜ点在かと問われれば、ほんの少し前どっかのなにかの仕業で
南千秋の衣類が大変なことになり、少し大きめの服かつノーパンという
性愛対象少女のみ(所謂ロリコン)な方々が涙を流して
喜びそうな格好であり、これでは大きな動作をする時など色々と不都合が生まれてしまうと
赤木しげるが両名に提案。千秋は少し顔を赤らめながら、フラグビルドはものすごくニヤニヤした顔つきで
それを承諾。
 それで現行はフラグビルド、南千秋の両名が階上に衣服を散策しに行動し
赤木しげるはロビーのソファーで彼女たちの帰りを、一人煙を吐きながら
待っているのであった。
 本来なら赤木しげるも行くのが妥当だと考えられる。
 だがそこは男と女の境界がある為か、フラグビルドに「待っててね」
とこれまたニヤ付いた顔で言われてしまった。
 そもそも共に行動したとしても一応昭和の男である赤木しげるには
服のセンスなんてわからない。
 それに三人で行動したら、ホテルのロビーに誰か現れたとしても
全く気づかないで終わってしまう。まだまだ多数の人と情報を交換し入手したい
赤木しげるにとっては待機と言う言いつけも捨てたものじゃなかった。

 紫煙を目一杯に肺に入れ、フーと軽く煙を吐き出しながら、赤木しげるは
ロビーにある大きなノッポの古時計を確認する。
彼女らがエレベーターに乗り上の階まで行ってから、この古時計の秒針は何回12の数字を指したであろうか。
赤木しげるとてこう長く待たされてしまうと、あまりいい気持ちではない。
またされた初期は今後の方針などを考慮していたが、
現在はただいかにして時間を潰すかを考量している。

 幸いこのロビーの一角に結構な数の書籍が設けられている書棚があったため
そこから赤木しげるは幾つか雑誌や本を手に取り煙草を片手に目を通していた。
 なお赤木しげるがそこで適当に選んだ本は

『Y2J』
『週刊ライターズ~特集! エアーキングVSストリップーファイター 舞台裏から完全密着!~』
『ビンス・マクマホン流経済学』

 以上の三つ
上からライトノベル、雑誌、新書である。
これだけあれば暇を潰すことは容易であろうと赤木しげるは推量する。
彼は雑誌を軽く流し読みし、現在はライトノベルに目を通していた。

 彼は速読が得意なのか、物語は中盤に進出し
主人公の『Y2J』と彼の憧れの存在かつ師匠である人物『HBK』と戦う場面、所謂佳境の一場面を迎えた。


 Y2Jは静かに、肩をグルグルと回し首を傾げながら、師HBKに向かって
熱情と冷涼を交えた言葉をぶつける。
「俺は……あんたに憧れていた、まだ文字もまともに書けなかったくらい幼い時からずっとだ……
あんたのスタイルを研究し、あんたをリスペクトする気持ちをこめてあんたの技を使いこなして……戦い続けた……」
 Y2Jは天を仰ぐ。
 空は雲一つ無く、今にも満天の星々が地面に舞い降りてきそうな、そんな天を。
「いつしか俺は『第二のHBK』と言われるようになった……その時はものすごく嬉しかったさ……」
 天を向いていたの顔からは薄っすらと雫が垂れる。
「でも今は違う……俺とあんたは敵対関係……だから気づいたのさ……」
 雫が垂れ続けながらY2Jは自分の顔をHBKに向ける
「『第二のHBK』じゃなくて『第一のY2J』となることが大事だと……!」
 こぶしをぐっと握り締め、力を込めたま己の心臓の位置まで腕を上げ……


『カァー! なかなか素敵な台詞を吐くじゃないか、この主人公はよぉ』
 皮肉を込めているのか、それとも本心なのかはわからないが
思わず口にだして感想をこぼす。
 この発言は小説の中の登場人物の感想ではない、無論赤木しげるの感想でもない。
 では一体誰の口上か。
 忘れていると思うだろうが、赤木しげるには二つの意志を持つものを所持している。
 一つはモンスターボールに現存する『ことのは』というモンスター、
言うまでもないが、赤木しげるが今この場にことのはをだす理由など一切ない。
 ということは必然的にもう一つの意志を持つもの、即ち。

『なんか久々にカッコつきでしゃべったような気がするぜ……』
「お前は何を言っているんだ……?」
 実に3話ぶり、時間に表すと約9時間ぶりの千年リングに存在する意志、
バクラの感想であった。
『いやでもよ、なかなかこういった台詞をはける奴はいないぜ?』
「創作の発言に一々感心していたら、きりが無いぞ……?」
 赤木しげるはバクラのものすごく無意味な発言を軽く流し読み浸る。

『まあそう言うなよ、言葉は万人を動かすとも言うぜ? 例えば演説とか遺言とか……告白とかか?』
「もう一度言うが、お前は何を言っているんだ……?」 
 さらに呆れてしまう赤木しげる、だがそんなアカギを無視するが如く
 今まで話せなかった鬱憤を晴らすかのように、バクラは喋り続ける。
『だってよぉ~あの……え~と、ああ、そうだ、千秋だってけかな、あの女さあ
アカギ、お前に惹かれているからよお。なんかお前からカッコいい台詞でも吐けば
あっという間に熱愛な関係になるじゃないか?』

 その発言を聞き赤木しげるは思わず頭が痛くなった。
 こいつは何を言っているんだ? 千秋が俺に惹かれている?
 そりゃあ千秋とはかなり長い間共に行動をしていた。 
 だからと言って愛情などの感情を生み出しているとは限らない。
「千秋が俺に惹かれていると言う証拠はあるのか?」
 赤木しげるがバクラに問いただす。
『いや、無い』
 即答だった。
 一瞬赤木しげるの脳裏にはこいつを今すぐ湖に投げ捨てようかと言う結論を作り出した。
『でもよ、愛情とかなくても、尊敬とか憧れとかその辺りの感情を抱いているのは確実だと思うぜ?
 そうでなきゃあの場で六人を二つに分ける策に二つ返事をするわけが無い。
 アカギと一緒にいたいと言う感情を無意識に持っている可能性は十分あるぞ?
 ならそれに対して一種のお礼の言葉とかでキザな台詞を言っても怒られることは無いぜ?』
「お礼……ね……」

 これを耳にし、ふと赤木しげるは少し自分と南千秋の関わりを思い出してみる。
 朝倉涼子の不思議な能力で最序盤に千秋と合流した。
 その時は……まあ普通の餓鬼としか思ってはいなかったな。
 それから千秋の春香さんじゃない方の姉と戦った後
 俺の胸で泣いたこともあったな……まあ、混沌としたあの場で死の概念は薄いものだがな……
 そうしたら実はマクムートだかの血筋で竜に変身できて……
 海馬と兄妹なような関係になっていたな……
 まあ、海馬が死んだあとにヒョッコリ現れて俺に『千秋は俺と貴様を兄のように慕っていたみたいだ』
 ようなことを言っていたな、そうするとバクラが感じるのはそう言うものなんじゃないか……?
 いや、そういえばあの時海馬は最後に何を言いたかったんだ……?
 俺が『いつまでも子ども扱いするなよ』と口出しして途切れさせてしまったおかげで最後まで聞けなかったが……
 もしかして……海馬はそう言うことを言おうとしていたのか……?
 まあいい……そのあとは俺は千秋の精神の強さを見て、
 最後は共にテラカオスを打ち倒した……そこで一旦はお終いだ……

 何だかんだ言って赤木しげるは赤木しげるで南千秋に惹かれていた部分もあったのだと
赤木しげる自信はそう感じていた。
 なによりもあの混沌とした殺し合いの場で一度も無様に殺されることも無く共にいたと言うのが
十分過ぎる理由であった。

「お礼の言葉……まあ、満更でもないか……」
 赤木しげるはバクラに対してそう呟く。
 これだけ世話になっていて一度もこちらから何も言わないのもなにか釣り合わないかなと思った、
ただそれだけの口実である。
『そうかい。俺もあんたに一目を置いてやってんだ、だからその捻くれた部分少しだけ和らげるために
 女と組ませたらいいかなあと思って、半ば冗談のつもりだったんだが……
 まあ華が付いた方が見栄えもよくなると思ってだな』
「……、やれやれ、そんなくだらない理由か……」
 もう一度赤木しげるは湖に投げ込むことを考えるが、
既にお礼の言葉を言うことは決めているからすぐにそれを引っ込めた。
「そうだな……この殺し合いが終わったら、言わせて貰うか……」
『その時は俺にも聞かせろよな?』
「どうだろうな……!」
 赤木しげるはそう言うとかすかに微笑み、本を閉じ、三つの本をバックにしまった。
 その後煙草に火をつけ、
まるで煙草を最高なものと勘違いさせるくらい美味しそうに吸い始めた。

 さて吸い始めてそう間もない時、
エレベーターがチンと音を立てドアが開かれた。
 赤木しげるが座っている位置からはそのエレベーターは完全に見える位置ではなかったので
彼は恐らくそののっている二人の人物と合流するために、煙草を吸殻に落とし、
エレベーターの方へ歩みを進めた。

「な~に緊張しているのよ! さっさとしげる君の目の映る場所に行きましょ?」
「バカヤロー! 引っ張るな! 自分のタイミングで行く!」

 なにやらエレベーター内から声が聞こえる。
 そんなことを気にせず赤木しげるはエレベーターの目前へ迫っていた。
 エレベーター内を一瞥すると、フラグビルドがいるのが容易に確認出来た。
 もう一人の人物、南千秋はと言うと、何故だかはわからないがボタンスペースに隠れており
そこからフラグビルドによって引っこ抜かれようとしている。
 とんでもなく可笑しな服を着ているのか? などと赤木しげるは予想してみる。
 だがこちらはあまり服装など知らない身、変な服装で一々笑うことは無いだろうなと内心でそうささやく。

「ほらほら、しげる君もちょうど来たから……ほれ!」
「うおぅ!?」

 フラグビルドによりエレベーター外へ放り出される千秋。
 さてさて……どんな服装なのか、赤木しげるは若干呆れ果てながらも、
 放り出された南千秋を見つめる。

 そこで彼が見かけたものは……純白輝くミニのウエディングドレスに包まれた、
まるで天使と言っていいほどの美しい少女がそこにいた。

 赤木しげるは彼に似合わず美しい彼女の姿に見とれる。
 それに気づき千秋は思わず顔を赤らめる。
「似合っているか……?」
 と千秋が紅潮した顔を赤木に見せかけながら問いかける。
「ああ……」
 対して赤木しげるは簡潔に自分の素直な感想をさらけ出す。

「いや~やっぱり、フラグって本当にいいものですねえ~」
 フラグビルドはそんな二人を見てにこやかな眼でそう言うのであった。
 当然ミニのウエディングドレスを千秋に着せた下手人はフラグビルドである。 
 フラグビルド曰く
「幼い子供たちの初々しい恋って、なんか素敵だと思いません?」
 だそうだ。

「ったく、何をやっているんだか……」
 赤木しげるは笑みを浮かべたままフラグビルドの気遣い(?)に苦言を放ちながら
彼女に近づく。
「ほらほら、千秋ちゃんも!」
「いちいち押したり引っ張るな! ってうわっ!?」
 フラグビルドに押され思わず転倒してしまう南千秋。
 そんな姿を見て「やれやれ」と一言呟き、倒れた南千秋の元へ駆け足で近づいた


 その刹那、ロビー全体に銃声が響き渡る。
 そして石のように冷たく意志を持たぬ物体が
 赤木しげるの内蔵を貫き、赤木しげる自身と服を真っ赤に染め
 南千秋自身と純白のドレスが返り血で紅色に染まった。



☆ ★ ☆



 時は遡る。

 ランキング作成人は人目のつく事も省みず、
フラップターに乗りホテルへ迅速で辿り着いた。

 その時はまだホテル内に誰もいなかった、
誰かが来るまでの間、彼はエロさに定評があるクロスミラージュ(以下エロスと略す)と他愛も無い話をしながら
食事を取っていた。
 その後自分の支給品を改めてチェックし
──なお彼の三つ目の支給品は『PSG-1(@現実)』と言われる、某ゲームで登場する有名な狙撃ライフルであった──
来るべき時に備えてきた。
 そうして来るべき時は来た……彼が想像した時より一名ほど人物が増えて。

『うほっ……! いい少女達……!』
「だまらっしゃい。 とは言え、まさかフラグビルドも一緒にいるとは予想して無かったな……」
 エロスの言うことをがん無視し、ランキング作成人は今この場に三名いたことに驚愕していた。
「まあ……これもアカギの運のよさからか」
 赤木しげる、自分の眼に映る赤木しげるは多分カオスロワからの参戦と改めて考察する。
 思えばこの赤木しげる、カオスロワというとんでもない場所でまだ一度も死亡確認されていない
希有な存在。 そんな彼は運がよろしいのか、あの仲のよさを見るに同じカオスロワから来たと思われる 
南千秋と、力を持つ素晴らしきフラグビルドと合流できたのはある意味必然か。

『なんだよそれは? そんなことより速く合流しようぜ! 殺し合いに乗っている雰囲気も無いし!』
「馬鹿たれ、確かに乗っている可能性はかなり少ないだろう。
 だからといってあいつらが危険人物じゃないってわけじゃない」
『あ、美少女二人がエレベーターに乗ってしまった……』
 美少女二人──南千秋とフラグビルド──がエレベーターに乗りこんだ。
 だが赤木しげるはというと、テクテクと歩き出し豪勢なソファーへ座り込んだ。

「いいか? 例え三人が対主催だとしても俺があそこに馴染める可能性はあるか?
 第一フラグビルドと赤木しげるは俺が使えない人間だったら容赦なく切り捨てる可能性が高い。
 特に今残っている赤木しげるは、一度主催者になっている可能性もなくはない。
 そんなところで俺が交流を求め突撃しても、俺を簡単に理解して使い捨ての兵として使われるだけだ」
『お前……少し慎重すぎないか? もう少し気楽に言ってもいいと思うんだが』
「いや、殺し合いの場で慎重すぎることはない。 というか他の奴が猪突猛進なだけだ」
 ランキング作成人はこう言い切る、もっとも大半の参加者のことを知り
パロロワの知識をとんでもなく持っているが為なのかもしれない。

『で、結局どうすんのよ? 接触するの? しないの?』
「接触はするさ……ただ舐められちゃいけない、舐められた時点で不幸の道を着き進むことになる。
 そうなら無いように、必然的に俺自身の力量を見せながら接触するのが舐められない一番の方法さ。
 それで……この物騒なものが役に立つ」
 ランキング作成人がそう言うとバッグの中から先ほど確認したPSG-1を取り出す。
『お……おい……? まさかその狙撃銃で少女達を……』
「たわけ。 誰かが死ぬのも殺されるのも嫌だと言っている俺がそんなことをするはずが無いだろ?
 こいつはあくまで威嚇射撃にしか使わないさ。
 もし射撃後あいつらになにか問われたとしても『対主催に相応しいかテストした』とか言えばいいだけだ
 こうすることによって、俺はあいつらに対して力量を見せ付けることにもなるし、
 後々舐められる可能性も無い」
 それに実際こういった喧嘩風味で出会って、その後上手い関係を作っていることも多々あると
ランキング作成には着け足す。

『だけどよ~? 万が一弾丸が命中しちまったら……』
「まぬけ。 狙撃銃で人を殺害しようとして成功した奴なんてそうはいない、
 ド素人の俺が簡単に名誉なことを出来るはずが無いさ」
 と根拠があるのか無いのかわからない言葉を放ち、ランキング作成人は
PSG-1の取扱説明書を熟読するのであった。

 熟読に浸って数十分経ったであろうか。
 エレベーターがチンと音を鳴らしトビラが開いた。
 同時にランキング作成人の作戦が始まった。
「ターゲットは……南千秋かな、特に超反応な動きはしないと思うし、
 何より身長が低いからな、頭二個分上を狙えば絶対に当たることは無い」
 ランキング作成人はそう発すると狙撃銃のスコープに眼を当て、
南千秋に照準をあわせる。
 出来れば座ったりして静止した状態がいいなと願っていると
お天道様にその願いが通じたのか、フラグビルドが背中を押したため
南千秋は思いっきり転倒してしまった。
「チャンス……!」
 そう口から漏らしながらランキング作成人は狙撃銃の引き金を弾き
転倒した南千秋の頭上へと発砲した。
 いや、したはずであった。
 ランキング作成人は一つ勘違いしていた。
 彼はこの場に素早く倒れた千秋を起こしに行く人物などいないと思っていたのだ。
 だが、その思考のねじれが、とてつもない偶然と悲劇をもたらした。

 そして二つの場面が交差した。

☆ ★ ☆

「えっ……?」
 一体何は起こったのか。
 素晴らしきフラグビルドは一瞬何に見舞われたのか理解出来なかった。

 赤木しげるが腹部から血を流し地面と接吻すること数秒、
フラグビルドの横目に映ったのは、狙撃銃らしき物体持った青年であった。

「ち……違う……俺は……当てるつもりなんて……」
 男は口をパクパクと、まるでこの世の終わりを見るかのように
顔を真っ青にしうろたえていた。
「ち……違うんだぁぁぁぁぁ!!!!!!」
 男が叫び彼の背後にある入り口めざし猛然と走り出した。
 フラグビルドは即座に彼を追いかけようとする

「ま……待って……くれ」
 が、追跡しようとするフラグビルドを静止する赤木しげる。
 そうするとアカギはまるで生まれたての小鹿のように腹部を押さえながら立ち上がる。
 その間南千秋は「アカギ……アカギ……!」と涙を流しながら赤木しげるの名前を叫び続ける。

 一歩、また一歩と歩みを進める赤木しげる。
 そうして近く柱へたどり着き、背中から寄りかかる。
 だが直後にまるでゴムが切れたかようにストンと尻餅を着く。
 その瞬間フラグビルド、目を真っ赤にし泣いている南千秋が急いで接近する。

「悪い……ここまでみたいだ……」
 赤木しげるが弱々しい声でそう二人に告げる。
 千秋は改めて絶望を感じ、フラグビルドは信じられないと言った表情であった。
「もう何をしても……手遅れだ……内臓を……やられた……」
 死が近づいているのに赤木しげるは冷静に自分の症状を伝える。
「アカギ……死ぬなあぁ……」
「クク……そう言ってもらってもだ……無理なものは無理なんだ……」
 千秋は赤木しげるの手をとり声をかける。
 赤木しげるは一応は反応する。
「千秋……泣くな……ああ……そう言えば……お前に一つ言いたいことが……あったんだ……
 笑わないで聞いて欲しい……」
 泣いている千秋を宥めようとする赤木しげる。
 そうしながら赤木しげるは柔弱な勢いで口を動かし続ける。

「俺は…………楽しかった……お前と……一緒に行動したり……考えたり……
 うれしかった……俺は……お前に……お礼の気持ちを伝えたい……ありがとう……」
「バ……バカヤロー! ……お礼を言いたいのはこっちだよ!」
 赤木しげるは静かに自分の思いを伝えた。
 長らく行動して最初で最後の南千秋への思いを。

 赤木しげるはそう言い切り、自分のデイバッグを朧気に持ち上げる。
「フラグビルド……さん……お願いがあります……このバッグに入っている……煙草を……
 あのもう一人の俺に……渡してください……俺なら……煙草が多くて……
 文句を言うことは無いですから……それと……もう少しあんたと……喋ってみたかったと……伝えてくれ……」
「……わかった」
 弱々しく握っていたバッグを、フラグビルドにゆっくりと渡す。
 続いて赤木しげるは自分の首飾り──千年リング──を首から外し
千秋の首にかけてやる。
「これは……千年リング……これには……バクラという……切れモノの意志が付加している……
 バクラは……装着者の意志を乗っ取ることが出来るらしい……もし……殺し合いの雰囲気に……
 耐えられなくなったら……そいつに我が身を……委ねろ……俺は……千秋が自分の意志で……
 手を赤く染めることを……望まない……」
『よく言うぜ……』
 赤木しげるの発言に切なそうに茶々を入れるバクラ、もっとも赤木しげるには聞こえないのだが。

「ククク……なんだか寒くなってきた……どうやら……ここ……までだ……な……」
 赤木しげるの呼吸数が段々と弱く少なくなってくる。
「アカギ……アカギィ……!」
 千秋は弱まっていく赤木しげるの手をぎゅっと握る。
 赤木しげるはそれを見て持っている全ての力を使い微笑を浮かべる。

「暖かい……千秋……ありがとう…………」

 それがカオスロワと言う混沌の殺し合いの場で
 一度も倒れふすことの無かった英雄の最後の言葉であった。

 ホテルのロビーはあまりにも酷い悲劇、幼い者同士の別れに思わず目を伏せるフラグビルドと、
親友以上の存在の死に激しく動揺して涙を流している
南千秋の泣き声が響き渡るだけであった。

【赤木しげる@テラカオスバトルロワイアル 死亡確認】 

【D-/5/ホテル内部/1日目-昼】

【南千秋@テラカオスバトルロワイアル】
 [状態]:健康 頭部にたんこぶ 激しい悲しみ
 [装備]:ミニウエディングドレス(赤木しげる(13)の血が付いている)千年リング@なのはロワ
 [持物]:デイパック、支給品一式、ハルコンネン@漫画ロワ、
     イングラムM10サブマシンガンの予備マガジン9、濡れた衣服 飲むヨーグルト
     シルバースキン@不明、イングラムM10サブマシンガン(14/32)@現実
 [方針/目的]
  基本方針:主催者を制裁する。 殺し合い?乗るかそんなもん
  1:アカギ……アカギ……
  2:ホテルで春香姉さま達と合流する。
  3:ピッピを殺した大バカ野郎は制裁する
 [備考]
  ※カオスロワ6期直後からの参戦です。
  ※制限により光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)にはなれません。
  ※シルバースキンが漫画ロワ仕様かニコロワ仕様なのかは後の書き手に任せます。

【闇バクラ@なのはロワ】
【状態】健康 なんとも言えない感情
【方針/思考】
[基本方針]
 今行われているデスゲームを楽しむ
 1:ひとまずアカギの言うとおり、南千秋に装備される。
 2:アカギには死んで欲しくなかった
 ※参戦時期は少なくとも自身の能力の制限に気付いた後です。
 ※強制憑依したら好き勝手やるかもしれません
 ※赤木しげる(13)のことを一目置いていましたので、アカギの遺言を守る可能性が高いです。

 【素晴らしきフラグビルド@書き手ロワ2nd】
 [状態]:健康 残念
 [装備]:なし
 [持物]:デイパック、支給品一式(水のペットボトルx2消費)、乾きかけた衣服一式
    :かいふくのマテリア@なのはロワ、桂馬@オールロワ
    :赤木しげる(13)のデイバック(支給品一式×2、マルボロライト1カートン(後8箱)@現実
    :ロードローラー@漫画ロワ、モンスターボール(ことのは)@ニコロワ、
    :飲むヨーグルト(1リットル×2)@現実、本三冊@現地調達品)
 [方針/行動]
  基本方針:私はChain-情さんと添い遂げる! (二人で生還する)
  0:これが……恋愛フラグと言うものの虚しさか……
  1:赤木しげる(13)埋葬する予定。
  2:ホテルで赤木しげる(19)達を待つ
  3:Chain-情さんを探し出して同行する。
  4:↑を達成するまでは、徹底的に危険を避ける。
  5:赤木しげる(13)の遺言を実行する。
 [備考]
  ※死亡後からの参戦です。

 そのころ……
 赤木しげるを殺害したランキング作成人はと言うと……

「あばばばばばばばっばばばばばbcじゃbjkfばsjkldhふぁういおえんjかwhj」
『お……落ち着け……!? 落ち着くんだ相棒!?』

 クロスミュラージュの言うことも耳に入らない。
 とにかくホテルから一歩でも遠くに行かなければとフラップラーを縦横無尽操り爆走していた。
 ようするに、ランキング作成人は強烈な錯乱状態に陥ってしまっていたのだ。

「殺すつkもりrはなかいったんだアアアアアああ」
 誰も死んで欲しく無いと願っていたのに、人一人を殺してしまった。
 彼は自分を生かすためにやった行動が、あろうことかもっとも最悪な方向へ行ってしまった。

「ああああああああああああああああああああああああああ
 ああああああああああああああああああああああああああ
 ああああああああああああああああああああああああああ
 ああああああああああああああああああああああああああ
 ああああああああああああああああああああああああああ……」

 何がなんだかわからない。
 誰も死んで欲しくない? 自分は人一人殺したくせに?
 自分も死にたくない?  自分は人一人殺したくせに?

 ランキング作成人は考えれば考えるほど己が壊れていくことに、まだ気がついてはいない。

【D-4/中部上空/1日目-昼】

 【ランキング作成人@オールロワ】
 [状態]:発狂
 [装備]:クロスミラージュ@ニコロワ、フラップラー@アニ2
 [持物]:拡声器@ロワ全般、デイパック、基本支給品一式、 PSG-1@現実
 [方針/行動]
  基本方針:誰にも死んでほしくない……? 自分も死にたくない……?
  1:人を殺した人を殺した人を殺した人を殺した……

 ※これから彼がどこへ行くのかは不明です。

 支給品紹介
【PSG-1@現実】
 某ゲームの1と2で出現したこともある狙撃銃。
 制作費が7000$らしく、高価だから配備されている軍隊は少ないらしい。

【三つの本@現地調達品】
 正確には
『Y2J』と言うライトノベル
『週刊ライターズ』と言う雑誌
『ビンス・マクマホン流経済学』と言う新書
 なおもちろん全部現実には存在しない。

104:スーパー変態シリーズ アナルフィーバーG 投下順に読む 106:赤い空の窓に消えていくあの子を呼ぶ
103:Ego-Eyes Glazing Over 後編 時系列順に読む 107:Bad-Ass
098:飢え「無我夢中」の無礼講 赤木しげる(13歳)
南千秋 121:童貞のまま30歳になれば俺も魔法少女になれるかな?
素晴らしきフラグビルド 121:童貞のまま30歳になれば俺も魔法少女になれるかな?
094:ピエロのままで ランキング作成人 119:mind crash



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