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食糧増産計画 「薊の手記 (2)」

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SS:食糧増産計画 「薊の手記 (2)」 (作:薊さん)


ここはリワマヒ国。
夏期と冬季の気温の差が激しく、その独特の気候と地質のためか植物の生育が著しい。
この国は夏期になると、まるで冬季の間に蓄積され続けた鬱憤を晴らすかのように爆発的に伸びる巨大シダ類によって陸上のほとんどの地域は密林のような状態となる。

もっと食糧を備蓄する必要がある。新たに食糧となり得る物を生産できないだろうか。
そう考えたリワマヒ人がまず最初に目をつけたのはそんな特殊な環境だった。

ひとことでシダ類といっても色々ある。中には食用にできる植物だって存在するのだ。
そして当然ではあるがリワマヒ国にはシダ類以外の植物も生育している。
そこで一計を案じ、山菜採り名人を動員して山菜を探してみる事にした。

名人と呼ばれる人物がいるのだから山菜はあるのだろう。後はどこにあるかという問題だけだ。

探してみれば見つかるもので、ゼンマイやワラビといった山菜がたくさん採れる事が判明した。
まぁ、今まであまり探そうとしていなかったのだから収穫されていた量などたかが知れている。植物が分布を拡大させて群生するには充分な時間があったという事なのかもしれない。

また、菌類であるキノコは植物と比べて気候の影響を受けにくいためか、そこかしこで見つかった。そちらはやはり毒キノコが多かったのだが食用にできるキノコも少なからず発見されている。

これらの山の幸は、乱獲や根こそぎ掘り出すといった行為さえ戒める事ができれば長久的な食物資源となり得る。自然の恵みに対する感謝を忘れないようにするために、新たに山菜の収穫に関する法律が制定され、徹底される事となった。
そういう状況を鑑みるとリワマヒ国における山菜採り名人の地位はかなり高いのかもしれない。

現在では山菜は商品として流通されるようになっており、貿易にも利用できるのではないかとまで言われているほどである。


食糧といえば、リワマヒ国で最も親しまれている食べ物を忘れてはならない。それはミカンである。

リワマヒ人は古来からコタツに愛着を持っている人種であり、コタツにはミカンが欠かせない。
そんな発想からかどうかは判らないが、リワマヒ国にはミカンやライチといった果樹を栽培している農家が存在している。
これらの果物は水分を多く含んでいるため、恐らくは手軽に水分を補給する手段として栽培が始まったのではないだろうか。

ミカンの木はリワマヒ国の国樹に近い扱いをされている。ミカンはリワマヒ名物とも言える代表的な果物なのだからどうせならこちらの生産量も増やしておきたいところである。

とはいえ今から株分けしたところですぐに生産量が増える訳ではない。いくら植物の生育が早い国だといっても物事には限度というものがあるのだ。
さすがに早急な生産量の増加は望めない。では生産量ではなく収穫量を増やす事はできないだろうか。

果樹園では収穫の際に人手が足りずに収穫しきれなくなる果実もある。これらを無事に収穫できたなら増産に似た効果が得られるのではないだろうか。
人手不足で手が回らないのであれば人手を貸せばいいのではないか。
そこで収穫時期には国民総出で果樹園へ赴き収穫の手伝いをするようにした。

収穫されたミカンは等級の見極めをして選別を行い、箱に詰めて出荷される。当然ながら収穫量が多ければそれだけ出荷の手間が増える事になる。
収穫の手伝いはできても等級の見極めは素人にはできない。無計画に規模を拡大させていけばそこにしわ寄せがきてしまう事になるかもしれない。今後は目利きのできる者を増やしていく必要があると思われる。

予談ではあるが、この一件においてある程度の収穫量の増加は認められると判断されたため、これ以来リワマヒ国民は収穫の時期になると果樹園だけでなく米や野菜の収穫にも動員されるようになる。


陸上にばかり気をとられてしまったが、リワマヒ国には川も海もある。
そのため古くから新鮮な魚介類を使った料理が親しまれており、特に白身魚が好まれている。しかし漁獲量というものは天候や運に左右され易いものであり、安定的な供給が約束されているものではない。

そこで生け簀を作り、これらを養殖により安定供給させる事ができないだろうかと考えた者がいた。

何年前の話になるのだろうか。魚の養殖を行うためにはまず育成する魚の生態を知っておく必要がある。どれだけの時間がかかると思っているのだ、と一笑に付せられた計画だった。
しかし実現できたならこれほど有り難いものはないのも事実。細々とではあるが魚の研究が始められた。

当初は途方もない計画だと思われていた。何も解らず淡水魚を海水で育てようとしたり、その逆もあったりしたようだ。
だが、地道に研究を続ける内に光が見えてきた。試行錯誤を繰り返しながら他国の情報にも耳を傾け、技術指導を請い、少しずつではあるが努力が実を結びつつあったのだ。


そこまで書いて、薊は筆を止めた。
眼下には完成して間もない養殖場が見える。これ以上は野暮というものだろう。

(絵:シコウさん)

考えてみれば、リワマヒ国という国はあまりお金に縁がない。しかし贅沢さえしなければまだなんとかやっていけるだろう。
どんな状況に置かれたとしても食に対するこだわりだけは決して忘れない。
その点だけはどんな大国にも引けを取らないのかもしれないな。
そんな事を思いながら果樹園へと続く道を歩き出していた。

(了)



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