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薊さんから見た戦争準備「薊の手記」篇

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riwamahi

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薊さんから見た戦争準備 「薊の手記」篇


ここはリワマヒ国。
かつてポケット藩国と呼ばれていた国。
氷雪に閉ざされていた冬が終わり、活動可能な範囲がかなり広がった。藩王は今や伯爵様だ。


もうこの国をポケット藩国と呼ぶ者はいない。



私こと薊はちょっとした偶然からリワマヒ国の藩王と面識を持ち、
それが縁でこの国に居座っている。

兼一王は身ひとつで移住を願い出た私を迎え入れてくれたばかりか、
何の取り柄も無い私を文士として破格の待遇で登用してくれた。

受けた恩はいずれ返さねばならない。

この国の人々はとてもおおらかだ。
他所者の私に対しても分け隔て無く接してくれるし、
過去にはあまり興味が無いらしく根掘り葉掘り尋ねられる事も無い。

そんな何気ない事も、あまり楽しい過去を持たない私にとっては有難く思える。
ここでのほほんと茶をすすりながら一生を終えるというのも悪くない人生だろう。


この国はとても居心地がいい。
だからこの国が存亡の危機にあると知り、私は筆を取る事にした。
この手記をリワマヒ国滅亡の記録とさせないために。


時は少し戻る。

私はいつものように宮城のおこたの間へ行き、
大きな冷温こたつで涼みながら茶をすすっていた。

なんか視線を感じたので見てみると、隣でシコウさんが煎餅を食べている。

「のど渇いたんですか?」
「にゃ~」
そっぽ向いちゃったけどお茶煎れといた方がいいかな?


「ちょっと待って下さいね。お茶は70度くらいに冷ましたお湯で煎れるとおいしいんです」
我ながら少し年寄りじみてるかもしれない。
それにしても藩王様遅いなぁ。


会議の予定時刻はとっくに過ぎている。

しかし普段なら一番に入室して座している筈の兼一王がまだ顔を見せない。
悪い予感はよく当たるものだ、とは今だから言える事か。


兼一王の御成りは、藩王を除く全員が揃い、煎餅が無くなりかけた頃だった。

しかし来たのはいいが難しい顔をして腕を組んだままなかなか口を開かない。


私が沈黙に耐え兼ねて茶をすすると兼一王は唐突に話を切り出した。
「金がありません」


「ぶっっ ごほっごほっ」


思いっきり茶を吹き出してしまった。
向かい側に座っている平 祥子さんが眼鏡を拭いている。白衣にも染みが……
「ごめんなさいすみません申し訳ないですっっ!!」
こたつを拭きながら平謝りするしかなかった。

「……あの、藩王様?」
素朴な疑問を口にしてみた。
「私と蒼燐さんが温泉掘りやってて金貨掘り出しましたよね?」
「それが……足りません」


話が見えないので説明を待つ事にした。

兼一王の話によると、どうやら大きな戦争があるらしい。
敵に備える必要があるので莫大な戦費と燃料が必要になる。
金も燃料も足りず、燃料を揃えるにも金が必要だとの事。


「とりあえず……造花作りとか傘張りとかやりましょうか」

一同、静まり返る。
しまった。私は文士なのだ。
文士なら文士らしく、やはりダイレクトメールの宛名書きをやると言うべきだったか。

相談の結果、
うにさんとシコウさんの猫士コンビには技士として
頑張ってもらう事になり、とりあえず今日は兼一王を含めた残る全員で
内職をするという結論に達した。

これらがどれだけの収入になるかはまだ判らない。
しかし今はできるだけの事をするしかないのだ。

リワマヒ国を永住の地とするために。




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